01. 用語の定義
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約3分)
02. 面積・高さ・階数
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約2分30秒)
06. 一般構造

■学習のポイント
07. 既存不適格
「法86条の7」では,次の3つをチェックします.
問題文に「病院の用途を変更して,有料老人ホームとする場合」とあることから「類似用途だ!」と反応しがちですが,「確認申請が不要となる類似用途」と「既存不適格が継続となる類似用途」の似て非なる2つの類似用途があります.
08. 申請手続
さて,「建築主事と特定行政庁の違い」ですが,「建築主事」とは,行政側にいる建築の専門家だと理解して下さい.(全般に関して言えることですが,あくまで学科試験対策向けに建築知識を分かりやすく説明するための説明内容だと考えて下さい.)
法6条には,確認申請について規定されており,「申請義務が発生する建物(=確認申請書を提出しなければならない建物)」について定められています.ここで,「法6条各号」の区分については,暗記してしまいましょう(法規科目で数少ない暗記項目と割り切ってください).
「中間検査」(法7条の3)について補足説明しておきましょう.旧来は,確認済証の交付を受け,工事を着工し,工事が完了した後に,工事完了申請を提出し,完了検査を経て,検査済証を交付してもらう流れでしたが,この流れですと例えば,完了検査の時点で法令違反などの問題が発覚した場合,既に,完成してしまっている建物を壊して法基準を満たす形に作り変えることになります.また完了時には隠れて見えない部分についても,途中の段階で見ていれば修正可能だった不具合部分も,その時点で是正することが可能です.そこで,「特定工程」が定められます(「階数が3以上である共同住宅」という具体的な規模用途が記載された点に注意してください).建物の構造や規模にもよりますが,例えば,基礎の配筋完了時が「特定工程」として指定されている場合には,基礎の配筋という工事工程が完了した時点で,「中間検査の申請」を行い,「中間検査のチェック」を受けた後出なければ次の工事工程に進めません.つまり,工事を進めることができないということです.尚,中間検査の申請先も,確認申請や工事完了申請と同様に,建築主事でなく,指定確認検査機関にお願いしても構いません(法7条の4).
「仮使用」については,先述の通り,本来は完了検査済証を発行してもらわなければ,例え,建築主であろうと勝手に建物を使用することが出来ません(法7条の6).違反建築物として工事が完了してしまっている可能性もあるからです.建築主は,建築については素人でもあるので,自分が建ててもらった建物が違反建築物であるかどうかどうかの判断を適切に下すことができません.仮に,建築主自身が違反建築物であることを知った上でその建物を使用し,万が一事故が起きても自業自得ですが,そこに,建築主以外の第三者が違反建築物だと知らずに利用して,例えば,いきなりデパートや映画館の床が抜けて命を落とすことになったとしたら,社会的に大問題となってしまいます.ただし,法7条の6では,ただし書きで特例を設けてあります.その特例とは,例えば「特定行政庁が安全上,防火上,避難上の観点から考えて,完了検査済証が発行される前でも使用(=仮使用)してもよいと認めた場合」です.(平成27年の改正で「建築主事」と「指定確認検査機関」も所定の範囲で仮使用を認定することができるようになりました).
「仮使用」(法7条の6)と対比で覚えておきたいのが「安全上の措置等に関する計画の届出」(法90条の3)の話です.この規定は,一見,「仮使用申請」の話と似ていますが,全くの別モノだと考えて下さい.所定の建築物の場合,工事の施工中に建物を使用する場合には,仮使用申請とは別に,この「安全上の措置等に関する計画の届出」を特定行政庁に提出する必要があります.「仮使用申請」とごっちゃになって考えてしまう受験生も多いので,注意して下さい.以上を踏まえた上で,収録されている問題を解いて頂ければ,この項目の対策も万全でしょう.
「定期報告」(法12条)について,以前は,定期報告の実施要請を無視する建主や,精度の低い報告が少なからずいましたが,違法な増改築や,エレベーターによる死亡事故,遊戯施設による死亡事故などが起こり,運用の厳格化が行われました.また実際に健全な社会ストックの拡充という観点からも,注目される制度です(そういう観点からも出題は多い).建築物で言うと同条1項は「政令で定めるもの」と「特定行政庁が指定するもの」の2つあります.従来は,後者だけの規定だったのですが,現在は,全国共通で指定される用途・規模については「政令」で定めて,それから漏れたものを補完できるよう各地の行政庁が独自に指定する,という立て付けになっています.
最後に「用途変更」について簡単に説明します.法87条に,「建物の用途を変更して,変更後,法6条一号条件に該当する建物(=一号物件)となる場合には,用途変更による申請義務が生じる.」とあり,また,カッコ書きで,「類似用途(=映画館から劇場への用途変更というような同じ内容の用途への変更をいう)の場合は,用途変更による申請義務は発生しませんよ.」と規定されているわけです.類似用途(通称:類似特建)かどうかについては,令137条の18でチェックします.あとは,解説を読んで頂ければマスターできるはずです.要は,映画館として設計した建物の場合は,映画館という用途を踏まえて必要となる関係法令が適用され,それらの規定を全てクリアーした上で存在しているわけだから,類似用途である劇場に変更したところで,必要となる関係法令は,全てクリアーできているものとみなせるわけです.ただし,劇場からデパート(物品販売業を営む店舗等)への用途変更の場合は,劇場という用途について要求される関係法令と,デパートという用途に対して要求される関係法令は,全く異なる内容のものですので,その場合は,再度,確認申請を行って,デパートという用途に要求される関係法令を全て満たしているかどうかのチェックを受けなさい,という話ですね.
土地勘(とちかん)の無い街を地図を見ながら,標識を探しながら歩くのと,「喫茶店はココと少し先にもう1軒ある」「この角を曲がると近道だな」等,頭の中に街のマップイメージのある人の歩き方は,全く異なります.
法規科目を得意分野にするのは,この土地勘を習得することに似ています.
法令集のインデックスを頼りに「問題文と条文を照らし合わせて確認する」という解き方と,主要条文の構成や並びを理解して,法令をイメージしながら問題文を読む人の解き方は,全く異なります.
オンライン講義「法規」では「法令のイメージトレーニング」を用意しています.これは脳内マップの強化になります.こちらをご覧ください(Youtube動画 約6分)
数値を覚える事が目的ではありません.構成を意識する事で,そこにある情報の出し入れが正確にスムースになる感覚が出来てきます.
大事なのは「法令集に細工する事」ではなく,「頭の中の条文構成で対処できるものを増やしていく事、実際に法令集を見た時に,構成や出題のポイントが浮き上がって見える事」その状況をどの範囲で試験までに準備できるかという事です.解説に頻出する条文だけで構いませんので,その意識で挑みましょう.
09. 構造
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分)
次に,「第8節」の「構造計算」です.「第1款・令81条」にある「構造計算方法の種類」について見てみましょう.
「令36条1項」では「耐久性等関係規定」という用語が定義されています.この「耐久性等関係規定」とは,「構造仕様規定」のうち,極めて重要な規定と解釈してください.「構造仕様規定」のうちの一部が,「耐久性等関係規定」です(包含関係).そして,難易度の高い(=精度の高い)構造計算により,計算した場合には,構造仕様規定を全て満たさずとも「耐久性等関係規定」だけを満たせばよい(=構造計算で安全性を担保している)ことになります(耐久性等関係規定「以外」の構造仕様規定は,適用除外).

次に「令82条」以降を解説します.令82条の条文名が「保有水平耐力計算」となっていますが,このことで多くの受験生の皆さんが混乱することとなります.令82条前段に「・・・保有水平耐力計算とは,次の各号及び次条から第八十二条の四までに定めるところによりする構造計算をいう」とあります.
10. 耐火構造等
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分)
■学習のポイント
「耐火性能・耐火構造・耐火建築物」など,似たような用語が多く,紛らわしく感じられるかもしれませんが,まずその3点を意識して,キチンと整理して,体系的に学習していってください.
12. 防火地域
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分)
13. 防火区画
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分30秒)
次に,防火区画の種類について,区画の仕方(=ブロック分けの仕方)によって,次の4種類に分けられます.
最後に,「16項」の「接壁」について補足説明しておきます.この接壁とは,次のようなイメージです.

14. 内装制限
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約6分)

15. 避難施設
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分)
最後に, 「避難」に関連するその他の規定を学習します.例えば,「排煙設備」,「非常用照明」,「非常用進入口」の話となりますが,これらに共通するのは,まずは,「設置基準(設置義務が発生する条件)」を抑えること,その隣の条文には,設置する場合にどういった仕様(構造)で設置すればよいのかという条件が説明されているという流れとなっています.
17. 建築制限
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分)
18. 容積率・建蔽率
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分)
次に「建蔽率」です.「建蔽率」には,法定建蔽率しか存在しません.そのため,「法定建蔽率=最大建蔽率」となります.図問題の場合,法定建蔽率は,問題文に記載がありますが,「商業地域」は「8/10」しかありませんので,数値の記載はありません.

■学習のポイント
イレギュラーなパターンとして「問題コード20151」は,用途を「共同住宅」と前提として,「共用通路緩和」や,「駐車場1/5緩和」を取り入れる問題となっていますが,その知識は過去問レベルの内容ですので,最後の床面積の増減の考え方だけ間違わなければ,対応も可能です.
法規科目は時間が足りず「図問題は後回し」にする受験生は多いです.自分にとって難しい問題を後回しにするのは戦略としては王道ですが,図問題でも「その場でトライすべき問題」と「後回しにすべき問題」があるはずです.過去問の知識の範囲で構いませんので,本試験までに,各自で仕上げるレベルを想定しておきましょう.
19. 高さ制限
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約3分)
「法56条」の構成を確認しましょう
続いて隣地斜線です.隣地斜線の緩和措置は,次の3種類となります.
最後に,北側斜線です.北側斜線は,敷地が1・2種低層住専(+田園住居)又は1・2中高層にある場合のみ適用される高さ制限です.「1・2種低層住専」は,図問題での出題は考えにくいので,実質,「1・2中高層」かどうかをチェックします.それ以外なら「北側斜線の検討不要」となり,計算するボリューム(時間)が大きく異なりますので,これを1番先にチェックします.
20. 地区計画
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分30秒)
「地区計画」には,「市町村が定められる条例による制限」があります.皆さんが実際に,建物を設計する場合には,建築基準法だけを守ればよいというわけではありません.各自治体ごとに「条例」というものが存在するためです.例えば,東京都の場合には,「東京都安全条例」という東京都版の建築基準法のようなものが存在しますし(ちなみに,法令集程度の厚さがあり,書店で購入することが出来ます),横浜市の場合には,横浜市条例というものがあります.よくある失敗談として,基準法上は適合しているが,条例に違反している設計をしてしまったという話を聞きます.基準法同様の扱いとして確認申請の際にチェックを受けます(基準法6条の「建築基準関係規定」)ので確認申請が下りません.勿論,条例の中には,基準法に掲載されていない規定も出てきます.東京都安全条例で言えば,「窓先空地」,横浜市条例でいえば,「2方向避難」などです.
建築基準法では「法68条の2」に,「市町村は,地区整備計画等が定められている地区計画等の区域においては,建築物の構造等の制限を条例として定めることができる.」とあります.この「地区整備計画等が定められている地区計画等の区域」とは,分かりやすく言えば「街づくりのルールが具体的に決まっている地域」といったイメージです.そういう地域においては,「条例で制限をかけてもいいですよ」という意味になります.上記のように「条例として制限をかけ場合」は,基準法同様の扱いとなります.次に,その2項に,「前項の規定は,政令で定める基準に従って行うこと.」とあります.この「政令で定める基準(通称:政令基準)」という言い回しには,慣れましたでしょうか.これは,「施行令の方に定めている具体的な内容」という意味です.この政令基準は,「令136条の2の5各号」とあります.例えば,その「二号」に「建築物の容積率の最高限度は,5/10以上の数値としなさい.」とありますが,これは,市町村は地区計画上の条例制限として,「容積率の最高限度」を定めることができますが,その場合には,「5/10以上(50パーセント以上)にしてあげなさい.」という意味です.通常,容積率は,100パーセントだとか,300パーセントといったものですが,建物のボリュームをあまり大きくしたくない場合には,地区計画上の条例制限として,容積率の最大限度を決めることができます.
尚,地区計画について,ある程度体系的に把握しておきたいという場合は,東京都のサイトの解説を参照ください.【こちら】
また,ネットで「○○市 地区計画」として検索してみてください.どんなことが定められているのか,をご自身の知っている街並みで確認することで,よりリアリティのある規定として定着します.
22. バリアフリー法
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約3分)
バリアフリー法(高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)の概略をおさえてしまいましょう.最初に用語の確認です.
□「特定建築物」 とは?
法2条十六号に定義されており,分かり易く説明すると,「学校,病院,事務所や共同住宅のように,利用者数の多い建築物」のことです.
□ 「特別特定建築物」 とは?
法2条十七号に定義されており,分かり易く説明すると,「特定建築物のうち,不特定多数の人が利用する百貨店などの特定建築物や,高齢者が利用する老人ホームなどの特定建築物」のことです. 尚,ここで注意して頂きたいのは,「特別特定建築物」は,「特定建築物」の一部であることです.これは,これまで勉強してきた「耐火建築物」と「準耐火建築物」の関係と一緒です.つまり,「特別特定建築物」は「特定建築物」に含まれている(包含関係)という事は理解しておきましょう.
「銀行は,特定建築物ですか?」といった具合に問われた場合は,このバリアフリー法2条十六号,十七号から「政令」をチェックします.例えば,法2条十六号に,「特定建築物とは,学校などの多数の者が利用する政令で定める建築物をいう.」とあります.建築基準法でも同じような言い回しが頻繁にありましたね.「政令」とは,「施行令」のことです.建築基準法の場合は,建築基準法の施行令というものがあり,同様に,バリアフリー法の場合も「施行令」というものがあります.したがって,「政令で定める」という言い回しがある場合には,「施行令の方で具体的に定めています」という風に頭の中で読み替えるようにして下さい.これだけで,条文をよりスムーズに読解できるようになります.では,具体的にどのような建築物が「特定建築物」とみなされるのかについて施行令4条を見てみましょう.そこに,バリアフリー法上,「特定建築物」としてみなされる建築物の一覧があります.ここをチェックすれば,問題文にある「銀行は,特定建築物ですか?」という問いに解答することができるわけです.「特別特定建築物」の場合も同じような要領で施行令5条を見ます.
次に,「建築物特定施設」という用語を覚えましょう.「建築物特定施設」とは,法2条十八号に規定されており,「出入口などで,施行令の方で具体的定められているものを建築物特定施設という.」とわかります.施行令6条に,具体的に定められている出入口や,廊下,階段などです.例えば,問題文で「昇降機は,建築物特定施設に含まれますか?」と問われたら,この施行令6条をチェックすれば一発で判断できます.非常に簡単ですね.
さて,次に,バリアフリー法の「基準」について説明しておきましょう.ここでは暗記することよりも,流れをマスターしてください.建築主等は,「特定建築物」を建築しようとする場合,「建築物移動等円滑化基準」というルールに適合するよう「努力」しなければなりません(法16条).また,「特別特定建築物」を建築しようとする場合,ある一定の規模については,「建築物移動等円滑化基準」というルールに適合させる「義務」があります(法14条).建築物移動等円滑化基準については,建築物特定施設である「出入口」の幅は,これくらい取りなさいとか,「駐車場」は,こういう具合に計画しなさいなどといった具体的なルールです.ここでの基準は,最低限の基準であって,より本格的に建築物をバリアフリー化するのであれば,更にワンランク上のルールがあります.それが,「建築物移動等円滑化誘導基準」と呼ばれるものです.「建築物移動等円滑化基準」よりも厳しく設定されております.これはどういったときに適用されるかというと「計画の認定」を受ける場合です(法17条3項第一号),
では,「計画の認定」とは何でしょうか.これは,「特定建築物(特別特定建築物を含む)を建築しようとする建築主等が,所管行政庁に,その計画内容について認定してもらうことができる.」というものです(法17条).義務ではなく自ら申請し,厳しい基準クリアし,認定を受けた特定建築物を「認定特定建築物」と言い,「容積率の特例」(法19条)や認定を受けたことを世間にアピールできる「表示」(法20条)等のメリットがあります.
上記の話を踏まえた上で,まずは,問題を解き進めていきましょう.収録問題を解き進めていくうちに,徐々に,知識をコントロールしている感覚が沸いてくると思います.この感覚こそ,学科試験に合格する際の感覚だと思ってください.この感覚を法規科目全般に渡り,また,全教科に渡り,広げていってください.ただし,肝心なのは,細かい部分にとらわれれ過ぎずに,法令集の構成を意識しつつ,その流れをマスターすることです.
■学習のポイント
この項目では,用語の意味や手続きの手順を確認するための問題がよく出題されますが,その分,「ケアレスミス」が起きる可能性も高くなってきます.「努力義務」と「義務」の違いや,「円滑化基準」と「円滑化誘導基準」の違いなど,普段なら取り違えないような事も読み落としたり,勘違いが発生したりするものです.無駄な失点は「読み落とさないぞ!」とか「条文と一言一句,照らし合わせてやる」という手法では防げません.上記のように体系的なイメージの中で問題文がどの辺りの話を聞いているのか,まずはその意味合いで問題文を捉えることです.その習慣や意識こそが本試験でのケアレスミスの防止に繋がります.
23. 耐震改修法
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約6分)
■学習のポイント
24. 建築士法
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分30秒)
■1級建築士の条件(士法3条)
つまり,木造の場合には,階数が2以下,かつ,高さ13m,軒高9m以下で,延べ面積が100㎡以下であれば,無資格でも設計・工事監理する事ができます.「建築士の業務範囲」は,JAEICのホームページにも掲載されているので,一度,条文と照らし合わせておくと良いでしょう.【こちら】
ここで,頻出されるポイントについて,いくつかお話しておきましょう.
新問に対して「その根拠条文を法令集から探し出す」という手順に固執している場合,線引きをしていない部分は相当読み辛く,試験中に実践するのは困難です.一方で,気になった箇所を闇雲に線引きしたりインデックスを貼りまくってしまうと,余計みにくい法令集となってしまいます.重要なのは,問題文や法体系の勘所を養うことです.これは「ヤマ勘に頼る」ということではありません.例えば「定期講習」に関する出題があったとき,まずは建築士法の「目次」をみてみましょう.まずは,「どの章に属する内容なのか」を推測します(「建築士法の”章”」については,一通り読んでみてください).定期講習は6章の「建築士事務所」よりも建築士個人の話だし,法改正の概要を知っていれば,2章の「免許」や3章の「試験」ではなく「業務」に近い話だとわかります.内容は全く新しいものですので追加されていること推測してみると,「業務」の章の最後の方に記載されていることがわかります(士法22条の2).こういった具合に,法の構成から推測する手法を覚えておいてください.また,ある選択肢の内容が「対」になっていたり,他の選択枝と明らかに毛色が違っていたりする場合がありますので,注意深く,問題文中にある「手がかり」を読み取ってください.
26. 都市計画法
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分30秒)

それでは ,都市計画法上の用語を学習しましょう.都計法4条をご覧ください.必ず法令集を開き,条文で全体構成を把握するように心掛けてください.
開発許可の条文の構成をみてみましょう.ポイントは「主体は誰か」です.これはそのまま「手続きの流れ」を表しています.各条文の1項だけでよいですから,通して確認してみてください.
02.現場管理
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分30秒)
まずは,過去問題の解説部分を流し読みして下さい.
この項目では,安全衛生管理体制や作業主任者の選任などの建設工事現場の安全に関する出題となっています.なお,請負契約に関しては,「請負契約」のインプットのコツでまとめて説明します.また,材料の保管・管理方法などに関しては,各工事項目に収録されております.それぞれの項目のインプットのコツを参考にしてください.
安全衛生管理の部分は似たような言葉が多く,イメージしにくい内容です.
大まかな安全衛生管理体制と,そこに出てくる言葉の意味を理解しましょう.
工事現場の安全確保のため,現場代理人(現場所長)が責任者となり,建築基準法や労働安全衛生法,その他関係法令などに従い工事現場の安全衛生に関して管理を行っていきます.
ここで,総括安全衛生管理者という言葉が出てきます.これは,労働安全衛生法第10条,労働安全衛生法施行令第2条により,業種ごとに一定規模以上の事業場に選任が義務づけられているものであり,その基本的な考えは,労働災害を防止する責任は,本来事業者にあると考えられますので,その事業を統括管理する者を総括安全衛生管理者として選任させて,安全管理者または衛生管理者を指揮させ労働者の健康と安全を確保する業務を責任を持って統括してもらう人という風に定義されています.ここで,安全管理者及び衛生管理者とは,総括安全衛生管理者の業務のうち,安全・衛生に関わる技術的事項を管理する人を指します.この総括安全衛生管理者は,常時100人以上の労働者を使用する事業場ごとに選任する必要があります(問題コード24023).
似たような言葉として,統括安全衛生責任者という言葉があります.これは,労働安全衛生法第15条,労働安全衛生法施行令第7条により仕事の一部を請負人に請け負わせている者のうち建設業,造船業について一定規模以上(労働者数)の仕事(現場)ごとに選任が義務づけられているものであり,その基本的な考えは,建設業および造船業の事業場においては,元方事業者および下請事業者の労働者が同一場所で混在して作業を行っている為,他業種に比し災害発生率が高率となっているのでこの混在作業から発生する労働災害を防止するため,元方事業者(特定元方事業者)に統括安全衛生責任者を選任させて,各事業者間の調整をおこなってもらうことにより工事現場等で働く労働者の健康と安全を確保してもらうという風に定義されています.この統括安全衛生責任者は,特定元方事業者(元請負者)と請負人とが混在し,常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに選任する必要があります.
総括安全衛生管理者,統括安全衛生責任者ともに,事業所(現場)の規模(100人以上 or 50人以上の混在現場)に違いはありますが,通常,現場所長などがこれに当たります.
事業者は,労働災害を防止するための管理を必要とする作業においては,免許を受けた者または技能講習を終了した者のうちから作業主任者を選任し,その作業に関わる労働者の指揮などを行わせなければなりません.
では,作業主任者を必要とする作業と必要としない作業についてまとめてみましょう.
作業主任者が有資格者でなければならない作業としては,ガス溶接作業主任者があります.
作業主任者が技能講習終了者でなければならない作業としては,
地山の掘削作業主任者(問題コード28022)
石綿作業主任者(問題コード01022ほか)
コンクリート造の工作物の解体等作業主任者(問題コード01021)
型枠支保工の組立等作業主任者(問題コード13033)
足場の組立等作業主任者(問題コード01024ほか)
建築物等の鉄骨の組立等作業主任者(問題コード17033)
土止め支保工作業主任者(問題コード01023ほか)
などがあります.
それぞれの作業内容については,上記問題コードを参考に,解説を読んで理解しておいて下さい.
■学習のポイント
ISO9000シリーズ(品質関係)やISO14000シリーズ(環境問題関係)などに関しては,過去問の解説程度の基本的な理解で十分であると思います.
この項目も,過去問20年分の「知識」の理解で十分対応可能な項目であると思われます.
03.届出
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約2分30秒)
まずは,過去問題の解説部分を流し読みして下さい.
この項目では,『○○の届出は,△△が,□□に,▽▽までに届け出なければならない』というところに意識を置いて勉強しましょう.
建築基準法関係について
建築工事届(問題コード01043ほか)
:建築主が,都道府県知事に,着工前までに
建築物除去届(問題コード02044ほか)
:施工者が,都道府県知事に,着工前までに
中間検査届・完了検査届(問題コード27043ほか)
:建築主が,建築主事に,完了後4日以内に
安全上の措置等に関わる計画書(問題コード02041ほか)
:建築主が,特定行政庁に,事前に
労働安全衛生法関係について
この法律に基づいている届出書類の届出先は,ほとんどが労働基準監督署長宛てとなっています.共同企業体代表者届などの例外には注意しましょう.
共同企業体代表者届(問題コード01042ほか)
:事業者が,都道府県労働局長に,仕事開始日の14日前までに
寄宿舎設置届(問題コード18045)
:使用者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の14日前までに
建設工事計画届(問題コード02043ほか)
:事業者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の14日前までに
型枠支保工設置届(問題コード25044ほか)
:事業者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の30日前までに
足場の組立・解体計画届(問題コード22043ほか)
:事業者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の30日前までに
エレベーター設置届(問題コード22042)
:事業者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の30日前までに
建設用リフト設置届
:事業者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の30日前までに
クレーン設置届(問題コード30041ほか)
:事業者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の30日前までに
ボイラー設置届(問題コード288044ほか)
:事業者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の30日前までに
ゴンドラ設置届
:事業者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の30日前までに
統括安全衛生管理者選任報告書
:事業者が,労働基準監督署長に,選任後14日以内に
建築工事に伴う手続き関係について
道路占用許可申請書(問題コード28043ほか)
:施工者が,道路管理者に,その都度
特殊車両通行許可書(問題コード25041ほか)
:施工者が,道路管理者に,その都度
道路使用許可申請書(問題コード23041ほか)
:施工者が,所轄警察署長に,その都度
騒音規制法に基づく特定建設作業実施届出書(問題コード30043ほか)
:施工者が,市町村長に,作業開始日の7日前までに
振動規制法に基づく特定建設作業実施届出書
:施工者が,市町村長に,作業開始日の7日前までに
工事監理報告書(問題コード01044ほか)
:建築士が,建築主に,工事監理終了後直ちに
浄化槽設置届(問題コード18043)
:設置者が,保健所を置く市は市長,それ以外は都道府県知事に,着工の21日前までに
産業廃棄物管理票交付等状況報告書(問題コード29042ほか)
:処理業者が,都道府県知事に,着手前に
自家用電気工作物設置工事計画届出書
:政令で定める関係者が,経済産業大臣または経済産業局長に,事前認可または工事開始30日まえまでに
高層建築物等予定工事届(問題コード02042ほか)
:建築主が,総務大臣に,着手前に
消防用設備等着工届
:消防設備士が,消防長または消防署長に,着工の10日前までに
消防用設備等設置届(問題コード30044)
:政令で定める関係者が,消防長または消防署長に,工事が完了した日から4日以内に
危険物貯蔵所設置許可申請書(問題コード27044ほか)
:設置者が,消防署を置く市町村は市町村長,それ以外は都道府県知事に,事前に
航空障害灯設置届(問題コード17023ほか)
:設置者が,国土交通大臣または地方航空局長に,事前に
■学習のポイント
近年の環境破壊防止に関する問題として,問題コード30042の「建設リサイクル届」に関する出題や問題コード01041の「特定粉じん排出」に関する出題があります.
チェックしておきましょう!
06.プレキャスト鉄筋工事
この項目に関しても,よく質問が来る点などについて,実際の問題文の補足説明(問題文が何を意味しているのであるかとか,問題文や解説文のどの部分が重要事項であるのかなど)に関して説明してきます.
プレキャスト部材の調合関係について
コンクリートの水セメント比は55%以下,スランプは特記のない場合は12cm以下,空気量は特記のない場合は3%以下,単位セメント量は300kg/m3以上とすることを覚えておきましょう.
練混ぜ水に回収水を使用してはいけないことを覚えておきましょう.
製造時の養生方法について
コンクリート打設後,コンクリートの硬化を促進するための加熱養生として,一般的には,常圧蒸気養生(水蒸気を直接コンクリートに与えて加熱する養生方法)を用いることを覚えておきましょう.
加熱養生工程と部材の温度との関係を図示すると

建築工事標準仕様書・同解説 JASS10より抜粋
のようになります.
普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートの加熱養生において,養生温度が80℃を超えると長期強度が低下することを覚えておきましょう.
部材の加熱養生において,前養生時間を3時間程度,養生温度の上昇勾配を10~20℃/h程度とすることが多いことを覚えておきましょう.
加熱終了後の温度降下は,部材の表面部に生じるひび割れを少なくするために,温度上昇勾配より緩やかな温度勾配によって部材温度を下げることを覚えましょう.
脱型した後には,急激な乾燥を防ぐために,十分の散水養生や水密シートによる養生を行い,水分補給することを覚えておきましょう(問題コード01124ほか).
型枠脱型時に必要なコンクリート強度について
プレキャストコンクリート板の脱型時にベットを70°程度まで立て起こしてから吊り上げる際には,コンクリート強度が約8~10N/mm2以上必要であることを覚えておきましょう(問題コード29122ほか).
プレキャストコンクリート板の脱型時にベットを傾斜させないで脱型する際には,コンクリート強度は約12N/mm2以上必要であることを覚えておきましょう.
型枠脱型時の圧縮強度の確認する際の供試体は,プレキャストコンクリート部材の製作時に同一のコンクリートを使用して,部材と同一の養生条件で養生したものを用いることを覚えておきましょう(問題コード02121ほか).
施工時における注意事項
部材の組立において,上階の部材の組立作業は,直下階でのドライジョイントの接合,及び鉛直接合部分のコンクリートの充填作業が済み,充填コンクリートの圧縮強度が9N/mm2以上に達していることを確認した後で行うことを覚えておきましょう.
風速10m/s以上,及び突風の場合は,部材の組立作業を中止することを覚えておきましょう.
接合方法について
充填コンクリートの水セメント比は55%以下,スランプは21cm以下,単位水量は185kg/m3以下,単位セメント量は330kg/m3以上とすることを覚えておきましょう(問題コード13204).
接合部におけるコンクリートの設計かぶり厚さは,特記のない場合は,最小かぶり厚さ+5mm以上とすることを覚えておきましょう.
製品検査について
構造耐力上重要な壁,梁用の部材については,全体に0.3mm以上のひび割れが入っているものは廃棄処分とすることを覚えておきましょう.
保管方法について
プレキャストコンクリート部材を平積みにして保管する場合には,まくら木の設置を部材の大きさに関わらず2箇所とし,積み上げ高さは6段程度までとすることを覚えておきましょう.
■学習のポイント
構造,施工の各科目で,関連事項が多く出題されていますので,施工項目に限定せず,他の科目の出題と合わせて覚えることをオススメします.
この項目も,基本的には,合格ロケットに収録されている過去問20年分の「知識」の理解で,十分対応可能な項目であると思われます.
頑張って理解しましょう.
11.地盤調査
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分30秒)
まずは,過去問題の解説部分と「解説集」をチラ見しながら,流し読みして下さい.
地盤調査,土工事・山留工事,地業工事の3項目は,厳密に分類することが難しく,それぞれに関連している項目が見受けられます.構造文章題の地盤,基礎の設計と絡めて覚えていきましょう.
この項目に関しても,よく質問が来る点などについて,実際の問題文の補足説明(問題文が何を意味しているのであるかとか,問題文や解説文のどの部分が重要事項であるのかなど)に関して説明してきます.
地盤調査とは,基礎の設計や施工に必要な資料(敷地の地層,土質,地下水位,地盤の支持力と沈下量)を調べることを指します.
地質と地盤について
地盤は様々な土質が長い年月を経て形成されたもので,その生成の年代によって,第三期層,洪積層,沖積層などと呼ばれます.
沖積層とは,約1.5万年~現在までの沖積世に堆積した新しい層を指します.硬く締まるだけの時間が経過していないので,地盤としては軟弱です.
洪積層とは,約1.5万年以前の洪積世に生成された地盤を指します.古い地層ほど地盤としては密実であり,支持地盤として期待できます.
調査間隔,調査地点及び調査深さは,事前(予備)調査から想定される地盤状態と建物の規模・種類に応じて求めます.
直接基礎と杭基礎とでは,調査深さが異なるので,それぞれ覚えましょう(問題コード01051).

地盤調査の種類について
地盤調査の種類としては,大きく分けて,ボーリング,原位置試験,土質試験,透水試験という4種類に分けることができます.
ボーリングとは,地中に孔をあけ,土のサンプルを採取して地層の構成を調査すること,及び原位置試験を行うための孔を作る作業のことを指します.
原位置試験とは,現場で行われる調査方法のことで,標準貫入試験(静的サウンディング),サウンディング(静的サウンディング),平板載荷試験,孔内水平載荷試験,杭の鉛直載荷試験,常時微動測定,弾性波速度試験(PS険層)などが挙げられます.
土質試験(現場で採取したサンプルを用いて行われる室内試験)は,物理試験と力学試験に分類されます.
粘性土に関する試験項目
地盤構成を調査する試験方法には,粒度試験,含水比試験,液性限界,塑性限界試験などがあります.
地盤の支持力算定のために行う土のせん断強さを調査する試験方法には,1軸圧縮試験,3軸圧縮試験,ベーン試験,ダッチコーン,平板載荷,杭の載荷試験などが挙げられます.
地盤の沈下量算出のために土の圧縮性を調査する試験方法には,圧密試験,液性限界試験,含水比試験などが挙げられます.
地下水の状況の調査には,圧密試験,透水試験,間隙水圧測定などの調査が行われます.
続いて,上記で分類分けをしたそれぞれの項目について説明してきます.
ボーリングについてボーリングには,ロータリー式,ウォッシュ式,オーガー式,パーカッション式などの種類があります.
ボーリング孔からの乱さない試料の採取位置は,平面的に分散させず,1地点に集中して深さ方向に密に(1m間隔程度)採取します.調査地点は建物中央部にすることが多いことを覚えておきましょう.
ロータリー式ボーリングとは,ボーリングロッドを機械で高速回転させて掘削し,試料を採取します.

ウォッシュ式ボーリングとは,ビットから水を噴出させ,孔の先端の上をチョッピングビットで突き崩して掘り進めます.
オーガー式ボーリングとパーカッション式ボーリングは,以下の図を参照して下さい.


原位置試験について
原位置試験とは,サンプリング(試料採取)をしないで,現地で直接地盤の状態を調査する試験の総称を指します.
原位置試験のうち,標準貫入試験のみ乱した試料が得られます.
また,サウンディングは,動的サウンディングと静的サウンディングに分けられ,一般には,静的サウンディングのことをサウンディングと言います.
標準貫入試験(動的サウンディング)とは,ボーリング孔を利用して,原位置における土の硬軟,締まり具合の相対値を知るためのN値を求める試験で,最も広く使われている試験です(問題コード01054ほか).


N値の判定として
1.砂質地盤では,N値から土の締まり具合を測定することができます.粘性土地盤でも利用できますが,砂質地盤ほどよい結果は得られません.
2.N値が同じでも,地耐力は砂質土より粘性土の方が大きいです.
3.簡易粒度試験を行い,砂質土・粘性土の判別を行います.
N値に関する注意点として
1.径10mm以上の礫の存在により,N値が実際の地耐力より大きく出ることがあります.
2.不透水層以下の被圧水がボーリング孔より噴出して,砂層が緩み,N値が小さく出ることがあります.
3.相対密度の「密な」,「非常に密な」砂は,ロッドが長くなるほど,曲がりや揺れのためにN値が大きく出る傾向があります.
4.相対密度が「緩い」砂は,ロッドが長くなると,ロッドの質量の影響が大きくなるので,N値が小さく出る傾向があります.
サウンディング(静的サウンディング)とは,ロッドの先端に取り付けた抵抗体を地盤中に挿入し,貫入・回転・引抜などに対する抵抗より,地盤の硬軟・締まり具合・土層の構成などの地盤の性状を調査する方法を指します.
代表的なものにスウェーデン式貫入試験,オランダ式二重管コーン貫入試験,ベーン試験などがあります.




地盤の許容応力度は,平板載荷試験による降伏荷重の1/2の数値,又は極限応力度(極限支持力)の1/3の数値のうちいずれか小さい方の値となります.

孔内水平載荷試験(LLT)とは,地震時の杭の水平抵抗,及び基礎の即時沈下を検討する場合に必要な地盤の変形係数を求める試験です(問題コード25053ほか).水平地盤反力係数は,標準貫入試験によるN値から推定することが多いですが,N値が0(モンケン自沈)や1のような非常に柔らかい地盤の場合は,孔内水平載荷試験により求めます.よって,孔内水平載荷試験は,支持杭の支持層などの固い地盤ではなく,柔らかい地盤で行う試験であることに注意しましょう!

杭の鉛直載荷試験は,杭の鉛直支持力を決定するために,又は設計支持力の安全性を確認するために行われる試験です(問題コード13054).

常時微動とは,地盤中に伝播された人工的,又は自然現象による様々な振動のうち,特定の振動源からの直接的影響を受けていない状態での微動振動のことを言います.常時微動測定とは,これを測定して,地盤の振動特性を調べるために行われる試験です(問題コード16055).

弾性波速度検層(PS検層)とは,ボーリング孔を利用して,地盤のP波(プライマリー波,縦波)とS波(セカンダリー波,横波)の速度分布を測定し,その速度値から,地盤の硬軟の判定,及び剛性率,ヤング率などを求めるために行われる試験です(問題コード01052).

土質試験について
土質試験とは,現場で採取したサンプルを用いて行われる室内試験で,物理試験と力学試験に分類されます.
物理試験とは,土粒子の密度・含水比などの基本的な特性を調べ,砂質土・粘性土などの土質判別を行うための試験です.
具体的には,土粒子の密度試験,含水比試験,粒度試験,液性・塑性限界試験,湿潤密度試験などがあります.
力学試験とは,土の強さ,圧縮性,動的性質,及び透水性を調べる試験をいい,通常,「乱さない試料」を対象とします.
具体的には,1軸及び3軸圧縮試験,圧密試験,1面せん断試験などがあります.
ひび割れの入った供試体は,1軸圧縮試験ではなく,3軸圧縮試験を行います(問題コード19053).




■学習のポイント
地盤項目については,構造,施工の両科目で,関連事項が多く出題されていますので,施工項目に限定せず,他の科目の出題と合わせて覚えることをお薦めします.
この項目も,基本的には,合格ロケットに収録されている過去問20年分の「知識」の理解で十分対応可能な項目であると思われます.
頑張って理解しましょう.
12.土工事・山留工事
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分)
地盤調査,土工事・山留工事,地業工事の3項目は,厳密に分類することが難しく,それぞれに関連している項目が見受けられます.構造文章題の地盤,基礎の設計と絡めて覚えていきましょう.
この項目に関しても,よく質問が来る点などについて,実際の問題文の補足説明(問題文が何を意味しているのであるかとか,問題文や解説文のどの部分が重要事項であるのかなど)に関して説明してきます.
根切りについて
手堀りによる掘削に関して次の表を覚えましょう(問題コード15075ほか).

山留め壁の背面に作用する側圧(土圧と水圧との合力)は,一般に,根切りの進行に伴い,土圧は「静止土圧」から「主働土圧」となり,徐々に減少していきます.山留め壁に作用する土圧は,次の3種類あります.いずれも「土を主体」として考えた名称となっています.

各方向の土圧が釣り合っている場合,壁は移動せずに静止の状態にあります.

山留め壁に土圧が働くと,壁が土圧の方へ移動して,構造体が離れる側に移動する状態です.
内部摩擦角が大きい(砂質土)ほど,土が崩れにくいので,主働土圧係数は小さくなります.
主働土圧 = 主働土圧係数 × 土の単位体積重量 × 地表面からの距離

土圧が働いて壁が動こうとするとき,根入れ部分の土が抵抗して,これを押しとどめようとする土の抵抗土圧のことを指します.
受働土圧と鉛直方向の圧力との比を受働土圧係数といいます.
受働土圧係数 > 静止土圧係数(0.5) > 主働土圧係数 となることを覚えましょう.
排水・止水について
被圧水がある地盤における掘削工事では,地下水によって掘削底面が押し上げられたり,地下水が山留め支柱の根入れ部から噴水してボイリングの起こるおそれがあります.そのため,被圧水の水圧をあらかじめ減圧しておく必要がありますね.
それらの排水を行う方法としては,かま場排水工法,ディープウェル工法,ウェルポイント工法などがあります.
以下,順にそれぞれの工法について説明してきます.

かま場と呼ばれる集水ピットに水中ポンプを設置して揚水する工法です(問題コード13225).
地下水の少ない地盤での根切り工事に適しています.
地下水位を低下させる工法ではなく,掘削溝内に湧き出てきた地下水を排水する工法です.
湧水のある安定性の低い地盤では,ボイリングを発生させ地盤を緩めることがあるため適しません.

径25~40cmのストレーナー(開口)の付いた管を土中に挿入し,ポンプで揚水する工法です(問題コード27064).
集水効果をあげるために,管の周囲に砂礫層を設けます.
地下水位低下は30mを超えます.


先端にウェルポイント(集水管)を取り付けたライザーパイプ(6~7m)を地下水面下に多数打ち込み(1~2m間隔),真空ポンプで地下水を強制的に揚水する工法です(問題コード25061ほか).
粘性土地盤より,砂礫層からシルト質細砂層地盤に適しています.
また,1段のウェルポイントによる地下水位低下の限界は,空気漏れにより真空度が低下するので,ヘッダーパイプから4~6m程度と言われています.
地下水の低下によって周辺の井戸枯れや地盤沈下,あるいは地下水塩水化などが問題により排水工法が適用できない場合には,以下に示す止水工法が採用されます.
止水工法とは,根切り周辺部に止水性の高い壁体などを構築し,根切り部への地下水の流入を遮断する工法です.

山留工事について
根切りによって掘削面には側圧が働き,根切り底には周囲からの土や水が回り込もうとします.このような作用に対して安全に工事を進めるために山留めを設けます.
山留め工法について,まとめてみましょう.
1.山留め壁のないもの
のり付けオープンカット工法とは,掘削区域の周辺に斜面をとって,山留め壁や支保工なしで掘削する工法です.

のり面(掘削・盛土などの斜面のこと)を長期間存置する場合は,水の浸食や乾燥によって破壊しないように養生し,のり面の表面を雨水や地上の雑排水が流れ,表面を崩していくおそれのある場合には,ラスモルタル塗,ショットクリート(モルタル,又はコンクリートを圧縮空気により管路で輸送し,先端のノズルから高速で吹き付ける工法),アスファルト吹き付けなどの方法で表面を保護します.
のり面を短期間存置する場合は,シートなどで養生します.
支保工などの障害物がないため,施工能率が良い工法です.
2.山留め壁の分類について
1)親杭横矢板工法(問題コード27061)
親杭横矢板は,H形鋼,I形鋼,レールなどの親杭を計画された山留め壁線上に所定の間隔(通常1~2m)で建て込み,根切りの進行に伴って横矢板を親杭間にはめ込んでいき,山留め壁を形成する工法です.
止水性はないので,地下水の多い敷地には不適当です.


親杭横矢板工法が適用しやすい地盤としては,
・中ぐらい以上の硬さをもつ粘性土層
・よく締まった砂層,又は礫層
・地下水のない砂層,又はウェルポイントで排水可能な状況にある砂層
親杭横矢板工法が適用しにくい地盤としては,
・非常に軟弱な粘土層,又はシルト層
・排水が完全にできない砂層
2)シートパイル(鋼矢板)工法,鋼管矢板工法
シートパイル,及び鋼管矢板工法は,シートパイルの1枚1枚を連続して打ち込むことにより,止水性のある山留め壁をつくるものであり,施工性にも優れており,従来から軟弱地盤や地下水の多い地盤,水中の仕切りなどに用いられています.


材料自体が不透水性であり,ジョイント部の噛み合わせが正確であれば,水密性があるため止水壁として利用できます.ただし,トレンチシートパイルは水密性に難点があること,及び礫層などの硬質地盤を打ち抜くことができないことに注意しましょう.
3)ソイルセメント柱列山留め壁工法
地盤オーガーで掘孔しつつセメント系注入液を孔中に注入し,原位置土と混合・攪拌し,オーバーラップした掘削孔に応力材(H形鋼など)を適切な間隔で挿入することで柱列状の山留め壁を造るものであり,SMW工法(Soil Mixing Wall)が有名です.

4)場所打ち鉄筋コンクリート山留め工法
この工法は,形状により柱列工法,壁工法の2つに分けられます.いずれの工法も現場において地中に孔(壁工法は細長い壁状の孔)を設け,その中に鉄筋かご,あるいは鋼材を建て込み,続いてコンクリートを打ち込んで,そのまま山留め壁とするものです.この山留め壁を建物の一部として使用する場合もあります.


使用条件と山留め壁の選択基準の目安についてまとめてみましょう.

3.支保工のないもの
1)自立山留め工法
山留め壁を根切り外周に自立させ,切梁などの支保工を使用せずに施工するので,障害物がなく施工能率が良い工法です.

山留めかべを根入れ部分で支持された片持ち梁として扱うため,親杭,鋼矢板の根切り底以下の硬質地盤への根入れ深さの検討が重要です.
一般的に,浅い掘削に限定されます.
2)段逃げ山留め工法
自立山留め工法を複数の段階に設けたもので,上段の根入れ部の耐力の取り方が問題になりますが,障害物がないので施工性能は良い工法です.

4.支保工のあるもの
1)水平切梁工法
側圧を水平に配置した圧縮材(切梁)で受ける最も自然な一般的工法です.

切梁を格子状に組み,水平面内の座屈を防止するとともに,支柱を切梁の交点近くに設置して,上下方向の座屈を防ぎます.
切梁の間隔を大きくとるので,腹起こしの補強や切梁の座屈止めを兼ねて火打ちをとります.
2)アイランド工法
山留め壁に接してのり面を残し,これによって土圧を支え,中央部をまず掘削して構造物を築造します.この構造物から斜め切梁で山留め壁を支えながら周辺部を掘削し,その部分の構造物を築造する工法です.

浅く広い掘削に適しています.
水平切梁工法に比べ,切梁の長さが短いので,切梁の変形が少なく,切梁材と手間を軽減できます.
軟弱地盤では,中央部での掘削が危険であるため適しません.
3)トレンチカット工法
軟弱地盤で大規模掘削を行う場合で,同時に全体の根切りができないとき,山留め壁を根切り場周辺に2重に設けて,その間を先行掘削し(トレンチ),外周地下構造体を土留めとして利用しながら,中央部分を施工する工法です.

アイランド工法と同様に,根切り面積が大きく,かつ浅い場合に適用され,軟弱地盤が厚く堆積し,広い面積の根切りによるすべりやヒービングの対策として有効です.
4)逆打ち(さかうち)工法
山留め壁を設けた後,本体構造の1階床を築造して,これで山留め壁を支え,1階床を逆打ち支柱で支えながら下方へ掘り進み,地下各階床,梁を支保工にして順次掘り下がりながら,同時に地上部の躯体工事も進めていく工法です.

工期の短縮ができます.
構造体を地下工事の仮設に使用できます.
5)地盤アンカー工法
重機により削孔を行ってから,その先端にアンカー体を設けて,引張材を介して山留め壁に作用する側圧をアンカーの引き抜き抵抗によって支える工法です.

切梁がないため大型機械が利用でき,作業能率が良くなります.
のり付きオープンカット工法,自立山留め工法が不可能な場合や,敷地が傾斜していたり,大きな偏土圧(片側土圧)が作用する場合に利用します.
アンカーへの緊張力の導入は,注入材の所定の強度発現を確認した後で,山留め壁の変形などを考慮して,相隣するアンカー数本を段階的に行います.
腹起こし,切梁,支柱の設置に関する注意事項を列記しますので,しっかり覚えましょう.
・山留め壁に使用する鋼材,及びリース形鋼材の許容応力度は,長期許容応力度と短期許容応力度の平均値以下の値とします(問題コード14071).
・腹起しブラケットは,腹起しをバランスよく設置できるように,腹起し1本に対して2本以上取り付けます.
・腹起しの継手は,曲げ応力の小さい位置に設けます.
・切梁の継手は,はずれや座屈を生じないように確実に緊結します.また,継手やジャッキ挿入部は構造的な弱点になりやすいので,原則として,切梁支柱(切梁交差部)の近くに設けます.
・土圧の計測は,一般的に,山留め切梁にかかる軸力を盤圧計によって行います.
・支柱の配置は,切梁の交差部ごとに設置することを原則とします.
・切梁の軸力の測定は,土圧が降雨,積載物,気温などにより変化するので,1日に3回は定時測定します.
異常現象として,ヒービング,ボイリング,パイピング,クイックサンド,盤ぶくれなどがあげられます.
1)ヒービングとは,N値がほとんどゼロを示すような沖積粘土が厚く堆積しているような軟弱地盤における掘削工事では,掘削場内外の地盤の重量差により,山留め壁背面地盤が陥没沈下し,掘削場内へ回り込む現象を指します.

ヒービングの対策としては,次の方法があります.

剛性の高い山留め壁をヒービングのおそれのない良質地盤まで根入れをして,山留め壁の沈下,移動を抑えます.

掘削位置に近接してヒービングに影響する構造物がある場合,構造物の荷重を良質地盤に直接伝達させ,ヒービングの破壊モーメントに影響させないようにアンダーピニングを行います(問題コード15074).
2)ボイリングとは,高い圧力を有する上向きの浸透流によって,砂の粒子が沸き立つように激しく持ち上げられることにより,砂がせん断強さを失う現象です.
根切り底付近に地下水を含んだ砂質地盤がある場合,湧水の排水工法をかま場工法とすることは,掘削場内外の大きな地下水位(水頭)差による,砂質地盤の掘削底面付近の上向きの浸透流を呼び起こす原因となるため,極めて危険です.

ボイリングの対策としては,次の方法があります.


3)盤ぶくれとは,掘削底が不透水層で,その下部に被圧水(水頭がその帯水層の上面より高い地下水)を含む透水層がある場合,上部の不透水層の重量が被圧水圧より小さいため押し上げられる現象です.

盤ふくれの対策としては,次の方法があります.


4)パイピングとは,水位差のある砂質地盤中にパイプ状の水みちができて,砂混じりの水が噴出する現象です.

5)クイックサンドとは,掘削底面付近の砂質地盤に上向きの浸透流が生じ,この水の浸透力が砂の水中での有効重量より大きくなり,上向きの水流によって砂粒子が水中で浮遊する現象です.

■学習のポイント
問題コード15071のリチャージ工法に関して補足説明します.
リチャージ工法(復水工法)とは,ディープウェルなどと同様の構造のリチャージウェル(復水井)を設置して,そこに排水(揚水)した水を入れ,同一の,あるいは別の帯水層にリチャージ(水を返還)する工法です.

周囲の井戸枯れや地盤沈下などを生じるおそれのある場合の対策として有効です.
構造,施工の各科目で,関連事項が多く出題されていますので,施工項目に限定せず,他の科目の出題と合わせて覚えることをお薦めします.
この項目も,基本的には,合格ロケットに収録されている過去問20年分の「知識」の理解で,十分対応可能な項目であると思われます.
頑張って理解しましょう.
13.地業工事
地盤調査,土工事・山留工事,地業工事の3項目は,厳密に分類することが難しく,それぞれに関連している項目が見受けられます.構造文章題の地盤,基礎の設計と絡めて覚えていきましょう.
この項目に関しても,よく質問が来る点などについて,実際の問題文の補足説明(問題文が何を意味しているのであるかとか,問題文や解説文のどの部分が重要事項であるのかなど)に関して説明してきます.
まずは,用語の説明からしていきます.
地業とは,構造物の基礎を支える土もしくは地盤を上部に固めるための作業のことの総称です.
よって,地業工事とは,基礎構造のうち,それを支えるために直接地盤に行う部分のことを指します.
地業工事の施工に関して,監理者の立会いが必要な時を以下に示します.
1)施工試験,載荷試験の時
2)工事現場に搬入された杭,セメント,ベントナイトなどの材料検査の時
3)既製杭の打ち込み工法で,打ち止め位置を決定する時
4)場所打ちコンクリート杭および既製杭埋め込み工法において,掘削が所定の深さに達した時
5)床付け面の確認を行う時
6)設計図書に記載のない障害物などが発見された時
7)監理者が必要と認められた場合,又は立会いを求められた時
続いて,基礎の種類について説明します.
基礎とは,建築物の荷重を支持地盤に伝える最下部構造をいい,基礎スラブと杭とを総称したものを指します.
基礎スラブとは,上部構造からの荷重を直接,又は杭を介して支持地盤に伝える構造部分を指します.フーチング基礎ではフーチング部分,べた基礎ではスラブ部分を示します.
基礎構造は,直接基礎形式と杭基礎形式とに分類されます.
直接基礎形式は,更にフーチング基礎とべた基礎とに分類されます.


杭の支持方法としては,支持杭と摩擦杭に分類できます.
支持杭とは,軟弱な地層を貫いて硬い支持層に到達し,主として杭の先端支持力で支持する形式です.
摩擦杭とは,主として杭の周辺摩擦力で支持する形式です.

杭の分類と杭基礎の先端の地盤の許容応力度の比較表を見てみましょう.

杭の支持力は許容応力度が大きいほど大きくなりますので,
打ち込み杭 > 埋め込み杭 > 場所打ち杭 となります.
既製コンクリート杭の種類は

のようになります.
くいの先端部の形状として

のような種類があります.
一般に,打ち込み施工には平坦,又は凹形の閉そく形が多く用いられ,高強度プレストレストコンクリート杭の場合,硬い地盤に打ち込んだときに杭先端部の破損が少ないと言われる平坦形を原則とします.
セメントミルク工法では,孔壁の崩落防止のために閉そく形のペンシル形を用い,種々の中堀り工法では開放形が用いられます.
既製コンクリート杭の施工方法の種類は

のように分類できます.
打ち込み工法の杭の中心間距離は

のようになります.
打撃工法(杭頭をハンマーで打撃し,支持層に杭先端を貫入させ,支持力を発現させる工法です)の施工の流れは

のようになります.
プレボーリング打撃併用工法(中小径の杭で硬い中間層を抜く場合や,騒音振動を軽減し,杭の貫入を容易にする場合などに使用されます)の施工の流れは

のようになります.
埋め込み工法の杭の中心間距離は

のようになります.
プレボーリングによる埋め込み工法(セメントミルク工法)の施工の流れは

のようになります.
セメントミルク工法の特徴,注意点として,以下のものが挙げられます.
1)アースオーガーによってあらかじめ杭径より大きく(杭径+100mmが標準)掘削します.掘削中は孔壁の崩壊を防止するために安定液(ベントナイト)をオーガー先端から噴出します.
2)孔が所定の深度に達したあと,根固め液に切り替え,所定量を注入し,オーガーを正回転でゆっくり引き上げながら必要に応じて杭周辺固定液を充填します.
3)杭を掘削孔内に建て込み,圧入または軽打し支持層に定着させ,根固め液と杭周辺固定液の硬化によって,杭と支持層との一体化を図り,支持力を発現させます.
4)杭は建て込み後,杭心に合わせて保持し,7日程度養生を行います.
5)支持層の掘削深さを1.5m程度とし,杭を支持層中に1.0m以上根入れします.また,高止まりは0.5m以下とします.
6)先端閉そく杭を使用するので建て込み中,杭に浮力が作用し,杭の自重のみでは沈設が困難となる場合には,杭の中空部に水を入れて重量を増すことで杭を安定させることが必要です.
ベントナイトとは,微細粘土で水を吸収して著しく膨張したもので,孔壁の保護に使用されます.
セメントミルクとは,ベントナイトと水を十分に混合した後にセメントを加えて練ませたものです.
杭周固定液とは,杭の周面摩擦力や水平抵抗を確保するために,杭長が長く,周辺地盤が軟弱な場合に用いられる液体です.
根固め液とは,杭を支持層に固定し,先端支持力を確保するために,必ず杭の先端位置から安定液を押し上げるように注入します.
ベントナイト液は使用できません.
鋼杭に関する特徴や注意事項を説明します.
1)強い打ち込みに耐えられ,締まった中間層の貫通も可能です.
2)曲げに強く,水平力を受ける杭に適します.
3)単管の溶接によって,長さの調節が容易で長尺杭として使用できます.
4)曲げに強いので(コンクリート杭より)運搬,取り扱いが簡単です.
5)腐食に対する検討が必要です.
6)杭の先端形状には,開口杭と閉口杭とがあります.

鋼杭の施工方法に関してまとめてみましょう.

鋼杭の中心間隔は


現場打ちコンクリート杭の施工方法に関してまとめてみましょう.

ここで,ケーシングとは,掘削孔壁の崩壊を防止する鋼製のチューブのことです.
安定液とは,孔壁保護を主に目的とする溶液で,通常,ベントナイト溶液が使用されます.
オールケーシング工法(ベノト工法)とは,杭の全長にわたりケーシングを振動(または回転),圧入しながら,ハンマーグラブをケーシング内に落下させて,内部の土砂を掘削,排土完了後,一次スライム処理を行い,鉄筋かごを掘削孔内に建て込みます.
次に二次スライム処理を行い,トレミー管によりコンクリートを打ち込みながらケーシングを引き抜き,杭を築造します.
アースドリル工法に比べて,一般にスライムが少ない工法です.

コンクリート打設時のケーシングの引き抜きは,その下端をコンクリート内に2m以上入った状態を保持しながら行い,トレミー管もコンクリート内に2m以上入った状態を保持します.
リバースサーキュレーション工法とは,ドリルパイプの先端に取り付けた特殊な回転ビットを地上に設置したロータリーテーブルでゆっくり回転させて地盤を掘削し,掘削した土砂は孔内水とともにサクションポンプなどで地上に吸い上げ排出します.
孔壁の保護は,表層部をスタンドパイプで,以深は水を用い,静水圧を0.02N/mm2以上に保つことで孔壁の崩壊を防ぐ工法です.地下水との水頭差を2.0m以上保つようにします.
掘削完了後,一次スライム処理を行ってから,掘削孔内に鉄筋カゴを建て込みます.
次に二次スライム処理を行って,トレミー管を用いてコンクリートを打ち込み,杭を築造します.


アースドリル工法とは,アースドリル機のケリーバーに取り付けたドリリングバケットを回転させながら地盤を掘削し,掘削土砂をバケット内に収納し,バケットとともに地上に引き上げて排出します.
掘削壁は,ケーシングを表層にのみ使用し,以深はベントナイトなどの安定液で保護します.
掘削完了後はリバースサーキュレーション工法と同様です.


現場打ちコンクリート杭の各工法の特徴はこちら(13_kuihikaku.pdf)を参照してください.
コンクリートの打ち込みは,トレミー管内のコンクリートの逆流や泥水の侵入を防止するため,コンクリート底部から押し上げるように打設します.
トレミー管へ最初にコンクリートを投入する際は,プランジャー方式と底ぶた方式があります.

現場打ちコンクリート杭の杭の中心間隔は


ここで,各杭の杭の中心間隔や施工精度に関してまとめてみましょう.

地盤改良地業とは,地盤の支持力を増大させたり,地盤の沈下を抑制するために,土の性質を改善することを目的として,土の締め固め,固化,強制圧密,置換などを行う基礎地業のことを指します.
地盤改良工法の分類についてまとめてみましょう.

締め固め工法とは,軟弱な砂質土地盤に適用される工法で,支持力が大きく,液状化の起こりにくい安定した地盤に改良する工法です.
締め固め工法は,バイブロフロテーション工法とサンドコンパクションパイル工法(砂圧入工法)とに分類できます.
バイブロフロテーション工法とは,棒状振動体を地中に振動貫通させて,ゆるい砂質土地盤を締め固めるとともに砕石など粗骨材を充填し,透水性の良い粗骨材の柱(直径600mm程度)を地中に造成します.

サンドコンパクションパイル工法(砂圧入工法)とは,砂質土地盤(粘性土地盤に用いることもあります)に対して衝撃や振動により砂を圧入し,直径700mmほどの締まった砂の柱を造成します.
土のせん断強度と密度を増大させ締め固める工法です.
砂の代わりに砕石を用いるグラベルコンパクションパイル工法もあります.


強制圧密工法とは,粘性土地盤の圧密を短期間で終了させる工法で,地盤中に含まれている間隙水を強制的に排水して地盤の沈下を起させ,土のせん断強さを増大させて,支持力の大きい安定した地盤に改良する工法です.
強制圧密工法では,サンドドレーン工法を覚えておきましょう.
サンドドレーン工法とは,軟弱な粘土層に砂や砂利を使用したドレーンを築造する工法です.軟弱な粘土層に砂杭を多数つくり,粘土層中の間隙水を短時間に砂杭を通して脱水させ,圧密を強制的に行います.その際,砂杭上の地盤に砂を敷き,その上から盛土による荷重をかけることで,砂杭にに集まった間隙水は上昇し,地盤面上の砂層を通じて流出させます.
打ち込み式(深度30m程度)とウォータージェット式(深度20m程度)があります.


最後に固化方法について説明します.
浅層混合処理工法と深層混合処理工法とに分類できます.
浅層混合処理工法とは,固化材(土粒子間に化学的結合を与える目的で混合するもの)の添加方式には,粉体方式とスラリー(原料の粘土と石灰石の粉末を水で一緒に練混ぜた泥状態のもの)方式があり,混合作業を行う位置によって,原位置混合方式と別途混合方式に分かれます.

深層混合処理工法とは,地中に供給した固化材を攪拌によって強制的に混合する機械式攪拌方式と,スラリー状の固化材を高圧噴射して混合する噴射攪拌方式があります.
注入した固化材の全てが改良対象地盤と混合されて改良体となるわけではなく,10~30%が未固結のままスライムとして地表に戻るので,産業廃棄物として処理します.



施工上の注意点を説明します.
1)固化材は,吸湿により変質しやすいので,最大3日分のストックとします.
2)7日程度の養生期間を設けた方がいいです.
3)浅層混合処理工法では,固化材を混合させてからローラーによる転圧を行いますが,過剰転圧とならないように注意します.
4)浅層混合処理工法の改良効果の確認は,一般に,一軸圧縮強度,平板載荷試験によります.
5)深層混合処理工法の改良効果の確認は,一般に,一軸圧縮強度によります.
■学習のポイント
平成19年の問8は,4選択肢が新問題でした.その中に正答肢がありましたので,非常に難しい問題として出題されました.
構造,施工の各科目で,関連事項が多く出題されていますので,施工項目に限定せず,他の科目の出題と合わせて覚えることをお薦めします.
過去問20年分の「知識」で対応できる問題については,頑張って理解しましょう.
02. 給排水・衛生設備
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分30秒)

●公共下水道における排水方式の場合
次に,「23153」「01153」について,まず,給湯設備には,循環式(二管式)と単管式の2種類があります.循環式の場合,給湯管内に,常に湯を循環させているため必要なときにすぐに湯(給湯)を得ることができますが,単管式の場合は,加熱装置からの給湯管が直接,水栓に接続されているだけなので,使用開始後(加熱開始後)は,しばらくは水が出てきます.最下階にあるボイラーなどの加熱装置によって暖められた湯は,給湯管により各水栓器具へと導かれますが,時間の経過と共に熱が失われ,湯の温度が下がってしまいます.そのため返湯管を設け,温度が下がった湯を再び最下階にあるボイラーなどの加熱装置へと導き,再加熱した後,再び,給湯管へと送り出します.これが循環式のシステムとなります.
■学習のポイント
03.空調設備
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分)
この項目を学習する前に,合格ロケットの解説集として収録されている「冷凍機の解説」をお読み下さい.圧縮冷凍機,吸収式冷凍機のしくみが分かるようになります.ここでのポイントは,「熱を運搬する冷媒の役割」と「冷却水・冷水の役割」です.これらの基本をきちんとマスターする事が,応用問題へと繋がっていきます.
問題コード26134に,「三方弁制御」は「定流量方式」,「二方弁制御」は「変流量方式」とあります.ここで,冷凍機系のシステムについてご説明しておきましょう.冷凍機系のシステムは,冷凍機によって冷やされた冷水が,冷却コイルに流れ込み,冷却コイルへと送りこまれる導入外気を冷やすことで,冷風を作り,その冷風を送風機によって室内へと送り出すことで空調を行います(夏に空調機から冷風が吹き出されるイメージです).
尚,冷却コイルによって冷風を作る際に,導入外気から奪った熱によって冷却コイル内の冷水は暖められます.暖められた冷水は冷凍機へと循環され,再び,冷水として冷却コイルへと送りこまれます.その際,冷凍機から冷却コイルへと送り出される水の量は,常に一定(定流量)です.しかしながら,冷風を作る量が少なくてすむ場合には,冷却コイルへと送る冷水量は少なくした方が省エネ化が図れます.
そこで,「三方弁」の場合,冷却コイルへと送り出される冷水と,そのまま三方弁を経由して冷凍機へと送り返される冷水とに分けることが可能です.このように冷凍機から送られてくる冷水のうち,必要な分だけを冷却コイルへと,残りを冷却コイルへと送り出さずに冷凍機へと送り返す役割を果たすものが「三方弁」となります.そのため,「定流量方式」と呼ばれています.
一方,「二方弁」は,配管を流れる冷水量を変化させることが可能です.冷却コイルへ冷水を送る需要が小さい場合は水量を少なく,需要が大きい場合は,水量を多くすることができます.それゆえ,「変流量方式」と呼ばれます.これは,搬送エネルギーを小さくする事(つまり省エネ)に繋がります.問題コード26134,30191,25123と続きますが,それぞれ問われ方が異なります.特に,この空調設備の項目は,同じ題材を,違う言い回しで問われる事が多いので,それを意識して勉強してください.
次に,問題コード01112について説明しておきましょう.これは,製図試験にも絡む話です.製図試験において,課題文中に「空調は単一ダクト方式とする」と記載されていた場合,機械室の上部に,「DS(=ダクトスペース)」と呼ばれるスペースを設けます.これは,機械室で作られた冷風や,温風を建物内の各室へと送り出すためのダクトを設置するためのスペースです.送風機から送られているダクトは,事務室にしか接続されていませんが,本来は,各階の各所室へとダクトが接続され,冷風・温風を送り出すことで空調しています(次図参照).
DSは,「2×2=4㎡」,「2×3=6㎡」程度とし,各階同じ位置(場合によっては若干ずらすことが可能)に設け,下階に位置する機会室に通じるよう計画します .
上図のように,機械室から伸びる縦ダクトが,各階ごとに天井裏で横引きされ各所室の空調を行います.これが,単一ダクト方式の原理です.また,製図試験の課題文中に,「空調は,個別空調方式とする」と記載されることもあります.その場合は,いわゆる「エアコン」をイメージして下さい.各室ごとにエアコンが設置されていて,各室ごとに空調を行うもので,DSは必要としません.こうした製図試験にも絡む話は,「教育的ウラ指導」の「公開資料」をご活用ください.【こちら】 .
さて,話が長くなってしまいましたが,「VAV空調方式」は,「変風量単一ダクト方式」のことで,一定に保たれた送風温度を吹出し,空気の風量を変えることによって温度調整し,室温を制御する方式でです.「部屋ごと又はゾーンごとの温度制御も可能」という事は,その装置は,吹き出し口の近くにある事をイメージする事ができるでしょう.
次に,問題コード21131の「FCU(ファンコイルユニット)」について.「ファンコイル」とは,個別空調の一種だと考えて下さい.これは,室内に設置したファンコイルユニットに冷温水を供給することで空調を行う方式(水方式)なのですが,その際,ファン(送風機)に送りこむ導入外気を確保できない場合には,室内空気を循環させることで空調を行います.空気汚染を引き起こす原因にもなり得るため,その場合,換気計画に配慮する必要があります(通常の換気量に加えて,ファンコイルによって空調する際に必要となる換気量(導入外気量)分を確保する).尚,空調設備に関する用語を調べる場合は,「日本冷凍空調学会」の「用語集」を紹介します(深入りしない程度に).【こちら】
■学習のポイント
冷房時には,空調機の冷却コイルで,室内からの①と外気からの②との混合空気③を冷水コイルで冷却除湿し④,送風機の顕熱取得分だけ温度上昇した空気⑦を室内に吹き出します.暖房時には,室内からの①と外気からの②との混合空気③を温水コイルで⑤まで加熱し,蒸気加湿器によって⑥まで加湿した後,送風機の顕熱取得分の温度上昇⑦を考慮し,室内に吹き出します.これを湿り空気曲線図で表すと以下の図のようになります.

この問題では,比較的容易な正答となっていましたが「システムの中のどこの話なのか,どのタイミングの話なのか」を考える事が非常に重要です.是非,意識して学んでください.
04.電気設備
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分)
次に,問題コード27171を見て下さい.その解説の中で単相3線式について説明しています.先の説明で「低圧」という言葉が出てきましたが,解説にある図のように電灯や冷蔵庫などの一般電化製品は,100Vで,IHクッキングヒーターなどは,200Vで使用します(オール電化住宅では必須アイテムですね).このように,実際の家電は,100V,200Vといったレベルの電圧で使用するように作られているため,その際の電圧を「低圧」といいます.単相3線式については,解説にある図のようなイメージで考えて下さい.3本の線があり,一番上の線と一番下の線を繋げば,200Vの電気を取り出すことができ,一番上の線と,真ん中の線とを繋げば100Vの電気を取り出せすことができるといったイメージです.三相3線式の場合も先ほど同様に,3本の線がありますが,電位差はそれぞれ200Vであるため,100Vの冷蔵庫を使用する場合には,小型トランス(変圧器)により,100Vに減圧させて使用せねばなりません.尚,「単相」と「三相」の違いについては,「単相」は,住宅・事務所などで使用される一般用,「三相」は,モーターなどの動力がある建物(工場など)において,動力用として使用されるものと覚えておいて下さい.
■ 学習のポイント
05.省エネ
ここでは「熱負荷」や,「空調負荷」などといった「負荷」という用語が出てきます.この「負荷」という言葉の意味を分かりやすく説明すると「やりとりする量」となります.例えば,「熱負荷」といった場合は,「熱をやりとりする量」となります.例えば,室内を考えた際に,窓などの建物外周部(いわゆる外壁部分)は,常に外気に接しているため熱負荷が大きくなります.冬季の場合で考えれば,室内で暖められた空気が外壁部分に接すると熱を奪われてしまいます.(ちなみに,そのとき熱が奪われてしまうことを防ぐために,断熱材を設置します.)
例えば,建物外周部で,熱が奪われてしまうと室内温度が下がってしまうため,その分,再び,空調などによって暖かい空気を作り出さねばなりません.そこに「熱のやりとり」が発生するのです.つまり,「熱のやりとり」とは,ある部分で熱が奪われてしまうため,その分,室内に熱を送り込まなければならないという意味です.当然のことながら,その分,熱を新たに作るためのエネルギーも消費します.
冷房時,夏の日射は「冷房負荷」を大きくする要因になります.一方,暖房時,冬の日射は「暖房負荷」を小さくする要因になります.「内部発熱」も同様ですね.
「エネルギー負荷の低減」は,設備においては大命題です.
これらの話を元に,省エネの項目にある「空調」に関する問題を見て行ってください.また「氷蓄熱」や「水蓄熱」について,わかりやすく解説しているサイト「ヒートポンプ・蓄熱センター」の「蓄熱WEB講座」をご覧ください.【こちら】
また「自然エネルギーの活用」や「エネルギーの有効利用」という観点から、多くの用語が出題されています.
■学習のポイント
一問一答形式で,ただ「○」か「×」か、だけで終わるのではなく、上記の「エネルギー負荷の話だな」という「大枠」や「分類」を意識してみてください.
省エネルギーに関する用語,例えば「CASBEE」「BELS」「ZEH」など,まずは一通り,過去問の問題と解説をなぞっていきましょう.そのうちに,特に気になったものはネットで調べてみてください.「用語と解説の1対1対応」よりも,捉えやすくなるものもあります.ただし,この時も,細かい内容を全部覚える必要はありません.過去問を先に触れてから(特に2巡目以降)見てみると,試験に「必要な情報・不要な情報」が振り分けられるはずです.
02.コンクリート
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約6分)
コンクリートに関しては,1「強度」,2「ヤング係数」,3「線膨張」,4「コンクリートの性質」,5「混和剤」,6「特殊コンクリート」,7「品質管理」の7項目からなっていることがわかると思います.
以下に重要ポイントを羅列します.
まずは,コンクリートを構成しているセメントや骨材についての種類や性質を理解しましょう.続いて,コンクリート自体の性質を理解しましょう.
セメントに水と空気とが混ざったものがセメントペースト,セメントペーストに細骨材(砂)が混ざったものがモルタル,モルタルに粗骨材(砂利)が混ざったものがコンクリートですね.
合格ロケットアプリの施工科目のコンクリート工事の解説集も参考になります.
各種セメントの特性や主な用途に関しては,まとめておくようにしてください.
セメントは,大きく分けて,ポルトランドセメントと混合セメントに分類できます.ポルトランドセメントとして普通ポルトランドセメント,早強ポルトランドセメント,中庸熱ポルトランドセメントが,混合セメントとして高炉セメント,フライアッシュセメント,シリカセメントとがあるというような分類で構いません.それぞれのセメントの主な用途に関してまとめておきましょう.
混合セメントとは,普通ポルトランドセメントに各種混合材を混ぜたものを言います.
また,セメントの性質として,セメント粒子が細かい程,強度が早く出て,乾燥収縮が大きくなり,風化が早くなることに注意しましょう.
骨材は,表乾状態で使用するようにします.
通常,コンクリートの圧縮強さとは材齢28日(4週間)の強度を指します.水セメント比と強度の関係に関しても整理しておきましょう.
単位水量を少なくするほど,単位セメント量を少なくするほど,セメントの粉末度が低い(粒子が粗い)ほど,乾燥収縮は減少します.
線膨張係数は,100℃程度まではコンクリートと鉄筋の線膨張係数とがほぼ同じであるため,鉄筋コンクリートとしては,大変有利です.
熱伝導率は1.3~1.4W/m・kで木材などに比べて大きいです.
コンクリートの強度試験で用いる供試体は,細長い形状ほど強度は小さくなります(寸法効果の問題と言います).また,圧縮強度は,ゆっくりと荷重をかけていくより速い速度で荷重をかけた方が高い強度が出ることが分かっています(載荷速度の問題と言います).
コンクリートのヤング係数に関しては,問題コード01283他の解説に掲載してあるように,単位容積重量γと設計基準強度Fcは共に分子にあるため,軽量コンクリートより普通コンクリートの方がヤング係数は大きいことがわかります.また,最大圧縮時と原点を結んだ線ではないことに注意しましょう.
水セメント比の小さいコンクリート,AE剤などの混和剤を用いたコンクリートや早強ポルトランドセメントの中性化の速度は遅いのに対し,高炉スラグやフライアッシュ等の混和材を用いたコンクリートの中性化の速度は速いと言えます.また,屋外よりも屋内の方が中性化率は大きいと言えます.整理して覚えましょう.
軽量コンクリート(骨材の違い)には2種類あり,1種の方が重いことは覚えておきましょう.
アルカリ骨材反応についてもまとめておきましょう.
普通コンクリートのスランプの数値(21cm以下),水セメント比の最大値(65%)や単位水量の最大値(185kg/m3)などの数値は,施工科目でも出題されていますので,整理して覚えてしまいましょう.
問題コード30282のAE減水剤に関する注意事項はかなり専門的です.解説内容をさらっと読む程度にしましょう.
混和剤(AE減水剤など)により,ワーカビリティー(施工のしやすさ)が良くなり,単位水量を減少させることができ,コンクリートの凍結融解に対する抵抗性を増大し耐久性が向上し,中性化に対する抵抗性を増大させることができます.一方で,空気量の増加により若干強度が低下します.
コンクリートの耐久性を向上させるため,単位水量を小さくすると施工性が悪くなります.そのため,流動化剤を加え流動化コンクリートとすることで施工性を向上させる場合があります.高流動コンクリートとは異なるので注意しましょう.
断面寸法の大きな部材に打ち込まれたコンクリートは,セメントの水和熱が蓄積されコンクリート内部の温度が上昇します.このため,コンクリート部材の表面と内部に温度差が生じ,ひび割れが発生することがあります.この問題をどのように制御するのかがマスコンクリートの施工管理の重要ポイントとなります.一般には,コンクリートの打設方法を工夫したり,高炉セメントB種などの混合セメントB種や中庸熱ポルトランドセメントなどを使用したりする方法があります.
最近増えてきた超高層建物などに使用される高強度コンクリートは,火災時において急激な加熱に伴う水分の膨張により爆裂を生じる場合があります.覚えておきましょう.
■学習のポイント
まずは上記,学習ポイントの7項目について知識をまとめて整理して覚えましょう.
そうすることで,合格ロケットに収録されている過去問20年分の「知識」だけで十分,出題問題に対応ができるようになりますよ!
03.鋼材・金属
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分)
今回のインプットのコツでは,鋼材・金属に関して,概要説明をします.
過去問題では,1「鋼材表記」,2「ヤング係数」,3「引張強度」,4「降伏点」,5「降伏比」,6「鋼材性質」,7「高力ボルト」,8「各種鋼材」の8項目からなっていることがわかると思います.
まずは,鋼材の記号とその意味,鋼材の温度と強度の関係,炭素の含有率と強度・伸びの関係を理解しましょう.
SS材(一般構造用圧延鋼材):
SN材が制定されるまでは大部分の建築構造物に使用されていた鋼材で,溶接性は考慮されていません.
SS490材とSS540材は,炭素量を増やして鋼材強度を高めているので溶接性が悪いです.
SM材(溶接構造用圧延鋼材):
溶接性を考慮し,鋼材中の炭素量を減らしマンガン,ケイ素などの含有量を調整したものです.
A種,B種,C種の3種類に分けられ,C種が最も衝撃特性が高い(溶接性が良い)と言えます.
SMA材(溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材):
SM材にクロム,ニッケルなどを添加し,溶接性を考慮しつつ,耐候性を向上させた鋼材のことです.
SN材(建築構造用圧延鋼材):
従来のSS材に代わって建築構造用鋼材として使用されるものです.
A種は,原則として溶接を行わない部材を主用途としています.490N/mm2については現状の需要状況に照らし制定していません.
B種は,柱や梁に広く一般に使用されることを想定した鋼種で,塑性変形能力と溶接性の確保を意図したものです.
C種は,B種の性能の上に板厚方向の特性を規定した鋼種で,ボックス柱のダイヤフラム等板厚方向の性能が重要となる部材を主用途としています.
まとめると,B種,C種は溶接用鋼材として使用できます.
SN400Aは,降伏点の下限のみが規定された鋼材で,通常,小梁や間柱などの二次部材に使用します.A種はシャルピー吸収エネルギーの規定値はありません.
SN400B・SN490Bは,降伏点の上下限,降伏比の上限,炭素当量の上限などが規定されており,降伏後の変形能力や溶接性が保証されている鋼材を指します.シャルピー吸収エネルギーは27J以上とします.なお,シャルピー吸収エネルギーが大きいほど,脆性破壊を起こしにくい材料であるといえます.
SN400C・SN490Cは,溶接加工時を含め板厚方向に大きな引張応力を受ける部材に使用する鋼材のことです.
STKN材(建築構造用炭素鋼管),SNR材(建築構造用延棒鋼),BCR・BCP材(建築構造用冷間成形角形鋼管)に関しては,名称くらいは知識として覚えておいて下さい.
代表的な建築構造用鋼材の鋼材規格仕様一覧はこちら(←別ファイルが開きます).建築構造用鋼材および金属系素材に関する技術資料(日本建築学会)からの抜粋です.
金属材料の応力度-ひずみ度曲線の形状は様々なものがありますが,大きく分類すると,普通鋼のように下図左に示す降伏棚(塑性流れ)のあるタイプと,高張力鋼,ステンレス鋼および極低降伏点鋼のように下図右に示す降伏棚のないタイプに分けられます.
降伏棚のあるタイプでは,上降伏点を降伏点(降伏強さ)としています.降伏棚のないタイプでは,ある規定された永久ひずみεを生じるときの荷重を最初の断面積で割った応力度を耐力(σε)としています.一般の鋼材では,ε=0.2%とし,0.2%耐力を降伏強さとしています.
0.2%オフセット耐力と呼んだりもします.なお,建築構造用ステンレス鋼(SUS304A)では,ε=0.1%としています.

上記説明を具体的に示すと下図のようになります.


これらの図は,建築構造用鋼材および金属系素材に関する技術資料(日本建築学会)からの抜粋です.
鋼材の数値は降伏点ではなく,引張強度の下限値を示します.
SS400→引張強度の下限値が400N/mm2
SM490→引張強度の下限値が490N/mm2
F10TF(S10T)→引張強度の下限値が1,000N/mm2(≒10t/cm2)
棒鋼(鉄筋)の数値は降伏点の下限値を示します.
SD295→降伏点の下限値が295N/mm2(JIS改定により,SD295AとSD295BはSD295に統一されました)
鋼材は,炭素含有量が0.8%前後で強度が最大になりますが,溶接性は低下します.
ヤング係数は鋼材強度の大小に関わらず同じ値となります.
降伏比は,降伏点強度/引張強さのことで,常に1.0より小さくなります.問題コード30293では引張強さ/降伏点強度(分子と分母が逆)として出題されています.注意しましょう.
鋼材の性質として,シャルピー衝撃値とビッカーズ硬さに関しては覚えておきましょう.
各種鋼材としては,アルミニウム,ステンレス鋼,耐火鋼(FR鋼)に関してまとめておきましょう.
アルミニウムのヤング係数や比重は鉄の約1/3であり,融点は鉄の約1/2,熱伝導率は鉄の約3倍です.
■学習のポイント
合格ロケットに収録されている過去問題では約60問(直近10年で約30問,昔の10年で約30問)ありますが,鋼材に関するほとんど全ての性質が網羅されています.
合格ロケットに収録されている過去問題は,きちんとマスターしておいて下さい.
05-1.荷重・外力(地震力以外)
まずは、オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分30秒)
過去問題では,1「積載荷重」,2「風荷重」,3「積雪荷重」,4「土圧・水圧」,5「固有周期」,6「衝撃力」,7「設計用地震力」,8「地下・屋上突出部の地震力」,9「必要保有水平耐力」,10「限界耐力計算」の10項目からなっていることがわかると思います.
ここでは,1「積載荷重」~3「積雪荷重」について,次の「荷重・外力(地震力関係)」では,7「設計用地震力」~10「限界耐力計算」を取り上げます.
1.積載荷重は,人間,家具など,移動可能なものの重さによる荷重で,分布に偏りが生じる可能性があります.
そこで,分布の偏りの考慮して,次の3つの計算において,それぞれ異なる値が定められています.それぞれの大きさは「床計算用>大梁,柱,基礎の計算用>地震力計算用」となります.
小梁の積載荷重は,床計算用と大梁計算用の中間値になります.小梁の形状が小さければ床計算用に,大きければ大梁計算用に近くなります.
積載荷重の具体的な値に関しては,原則は実況応じて計算した値を使うことになっていますが,基準法施行令第85条の表にある用途については,この表の値を用いても良いことになっています.

ポイント1.柱が支える床による積載荷重の低減
よく質問が来る内容に「柱が支える床による積載荷重の低減」に関するものがみられます.

劇場や映画館等以外の場合は,支える床の数が多くなると,その分,積載荷重が平均化され,偏りが小さくなるので,積載荷重を低減することができます.
劇場や映画館等では,「柱が支える床による積載荷重の低減」はありません.劇場や映画館等では,全階満員となり,平均化しても積載荷重の値が小さくならない場合があるからです.
この低減は,通常の構造設計の場合では(安全性の観点から)用いることはほぼないと言えます.
ポイント2.間違えやすい数値
積載荷重の中で間違えやすいのが,上表の(g)(h)の「廊下,玄関又は階段」と「屋上広場又はバルコニー」の取り扱いです.
(g)教室,売場,客席に連結する「廊下,玄関又は階段」については,劇場等の「固定席でない客席」の値とします.
これは,授業が終わった後や,バーゲンの売場,公演終了後には,これらに連絡する廊下や階段には一時的に人が集中します.よって,劇場等の固定席でない客席の大きな積載荷重を用いる必要があります.
(h)学校,百貨店の「屋上広場又はバルコニー」については,百貨店等の「売場」の値とします.
火災等の際に,各階の教室等にいる人が一斉に屋上広場やバルコニーで避難する場合を考えると,住宅の屋上やバルコニーの積載荷重よりも大きな値が必要となるのがイメージできるかと思います.
倉庫業を営む倉庫における床の積載荷重は,3900N/m2以上であることも覚えておきましょう.
2.風荷重に関するポイントとしては,基準法施行令第87条を理解することです.
風荷重は,風圧力×(風圧力に関する)見付面積として計算します.
風圧力Wは速度圧qに風力係数Cfを乗じます.
速度圧qはq=0.6×E×Vo^2となります.
ここで,E:速度圧の高さ方向の分布を示す係数,Vo:その地方における基準風速を示します.
また,風圧力には,骨組算定用と外装材(局部)検討用の2種類があります.大きさは骨組算定用<外装材(局部)検討用の関係があります.
基本的は知識としてはここまでの内容で十分なのですが,最近はそこから更に突っ込んだことを聞いてきています.
旧基準法の速度圧q=60√hにおける60という数値は,観測史上稀にみる風台風であった室戸台風の室戸岬における地盤面からの高さ15mでの最大瞬間風速63m/sに対応するように定められた式でした.
高さが30m以上になると,実際の風圧力に比べ過大な風圧力を算定する傾向があったため,名古屋テレビ塔における地盤面からの高さ135mまでの風速観測による結果などに基づいてq=120を得て,昭和55年に改定されました.
つまり,全国一律の速度圧を用いて設計していたわけです.
しかし,気象現象を観測装置が全国いたることろに設置され,膨大な量の気象データが蓄積されてきて,その解析も進んできました.風洞実験によるデータも蓄積されてきて,地表面の形状の違いや風速の高さ方向の分布などがより詳細に推測できるようになってきたため,H12年の基準法改正により,速度圧の算定式が変更になりました.
現状の速度圧qはq=0.6×E×Vo^2で求めていきます.
ここで,Eは「当該建築物の屋根の高さ及び周辺の地域に存する建築物その他の工作物,樹木その他の風速に影響を与えるものの情況に応じて大臣が定める方法により算出した数値」,Voは「その地方における過去の台風の記録に基づく風害の程度その他風の性状に応じて30~46m/sの範囲において大臣が定める数値」と呼ばれるものです.
この説明だけでは分かりづらいと思いますので,それぞれについて説明してきます.
まずは説明が簡単なVoから.
Voは基準風速のことで,稀に発生する暴風時の地上10mにおける10分間平均風速に相当する値でもあります.以前はこの基準風速は全国一律でしたが,法改正により,全国各市町村単位で基準になる風速を定めて,その数値を用いることになりました.これによって,建築物に作用する風荷重を地表の実情に応じてより実態に近く規定することが可能になり,各地域における平均風速の強さを表す指標である基準風速は大臣が定めるようになりました.
続いて,Eに関する説明です.これは非常に難しいですので,さらっと読み流してください.
Eは「速度圧の高さ方向の分布を示す係数」と言われているモノで,建築物の屋根の高さ及び周辺の建築物等が風速に影響を与えるものの情況に応じて国土交通大臣が定める方法に算出した数値で,E=Er^2×Gfで表現されます.これは逆算の結果です.
風は常に一様に吹いているわけではなく,強弱の変動を繰り返しています.この風速の強弱の変動による建築物への影響の度合いを示したものが,ガスト影響係数Gfと呼ばれているものです.
ただ難しいのは,地域の開発が進み周辺の建築物などにより地表の状況が複雑になるとともに風の強弱の変動は大きくことがあります.風の強弱の変動が大きくなるとガスト影響係数も大きくなるのですが,一方で,建築物が高くなると建築物にしなりが生じて,風が変動し強風が吹いたときの風圧力を受け流すことによって,建築物に発生する力が低減されることになります.
つまり,ガスト影響係数は,建築物周辺の地表の状況と建築物の高さによって決定される突風などの風の変動の影響の程度を表した係数と言えます.
風は地表面に近づくと,地表面との摩擦により風速は小さくなります.つまり,地表面から離れるほど,すなわち建築物が高くなるほど風速は大きくなります.この低減の割合は,周辺の建築物などにより地表面の状況が複雑になるとともに大きくなります.つまり,密集した市街地ほど風速は遅くなります.
このように,地表面の状況に応じて各高さにおける風速は異なりますが,この各高さにおける風速のその地方における基準風速Voに対する比率を現したものが,風速の鉛直分布係数と呼ばれるErと呼ばれます.
建築物に作用する風速は,当該建築物の周辺の地表面の状況と建築物の高さにより決定されるErをその地方における基準風速Voに乗じてEr×Voとなります.
風の運動エネルギーを考えると,運動エネルギーの法則より,1/2mv^2と表現でき,この質量mを単位質量当りの質量=密度ρを用いて表すと,1/2ρv^2と表現できます.
建築物に作用する風速であるEr×Voをこの理論式に代入すると,当該建築物に作用する平均風速による速度圧qAVG=1/2×ρ×(Er×Vo)^2となります.
暴風時に建築物に最大の力を生じさせる速度圧qは,建設地点における平均風速による速度圧qAVGを用いて,q=Gf×qAVGと表現できます.
その結果,建築物に最大の力を生じさせる速度圧qはq=Gf×1/2×ρ×(Er×Vo)^2となります.
この式に空気密度ρを代入し,SI単位に変換すると,q=0.6×Gf×Er^2×Vo^2となります.
Gf×Er^2=Eとすると,q=0.6×E×Vo^2となります.
現状の速度圧q=0.6×E×Vo^2は,以上のような経緯で算定されているのですが,この変形を覚える必要はありません.
Gf(ガスト影響係数):突風などの風を影響の程度を示すものとして,建築物の屋根の高さ及び周辺の市街地の状況に応じて定められる数値.
Er(平均風速の鉛直分布係数):平均風速の高さ方向の分布を示すものとして,建築物の屋根の高さ及び周辺の市街地の状況に応じて定められる数値.
Vo(その地域における基準風速):その地方における過去の台風の記録に基づく風害の程度その他風の性状に応じて30~46m/sの範囲において大臣が定める数値.稀に発生する暴風時の地上10mにおける10分間平均風速から算定.
これらのことに関しては,下記の図で覚えてください.

係数Er及びEは,速度圧qの大小関係と同じ関係がありますので,風は上空の方が地上より強く吹く傾向をイメージできれば,Er及びEはグラフで上に行くほど値は大きくなる,つまり,右上がりのグラフになることがイメージできれば覚えやすいと思います.
また,極めて平坦で障害物がない地表面粗度区分Ⅰの方が都市化が極めて著しい地表面粗度区分よりも障害物が少ないため風が強くなるイメージを持ってグラフを見て下さい.
風力係数Cfについては,Cf=Cpe-Cpi(Cpe:外圧係数,Cpi:内圧係数)ということを覚えておけば十分です.


外装材(局部)検討用の風圧力Wは,平均速度圧[q]×ピーク風力係数[Cf]で計算します.
[q]=0.6×Er^2×Vo^2
で計算することになります.
骨組検討用の速度圧qを計算する時に用いるE(=Er^2×Gf)ではないことに注意しましょう.
上の式から分かるように,外装材(局部)検討用の計算に用いる平均速度圧[q]にはガスト影響係数Gfが入っていないことに注意しましょう.
これは,ピーク風力係数[Cf]の算出にガスト影響係数Gfが反映されていることによります.
3.積雪荷重に関するポイントとしては,基準法施行令第86条を理解することです.
積雪荷重は,積雪の単位荷重×屋根の水平投影面積×垂直積雪量から求めることができます.
積雪の単位重量(一般地域:積雪1cm当たり20N/m2以上)の数値も覚えておきましょう.
また,屋根の積雪荷重は屋根勾配によって低減することができます.その辺についても令第86条を確認しておきましょう.
多雪区域以外の区域にある一定規模(棟から軒までの長さが10m以上)の重量が軽い緩勾配(15度以下)の屋根については,降雪後の降雨を考慮して積雪荷重を重く計算します.平成19年告示第594号第2第三号ホを参照してください.
■学習のポイント
上記の内容を踏まえて,過去問題を見てみましょう!
かなりの問題が解けることがわかると思います.
05-2.荷重・外力(地震力関係)
まずは、オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約6分30秒)
最初に,「過去問題」の問題・解説部分を流し読みして下さい.
同じ内容に関して何回も繰り返し出題されている問題に気づくと思いますが,最低限,こられの問題に関しては,何が重要で繰り返し出題されているのかに注目して,言い回しを多少変えられても間違わないようにしましょう.保有水平耐力の計算に関してよく質問がきます.
よって今回のインプットのコツでは,構造計画というか構造計算に関して,概要説明をします.
構造計算方法は,大きく分けて,許容応力度等計算・保有水平耐力計算,限界耐力計算,その他の計算(限界耐力計算と同等以上に安全さを確かめられる計算方法で,大臣が定める基準に添った構造計算),超高層建築物の計算の4つに分類できます.
このうち,その他の計算というのは,具体的には覚えておく必要はありません.エネルギー法などがありますが,これらの計算に携わった方はほとんどいないと思われます.
許容応力度等計算・保有水平耐力計算のうち,1次設計と呼ばれているのは,荷重・外力による各部の応力度に関する確認のことを指します.
具体的に言うと,1.各部に生ずる応力の計算,2.部材断面の応力度の計算,3.許容応力度による確認を固定荷重や積載荷重,積雪荷重,風荷重,地震荷重などに関して行うことです.
2次設計と呼ばれているのは,層間変形角(≦1/200)の確認や剛性率(≧0.6)・偏心率(≦0.15)の確認,及び保有水平耐力の確認をし,保有水平耐力が必要保有水平耐力以上であることの確認のことを指します.
保有水平耐力計算の説明ですが,基本は,地上部分の各階の保有水平耐力(Qu)≧必要保有水平耐力(Qun)であることを確かめることを指します.
ここで,保有水平耐力(Qu)って何???って感じですが,保有水平耐力とは建築物が水平力を受けたとき,建築物が保有している最大の水平抵抗力のことです.これは基準法や告示に記載されている材料強度によって求められます.
保有水平耐力は,建築物の一部または全体が地震力によって崩壊メカニズムを形成するときの各階の水平方向の耐力のことですね.
このことは,「構造計画」単元以外のどこかの単元で出てきたと思いませんか?
計算問題のところで「崩壊荷重」って単元がありましたよね?
仮想仕事法を用いて,「外力のする仕事」=「内力のする仕事」ってやつです.あの崩壊荷重も保有水平耐力です.
仮想仕事法以外にも保有水平耐力を求める方法はありますが.
それに対して,必要保有水平耐力は,大地震に対して安全を確保するために必要とする各階の最小限の水平方向の耐力のことを指します.
これは,強度型の場合には耐力の急激な低下が起きないように安全をみる→Ds:構造特性係数
偏心したり(偏心率が大きい),剛性率が小さい場合には安全をみる→Fes:形状係数
これに,大地震を想定した場合の地震層せん断力Qiを乗じたものになります.
よって,Qun=Ds・Fes・Qudとなります.
ここで,Dsは,木造や鉄骨造では0.25~0.5,鉄筋コンクリート造では0.3~0.55です.当然,靭性のある塑性変形能力が高い建築物のDsは小さい値となります.鉄骨鉄筋コンクリート造は鉄筋コンクリート造よりも0.05小さい値を用いることができます.
偏心率が大きいほど,及び剛性率が小さいほどFesは大きくなります.安全のために割増するイメージですね.
Qudは,Qud=Z・Rt・Ai・Co・∑wと表現できます.これもどこかで見たことがありませんか?
地震層せん断力の式ですね.考え方は一緒ですよね.
必要保有水平耐力(Qun)についてまとめると,
一次固有周期の長い建築物は,軟弱地盤の方が硬質地盤と比べて各階に生ずる水平力Qudは大きくなる→Qunは大きくなる.
偏心率が大きいほど,及び剛性率が小さいほど,Fesは大きくなる→Qunは大きくなる.
鉄筋コンクリート建築物で短柱が多くなると,靭性が小さい→Dsは大きくなる→Qunも大きくなる.
学科試験に関しては,具体的に保有水平耐力計算を行うわけではないので,この辺の考え方を理解していればいいと思います.
続いて,地下・屋上突出部の地震力に関して説明します.
建物屋上にある水槽や地表に設置された広告塔などの構造計算については,それぞれの重さに水平深度を掛けて計算します.
水平震度とは,ある階(ある部分)の地震力が,その層の重量の何倍かを表す数値のことです.
地表面の揺れ方と,建物屋上の揺れ方が異なるため,水平震度の値としては異なる値を用います.
・屋上から突出する塔屋や高架水槽等の水平震度:1.0Z以上
・外壁から突出する片持ち階段やエレベーター等の鉛直震度:1.0Z以上
・地表に設置された広告塔等の工作物の水平震度:0.5Z以上
続いて,限界耐力計算に関して説明します.
まずは,計算の流れから.
1.建築物の存在期間中に1回以上遭遇する可能性の高い(稀に発生する)積雪,暴風などについて,建築物が損傷しないことを確認する.
2.極めて稀に発生する大規模な積雪,暴風に対して,建築物が倒壊,崩壊などしないことを確認する.
3.建築物の存在期間中に1回以上遭遇する可能性の高い(稀に発生する)地震動について,地上部分が損傷しないことを確認する.
→損傷限界の検証
→各階に作用する稀に発生する地震力が,当該階の損傷限界耐力を超えないこと,及び地震力による層間変形角が1/200(損傷のない場合は1/120)を超えないことを確認する.
4.建築物の存在期間中に1回以上遭遇する可能性の高い(稀に発生する)地震動について,地下部分が損傷しないことを確認する.
5.極めて稀に発生する地震動について,地上部分が倒壊,崩壊などしないことを確認する.
→安全限界の検証
6.使用上の支障となる変形または振動がないことを確認する.
7.外装材などが構造耐力上安全であることを確認する.
っていう流れです.
「損傷限界」と言うのは,建築物の耐用年限中に少なくとも一度は遭遇する程度(中程度)の荷重.外力が作用した後も,構造物の安全性や使用性,及び耐久性が低下せず,そのため補修を必要としない限度のことを指します.
地震力に関して言えば,震度4~5程度の地震クラスをイメージすればいいと思います.
「損傷限界の検証(中程度の地震力に対する安全の確認で,許容応力度等計算における一次設計に相当する検討みたいなもの)」を具体的に言うと,
1.各材料の短期許容応力度をもとに,損傷限界耐力及び損傷限界変位(損傷限界耐力時の層間変位)を計算する.
2.損傷限界固有周期を計算する.
3.損傷限界固有周期に基づき,建築物の各階に作用する地震力を計算する.
4.各階に作用する地震力が損傷限界耐力を超えないこと,及び各階に生ずる層間変形角が1/200(損傷のない場合は1/120)を超えないことを確認する.
という感じでしょうか.
損傷限界固有周期というのは,損傷限界変位に相当する変位が生じているときの建築物の固有周期のことを指します.
「安全限界の検証(最大級の地震力に対する安全の確認で,許容応力度等計算における二次設計に相当する検討みたいなもの)」を具体的に言うと,
1.各材料の材料強度をもとに,各階の保有水平耐力,及び安全限界変位を計算する.
2.安全限界固有周期を計算する.
3.建築物の各部分の減衰による加速度の低減を計算する.
4.安全限界固有周期に基づき,減衰による加速度の低減を考慮して建築物の各階に作用する地震力を計算する.
5.各階に作用する地震力が各階の保有水平耐力を超えないことを確認する.
という感じでしょうか.
安全限界固有周期というのは,安全限界変位に相当する変位が生じているときの建築物の固有周期のことを指します.
損傷限界の検討と異なる点は,
・建築物の各部分の損傷の程度に応じた加速度の低減を考慮すること.
・地震力算定の基本となる加速度応答スペクトルは損傷限界の時の5倍であること.
ということです.
あと,言葉だけでもいいので覚えてもらいたいことは,
・工学的基盤:地下の深いところ(地表から数mとか数十mとかの深い部分.場所によって異なります.)にあって,せん断波速度VsがVs≧400m/s以上の地盤.
・表層地盤:地表から工学的基盤までの地盤
・表層地盤による増幅:Gs
・建築物の損傷の程度に応じた減衰による加速度の低減:Fh(保有水平耐力の計算におけるDsに相当)
・建築物の加速度の分布:Bdi,Bsi
って言葉です.
■学習のポイント
合格ロケットに収録されている「過去問題」を解いてみて下さい.
ここ数年,免震構造や制振構造に関する出題が増えてきています.
免震構造というのは,免震層によって,免震層より上部部分に入力する地震力を低減するような構造形態であり,免震層自体の変位は比較的大きいことには注意しましょう.
問題コード14225の「鉄骨構造の筋かい付きの骨組みの保有水平耐力の算定」に関して,問題文の内容も,解説の内容もよく分からないという質問がよく来ます.
この問題に関して,以前,教育的ウラ指導さんの方で使用していた資料を提供して頂きましたので紹介いたします.
→ こちら
しかし,この問題は非常に難しい問題であり,この資料を一度ご覧になる程度でいいのではないかと思われます.
06.構造計画(構造計算方法)
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約6分)
今回のインプットのコツでは,構造計画の中の構造計算方法に関して,概要説明をします.
建築基準法においては,法規科目の「09.構造」にあるように,令81条にて構造計算方法が規定されています.
これらのうち,本来は1項に規定されている超高層用の構造計算(いわゆる,時刻歴応答解析)を行わなければ,柱や梁,壁などに生じる応力が分からないのですが,この構造計算が非常に複雑であるため,高さが60m以下の建築物については「簡易法」で構造計算をしましょう!ということになっています.
その「簡易法」については,令81条の2項及び3項で規定されている保有水平耐力計算以下となります.
「簡易法」とは言え,令81条の2項第一号イで規定されている保有水平耐力計算や,第一号ロで規定されている限界耐力計算については,実はかなり難しい内容となっております.
ですが,一級建築士の学科試験で得点する!ということに着眼点を置くのであれば,構造(文章題編の「05-2.荷重・外力(地震力関係)」に記載されている計算方法の内容と,建築基準法には記載がされておりませんが,構造科目としては出題されている下記の「構造耐震計算ルート」について,重要ポイントをおさえておきましょう!

構造耐震計算では,地震力の強さを2段階で考えています.建築物が耐用年限内に数回遭遇する程度の中地震と,耐用年限内に1度遭遇するかもしれない大地震によるものの2段階です.
中地震については,強度型か靭性型かによって求める層間変形角の具体的な数値は異なりますが,靭性型の建築物であっても,基本的には弾性内の変形である層間変形角が1/200程度以下となるようにして,亀裂などが生じても,軽微な補修で対応が可能であり,仕上げや設備に損傷を与えずに使用上支障がないことを目指します.
一方,大地震については,中地震の2倍程度の塑性変形,靭性型の建築物であっても,層間変形角を1/100~1/150程度以下となるようにして,建築物の倒壊などを防ぎ,人命の保護を図ることを目指します.
過去問題でも出題されているこれらの構造耐震計算フローにおける「ルート1」とか「ルート2」という言葉は建築基準法では規定されておりませんが,内容については,平成19年国交省告示第593号及び昭和55年建設省告示第1791号により規定されている内容です.
鉄筋コンクリート造や鉄骨造などの構造種別によらず,「一次設計」とは,長期荷重(地球の重力によって生じる荷重)及び短期荷重(中地震などを想定)において,荷重や外力によって各部材に生じる応力度が材料の許容応力度以下になるようにして,損傷防止の確認を行うことです.
具体的には,令82条で規定されている許容応力度の計算を行い,使用上の支障防止の確認,及び屋根ふき材などの構造計算によって確認します.
一方,「二次設計」とは,大地震などによっても建築物が倒壊などをしないことの確認を行うことです.具体的は検討内容については,建築物の形状や規模によってルート2及びルート3のように異なります.
ルート1は,比較的小規模な建築物に対象を限定するとともに,鉄筋コンクリート及び鉄骨鉄筋コンクリート造については,一定以上の壁量や柱量を確保することにより,鉄骨造については,地震力の割り増しや筋かい及び接合部の破断防止を確認することにより耐震性を持たせようとするものです.
なお,ルート1については,一定以上の壁量などがあること(RC造及びSRC造),あるいは地震力の割り増し(S造)を行うことにより,大地震時の検討である二次設計は行わなくても良いということになっています.
鉄筋コンクリート造の二次設計について,少し詳しく見てみましょう.
数式の具体的な数値などを覚える必要はありません.
ルート1の式を満足する建築物は,多くの耐力壁及び柱により十分な耐力を持つため,大きな靭性は必要としない,強度型の建築物となります.このルート1の式を満足する建築物は大地震などの検討の二次設計は不要となります.
なお,AwやAcが何を意味しているのかについては過去問題で出題されていますので,確認しておく必要があります.
ルート1の式を満足する耐力壁や柱がない建築物については,層間変形角,剛性率・偏心率,塔状比のそれぞれの規定に満足する場合は,ルート2-1あるいはルート2-2のこれらの式を満足する場合はルート2-1あるいはルート2-2により二次設計の確認を行うことになります.
ルート2-1は,剛性や重量のかたよりが少なく,耐力が大きく,かつ,やや靭性のある建築物が対象となります.耐力壁が水平力の多くを負担する建築物となります.
ルート2-2は,剛性や重量のかたよりが少なく,耐力が大きく,かつ靭性のある建築物が対象となります.耐力壁とはみなされない壁やそで壁の付いた柱が水平力の多くを負担する建築物となります.
それぞれの式や規定を満足しない建物,及び規模の大きい建物はルート3である保有水平耐力の計算を行うことになります.
なお,平成27年1月の告示改正により,ルート2-3は廃止されました.
鉄骨鉄筋コンクリート造の二次設計については,基本的には,鉄筋コンクリート造と同様です.
ルート1やルート2のそれぞれの数式の数値が異なりますが,RC造とSRC造は同じような検討方法であるということを知っておけば対応可能です.
次に,鉄骨造の二次設計について,少し詳しく見てみましょう.
鉄骨造のルート1は,比較的小規模な建築物に対象を限定するとともに,地震力の割り増し(一般的な地震力の算定では,中地震についてはCoを0.2以上としているのに対し,地震力を1.5倍のCoを0.3以上とします)や,筋かい端部及び接合部の破断防止などを確認することにより耐震性を確保する耐震計算ルートです.RC造及びSRC造と同様,ルート1を満足するS造の建築物については大地震などの検討の二次設計は不要となります.
建築物の規模(階数、面積及び柱スパン)によって,ルート1-1と1-2の2種類があります.
ルート1-2の場合は,ルート1-1の検討に加えて,偏心率が15/100以下であることを確認する必要があります.
ルート2については,RC造やSRC造と同様,層間変形角、剛性率・偏心率,塔状比のそれぞれの規定を満足させる必要があります.
一次設計用の地震力については,靭性型か強度型かによってCoを0.2から0.3の間で割増します.
筋かいの水平率分担率βによって割増しを行います.


ルート1及びルート2の規模や規定が満足しない建築物についてはルート3である保有水平耐力の計算を行うことになります.
■学習のポイント
これらの最低限,覚えなければならない事項はありますが,まずは耐震計算フローを見ながら,過去問題を見ることで,どの辺が繰り返し出題されているのかを肌で感じて下さい.
08.鉄骨構造
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分30秒)
この項目は,問題数が非常に多く,覚えることも多いため,勉強するにも嫌気がさしてくる単元の一つではないでしょうか?
このように,広い範囲から出題される項目に関しては,余り一つの事柄に深く入り込むのではなく,まずは,広く浅く知識を広げていくのがポイントです.他の科目にも共通している点として,建築士試験では,一級建築士としては知っていていただきたい重要事項を出題されていることがあげられます.ですから,まずは,過去問題とその解説を一読することをオススメします.
座屈等に関して
梁の横座屈は,H形鋼などの開断面の梁が曲げを受けた時,圧縮側のフランジ等が面外に座屈し,ねじれを生じ,曲げ耐力が低下する現象を指します.梁の材軸と(通常は,柱ならば縦方向,梁ならば横方向)直交方向にフランジが変形しないようにすることで横座屈は防止できます.
横補剛とは,小梁などで梁フランジの面外変形を拘束し,横座屈を防止するために用いられます(問題コード26172).
柱や梁の端部,筋かいの端部や中央部のフランジやウェブなどが圧縮を受けると,それらが局所的に波打つように変形することがあります.これを局部座屈といいます.
H型鋼などの柱材方向に平行方向のスチフナ(鋼板)は,柱では縦スチフナ,梁では水平スチフナと呼ばれます.また,材軸と直交方向に入れるスチフナは,梁でも柱でも中間スチフナと呼びます.中間スチフナは,ウェブの局部座屈を防ぐのに力を発揮します(問題コード13171).
局部座屈は,フランジやウェブの幅厚比(フランジなどの幅/厚さ)と鋼材の降伏比に関係しています.フランジやウェブの幅厚比が小さいほど,鋼材の降伏比が小さいほど,局部座屈は生じにくく,部材の靭性は高くなります.
細長比に関して
柱の有効細長比は200以下(柱以外の場合には250以下)とします.
引張材は,高力ボルトの孔などによって断面欠損のある場合は,断面欠損を考慮した有効断面積で算定します.
山形鋼やみぞ形鋼などをガセットプレートの片側にのみ設ける場合には,偏心による曲げの影響を考慮して設計します.通常の場合,その突出脚の1/2の断面を無効とした断面で算定します(問題コード29152ほか).ボルトの数によって無効とする突出脚が変化しますが,それについてはこちらの資料(←別ファイルが開きます)が参考になると思います.
ボルト接合に関して
中ボルト接合と高力ボルト接合の2種類に分類できます.
中ボルトを用いたボルト接合では,下図に示すように中ボルトの軸部に作用するせん断力により応力が伝えられます.
力の伝達としては,鋼板1からボルト軸部へは支圧,ボルト軸部内部ではせん断,ボルト軸部から鋼板2へは支圧で伝わります.

高力ボルト接合には,摩擦接合と引張接合の2種類があります. .
高力ボルト摩擦接合では,高力ボルトが鋼板を締め付ける圧縮力で鋼板の接触面に生じる摩擦力により応力が伝えられます.
しかし,接合部に作用する力を次第に大きくすると,摩擦が切れ,高力ボルトの軸部が鋼板のボルト孔の側面に接触することになります.この状態では,中ボルトのように,高力ボルトの軸部に作用するせん断により応力が伝えられます.
つまり,高力ボルト摩擦接合では,許容応力度設計では摩擦で応力が伝達され,破断耐力(終局耐力)の計算では,摩擦が切れた後の応力はボルト軸部のせん断で応力が伝えられます.(問題コード13172)
摩擦面における滑り係数は,鋼板の赤錆面では0.45,溶融亜鉛めっき面では0.4です.

保有耐力接合に関して
大地震時の安全性を確認する保有水平耐力計算や耐震計算ルート1の計算で用いる,崩壊メカニズム時の応力状態において柱及び梁の仕口部及び継手部や筋かい材の端部及び接合部が破断しない接合方法を保有耐力接合と呼びます.
溶接接合に関して
構造部材の溶接接合には,一般には,突合せ溶接やすみ肉溶接が用いられます.その溶接記号に関してもチェックしておきましょう(問題コード21171).
突合せ溶接の継目に作用する応力は「引張,圧縮,せん断」であり,すみ肉溶接の継目には「せん断」が作用します(問題コード23173).溶接の継目の短期許容応力度と材料強度は同じ値と定められています.長期許容応力度はこれらの数値の1/1.5の値です.
溶接の有効面積は,「溶接の有効長さ」×「有効のど厚」により求められます.板厚が異なる時は,薄い方の板厚が有効のど厚になります.
すみ肉溶接は「すみ肉サイズの10倍以上,かつ40mm以上の長さのもの」を有効とし,その有効長さは「溶接の全長からすみ肉サイズの2倍を引いたもの」と定められています(問題コード21171).すみ肉ののど厚は「すみ肉サイズの1/√2倍」になります.
突合せ溶接とすみ肉溶接のせん断許容応力度は同じ値となりますが,圧縮・引張・曲げに関しては突合せ溶接はすみ肉溶接の√3倍の値となります(問題コード19153).
ボルトおよび高力ボルトと溶接との併用に関して
一つの継手の中に高力ボルトと溶接とを併用する場合,先に溶接を行うと溶接熱によって板が曲がり,高力ボルトを締め付けても接合面が密着しないことがあるので,両方の耐力を加算することができないが,先に高力ボルトを締め付けた場合には溶接による板の変形は拘束されるので,両方の許容力を加算してもよい(問題コード30173ほか).
継手にリベットを使用した建築物を増築または改築する場合は,既存時の使用中の応力によって,起こりえたかもしれないリベットのすべりは,すでに起こってしまっていると考えられるので,これらのリベットはそのまま既存建物の固定荷重を負担し,増改築分の固定過重および積載荷重による応力を溶接によって伝えるよう継手を設計してもよい(問題コード18182).
高力ボルトを用いた既存建物を増改築する場合も,同様の方法で溶接との併用継手を設計してよい.
柱脚について
「露出柱脚,根巻き柱脚,埋込み柱脚」の3つの特徴を覚えましょう.
「露出柱脚」とは,アンカーボルトとベースプレートにより鉄筋コンクリート構造と鉄骨柱が接合されたもので,軸力と曲げモーメントはベースプレートとアンカーボルトを介して基礎に伝達されます.せん断力はベースプレート下面とモルタルまたはコンクリートとの摩擦力,またはアンカーボルトの抵抗力により伝達されます(問題コード18184).
軸部の降伏に先立ってねじ部で破断が生じないような,軸部の塑性化が十分に保証された「転造ねじアンカーボルト」に関する出題もあります(問題コード29161).
「根巻き柱脚」とは,下部構造から立ち上げられた鉄筋コンクリート柱に鉄骨柱が包み込まれた形状で,圧縮軸力は根巻き部分の鋼柱およびベースプレート,引張軸力は根巻き部分の鋼柱およびアンカーボルトを介して基礎に伝達されます.曲げモーメントとせん断力は根巻き鉄筋コンクリート部分で伝達されます.
根巻き鉄筋コンクリートの高さは,柱せいの2.5倍以上とします(問題コード29163).
「埋込み柱脚」とは,下部の鉄筋コンクリート構造に鉄骨柱が埋め込まれた形状で,軸力は鉄骨柱脚部のベースプレートを介して基礎コンクリートに伝達されます.曲げモーメントとせん断力は基礎コンクリートと鉄骨柱の埋め込み部との間の支圧により伝達されます.
基礎コンクリートへの鉄骨柱の埋め込み深さは,柱せいの2倍以上とします(問題コード28164).

■学習のポイント
ここ数年,新しい項目に関する出題が増えてきています.
しかし,ほとんどの新問が正答肢(その問題が○や×となる決め手の選択肢)とはなっていないので,そんなに心配する必要はないと考えます.
まずは,毎年繰り返し出題されている過去問題を制覇しましょう!
09.鉄筋コンクリート構造
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約6分)
施工科目の「鉄筋工事」や「コンクリート工事」は,鉄筋加工における注意点や型枠の存置期間など施工工事から見た出題ですが,この項目では鉄筋コンクリート部材を設計手法から見た事柄に関して出題されています.
鉄筋コンクリートというのは,引張に弱いコンクリートを鉄筋で補強している理にかなったものです.コンクリートがアルカリ性であるため,錆に弱い鉄筋を保護している意味合いもあります.また,コンクリートと鉄の熱膨張率(線膨張係数)がほぼ等しいため,温度の変化における悪さもありません.
鉄筋コンクリート構造の場合は,柱や梁がせん断破壊を起こさないで曲げ破壊をさせる,耐震壁がせん断破壊をおこさないで曲げ破壊や基礎の浮き上がりが生じるようにさせることがポイントです.
そのために,柱や梁などについていろいろな規定があります.
そのことを踏まえて,過去問題とその解説を一読してみてください.
柱や梁をせん断破壊させないことが前提としてありますので,せん断補強筋(帯筋やあばら筋)によってせん断力に抵抗します.そのために,せん断補強筋比の規定があります.
また,鉄筋コンクリート部材では,せん断力に対して,コンクリートのせん断強度とせん断補強筋の効果を組み合わせて設計します.しかし,柱の長期許容せん断力に関しては,せん断ひび割れを許さないとして,コンクリートの許容せん断応力度のみを有効としています.これは鉄骨鉄筋コンクリート柱の場合と同様です(問題コード14131・・・鉄骨鉄筋コンクリート).
コンクリートのヤング係数はコンクリート強度が高くなるほど大きくなります(「コンクリート」のインプットのコツ参照)が,鉄のヤング係数は強度によらずほぼ一定である(「鋼材・金属」のインプットのコツ参照)ため,コンクリートに対する鉄筋のヤング係数比(鉄筋のヤング係数/コンクリートのヤング係数)は,コンクリート強度が高くなるほど小さくなりますが,構造計算では,通常のコンクリート強度ではヤング係数比を15と仮定します.
一般に,鉄筋コンクリートの曲げ材は,コンクリートの圧縮側が破壊するより先に引張側の鉄筋(主筋)が降伏するように設計します.このことを「引張鉄筋比が釣り合い鉄筋比以下の場合」と言いますが,この時の許容曲げモーメントはM=at×ft×j=7/8×at×ft×d(ここで,at:引張鉄筋の断面積,ft:鉄筋の許容引張応力度,j:曲げ材の応力中心距離(=7/8d),d:曲げ材の圧縮縁から引張鉄筋重心までの距離(有効せい)を指します)で,終局曲げモーメントはM=0.9×at×σy×dで計算できます(問題コード問題コード23111ほか).
かぶり厚さとは,鉄筋表面とこれを覆うコンクリート表面までの距離を指し,鉄筋の耐火被覆やコンクリートの中性化速度などを考慮して定められています(問題コード27123).
ここで,よく質問が来る鉄筋コンクリートの接合部での力の伝達方法(問題コード01142)について説明します.
鉄筋コンクリート構造ラーメン構造の柱梁接合部の設計法としては
・水平荷重(特に地震荷重)に対する短期設計を対象としています.
・長期荷重時のせん断力は小さく,接合部のひび割れが問題となった事例もほとんどないため,長期荷重に対しては通常は考えません.
・水平荷重を受けるラーメン内の柱梁接合部は,下のような応力状態となります.

・梁主筋は,一般に,釣り合い鉄筋比以下で配筋されていますので
→引張側の鉄筋降伏で梁の曲げ耐力が決まります.
→引張鉄筋量を増やしても,釣り合い鉄筋比であれば,引張側の鉄筋降伏で梁の曲げ耐力が決まります.
→引張鉄筋量が増えると,上図におけるTが大きくなります.
→(梁の)Tが大きくなると,(梁の)Cs+Ccも大きくなります.
→その結果,柱梁接合部に生じるせん断力Qjも大きくなります.
また,鉄骨造柱と同様,鉄筋コンクリート柱も大きな軸力を受ける柱ほど地震時の粘り強さが減少することに注意して下さい.
梁部材における鉄筋とコンクリートとの許容付着応力度は,上端筋よりも下端筋の場合の方が大きいことに注意しましょう.
梁などのクリープ現象を制御するためには,圧縮鉄筋が有効となります.圧縮力を受ける柱では,コンクリートがクリープによって縮もうとする分,鉄筋の圧縮力の分担が増えるため,鉄筋の圧縮応力は徐々に増加します(問題コード01124ほか).
ひび割れに関しては,図問題として出題されています(問題コード25141,29111).鉄筋コンクリート構造(部材)に入る基本的なひび割れについて整理しておきましょう.
鉄筋コンクリート造の部材設計に関しては,計算外規定(注意点)があります.
簡単にまとめてみますと
・柱
・主筋比は,0.8%以上とします.
・帯筋比は,0.2%以上とします.
・梁
・長期荷重時に正負最大曲げモーメントを受ける部分の引張鉄筋比は0.4%以上,
または存在応力によって必要とされる量の4/3以上とします.
・主要な梁は,全スパンにわたり複筋ばりとします.
・あばら筋比は,0.2%以上とします.
・あばら筋の間隔は,3/4D(D:梁せい)以下とします.
・柱梁接合部
・柱梁接合部内の帯筋も帯筋比を0.2%以上とします.
・帯筋間隔は150mm以下,かつ隣接する柱の帯筋間隔の1.5倍以下とします.
・床スラブ
・最大曲げモーメントを受ける部分における引張鉄筋間隔は,短辺方向には20cm以下,
長辺方向には30cm以下,かつ床スラブの厚さの3倍以下とします.
・全断面の鉄筋比は0.2%以上とします.
・耐震壁
・耐力壁の厚さは12cm以上とします.
・壁筋は径9mm以上で,配筋間隔は縦横に30cm以下とします.
・耐震壁周囲の付帯ラーメン
・梁の全断面に対する主筋の鉄筋比は0.8%以上とします.
■学習のポイント
平成14年に出題された問題コード14141(鉄筋コンクリートの図問題)は,非常に難しい問題です.合格ロケットに収録されている解説が難しく,よく理解できない方は余り深入りしないでください.
10.鉄骨鉄筋コンクリート構造
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約6分30秒)
鉄骨鉄筋コンクリート構造を苦手にしている人はかなり多いと思います.鉄筋コンクリート構造などに比べて,部材設計などが難しいからです.
特徴的なものとして,累加強度の考え方があります.単純累加強度とは,鉄骨の強度と鉄筋コンクリートの強度をそれぞれ求め,それらを加える方法です.それぞれの強度を単純に加える(累加する)ので,単純累加強度,略して累加強度と言います.鉄骨鉄筋コンクリートの曲げに対する設計に用います.
似たような言葉に一般化累加強度というものがあります.これは,柱のような曲げと軸力を受ける部材の耐力を求める際に,鉄骨と鉄筋コンクリートそれぞれの曲げと軸力を組み合わせた耐力を最大になるように加える(累加する)方法です.保有耐力の算定などに用います.
この考えが,鉄骨造や鉄筋コンクリート造とは異なる部分ですので,難しいと思われると思います(問題コード22194).
そのことを踏まえて,過去問題とその解説を一読してみてください.
梁のせん断に対して許容応力度設計を行う際には,鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれのせん断力を求めて,鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれの許容せん断力以下となるようにします.
ここで,それぞれのせん断力とは,鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分の設計用曲げモーメントより求めます(問題コード23192).
上記説明における累加強度ではないことに注意しましょう.
また,鉄筋コンクリート部分の許容せん断力は,せん断補強筋比の上限は0.6%とします.
梁のせん断に対して保有耐力計算を行う際には,鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれの終局せん断耐力の累加とします(問題コード24192).上記説明における累加強度を用いるわけです.
柱の長期許容応力度設計では,ひび割れを生じさせないように(この考え方は鉄筋コンクリート造の場合と同様です),鉄骨の補強効果を考慮した鉄筋コンクリートのひび割れ強度以下になるようにします(問題コード14131).
柱のせん断に対して許容応力度設計を行う際には,鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれのせん断力を求めて,鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれの許容せん断力以下となるようします(問題コード27231).累加強度ではないことに注意しましょう.
柱のせん断に対して保有耐力計算を行う際には,鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれの終局せん断耐力の累加とします(問題コード01234).上記説明における累加強度を用いるわけです.
柱の設計において,鉄骨量が多いとコンクリートの充填性が悪くなるため,鉄骨量に応じてコンクリート強度を低減して考えます(問題コード22193).
柱梁接合部のせん断に対して許容応力度設計を行う際には,鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれの許容せん断力の累加とします.
上記説明における累加強度を用いるわけです.
せん断補強筋量としては,内蔵鉄骨がH型鋼のような開断面充腹形鉄骨の場合は,内蔵鉄骨のウェブが部材(柱や梁)のせん断力に効果的に効くため,通常の鉄筋コンクリートのせん断補強筋比の半分程度ということで,あばら筋比,帯筋比はともに0.1%以上とします.内蔵鉄骨がラチス形や格子形のようにウェブが鋼板で満たされていない(空間がある)ような非充腹形鉄骨の場合は,内蔵鉄骨のウェブが部材(柱や梁)のせん断力に効果的に効くとは思えないため,鉄筋コンクリート同様にあばら筋比,帯筋比はともに0.2%以上とします.下図のような被覆形及び充填被覆形鋼管コンクリート構造の場合のあばら筋比や帯筋比は0.2%以上となっていますが,これはあばら筋比や帯筋比の求め方が開断面充腹形や非充腹形の場合と異なるためです.
開断面充腹形の0.1%と被覆形の0.2%の実際のせん断補強筋量は同じくらいと考えてもいいと思います(問題コード20145ほか).
また,鉄筋コンクリート部分の許容せん断力の算定では,せん断補強筋比の上限は0.6%とします.

柱における鉄骨と鉄筋の断面積の和は,コンクリート断面積の0.8%以上必要であることに注意しましょう(問題コード20155ほか).
鉄骨のかぶり厚さは最小5cm,通常は10cm以上とします.
施工時の検討(建て方検討)に関しても注意が必要です.
通常,鉄骨鉄筋コンクリート造は,鉄骨の建て方を行い,鉄筋の配筋を行い,コンクリートの打設を行う順序で施工されていきます.コンクリートの強度が出現した後に関しては累加強度が成り立ちますが,コンクリート強度が出現する前では,鉄骨造の場合と同様と考えられます.通常の鉄骨造の鉄骨と鉄骨鉄筋コンクリート造の内蔵鉄骨では,鉄骨鉄筋コンクリート造の内蔵鉄骨の方が部材が小さいことが一般的であるため,コンクリート強度が出現する前での風や地震に対する安全性の検討が必要になります(問題コード13153ほか).
■学習のポイント
コンクリート充填管(CFT)部材に関する出題が増えています(問題コード30264ほか).これらの問題・解説について理解しておきましょう.
また,部材の終局せん断耐力算定に関しては,問題コード01234では,「累加する鉄骨と鉄筋コンクリートのそれぞれの終局せん断耐力は,曲げで決まる場合とせん断で決まる場合の小さい方とする」というように更に突っ込んだ問題となっています.このことに関しても覚えておきましょう.
鉄骨鉄筋コンクリートに関しては,過去に繰り返し(複数回)出題している問題を理解しておけば,十分対応できると考えられます.
13.地盤・土質
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分30秒)
この地盤・土質項目を苦手にしている人も多いと思います.
すごく大きく見てみると,建築物は地盤に支えられていますよね.地盤が悪いところでは杭で建築物を支持する杭基礎形式で,地盤が比較的良いところでは直接基礎形式です.こられ基礎に求められている性能(要求性能)は,建築物が沈んだり傾いたりしないことですよね.
つまり,地盤・土質項目での重要ポイントは,「地盤の支持力」と「地盤の沈下量」と言えます.
地盤の性質として,覚えておくこととして,土の構成があります.土は,土粒子と水と空気からなっています.土粒子の大小関係は,粘土<シルト<砂となります(問題コード23231ほか).
地質の地盤区分として,洪積層(良質地盤,年代が古い)と沖積層(軟弱地盤,年代が新しい)とがあり,地盤の堅さとしては,沖積層<洪積層となります(問題コード24213).
圧密沈下とは,主に粘性土地盤で生じ,土に圧力が長時間継続的に加わる場合,土中の間隙水が徐々に搾り出され,間隙が減少し,地盤が沈下することを示します.
粘性土は透水性が小さいため,水の移動に時間がかかり,圧密沈下は一般的には時間がかかります.また,現在の有効上載圧力(現在加わっている圧力)より過去に受けた上載圧力が大きい地盤は過圧密の状態にあると言います.
現在の有効上載圧力より更に荷重を加えても,圧密先行荷重(過去に受けた最大の上載圧力)に達するまでは圧密沈下は生じません.圧密が進んでいる状態の地盤は,圧密未了状態にあると言います.
即時沈下とは,主に砂質地盤で生じ,早期に沈下を起こし,安定します.沈下量は小さいです(問題コード01211ほか).
砂質地盤の液状化について簡単に説明します.
液状化とは,振動によって土中の間隙水圧が高くなり,土粒子間に働く有効応力がゼロになる現象を指します.この表現は,実際に過去に出題された問題そのものです.間隙水圧?有効応力?難しい言葉がでてきますね.
有効応力(土粒子間に生じる応力)などに関して深く学ぶ必要はありません.液状化に関しては,以下に示す液状化現象が起こりやすい4要素を覚えておきましょう.
1.飽和地盤で細粒土含有率が低い(細粒土含有率が低いとは,土粒子の小さい粘土成分が少ないこと,つまり土粒子の大きい砂成分が多いことを指します).
2.飽和地盤のN値が小さい.
3.地下水位面が地表面に近い.
4.地震入力が大きい.
下図の横軸は地盤のせん断ひずみ(地盤の変形量)で,左側のせん断ひずみは小さく(小さい地震動時の地盤の変形),右側に行くほどせん断ひずみは大きく(大きい地震動時の地盤の変形)なります.縦軸のG/G0とは,地盤のせん断剛性低下率で,ある時点での地盤のせん断剛性が,地盤が元々持っているせん断剛性からどれくらい低下したのかを示します.つまり,地盤の剛性(堅さ)の低下率を指します.図からわかるように,剛性低下率(G/G0)は右下がりの曲線ですので,地盤内に発生するせん断ひずみが増加するほど(大きな地震で地盤が揺れるほど),地盤のせん断剛性は低下することがわかります.

一方,地盤の減衰定数は,右上がりの曲線ですので,盤内に発生するせん断ひずみが増加するほど(大きな地震で地盤が揺れるほど),地盤の減衰定数は増加することがわかります.

この地盤の減衰特性は,上部建物と性状が異なりますので,上部建物とは完全に切り分けて理解して下さい.
これら2つの事象については,上記のグラフをイメージできるようになりましょう!
続いて,地盤調査に関して説明します.
地盤調査とは,原位置試験と土質試験に分けられます.
原位置試験とは,地盤内の土の性質を直接調べる試験のことで,
標準貫入試験(問題コード20194)
平板載荷試験(問題コード29192)
スウェーデン式サウンディング試験(問題コード24223)
ボーリング孔内水平載荷試験(問題コード01204)
ベーン試験,常時微動測定(問題コード29193)
せん断波速度測定(PS検層)(問題コード28214)
などがあります.
土質試験とは,ボーリングなどによってサンプリングされた試料を用いて行う物理的,化学的,力学的性質を調べる試験のことで,
粒度試験(問題コード27192) や密度試験などのような物理的試験(砂質土,粘性土などの土質判別を行う試験)と,1軸圧縮試験,3軸圧縮試験(問題コード25231ほか),圧密試験(問題コード26224)や透水試験などの力学的試験(土の強さ,圧縮性,動的性質などを調べる試験)があります.
最後に地盤改良と液状化対策,圧密沈下対策に関して説明します.
地盤改良について
1.締固め工法(バイブロフロテーション工法,サンドコンパクションパイル工法など):砂質土に振動や衝撃力を加えて安定した地盤を造る工法
2.間隙水圧消散工法(グラベルドレーン工法など):砂質土地盤中に透水性のよい粗骨材の柱を作り,地震により発生した間隙水圧を短時間で消し去る工法
3.強制圧密脱水工法(サンドドレーン工法など):軟弱な粘性土を強制的に圧密し,事前に沈下させ強度を増加させる工法
4.脱水工法(生石灰杭工法など):軟弱な粘性土地盤中の間隙水を,脱水材や発熱する材を用いて脱水し,強度の増加を図る工法
5.固結工法(深層混合処理工法など):セメントなどを注入し,地盤の不透水化や強度の増加を図る工法
6.置換工法:軟弱地盤を良質の地盤に置き換える工法
液状化対策としては,締固め工法(バイブロフロテーション工法,サンドコンパクションパイル工法など)が,圧密沈下対策としては,間隙水圧消散工法(グラベルドレーン工法など)が有効とされています.
なお,各工法の詳細に関しては,上記○○工法などで検索してみてください.
■出題のポイント
問題コード01191ほかの問題文と上で述べた液状化現象が起こりやすい4要素に関する質問が多いので,補足説明します.
まず,細粒分含有率と細粒土含有率は同じものと思ってください.細粒分含有率(細粒土含有率)が大ということは,砂より粘土が多いことになります.
続いて含水比に関して
まず「ある領域内」にある土を考えます(「だるま落とし3段重ね」をその領域と考えて下さい).土というのは,だるまの一番下の段にあたる「土粒子」と,真ん中の段にあたる「水」と,一番上の段にあたる「空気」から成り立っています.土の含水比とはそのうちの「土粒子の重量Ws」で「水の重量Ww」を割った,Ww/Wsを百分率で表したものです.ここで,含水比は重量比であり体積比ではないことに注意して下さい.
そして,ある領域内における土の大きさ(つまりだるまの1段目の大きさ)が同じならば,水の重量(2段目の大きさ)が大きい程含水比も大きいと言うことになります.
さらに,細粒分含有率(細粒土含有率)が高くなるとなぜ含水比が大きくなるかという説明に行きます.土粒子というのは,水分中にあると周辺の水分子と電気的に吸着する性質があります.粒径が細かいと表面積が広くなるため,その分多くの水を引きつけます.そのため,同じ体積の砂と粘土では引きつけられる水の量が違ってくるのです.粘土の方が粒径が細かい為,より多くの水を引きつけるので,含水比も大きくなります.
これらのことと,上で述べた液状化現象が起こりやすい4要素より,土の含水比は細粒分含有率が大きくなるほど大きくなるのに対し,液状化は細粒土含有率が少ないとおきやすいということがわかると思います.過去問20年分の「知識」で,地盤・土質に関するほとんど全ての性質が網羅されています.
施工科目に収録されている地盤の解説集も参考にしてください.
14.基礎構造
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分)
まず最初に地盤の許容応力度に関する説明から始めます.
地盤の地耐力とは,極限支持力以内で,更に沈下量が上部構造に有害な影響を与えることのない限界沈下量以下となるような荷重(応力度)を指します.
簡単に言うと,「地盤の許容応力度」と「沈下量が許容沈下量となるときの応力度」のうちの小さい方というわけです.
基準法令第93条に基づく告示(平成13年国交告第1113号第二項)より,地盤の許容応力度は,地盤調査に基づく場合と平板載荷試験に基づく場合,スウェーデン式サウンディング試験に基づく場合の3種類があることがわかります.
地盤調査に基づく地盤の長期許容応力度は
qa=1/3(icαCNc+iγβγ1BNγ+iqγ2DfNq)となっています.
icやαなどに関しても説明も記載されていますが,チンプンカンプンの式ですよね.
この式を分かりやすく言うと,( )内の
「icαCNc」は粘性土地盤の項,
「iγβγ1BNγ」は砂質土地盤の項,
「iqγ2DfNq」は根入れの項
による支持力です.
また,「 」内は「基礎の形状」×「支持地盤の強度」=「極限応力度」を意味しています.
また,地盤の短期許容応力度は
qa=2/3(icαCNc+iγβγ1BNγ+iqγ2DfNq)となっています.
つまり,地盤の許容応力度として,極限支持力度の1/3を長期許容応力度,2/3を短期許容応力度としています.これより,長期許容支持力度の極限支持力度に対する安全率は3であることがわかります.
かつ,短期許容応力度は,長期許容応力度の2倍であることがわかります.
また,平板載荷試験に基づく地盤の長期許容応力度は
qa=qt+1/3N’γ2Dfとなっています.1項目(qt)は平板載荷試験による降伏荷重度の1/2または極限応力度の1/3のうちいずれか小さい方,2項目(1/3N’γ2Df)は根入れの項となっています.
短期許容応力度は
qa=2qt+1/3N’γ2Dfとなっています.
これらを見比べてみると,根入れの項の数値が同じため,平板載荷試験に基づいて地盤の許容応力度に関して,「根入れの効果を考慮した場合の短期許容応力度は,長期許容応力度の2倍とならない」および「根入れの効果を無視した場合の短期許容応力度は,長期許容応力度の2倍となる」ということがわかります(問題コード13192).
なおこれらの根入れの項による支持力とは,根入れ深さの部分の土が支持地盤の破壊を上から押さえて防止する効果のことを指しています.
また,基準法令第93条に記載されている地盤の許容応力度の表に目を通しておいてください.
基礎を設計する際に出てくる言葉に関して,少し説明します.
使用限界状態とは,想定する荷重を日常的に作用する荷重を,
損傷限界状態とは,1回から数回遭遇する荷重(50年に1度程度)を,
終局限界状態とは,500年に1回程度の最大級の荷重を
想定しています.
それぞれの限界状態に対しての検討を行います.
杭の鉛直支持力は,載荷試験によって求めることが望ましいですが,載荷試験を行わない場合は,工法に応じた支持力計算式から求めます.
告示(平成13年国交告第1113号第五項)では,打込みぐい,セメントミルク工法による埋込みぐい,およびアースドリル工法等による場所打ちぐいの先端の地盤の許容応力度(qp)を以下のように示しています.
打込みぐい :qp=300/3×N
埋込みぐい :qp=200/3×N
場所打ちぐい:qp=150/3×N
つまり,先端支持力は,場所打ちぐい<埋込みぐい<打込みぐいの順になっています(問題コード22232).
基礎の設計に関して,よく質問が来る問題として問題コード15185があります.基礎構造に対する構造算定をする際に基礎部分の重量を「含む」のか「含まない」のかに関することです.
これには2つのポイントがあります.一つは,基礎スラブの底面積の算定(底面積の大きさを決めることです)で,もう一つは,基礎スラブの断面算定(フーチングに生じる曲げモーメントやせん断力によりフーチングのコンクリート強度や高さなどの大きさを決めることです.曲げモーメントによりフーチングの配筋を決め,せん断力によりコンクリート強度を決めることが多いです)です.
まず一つ目の底面積の算定の場合は,「(フーチングにつながっている)柱からくる軸力(これは上部建物の荷重のことですね)+フーチングなどの基礎自体の重量+基礎部分の上にある埋め戻しの土の重量」の合計でフーチングが地面にめり込まないように底面積を求めます.「柱からくる軸力+基礎自体の重量+埋め戻し土の重量」をフーチング底面積で割った値が地耐力より小さければフーチングがめり込むことはありません.
続いて,その二の基礎の断面算定(つまり基礎の強度などを求めることに関してですが)でのポイントは,その一でフーチングが地面の中にめり込まないような大きさを持っているので,フーチングの重量(下向き)は,接地圧(フーチングが地面から上向きに受ける力)で打ち消しあい,フーチングに応力を生じさせないっていうことです.それと,フーチング上の埋め戻し土量は軽微な場合が多いので通常は無視するということです.その結果として,フーチング重量や埋め戻し土の重量を含まない上部建物からくる柱荷重のみがフーチングに応力を発生させることになります.よって,この柱軸力によって生じる応力が持つように配筋やコンクリート強度などを決めるわけです.
また,問題コード29214の負の摩擦力に関する質問も多く来ます.負の摩擦力とは,ある地層が圧密などにより沈下する際に,杭に下向きの軸力を生じさせてしまうことを言います.杭の設計時に,その地盤沈下による軸力(下向き)を考慮していない場合には危険側になるので,注意しなければなりません.支持杭と摩擦杭で,負の摩擦力の影響は,支持杭の方が多く受けます.これは,負の摩擦力とは,杭の沈下量と地層の沈下量との相対差によって生じるわけですがら,摩擦杭のように,地層と杭とか同じような沈下をする場合には,相対差は小さくなるため,負の摩擦力の影響は小さくなると言えます.
土圧に関しては,施工の土工事・山留め工事の項目で説明します.
■出題のポイント
過去問20年分の「知識」で対応できる問題については,頑張って理解しましょう.
15.免震構造・制振構造
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分)
今回のインプットのコツでは,免震・制振に関して,概要説明します.
ここ数年は,かなり専門的な内容の出題もありますが,まずは全体把握を心がけましょう!
免震構造は,建築物の基礎部分あるいは中間部分に「免震層」をつくることで,建築物を地面と絶縁することで,地震動の揺れを建築物に極力伝えないような構造です.
一方,制振構造は,建築物の中にあらかじめ仕込んだ制振部材で地震力を消費させ,柱や梁が壊れないようにする構造です.
制振構造には,建築物に仕込まれたダンパーで地震力を消費されるパッシブ制振と,電子制御で建築物の揺れを減らすアクティブ制振があります.
免震建築物は,免震層の位置により基礎免震と中間層免震に分類されます.

免震部材には,「絶縁機能」「復元機能」「減衰機能」「支持機能」の4つの機能が求められます.
免震構造の免震層には,主に積層ゴムアイソレータが用いられます.
「絶縁機能」「復元機能」及び「支持機能」を持つ「天然ゴム系積層ゴムアイソレータ」の他に,「減衰機能」も持たせた「高減衰積層ゴムアイソレータ」や「鉛プラグ入り積層ゴムアイソレータ」も使われます.
「天然ゴム系積層ゴムアイソレータ」は「減衰機能」がないため,鋼材ダンパーやオイルダンパー等と組合わせて用いられます.
「天然ゴム系積層ゴムアイソレータ」は大きな引張力が生じる部分には使えません.
大きな引張力が生じる部分にはリニアスライダー等を用います.

積層ゴムのゴム1層の厚さを小さくすると,鉛直支持能力を向上させることができます.

積層ゴムアイソレータ以外の支承には,すべり支承があります.
剛すべり支承と,剛すべり支承に積層ゴム部分が組み合わされた弾性すべり支承があります.
一般的なすべり支承には「絶縁機能」「減衰機能」「支持機能」の3つの機能は有してしますが,「復元機能」は有していません.

免震構造は,免震層より上部構造に伝わる地震動を,4~4.5秒の固有周期となるように長周期化することで,上部構造に生じる応答加速度が著しく低減する構造です.

制振構造とは,地震や風等による建築物の揺れを制御するような特性が付与された構造を指します.
制振構造は,強風時に塔状建築物が大きく揺れるような場合の居住性の改善や,地震による損傷,崩壊を防いで安全性を確保することを目的としています.
制振構造は,大きく分けて,パッシブ制振,アクティブ制振,ハイブリッド制振(パッシブ制振とアクティブ制振の組み合わせ)に分類されます.
パッシブ(受動的)制振とは,外部から力を加えて建築物の振動を制御することなく減衰特性を持たせることで振動を制御する形式をさします.
用いるダンパーには鋼材ダンパー等の「履歴減衰型ダンパー」や,「座屈防止ブレース」等があります.


柱や梁よりも低強度のエネルギー吸収部材を設置するせん断パネル型のダンパーは,上下の主架構に制振部材を直結するタイプのブレース形式と,間柱の中間に設置するタイプの間柱形式とがあります.エネルギー吸収効率は,間柱形式よりもブレース形式の方が高くなります.


他にはオイルダンパーや粘性ダンパーのような「粘性減衰型(速度依存型)ダンパー」もあります.


□学習のポイント
最近出題が増えている免震構造,制振構造については,非常に専門的な内容が含まれているので,全てを理解することは不可能です.
あまり深入りせずに,過去問題の知識で4選択枝をジャッジできるように基本を押さえることがポイントです.
00.力学計算
力学計算全般について
合格ロケットでは,微分・積分の概念を使わず,足し算・引き算・掛け算・割り算の概念のみで「構造(力学計算編)」を説明してあります.これは,微分・積分アレルギーの人が多いからです.
微分・積分を用いないで力学計算を行おうとすると,式を暗記しなければどうしようもできなくなる部分があります.
これらの理由のため,計算式で導き出すのではなく,式を暗記して使いこなした方が得策であると判断した部分に関しては,インプットのコツ内で「○○を理解しましょう」という表現の他に,「○○を暗記しましょう」という表現を使っていきます.
まずは,「力学計算」の目次を見てみましょう.
01「静定・不静定」から10「固有周期」の問題まであります.(融合問題の11「その他」は除く.)
問題だけ,ぱらぱらっと目を通してください.
この中で,01「静定・不静定」と08「たわみ」の問題は,いくらでも難しい問題を作成することができます.
言葉を変えれば,02「断面の性質」,03「応力度」,04「全塑性モーメント」,05「崩壊荷重」,06「トラス」,07「座屈」,09「層間変位」,10「固有周期」の問題は,得点源になりえる単元なのです.
通常のテキスト・問題集は(合格ロケットも含めて),「静定・不静定」が単元の最初にあるため,勉強を始める際にテキスト・問題集の1ページ目から始めると,「静定・不静定」やその単元の基になる「力の釣り合い」,「力の流れ」や「N図,Q図,M図の描き方」の部分で『力学計算』が嫌になるケースが多く見られます.
そこで,インプットのコツとして,01「静定・不静定」はサラッと流して,02「断面の性質」から本格的に攻めていき,最後に,08「たわみ」の問題を勉強することをおススメします.
■学習のポイント
計算問題を学習するにあたっての超重要ポイント!
①問題文を読んで,何を求めれば良いのか(ゴールは何か)?を理解します.
②そのゴールに辿り着くためには,何を求めれば良いのか?を考えます.
③上記の②のゴールに辿り着くためには,何を求めれば良いのか?を考ます.
④上記の③のゴールに辿り着くためには,何を求めれば良いのか?を考ます.
⑤上記の③,④を繰り返します.
それにより,問題を解くに当たり,まず何からやれば良いのかの判断ができるようになります.
つねに,上記のことに意識を置くようにしてください!
01.静定・不静定
この部分は,構造科目を苦手にしている人にとっては,非常にとっつきにくい部分です.全てを完璧に理解しようとすると非常に多くの時間も労力もかかりますので,まずは,一通り広く,浅く勉強していきましょう.
では「静定・不静定」の問題を解く前に,合格ロケットに収録されている00基礎知識の解説を一読してみましょう.特に,00-2「力」の解説①~00-6「力の流れ」の解説(補足編)の部分は力学計算全体に関して基本となる部分です.
00-7「N図,Q図,M図」の解説,00-8「M図,Q図のイメージ」の解説で,N図,Q図,M図の基本となる部分を説明してあります.
■学習のポイント
ポイント1.「「外力系の力の釣り合い」→「内力系の力の釣り合い」で攻める!」
「N図,Q図,M図」を描く場合やトラスの問題などで共通している考え方として,『「外力系の力の釣り合い」→「内力系の力の釣り合い」を考える』ということがあります.
具体的には,「外力系の力の釣り合い」を考えて,外力によって生じる『支点反力』を計算します.次に,「内力系の力の釣り合い」を考えて,外力や支点反力によって部材内部に生じる『内力』を計算します.
言葉で書くと,これだけのことなんですが,これが難しいのですよね.
M図に関しては,「単純梁や片持ち梁のM図は描けるのだけど,門型ラーメンの形になると間違えてしまう(モーメントの描く側が逆になる等)」という質問がよくあります.
「M図の描き方」のインプットのコツを補足で行いますので,M図の描き方に関しては,そちらを参考にしてください.
ポイント2.「「構造物の判別式」は万能ではない!」
「合格ロケット」の01「静定・不静定」項目に進みます.
構造物が安定か不安定か,静定構造物か不静定構造物かに関してですが,この部分に関しても,まずは,広く・浅く勉強しましょう.
テキストなどによっては,外的静定構造物や内的不静定構造物など詳しく説明しているものもありますが,まずは「構造物が安定か不安定か」について判別します.次に,安定構造物に関しては,「不静定構造物なのか静定構造物なのか」に関して判別できるようになりましょう.
その際,「構造物の判別式」を用いる場合があるかと思いますが,この「構造物の判別式」は万能ではないことを覚えておいて下さい.
1層1スパンの構造物に関しては「構造物の判別式」は有効ですが,2層2スパンなどの構造物に関して「構造物の判別式」を適用しようとすると,テクニックが必要になります.
ポイント3.「「静定構造物」の基本形は4パターン!」
「静定構造物」の基本形としては,以下の4パターンがあることを認識してください.

単純梁系や片持ち梁系は,上図のような直線だけでなく,下図の様な形も含まれます.



ポイント4.「「基本的な数値」は覚えてしまおう!」
次に01「静定・不静定の解説」の「静定構造物の暗記事項」に関してですが,長さLの単純梁の中央に集中荷重Pが作用する際の,材中央部のモーメントMがM=PL/4であること,及び等分布荷重ωが作用する際の,材中央部のモーメントMがM=ωL^2/8であることは,ぜひ暗記してしまうことをオススメします.
また01「静定・不静定の解説」の「不静定構造物の暗記事項」に関してですが,長さLの両端固定梁の中央に集中荷重Pが作用する際の,材端部におけるモーメント反力MがM=PL/8であること,及び材中央部のモーメントMはM=PL/4-PL/8=PL/8であること,また,等分布荷重ωが作用する際の,材端部におけるモーメント反力MがM=ωL^2/12であること,及び材中央部のモーメントMはM=ωL^2/8-ωL^2/12=ωL^2/24であることは,ぜひ暗記してしまうことをオススメします.
勿論,暗記することが嫌な人は,計算から求めても構いません.
問題コード01031についてですが,このような不静定構造物の問題は,静定構造物のように,「外力系の力の釣り合い」→「内力系の力の釣り合い」,具体的に説明すると,「外力より支点反力を求めて,部材に生じる内力を求める」という考え方では解くことができません.
支点反力を「外力系の力の釣り合い」のみでは求めることができないからです.そこで,不静定構造物の問題を解く際には,たわみ角法や固定モーメント法などの解法を使うことになります.合格ロケットでは,固定モーメント法をオススメしております(01「静定・不静定の解説」の「固定モーメント法」を参照).これは「不静定問題」のインプットのコツで補足説明いたしますので,そちらを参考にして下さい.
なお,構造科目が非常に不得意の人は,この不静定問題は「捨て問」扱いにしても結構です.ここで悩むよりは,まずは全体を勉強して,時間的・能力的に余力がある場合には,「不静定問題」のインプットのコツを学習して下さい.
問題コード30041,23041についてですが,初めてこの種の問題を目にした際は非常に難しく感じる問題ですが,解説を一読してください.外力(水平荷重のみの場合がほとんどです)によって,梁に生じる内力(軸方向力,せん断力,曲げモーメント)が,上層から下層に伝わってきます.それぞれの場所で,「力は釣り合っている」ことが理解できるかと思います.
01-1.支点反力
「支点反力」を求めることは静定構造物のほとんどの問題(「静定・不静定」項目に限らず,力学計算問題のかなりの範囲がこの部分に含まれます)において求められます.支点反力の計算を間違えると,その後の計算結果によらずに,間違えた答えを選択してしまうことになりますので,あまり軽視をしないでもらいたいと思います.
集中荷重がかかる問題での支点反力の求め方が基本です.
合格ロケットアプリの解説集00-3「力」の解説②の「反力って何?」「反力の種類」と00-4「力の釣り合い」の解説の「外力と反力との関係(外力系の釣り合い)」を参照してください.
外力が等分布荷重や等変分布荷重(三角形荷重など,下図参照)の場合も,基本は集中荷重の時の考え方です.
■学習のポイント
ポイント1.「等分布荷重や等変分布荷重が作用している場合には,集中荷重に置き換える!」

下図の左図ように,「作用対称」の場合は支点反力も左右対称になります.
下図の右図のように「左右非対称」の場合の支点反力は左右対称にはならず,部材の長さに反比例する感じになります.

(下図参照)
00-5「力の流れ」の解説の「「力の発生」のイメージ」と00-6「力の流れ」の解説(補足編)を参照して下さい.
これにより,計算して求めた支点反力のチェックすることができます.


このように,一通りの方法で支点反力を求めるだけでなく,複数の方法で支点反力を求め,クロスチェックすることが重要です.時間があまりかかるわけではないため,クロスチェックすることを強くオススメします.
01-2.M図の描き方
「単純梁や片持ち梁のM図は描けるのですが,門型ラーメンになるとM図が描けない」という話をよく聞きます.話をよく聞くと「M図が描けない」のではなく「M図を間違える」んですね.
N図,Q図に関しては,部材の上に描くのか下に描くのかは重要ではなく,符号が重要です.一般的には,部材の上側や外側にプラス側を描くことが多いですが.
M図に関しては,符号は重要ではなく「部材の引張側に描く」わけです.
そこで,M図の描き方について勉強してみましょう.単純梁を例にとってM図の描き方の基本的な考え方を説明します.
下の図のような単純梁を考えます.


それを,もう少し紐解いてみましょう.
外力として集中荷重Pが単純梁の中央に加わっていますので,支点反力は

■学習のポイント
例えば,一番上の図のような単純梁において,A-C間やC-B間には外力が加わっていないため,M図は直線になっていますよね.
よってM図を描く際には,M図の線が折れ曲がる点=外力(支点反力も含む)が加わる点におけるモーメントの値と,部材のどっち側が引張になるかについて注意を払えばよいということがわかります.
ポイント2.「ピン支点,ローラー支点にモーメント荷重が加わっていない限り,ピン支点,ローラー支点のモーメントはゼロである!」
これは,00-3「力」の解説②の「反力の種類」を参照してください.
以上により,上記図において,A点のモーメントはゼロであることがわかります.
次に,C点に集中荷重Pが加わっていますので,C点のモーメントを求めましょう.
C点をA側(左側)から見た場合について考えましょう.C点をA側からみた場合のC点のモーメントをMCAと表現することとします.
C点をA側(左側)から見るわけですから,下図のように,C点の右側を無視することとします.

C点の左側には+PL/4(+であるため,時計まわりのモーメントであることがわかります)のMCAが生じているため,「内力系の力の釣り合い(作用・反作用)」よりC点の右側には-PL/4のモーメントが生じていることがわかります.


複雑な形状の問題も,上記考え方でM図は間違えずに描けるようになります.
Q図に関しては,00-8「M図,Q図のイメージ」の解説の「Q図変換」の考え方を用いると,M図からQ図がすぐ求まると思います.
02.断面の性質
この項目の重要ポイントは3つあります.
ポイント1.断面1次モーメント(S)
・02「断面の性質」の解説に目を通してください.考えの基本は,矩形(四角形)の図心位置の求め方です.
・断面1次モーメントは,「足し算・引き算」が可能であることを利用して,L型やT型の図心位置を求めることができるようになってください.
ポイント2.断面2次モーメント(I)
・これは,部材の変形のしにくさを表します.02「断面の性質」の解説にあるように,図心を通る基準軸に関する断面2次モーメントIxがIx=b×h^3/12であることは暗記してしまいましょう.
・「どの軸」に対する断面2次モーメントであるのかに注目してください.
・「足し算・引き算」が可能であるため,□型やI型断面の断面2次モーメントは,分割したそれぞれの図形の断面2次モーメントの和(や差)になることを理解しましょう.
ポイント3.断面係数(Z)
・これは,曲げ強さを表します.図心を通る軸についての断面2次モーメントを図心軸から断面縁までの距離で割って求めることが出来ます.矩形(四角形)の図心を通る基準軸に関する断面係数ZはZ=Ix/(h/2)=b×h^2/6となることを理解しましょう.
・「どの軸」に対する断面係数であるのかに注目してください.
・注意ポイントは,断面係数は「足し算・引き算」が不可能であるため,□型やI型断面の断面係数を求める際には,「□型やI型断面の断面2次モーメント」を計算して,図心軸(基準軸)から縁までの長さで割って計算することを理解しましょう.
・この考えは,03「応力度」の問題などで必要になるために,ここの単元で理解しておきましょう.
補足
断面2次半径(i),断面極2次モーメント(Ip),断面相乗モーメント(Ixy)に関しては,02-1「断面の性質」の解説を一読しておいてください.基本的事項(定義)を覚えておきましょう.
また,「基準軸」という概念を強くイメージしてください.

■学習のポイント
この「断面の性質」については,本試験においては,過去問題の類似問題が出題される傾向にありますので,今年度の本試験問題においても合格ロケットに収録されている過去問20年分で問われた知識をきちんとマスターしてさえいれば確実に得点できるものと考えます.H18年度の問題コード18011では,梁A,B,Cがどのように変形するかについてイメージできれば正答肢にたどり着けると思います.特に梁Cに関して変形をイメージできたかがポイントとなりました.
梁Cの変形は,3つのうちの中央部材の中心軸に関して,上部材や下部材が変形するのでしょうか?
上部材は,上部材の中心軸に関して変形しますよね?同様に,下部材は,下部材の中心軸に関して変形しますよね?
この点に着目して,18011を解いてみましょう.
その他の問題については,H型やロ型などの矩形(長方形)以外の断面二次モーメントや断面係数を求めることができるようになっておきましょう!
なお,知っておくと便利な関係として,一辺の長さがDである正方形の断面二次モーメントI□=D^4/12と,直径がDである円の断面二次モーメントI○=πD^4/64の関係として,
I○≒0.6×I□ の関係です.
この関係を知っていると,円の断面二次モーメントの公式を忘れても,大体の大きさを計算することができます.
03.応力度
「応力度」の重要ポイントの説明をする前に,「力」について説明させていただきます.
まず最初に,00-3「力」の解説②~00-6「力の流れ」の解説(補足編)までを一読して下さい.
そうすると,「力」には「外力」と「内力(応力)」という2つの種類があることを理解できると思います.
「外力」とは,物体の外から加わる力のことです.具体的に言えば,例えば単純梁に加わる集中荷重Pや,支点反力などを指します.
一方,「内力」とは,外力によって物体内部に生じる力のことです.外力に応じて生じる力のため「応力」とも言われます.
言葉を変えれば,「外力」が一切加えられなければ(重力なども含む),「内力」は生じません.
ここで,もう一度,00-5「力の流れ」の解説の「作用・反作用の法則」と「内力伝達のイメージ」の部分を読み返してください.
実は,00-5「力の流れ」の部分は,非常にとっつきにくい部分で,この部分が原因で力学計算に嫌気がさしてしまう人が多いです.
なので,「力の流れ」の解説を読み返してみて嫌気がさしてきた人は,あまり深入りせずに次に進みましょう.
力学計算を一通り勉強した後で読み返してみると,意外とすんなり理解できたりしますので,現時点ではあまり心配しないで下さい.
ここで,なぜ「応力度」の勉強をするのかについて,簡単に説明したいと思います.
実際の構造設計において,「許容応力度計算」というものがあります.
概念を説明すると,地震などの「外力」により,部材内部には「内力(応力)」が生じます.その「応力度」が部材材料ごとに決まっている「許容応力度」より小さければ,その部材は「安全」,大きければ部材断面の変更などをしなければなりません.
そのために「応力度」という概念が必要になってきます.そのための勉強であることに気づけば,少しはやる気が起きるかもしれませんね.
「応力」と「応力度」について
「応力度」とは「応力」の「密度」のことを指します.よって,軸方向力が加わった時のように,ある面に一様に「内力(応力)」が生じた場合に部材中の各点に生じる応力度は,「外力」をその点の断面積で割ったものになります(軸方向力なので「垂直応力度」といいます).
生じる「内力」が曲げモーメントやせん断力の場合は,ある面に一様に「内力(応力)」が生じるわけではないので,「垂直応力度」のように「内力(応力)」を断面積で割っただけでは「応力度」は求まりません.
これらについては,以下に挙げる重要ポイントの中で説明させていただきます.
まずは,03-1「応力度」の解説を一読してください.
この項目の重要ポイントは3つあります.
ポイント1.垂直応力度σ(シグマ)
・これは外力により,部材内部に生じる部材方向の「内力(応力)」に関する「応力度」であるため,
垂直応力度(σ)=軸方向力(N)/断面積(A)となります.
ポイント2.せん断応力度τ(タウ)
・これは外力により,部材内部に生じる部材と直交方向「内力(応力)」に関する「応力度」であるため,
平均せん断応力度(τ)=せん断力(Q)/断面積(A)となります.
・せん断応力度(τ)は,垂直応力度(σ)と異なり,応力度は部材断面内に一様に発生しません.矩形断面(四角形断面)や円形断面におけるせん断応力度の分布は断面の中央部が最大となり,縁の部分ではゼロとなります.
・矩形断面における最大せん断応力度(τ)はτ=3/2×Q/A,円形断面における最大せん断応力度(τ)はτ=4/3×Q/Aとなります.
ポイント3.曲げ応力度σb(シグマビー)
・曲げモーメントを受ける部材は,中立軸を境に圧縮側,引張側に分かれます.曲げ応力度は中立軸上でゼロとなり,中立軸から遠ざかるほど大きくなるため,部材断面上下縁で最大となります.これを「縁応力度」と呼び,「曲げ応力度」とは基本的に「縁応力度」のことを指すため,曲げ応力度(σb)=曲げモーメント(M)/断面係数(Z)となります.
・なぜ,曲げモーメントを断面係数で割ると曲げ応力度になるのかは,「全塑性モーメント」のインプットのコツの中で解説させていただきますので,現時点では,そのまま覚えてしまいましょう.
断面内部に生じる「応力度」をすべて足すと,外力によって生じる軸方向力・せん断力,曲げモーメントなどの「応力」になります.
言葉を変えると,軸方向力・せん断力,曲げモーメントなどの「応力」を面積あたりに分解すると「応力度」になります.
これら3つの重要ポイントに注意を払い,問題コード14011以外の過去問題を解いてみましょう.
このように「現象を数式化し,関係式を導き出す」ことが,力学計算編を得点源にする最大の要因の一つであることを理解してください.
次に,問題コード14011について,補足説明させていだたきます.
偏心荷重という言葉を聞いたことがありますか? 偏心荷重とは,

のように,部材には外力として軸方向力である集中荷重Pしか加わっていないのに,外力の加わっている位置によって,部材には集中荷重Pの他に,集中荷重Pによって生じる曲げモーメントも同時に外力と加わっているとみなせるような集中荷重Pを指します.
上記左右の図に生じる内力(応力)が同じものになる,言葉を変えれば,左右の図が=で結ばれることが理解できるようになればしめたものです.
この問題は,「2軸曲げの問題」といい,「応力度」の問題の中では最も難しい問題です.部材の端部に外力Pが加わることにより,ニ方向に変形が進む(3次元的変形)問題だからです.
余り深入りせず(現時点で理解できなくてもいい難しい問題です),一通り勉強が終わった際に,余裕があれば見直せばよい問題(通称:捨て問)の一つです.
この問題を捨てない人のために,補足説明を続けますが,

a方向から見た場合,外力Pによって断面の左側(A点,B点側)が圧縮,断面の右側(C点,D点側)が引張になります.同様に考えると,b方向から見た場合,外力Pによって左側(A点,D点側)が圧縮,断面の右側(B点,C点側)が引張になることがわかります.
以上より,圧縮応力度をマイナス,引張応力度をプラスとした場合,A点からD点のうち,A点に生じる応力度が最も小さく(a方向から見てもb方向から見ても圧縮側なので),C点に生じる応力が最も大きく(a方向から見てもb方向から見ても引張側なので)なると判断することができます.
各点に生じる応力度の具体的な値は上記ポイント1.とポイント3.より計算できます.
この問題は,問17の構造文章題の中で出題されておりますが,内容は「応力度」の問題です.
とは言え,「応力度」の過去問の中では,パッと見,異色な感じがすると思います.フェイスモーメントにおける「応力度」を求める問題だからです.
えっ?フェイスモーメントなんていう言葉なんて聞いたことがないよ!!
っていう人も多いかも知れません.しかし,この問題は,フェイスモーメントという言葉を知らなくても解けますよね.
ちなみに,柱や梁の部材の中央線上におけるモーメント(この問題で言えば,53.0kN・m)ではなく,断面A-Aの位置でのモーメント(50kN・m)をフェイスモーメントと言います.柱に接合している梁のフェイス部分のモーメントだからです.
この断面A-Aの位置でのモーメントを計算できれば,あとは,過去問及び上記重要ポイントを使って,解くことができると思います.
■学習のポイント
この「応力度」については,本試験においては,過去問題の類似問題が出題される傾向にありますので,今年度の本試験問題においても合格ロケットに収録されている過去問20年分で問われた知識をきちんとマスターしてさえいれば確実に得点できるものと考えます.
04.全塑性モーメント
部材に曲げモーメントMのみがかかる場合の,部材内部の「応力」状態を見ていきましょう.

これは,「微小変形理論」や「平面保持の仮定」というものに基づいているからなんですが,こんな言葉「微小・・・」などは知らなくてもいいです.部材中央に曲げモーメントMを受ける場合,圧縮側の縁応力度も引張側の縁応力度も同じ大きさになることは感覚的に理解できると思います.
この曲げモーメントが少しずつ大きくなると,圧縮側,引張側共に,縁応力度が降伏応力度σy(部材材料ごとによって異なります)に達します(上記図の二番目の図).ココまでが弾性範囲です.
降伏応力度σyとは,部材材料が降伏する(壊れてしまう)応力度であるため,更に曲げモーメントMが大きくなると,三角形(三角柱)の応力状態を保てなくなります.上記図の三番目の図のように,台形のように応力状態が進んでいきます.更に曲げモーメントMが大きくなると,上記図の一番下の図のようになります.これ以上は増えようがないので,上記図の一番下の図のような応力状態を「塑性状態」といい,塑性ヒンジが生じることになります.塑性ヒンジに関しては,「崩壊荷重」のところで説明します.
ここで,00-3「力」の解説②「モーメントって何?」「モーメントの計算」,00-5「力の流れ」の解説の「力の発生のイメージ」を一読して下さい.
つまり,「モーメント」とは,「大きさが同じ」で「向きが逆」の一対の集中荷重(「偶力」と言います)に置き換えて考えることが出来ます.
もう少し具体的な例で説明しますと,自動車の運転の「ハンドル」や水道の「蛇口」を思い出してください.
自動車の運転で右折する際には,ハンドルを時計廻りに回します.実際には,左腕を上に,右腕を下に動かすことで,ハンドルは時計廻りに回ります.
曲げモーメントM2を受ける部材(上記図の上から二番目)でも,同様に,曲げモーメントM2を圧縮合力Cと引張合力Tという,「大きさ同じ」で「向きが逆」の一対の力(偶力)で置き換えて考えることができます.
弾性範囲内で考えた場合,圧縮合力Cや引張合力Tの大きさは,三角柱の体積に相当します.よって,C=T=σy×D/2×1/2×Bとなることが理解できるかと思います.
偶力の距離(応力中心間距離といいます)をjとすると,M=C×j=T×jとなるため(これは,00-5「力の流れ」の解説の「力の発生のイメージ」参照),上記図の二番目の図横に書いてあるように,M2=B×D^2/6×σyとなります.
「応力度」のインプットのコツで,曲げ応力度σbとは,曲げモーメントによって生じる「応力度」であるため,σb(σy)=M2/(B×D^2/6)となっていましたよね.σb=M/Zと比較すると,Z=B×D^2/6となることが理解できると思います.
塑性状態(上記図の一番下の図)の場合,圧縮側,引張側ともに応力状態は三角形(三角柱)ではなく四角形(四角柱)になるため,圧縮合力C,引張合力Tはともに,上記図の一番下の図横に書いてあるように,C=T=σy×D/2×B=B×D/2×σyとなります.これら偶力の距離jは,j=D/2となります(これは,上記図の一番下の図より理解できますよね).
塑性状態の時のモーメントを全塑性モーメントといい,Mpと記すとします.そうすると,Mp=C×j=T×j=B×D/2×σy×D/2=B×D^2/4×σy・・・①と計算できます.
部材断面が塑性状態であるときの断面係数を塑性断面係数Zpと記すと,弾性状態の時と同様に,Mp=Zp×σy・・・②と表すことができます.
①と②式を比較すると,Zp=B×D^2/4となります.これは,覚えてしまいましょう.
この項目の重要ポイントは2つあります.
ポイント1.塑性断面係数Zpは足し算・引き算が可能である.
「断面の性質」のインプットのコツで説明しましたが,弾性状態の断面係数Zは,足し算・引き算できません.でも,塑性断面係数は足し算・引き算が出来ます.これは,覚えてしまいましょう.
ポイント2.部材に曲げモーメントMと軸力Nの両方がかかる場合の解き方です.

部材に曲げモーメントMと軸力Nの両方がかかる場合には,上の図の上段に並んでいる3つの図の右側のように縁応力がσyを超えるような応力状態は起きずに,実際は,その下の図のように,縁応力はσyのまま,中立軸(圧縮領域と引張領域の切り替わる部分)が移動します.
言葉を変えると,縁応力はσyを超えることができないので,上記上から2段めの図のように,曲げモーメントMと圧縮軸力Nが両方かかる場合は,圧縮側の応力場(四角柱の体積)が大きくなるわけです.
曲げモーメントは偶力で表すことができましたよね.偶力とは,「大きさが同じ」で「向きが逆」の一対の集中荷重であるため,曲げモーメントMによって生じた圧縮合力CMと引張合力TMは同じ大きさになります.
残りの圧縮合力が軸力Nによって生じた圧縮合力CNと考えることができます.
まずは,基本となる矩形断面の13021及び24011で,「基本的な問題の解き方」をマスターしてしまいましょう.
その次には,22011,02011,25011のようなH型や,28011,30011のようなロ型をマスターしていきましょう!
■学習のポイント
この「全塑性モーメント」については,本試験においては,過去問題の類似問題が出題される傾向にありますので,今年度の本試験問題においても合格ロケットに収録されている過去問20年分で問われた知識をきちんとマスターしてさえいれば確実に得点できるので,得点源にしてしまいましょう!
05.崩壊荷重
この項目に対して「難しそう・・・」というイメージを持っている人が多く見られます.が,実は,得点源の項目です.
以下に説明する重要ポイントを理解すれば,得点源になります.頑張りましょう!
まず最初に,言葉の説明をします.
・崩壊:単純梁やラーメンなどの構造物に荷重を作用させ,その大きさを増大させていく時,それ以上の荷重を加えなくても「ただ変位のみが増大して」変形を生じる状態
・崩壊荷重:崩壊の生じる時の荷重
・崩壊機構:構造物に塑性ヒンジが形成され,その構造物が不安定な状態になるメカニズム(機構)
・塑性ヒンジ:部材のある断面が全塑性モーメントに達して,回転自由なピン状態になった部分
次に,『学科試験の「崩壊荷重」の問題を考える時の回転角θはすごく小さい時を考える』という前提条件に基づいていることを覚えておきましょう.それによって,回転角θがすごく小さい時は,tanθ≒θとみなすことができるんです.このことも覚えておいて下さい.
ここで,「合格ロケット」に収録されている05-1「崩壊荷重」の解説を一読して下さい.
この項目の重要ポイントは5つあります.

ポイント2.仕事(量)=力×移動距離
単純梁やラーメンなどの構造物に外力Pを加えていくと,構造物に内力が生じます.外力が増えるにつれ,内力も増えていきます.一番弱い部材が塑性状態になります(塑性ヒンジが発生します).
具体的な問題の解き方は,「外力による仕事」と「内力による仕事」が等しいという点に着目します.
「外力による仕事」とは,外力Pによって,材が変形します.その仕事量(=力×移動距離)を指します.
「内力による仕事」とは,外力Pによって,材に内力が生じます.構造物が崩壊機構に達した時に,部材に塑性ヒンジが発生して,部材が回転します.その仕事量(=部材の塑性モーメント×回転角)を指します.
ポイント3.塑性ヒンジは部材の弱い方に発生します.

上記左図では,梁の塑性モーメントが200,柱の塑性モーメントが300であるため,外力Pによって柱と梁に生じる内力(曲げモーメント)が200に達した時点で,柱ではなく梁の方に塑性ヒンジが発生します.
ポイント4.柱の長さが異なるラーメン構造物の「外力」による柱の移動距離の求め方

ポイントは,梁の長さは,変形前も変形後も変化しないことです.
ポイント5.「内力による仕事(=部材の塑性モーメント×回転角)」は『新たに発生したヒンジに関してのみ』考慮すること
例えば,片側が固定端,もう一方がピン支点であるラーメン構造物の場合,ピン支点の部分に関しては,元々ピンであり,塑性ヒンジが発生したわけではないので,「内力による仕事」とは考えません.
以上の重要ポイントに意識して,過去問を解いて見ましょう.
■ 学習のポイント
一番最初の部分に書きましたが,この「崩壊荷重」という項目に苦手意識を持っている人は多いのですが,意外と点数が取りやすいと思えるようになりませんか?もう一度,解説に目を通してください.
この「崩壊荷重」については,本試験においては,過去問題の類似問題が出題される傾向にありますので,今年度の本試験問題においても合格ロケットアプリに収録されている過去問20年分で問われた知識をきちんとマスターしてさえいれば確実に得点できますよ!
06.トラス
学科試験における「トラス」の問題は,以下の仮定に基づいています.
・全ての部材が直線で,三角構成された骨組み
・節点が全てピン接合
・外力(集中荷重のみ)は節点にのみ作用
ポイント1.「節点には曲げモーメントは生じない.各部材に生じる応力は軸力のみ!」
上記,仮定に基づいているため,ポイント1.が言えます.それによって,問題を解くという行為が容易になるわけです.
次に,問題を解くという行為をより容易にするために
ポイント2.「ゼロ部材を探せ!」
「ゼロ部材」とは,応力(軸力)が生じない部材のことです.「トラス」の問題は,ある外力がかかる構造物において,ある部材に生じる応力はいくつになるでしょう?という問題ですから,「ゼロ部材」を探しだし,その部材を無視して考えると,より容易になります.
具体的には,節点に2つの部材が接合されていて,その節点に外力(反力)が作用していない場合には,その2つの部材に生じる応力はゼロである.ということが言えます.

建築士の学科試験のトラス構造物の問題は,「力は釣り合っている」わけです.「外力(反力)」も,それによって生じる「内力(軸力)」も釣り合っているわけです.例えば,上記図の真ん中の図において,N3がゼロでなければ,N3の内力に釣り合う力が存在しません.N1に関しては,「大きさが同じ」で「向きが逆」であるN2と釣り合うことで,「力の釣り合い」は成立できます.つまり,N3=0と考えることができます.
実際に問題を解く際に,「ゼロ部材」を鉛筆などで塗りつぶしてみると,部材数が減って,問題が簡単になります.
ポイント3.「切断法」「節点法(示力図は閉じる)」をマスターしよう!
トラス構造物では,上記の仮定に書いてあるように,「軸力しか生じなく」かつ「内力も釣り合っている」ため,問題解法として「節点法(示力図は閉じる)」という方法が使えます.これは,06-1「トラス」の解説内の『部材に生じる軸力を求める場合,節点ごとに考えていく』に説明してあります.また「切断法」に関しては,06-1「トラス」の解説内の『Nfgを違う解法で求める』に説明してあります.
ここで,

引張材と圧縮材は,上記図のようにルール付けします.逆に考える人も多くいるので注意して下さい.
「トラス」の問題の基本的な解き方としては(静定構造物であるので),「外力系の力の釣り合いを考える」→「内力系の力の釣り合いを考える」という2つの計算しかありません.
「外力系の力の釣り合い」とは,「外力(集中荷重)」によって,「支点反力」生じます.それを求めることを指します.
「内力系の力の釣り合い」とは,「外力(集中荷重)」によって生じた「内力(軸力)」を求めます.「節点法(示力図は閉じる)」や「切断法」によって求めることを指します.
「切断法」のポイントとしては,
・「切断する部材」は3つ以下
・具体的な計算としては,ΣM=0,あるいはΣY=0のどちらか
となります.
問題コード16051について,補足説明させていただきます.
この問題は,他の過去問の解き方のみでは,答えまでたどり着くことは非常に難しいです.
まずは,一旦保留として,全項目に目を通してから,気合の入っている人のみ手をつけるようにして下さい!
通常のトラスの問題は「部材○○に生じる軸方向力はいくつか」という問題文であるのに対し,この問題は「B点の水平方向(横方向)の変位δBはいくつか」という問題ですね.
この問題を見たときに「通常のトラスの問題とは違うぞ.どうしよう??」と思った後で,「んん?求めたいのは水平変位δで,『それぞれの部材は等質等断面とし,断面積をA,ヤング率をEとする』の部分って,どこかで見たことがあるぞ!」という風に考えられるかがポイントです.
『ひずみ度ε(イプシロン)とは,長さLの部材が外力PによってΔLだけ変形した際に,ε=ΔL/Lと定義するものです.
ヤング係数Eとは,外力がかかった際の部材の変形のしにくさを表す指標であり,ヤング係数(E)=垂直応力度(σ)/ひずみ度(ε)で表現することができます.式を変形すると,垂直応力度(σ)=ヤング係数(E)×ひずみ度(ε)と表すこともできます.
部材にかかる外力(軸方向力)をN,部材断面積をAとすると,外力Nにより部材に生じる内力(σ)はσ=N/Aと表すことができるので,N/A=E×ΔL/L,これより,ΔL=NL/EAとなります.
このように「現象を数式化し,関係式を導き出す」ことが,構造(力学計算編)を得点源にする最大の要因の一つであることを理解してください.』
の部分が思い出されるかが解ける,解けないの分岐点になることがわかると思います.
「節点法」のポイントに関しては,「節点法」のインプットのコツを参照して下さい.
■ 学習のポイント
この「トラス」については,本試験においては,過去問題の類似問題が出題される傾向にありますので,今年度の本試験問題においても合格ロケットに収録されている過去問20年分で問われた知識をきちんとマスターしてさえいれば確実に得点できるものと考えます.
しかし,上記「トラス」の3つの重要ポイントを駆使しても考え方がわからない問題は,一番後回しにすることを薦めます.
06-1.節点法の解き方
トラス構造物の問題を解く方法に,切断法と節点法の2種類があります.更に節点法の中には,数値計算法と図式法の2種類があります.
その節点法の中の図式法のことを「示力図は閉じるで解く方法」と呼ぶこともあります.
今回は,この図式法について説明します.
まず,前提条件として,トラス構造物の問題は静定構造物であることがあります.ということは,力は釣り合っているわけです.
外力系の力の釣り合いで考えるとトラス構造物全体に関して,力は釣り合っていることがわかります.
内力系の力の釣り合いで考えると,トラス構造物全体が釣り合っているためには,各節点も釣り合っていることになります.
そこで,各節点ごとに,内力系の力の釣り合いを考え,力は釣り合っていることを数値計算ではなく図解法として行う方法に図式法は位置します.
それでは具体例で説明していきましょう.
下図の問題で説明していきます.

のような問題です.
静定構造物であるため,外力系の力の釣り合いを考え,支点反力を求めます.

のようになります.
次に,ゼロ部材を探します.ゼロ部材に関しては「トラス」のインプットのコツのポイント2.を参照してください.
この問題の場合は,セロ部材はありませんね.
ポイント1.図式法では,未知力が2つ以下の節点について,力の釣り合いを考える!
このポイントは覚えてください.
なぜなのでしょうか.
簡単に言うと,未知力が3つ以上の節点について力の釣り合いを考えてみても,解くことができないからです.
上図において,左右対称であるため,左半分について考えます.
A点,B点,C点,F点,G点のうち,未知力が2つ以下の場所を考えます.

A点の未知数が2つですので,A点について考えてみましょう.

「節点で力が釣り合っている」=「示力図は閉じる」わけなので,節点Aに加わる力(外力P,NAB,NAF)の始点と終点とを結ばれる一筆書きができるように力の足し算を行います.上図の右図ですね.

つまりA点での力の釣り合いは上図のようになります.
NABは節点を引張る方向の力であるため引張力で,NAFは節点を押す方向の力であるため圧縮力であることがわかります.
それを,問題の図に記入してみます.

のようになります.AB材は引張材であることがわかり,B点に関してNBAは節点を引張る方向に生じていることがわかります.同様に,AF材は圧縮材であるとわかり,F点に関してNFAは節点を押す方向に生じていることがわかります.
続いてB点,C点,F点,G点において,未知力が2つ以下の部分を探します.

F点が該当しますね.
F点について力の釣り合いを考えて見ます.

上図の左図にあるような各力が閉じるようになるためには,上図の右図のような力の向きであればよいことがわかります.

以上により,F点に関しては,上図のような力の釣り合いが成り立つことがわかります.
これを問題の図に記入しましょう.

のようになります.
次にどの点について考えればよいでしょうか.

B点ですね.

上図の左図のような各力が閉じるようにするためには,どうすればよいでしょうか.
上図の右図の上図でも下図でも閉じていることがわかります.
好きな方でいいので,各力が閉じるときの,各力の方向を自分で求められるようになってください.
以上の図より,NBCはB点を引張る方向の力,NBGもB点を引張る方向の力であることがわかります.
これを,問題の図に記入します.

のようになりますね.
この問題は架構も外力も左右対称であるため,各部材に生じる応力も左右対称になることはイメージできるでしょうか.
そうすると,

のようになります.
続いて,C点に関して力の釣り合いを考えて見ましょう.

上図の左図にあるような各力が閉じるようになるためには,上図の右図のような力の向きであればよいことがわかります.右図の上図でも下図でも閉じていればいいのですから,どっちでも構いません.
どちらの示力図でもNCGはC点を押す力(圧縮力)であることがわかります.
これを問題の図に記入すると

のようになります.
以上のことにより,「節点法」で各部材に生じる軸力が引張力か圧縮力であるかが判別することができます.
この問題のように,引張材か圧縮材かという問題に関しては,節点法の図式法で求めることができます.
しかし,ある部材に生じる軸力の値を求める問題に関しては,各節点での力の釣り合いを考えるときに,各力の値も求めなければなりません.
その際,「三四五の定理」や「ピタゴラスの定理」などの知識が必要になってきます.その辺は,00基礎知識の解説を参照してください.
また,図式法で各節点での力の釣り合いを考えるときに,例えば上記問題のC点におけるNCGと外力Pのように,向きが逆の力が出てくる場合に,各力の大きさの大小関係がわからないと,図式法で上手く示力図を描けない場合があります.
その時は,例えば上記問題のように全ての部材の長さがわからない場合,あるいは,角度が分からない場合には,各自で適当に決めてしまう方法があります.
例えば,


のように,∠BAF=30°であるとか,CG材の長さをLとかにして,「三四五の定理」や「ピタゴラスの定理」の定理を使いながら図式法で求めていく方法です..
この節点法に関しては,非常に多くの質問が来ます.ですので,「節点法を機械式に解く方法」という資料を作成しましたので,目を通しておいて下さい(コチラ).
■学習のポイント
トラス構造物として,図式法にとらわれ過ぎないように注意して下さい.問題によっては,切断法の方が簡単に求めることができます.切断法,図式法ともに解法を理解した上で,自分で使い分けられるようになってください.使い分けられるようになるためには,過去問で練習する方法が非常に有効です.
07.たわみ
部材に外力が作用し変形した時の部材中の任意の点の変位量を「たわみ」といいます.下図において,X点におけるたわみをδx(デルタエックス)といいます.

部材に外力が作用し変形した時の変形後の部材の任意の点における接線と,部材軸とのなす角度を「回転角」または「たわみ角」といいます.下図において,X点における回転角をθx(シータエックス)といいます.

この項目において,単純梁,片持ち梁,両端固定梁の部材中央部分に集中荷重Pが加わる形と部材全体に等分布荷重ωが加わる形,及び片持ち梁の先端にモーメント荷重Mが加わる形を「たわみ及び回転角の基本形」と呼ぶことにします.
これらのたわみや回転角を計算で求めようとする場合には,積分計算が必要になってきます.
そこで,微分・積分計算が苦手な人は「基本形」のたわみと回転角は暗記してしまいましょう!
暗記する項目をなるべく減らしたい人は,「モールの定理」のインプットのコツ内で,計算によりたわみや回転角を求める方法を説明いたしますので,そちらを参考にしてください.
ポイント1.「たわみ」「回転角」の基本形は覚えよう!
具体的には,下図に示す12個の数値を覚えることになります.

続いて,知っていたらたわみが楽に求められる知識として「マクスウェルの定理」というのがあります.
ポイント2.マクスウェルの定理を知っておこう!
「A点に荷重Pが作用する時のB点のたわみδBと,B点に荷重Pが作用する時のA点のたわみδAが等しくなる」という定理です.


ここで,過去問題を見てみましょう.上記「基本形」の数値を暗記しておけば対応可能ですね.
なお,「モールの定理(その2)」のインプットのコツの中で,「モールの定理の元になっている考え方」という積分を用いてたわみや回転角を求める方法に関して説明してある部分があります.この部分を勉強すると,たわみδとモーメントMやせん断力Qとの関係が理解できると思います.
しかし,この部分は数学の計算が得意な人以外は,あまり深入りしてはいけない危険な世界です.微分・積分などを用いた計算を行ってもいいから暗記項目を極力減らしたい人は,「モールの定理」のインプットのコツを参照して下さい.
過去問題について追加説明させていただきます.
問題コード14061,19021,27021の問題は非常に難しいです.これらは「基本形」だけでは太刀打ちできないような問題です.
また問題コード 18031は,問題コード14061と似ているなぁということを意識できたでしょうか?
「事象を具現化する」ことを求められている訳です.
具体的には,「問題の架構がどのような挙動を示すか(変形をするのか)」を考え,「自分の持っているパーツ(インプットのコツで説明している各項目の重要ポイント)で対処できないか」について考えなければならないわけです.
この部分が,「たわみ項目の問題はいくらでも難しい問題を出題することが可能だよ」という背景でもあります.
構造を苦手としている人は,まずは,問題コード14061や19021,27021の問題はパスして先に進みましょう.全体の勉強を終えてから余裕があれば,再度チャレンジしてみてください.
なお,問題コード14061の問題は,与えられている外力が集中荷重のみであるため,モールの定理を用いても計算することが出来ます.「モールの定理(その1)」,「モールの定理(その2)」のインプットのコツを参照して下さい.
■ 学習のポイント
この「たわみ」については,インプットのコツで説明してある「基本形」のたわみと回転角を求めることを,確実に行えることができるようになっておいてください.その上で,問題コード14061や19021,27021のように,「基本形」に関する知識だけでは太刀打ちできない場合は「全体挙動を考える」→「その挙動の中に,基本形が含まれていないかについて考える」というような考え方をするようにしてください.
再度繰り返しますが,建築士の学科試験は満点を取らなくても受かることができる試験です.たわみ項目の難しい問題にとらわれ過ぎて,他の問題が時間切れになるようなことが起きないように気をつけてください.
07-1.モールの定理(その1)
単純梁や片持ち梁に集中荷重やモーメント荷重が加わるときの部材の「たわみ」や「回転角(たわみ角)」を求める方法に「モールの定理」があります.
「モールの定理(その1)」のインプットのコツでは,まず最初に,単純梁と片持ち梁に集中荷重やモーメント荷重が加わるときのモールの定理による計算方法を説明します.
「モールの定理(その2)」のインプットのコツでは,部材端部以外に支点がある架構や連続梁に集中荷重やモーメント荷重が加わるときのモールの定理による計算方法を説明します.続いて,「モールの定理の元になっている考え方」他に関して説明します.
「モールの定理」の基本として,
ポイント1.「各点の回転角は,弾性荷重によるその点のせん断力Qに等しい」「各点のたわみは,弾性荷重によるその点のモーメントMに等しい」
ポイント2.「ピン支点,ローラー支点はそのまま」「固定端は自由端に,自由端は固定端に変更する」
があります.
ここで,「弾性荷重」とは,(梁に生じる)曲げモーメントMを,その梁の曲げ剛性EIで割ったM/EIのことを指します.
言葉だけではイメージし難いので,具体例を用いて説明していきましょう.

上図のような単純梁のC点におけるたわみδC,B点における回転角θB(A点における回転角θA)を求めてみましょう.
手順1.M図を求めます.M図は下図のようになりますね.

手順2.上図のように,部材中の各点に発生する曲げモーメントMをEIで割った数値をM図が発生する側と逆側に荷重(弾性荷重)として作用させます.
この時に,ポイント2.に注意しましょう.上図の問題では,単純梁であるため,ピン支点とローラー支点しかないため,支点の変更はありません.

外力系の釣り合いは上図のようになるため,支点反力VA=VB=PL^2/16EIとなります.
よって,A点における回転角θA,B点における回転角θB,C点におけるたわみδCは

続いて,片持ち梁の先端に集中荷重が加わるときについて考えて見ましょう.

のような場合ですね.
手順は単純梁の場合と同様です.
M図は下図のようになりますね.

MをEIで割った弾性荷重を作用させた場合を考えて見ましょう.
ポイント2.に注意しましょう.「固定端は自由端に,自由端は固定端に変更する」とは,具体的には上図のように,弾性荷重を考えるときに,支点の状態を変更して考えることを指します.
この三角形の弾性荷重は,

のように,集中荷重に置き換えて考えて見ましょう.重心位置に三角形の面積分の荷重がかかると考えればいいのです.
そうすると,A点の回転角θA,B点の回転角θB,A点のたわみδAは

のようになります.問題の図において,B点は固定端であるため,B点の回転角はゼロになるのは理解できますね.
続いて,下図のように,片持ち梁の(先端以外の)ある点に集中荷重が加わるときについて考えて見ましょう.

M図は下図のようになります.

弾性荷重を考えると上図のようになることがわかると思います(支点の変更に注意!).
下図のように,三角形荷重を集中荷重に置き換えて考えると

A点,B点の回転角とA点のたわみは

のようになります.
続いて,モーメント荷重が加わるときについて考えて見ましょう.

上図のような問題ですね.
モーメント荷重が加わる場合の考え方は,集中荷重が加わるときと同様です.
まずは,モーメント図を考えましょう.

上図のように,弾性荷重を考えます.この問題の場合は,単純梁であるため,ポイント2.の支点の変更はありません.
ポイント1.より,A点,B点のせん断力QA,QBを求める(=支点反力VA,VBと同じ値になります)ことにより,A点とB点の回転角θAとθBが求まります.C点のモーメントの値MCを求めることで,C点のたわみδCが求まります.


次に,この問題におけるたわみが最大の点のたわみδmaxを求めてみましょう.
δmaxはθ=0の位置であることは理解できるでしょうか.
単純梁の部材中央に集中荷重が加わる場合(このインプットのコツの一番上の図参照)を考えて見ましょう.
部材中央のC点のたわみが最も大きいことは理解できると思います.この図において,端部(A点,B点)の回転角θAとθBが最も大きく,中央部C点の回転角θCはゼロであることがわかるかと思います.
ポイント3.たわみの最大値は,回転角がゼロとなる位置で生じる!
では,単純梁にモーメント荷重が加わる場合のδmaxを求めてみましょう.
下図のように,弾性荷重を考え,B点から任意の点(B点から距離xだけ離れた点をx点とします)でのせん断力Qxを計算します.

上図のように,x点より右側を考え(左側でも構いません)ます.B点の支点反力は上向きにML/6EI,弾性荷重のうち,今回対象範囲(x点から右側の部分の三角形)を集中荷重に置き換えて考えるとP=Mx^2/2EILとなります.
よって,x点でのせん断力Qxは

となり,δmaxはB点よりL/√3の位置で生じることがわかります.
下図のような片持ち梁にモーメント荷重が加わるときについてはどうでしょうか.

M図は下図のようになり,

弾性荷重M/EIは上図のようになりますね.
A点でのせん断力QAはM/EIとなり,A点でのモーメントはML^2/2EIとなることが理解していただけると思います.


以上の説明は理解できましたでしょうか.
「モールの定理(その1)」のインプットのコツでは,単純梁や片持ち梁に集中荷重,モーメント荷重が加わる場合の「モールの定理」の計算方法について説明しました.
通常のテキストなどでは,「モールの定理」とは,単純梁と片持ち梁を対象とした説明になっていると思われます.しかし,この考え方を拡張すると,「たわみ」項目の問題コード14061の架構にも適用することができます.
それについては「モールの定理(その2)」のインプットのコツで説明します.
07-2.モールの定理(その2)
単純梁や片持ち梁に集中荷重やモーメント荷重が加わるときのモールの定理による計算方法に関しては,「モールの定理(その1)」のインプットのコツを参照して下さい.
今回は,単純梁,片持ち梁以外の架構にモールの定理を使う場合について考えて見ます.
まずは,連続梁の解き方について考えて見ましょう.連続梁とは,下図のように,ピン接合点や連続梁の支点を持つ架構を指します.

ここで,支点についてまとめてみましょう.

ピン支点,ローラー支点は,単純梁と同様です.部材端部に位置することに注意して下さい.
特徴としては,「反力が生じる」かつ「モーメントは生じない」ことが言えます.
連続梁の支点というのは,部材端部以外にあるピン支点,ローラー支点を指します.
特徴としては,「反力が生じる」かつ「モーメントが生じる」ことが言えます.
ピン接合点というのは,部材端部以外にあるピンを指します(ピン支点ではありません).
特徴としては,支点ではないので「反力は生じない」かつ「モーメントは生じない」ことが言えます.
ポイント1.「ピン支点」「連続梁の支点」「ピン接合点」の違いを理解しよう!
連続梁の問題の解き方は,
ポイント2.ピン接合点(上図C点)のところで切断し,単純梁と片持ち梁として解いていく!

上図のように,まず,ピン接合点(上図C点)で左右に分けて考えます.
左図を単純梁とみなして支点反力を求めます.VA=1kN,VC=2kN(共に上向き)となります.
しかし,C点はピン接合点であり,支点反力は生じないため,上図の右図のC点に下向きのVCを加えてあげることで,C点には支点反力が生じていないことになります.
その結果,VB=2kN(上向き),HB=0,B点での外力系の力の釣り合いを考えると,MB-VC×2=0→MB=2VC=4kN・mとなります.
連続梁は以上のように解くことができます.
それでは,本題に入ります.
「モールの定理(その1)」のインプットのコツのポイント2.で「弾性荷重を考える手順において,支点条件を変更する」ということが必要であると説明しました.
「ピン支点,ローラー支点はそのまま」「固定端は自由端に,自由端は固定端に変更する」わけです.
「モールの定理(その2)」のインプットのコツでは,更に以下の支点条件の変更を考慮することにします.
ポイント3.「連続梁の支点はピン接合点に,ピン接合点は連続梁の支点に変更する!」
モールの定理を用いて問題を解く際の手順は,単純梁や片持ち梁の場合と同様です.
では,具体的に解いていきましょう.

手順1としてモーメント図を描くわけですから,まず最初に支点反力を求めましょう.

計算は省略しますが,上図のような支点反力が求まります.
そうすると,モーメント図は

のようになります.
続いて,弾性荷重について考えましょう.

弾性荷重の最大値は,モーメント図の最大値PLをEIで割ったPL/EIとなりますね.また,A点のピン支点の変更はないのですが,B点の連続梁の支点はピン接合点に,C点の自由端は固定端に変更することを忘れないでください.
上図のような荷重が加わったときのC点,D点のモーメントMC,MDがδC,δDとなるので,上図のような弾性荷重が加わったときの支点反力を求めましょう.
三角形荷重を等価な集中荷重に置き換えて考えましょう.

上図のような集中荷重に置き換えることができますね.次に,B点のピン接合点で,単純梁と片持ち梁の2つに分解して考えましょう.

上図のように2つに分解すると,

となり,C点のたわみδCが求まります.続いて,D点のたわみδDを求めましょう.
D点のモーメントMDを求めればいいのでね.下図の三角形荷重を等価な集中荷重に置き換えてみましょう.

上図のようになることがわかると思います.
よってMDは

となり,δDが求まります.
ここで気づいた人もいるかもしれませんが,δCは「たわみ」の問題コード14061の問題でした.
新問対策として,少し類題を解いてみましょう.

の問題を考えて見ましょう.C点とD点(E点)のたわみを求めてみましょう.
まずは支点反力を考えます.

左右対称であるため,上図のようになりますよね.
で,次にモーメント図を考えましょう.下図のようになりますね.

次に,弾性荷重を考えましょう.

支点の変更はOKですか?
この弾性荷重が加わったときのMC,MDを求めるわけですから,まずは支点反力を求めましょう.

以上により,δCは求まりますね.

により,δD(=δE)も求まります.
クドイですが,もう一問いきましょう.

の問題において,E点のたわみδEを求めてみましょう.
以下の説明は,ポイントの抜粋にしますね.各自で解いてみてください.
モーメント図は

となります.よって,支点の変更に注意して,弾性荷重を考えると

となります.単純梁と片持ち梁に分解すると,単純梁の支点反力は

となるため,片持ち梁の先端(C点)に上向きにVCを与えてあげると

となり,δEが求まりますね.
ここで,「モールの定理」の元になっている考え方に関して説明します.たわみ曲線の微分方程式のことなんですが,「ビ,ビ,ビブン方程式~!?」っていう反応を示す人が多いと思うので,ここでは,結論のみ記載します.詳細を知りたい人は,力学の教科書を見て下さいね.
で,まず最初になぜここで「たわみ曲線の微分方程式」について書くのかについて説明します.
「たわみ」のインプットのコツにおいて,ポイント1.として「たわみ」「回転角」の基本形は覚えよう!という説明をしました.これは,微分・積分アレルギーの人が非常に多いため,最小限の暗記項目で乗り切ろう!という方向性からの説明です.しかし,簡単な微分・積分の計算をすることはOKなので,できるだけ暗記項目を減らしたいという人もいます.文章問題(計画,構造,施工)で暗記することが非常に多いため,この意見も十分理解できます.そこで,たわみと回転角については,「基本形」に関しても計算で行う方法を説明します.
勿論,微分・積分アレルギーの人は,以下の説明については見なくてもいいですよ.

上図の片持ち梁で説明します.
B点から任意の点x(B点からの距離がxである点)でのモーメントMxは,Mx=Pxとなります.
ここで,任意の点(B点から距離xである点)の回転角θは以下の式で表すことができます(結果のみ示します).

任意の点(B点から距離xである点)のたわみδは以下の式で表すことができます(結果のみ示します).

よって,片持ち梁の先端(B点)のたわみ,回転角は(上記式において,x=0とすると)

となり,片持ち梁の中央部分のたわみ,回転角は(上記式において,x=L/2とすると)

となります.
当然,「たわみ」のインプットのコツのポイント1.「たわみ」「回転角」の基本形に関しても,上記計算で求めることができます.
最後になりますが,外力が集中荷重ではなく,等分布荷重の場合にモールの定理を用いて計算することは得策ではありません.考え方としては,モールの定理で計算することができるのですが,弾性荷重を考える際に,集中荷重の場合は三角形荷重となるため等価な集中荷重に置き換えることがやりやすいのですが,等分布荷重の場合は難しいからです.
もし,等分布荷重の時は

の下側(上側は集中荷重の時)を参考にしてください.
等分布荷重の場合には,上記で説明した「たわみ曲線の微分方程式」で求めることもできます.
また,建築士試験の場合は記述式の試験ではなく,4択の選択式の試験であるため,等分布荷重がかかった問題の場合には,まずモーメント図を描いて,弾性荷重を考えるときに,ほぼ同値とみなせる集中荷重に変換することで,モールの定理を用いて,等分布荷重がかかるときのたわみの近似値を求めることもできます.
しかし,これは最後の悪あがきとしての考え方の一つであると考えてください.
08.座屈
「座屈」項目の重要ポイントは3つあります.
この重要ポイントを理解すれば,得点源になります.頑張りましょう.
まず最初に「座屈」項目に関して,「現象を数式化し,関係式を導き出す」ことを行ってみましょう.

上図左のように,部材に外力Pが加わる場合について考えてみると,外力Pの値を徐々に大きくしていくと,部材は圧縮されるため上図右のように変形していきます.

更に,外力Pの値を増やし続けると,ある値を境に部材は上図のように急激に変形してしまいます.この現象を「座屈」といい,座屈に至る時の外力Pの値を「座屈荷重」と呼びます.
次に,「座屈長さLk」について考えて見ましょう.

上図のような部材の支持条件を「両端ピン」といい,座屈に至る時の変形は右図のようになります.この時,弓なり型を形成する部分の元の長さを「座屈長さ」と言います.
上図より,「両端ピン」の場合の座屈長さLkは,Lk=Lとなります.

上図のような部材の支持条件を「一端ピン他端固定(水平拘束)」といい,座屈に至る時の変形は右図のようになります.
上図より,「一端ピン他端固定(水平拘束)」の場合の座屈長さLkは,Lk=0.7Lとなります.
なお,何故Lk=0.6LでなくLk=0.7Lなんだろう?とは考えず,ここでは,「一端ピン他端固定」の場合の座屈長さLkは,Lk=0.7Lと覚えてしまいましょう.

上図のような部材の支持条件を「両端固定(水平拘束)」といい,座屈に至る時の変形は右図のようになります.弓なり型を形成する部分は,元の長さの半分になるため,「両端固定(水平拘束)」の座屈長さLkは,Lk=0.5Lとなります.

また,上図のように「両端固定」でも水平拘束でない場合の座屈長さLkは,Lk=Lとなります.右図の変形の形を見れば納得できると思います.
以上のことをまとめると
ポイント1.「座屈長さLkは,Lk=0.5L,0.7L,L,2Lの4種類あります」
それぞれの弓なり型が,自分で導けるようにしておいて下さい.
ポイント2.「座屈荷重Pkは,Pk=π^2×EI/Lk^2である」
ここで,Eはヤング係数,Iは弱軸に関する断面2次モーメント,Lkは座屈長さのことです.

また,弱軸とは,断面2次モーメントが最小になる軸のことです.断面2次モーメントに関しては「断面」のインプットのコツのポイント2.を参照して下さい.
何故,強軸ではなく,弱軸なのでしょうか?
強軸とは変形し難い方向の基準軸,弱軸とは変形し易い方向の基準軸のことを指します.今回のインプットのコツの最初の部分に書きましたが,上から二番目の図で,急激に変形する場合は,変形し難い方向に変形するか,変形し易い方向に変形するかを考えれば,「座屈荷重」を計算する時に用いる断面2次モーメントは「弱軸に関する断面2次モーメント」であることが理解できるかと思います.
座屈荷重Pkは,細長比λを用いて,Pk=π^2×EA/λ^2と表すこともできます(式の変形に関しては,アプリ内解説集の07「座屈の解説のP3を参照して下さい).
つまり,Pk=π^2×EI/Lk^2=π^2×EA/λ^2と書くことができます.
一見すると,座屈荷重Pkは,部材の断面積Aに比例するように見えますが,分母にある細長比λの中に断面積Aは影響しているため,結果的には
ポイント3.「座屈荷重Pkは,部材の断面積Aに比例しない」
ということが言えます.ここまで理解できれば,「座屈」項目に関しては,ほぼ網羅したことになります.
過去問を一読してみましょう.
その時に,「合格ロケット」の解説で,上記重要ポイントを具体的にどのように使っているか!に着眼点を置くことを忘れないでくださいね.
最後に問題コード19061,02061に関して補足説明させていただたきます.
この問題は,13061,18061,29061とは異なり,『梁は剛梁』ではありません(問題文に,「梁は剛体・・・」などと書いていないため).
よって,梁には「曲げ変形」が生じてしまいます.
もし,梁が剛梁で,梁に「曲げ変形」が生じない場合は

のような全体変形となりますが,梁に「曲げ変形」が生じる場合は

のように,梁端部と柱頭部は「剛接合(直角)」であるため,柱の座屈長さ(=弓なり長さ)は,梁が剛梁の場合より長くなります.
そのことに注意してください.
■ 学習のポイント
この「座屈」については,本試験においては,過去問題の類似問題が出題される傾向にありますので,今年度の本試験問題においても合格ロケットに収録されている過去問20年分で問われた知識をきちんとマスターしてさえいれば確実に得点できるものと考えます.
09.層間変位
「層間変位」項目の重要ポイントは2つあります.
この重要ポイントを理解すれば,得点源になります.頑張りましょう.
まず最初に「層間変位」項目に関して,「現象を数式化し,関係式を導き出す」ことを行ってみましょう.

上図の左図のように,1層,2層,3層の各層の剛性がK1,K2,K3である三層構造物に外力が作用する場合,右図のように変形します.
「層せん断力」とは,任意の層に発生するせん断力の合計(柱が2本である場合では,2本の柱の各せん断力の和)のことを指します.
また,「層間変位」とは,各層の変位(上図の右図のδA,δB,δC)のことを指します.
ポイント1.「任意の層の層間変位=任意の層に作用する層せん断力/任意の層の剛性である」
ポイント2.「任意の層に作用する層せん断力は,その層より上部に作用する外力の和である」

上図のように外力が作用する場合,Q1はPではなく3P(=2P+P)となります.
ここまで理解できれば,「層間変位」項目に関しては,ほぼ網羅したことになります.
過去問を一読してみましょう.
その時に,「合格ロケット」の解説で,上記重要ポイントを具体的にどのように使っているか!に着眼点を置くことを忘れないでくださいね.
最後に,問題コード13041に関して補足説明させていただきます.
問題コード13041では,屋上ではなく,最上階の床レベル(3F床)の変位の大小を求めています.
■ 出題のポイント
この「層間変位」については,本試験においては,過去問題の類似問題が出題される傾向にありますので,今年度の本試験問題においても合格ロケットに収録されている過去問20年分で問われた知識をきちんとマスターしてさえいれば確実に得点できるものと考えます.
10.固有周期

上図のように,針金の先に物体が固定される状態をイメージしてください.これを「1質点系モデル」といいます.
この「1質点系モデル」に右図のように水平力が作用した時の水平変位をδとすると

上図のように先端に集中荷重が作用する片持ちばりの変形と置き換えて考えると,δ=PL^3/3EI・・・①と表せます(ここは,「たわみ」のインプットのコツ参照).
「層間変位」のインプットのコツの重要ポイント1.より,水平変位=せん断力(水平力)/剛性=P/K・・・②が言えます.
①,②より,
ポイント1.「剛性Kは,K=3EI/L^3となる」
建物が振動する際,堅い建物であれば素早く揺れ(ガタガタ揺れる感じ),柔らかい建物であればゆっくりと揺れます(ユッサユッサ揺れる感じ).この時,「単位振動数」あたりに要する時間(右に揺れて,左に揺れて,また右に揺れて,左に揺れて・・・の繰り返しにおいて,「右に揺れて,左に揺れて」の1セットに要する時間)を「周期」と言います.逆に,「単位時間(例えば,1秒間)」あたりに振動する回数を「振動数」と言います.
建物はその構造等により,建物固有の周期の値を持ちます.その周期を「固有周期」と言います.
ここで,一番上の図を考えた時,物体の質量をm,針金の剛性をKとすると,その固有周期TはT=2π√(m/K)となります.これは覚えてしまいましょう.
これとポイント1.より
ポイント2.

となります.
ここで,問題コード19071を見てみましょう.
問題コード19071の発展系として,柱が2本である場合が問題コード23071です.柱が2本であるため,その剛性Kは2倍になっている点に注意してください.また,問題コード23071のように,両端固定の門型ラーメンの柱1本あたりの剛性Kは,K=3EI/h^3ではなく,K=12EI/h^3になる点にも注意して下さい(問題コード23071の解説参照).
問題コード13071,16071,25071について.
応答スペクトルという概念については,別途,「応答スペクトル」のインプットのコツを行います.
そちらを参照してください.
■ 近年の出題ポイント
この「固有周期」については,本試験においては,過去問題の類似問題が出題される傾向にありますので,今年度の本試験問題においても合格 ロケットに収録されている過去問20年分で問われた知識をきちんとマスターしてさえいれば確実に得点できるものと考えます.
10-1.応答スペクトル
「固有周期」のインプットのコツのポイント2.で説明した固有周期で「固有周期の式のmとkのうち,どっちが分子で,どっちが分母かがわからなくなるのですが・・・」という質問をよく受けます.
同じ剛性kで質量mの1質点系(質量mの重い串団子と軽い串団子)では,どちらの方が周期が長くなるかを考えれば分かり易くなるかと思います.
考え方を逆にすると,同じ質量mで,串の長さが長い串団子と短い串団子では,どちらの方が周期が長くなるでしょうか.
長い串と短い串では,長い串の方が剛性(k)が小さく(軟らかく)なることはイメージできるかと思います.
そうすると,(串の先端にある重りが同じ質量ならば)串の長さの長い方が周期は長くなりますね.
つまり,固有周期の式において,質量mが大きい方が,剛性kが小さい方が,固有周期は長くなることはイメージできるかと思います.
続いて,本題の「応答スペクトル」に関して,説明させていただきます.
「応答スペクトル」には,「加速度応答スペクトル」,「速度応答スペクトル」,「変位応答スペクトル」の3種類があります.
もう,この辺で,拒絶反応を示す人が多いのですが,構造科目で25点以上を狙う人は,我慢してついて来てください.

新・地震動のスペクトル解析入門(鹿島出版会)から抜粋(一部修正)
上記図(a)の1質点系の串団子があるとします.この例では,周期T1とT2の2種類を示しています.この周期は何秒でも構いません(ここでは,T1<T2としています).また,串団子の先端質量の大きさが何kgであるかに関しても関係ありません.串団子の先端質量mと剛性kによって定まる固有周期Tが重要なんです.
例えば,先端質量m,剛性kの串団子と,先端質量2m,剛性2kの串団子の固有周期は同じ値になることは理解できますよね.
よって,串団子の先端質量mや剛性kの具体的な数値は,関係ありません.
次に,上記図(a)のように,この串団子を揺らします.
その時の,串団子の先端質量の加速度が上記図(b)になったとします.(a)にある2種類の串団子の周期が異なるため,(b)にあるように,先端質量の加速度波形は異なった形になります.その時の最大の加速度を(Sa)1と(Sa)2とすると,周期T1の串団子の最大加速度(Sa)1,周期T2の串団子の最大加速度(Sa)2,・・・・・・というように,図(横軸:周期T,縦軸:加速度(Sa))にプロットしていくと,上記図(c)のようになります.
上記図では,2種類の串団子の例ですが,これをいろいろな固有周期Tの串団子を揺らして,その固有周期Tと最大加速度Saを図にプロットしたものが,「加速度応答スペクトル」と言います.
同様に,いろいろな固有周期Tの串団子を揺らして,その固有周期Tと最大速度Svを図にプロットしたものが「速度応答スペクトル」,その固有周期Tと最大変位Sdを図にプロットしたものが「変位応答スペクトル」と言います.
この「応答スペクトル」に関しては,一般的な傾向として,

新・地震動のスペクトル解析入門(鹿島出版会)から抜粋(一部修正)
の関係があると言えます.
つまり,
加速度応答スペクトルは,固有周期Tが長くなると,減少する
速度応答スペクトルは,固有周期Tが長くなると,ほぼ一定になる
変位応答スペクトルは,固有周期Tが長くなると,増加する
傾向があると言えます.
これは,構造(文章題編)でも問われている事柄でもありますので,ぜひ覚えてください.
覚え方としては,変位応答スペクトルを考えてみて下さい.
上図(a)のように,固有周期Tがことなる2種類の串団子をイメージします.変位応答スペクトルとは,串団子を揺らした時の先端質量の最大変位をプロットしたものでした.そうすると,上図(a)の固有周期T1とT2のうち(T1<T2とする),どちらの串団子の先端変位が大きいかを考えると,固有周期が長い方(上記図(a)で言えば,T2の方)が変位が大きいことがイメージできると思います.
よって,串団子の棒の長さが長い方=固有周期Tが長い方が応答変位スペクトルは大きくなることが理解できるかと思います.
固有周期Tが長くなれば,速度応答スペクトルは一定,加速度応答スペクトルは小さくなる(変位応答スペクトルと逆)ことを思い出すことができると思います.
建築士の学科試験に関しては,以上のことを知っていれば,十分であると考えます.
「固有周期」項目の問題コード13071について,補足説明させていただきます.
この問題のポイントは,高校の物理で習ったせん断力Q=m×a(m:物体の質量,a:加速度)を思い出せるかです.
質量mに関しては問題で与えられているので,串団子A,B,Cのそれぞれにかかる加速度が,それぞれいくつになるのかを問題の応答加速度スペクトルの図から求めなければなりません.
問題の応答加速度スペクトルの図より,固有周期T1<T2<T3において,固有周期T1の串団子の加速度は1.0g,固有周期T2の串団子の加速度は0.8g,固有周期T3の串団子の加速度は0.6gと読み取れます.
よって,串団子A,串団子B,串団子Cの固有周期がT1,T2,T3のどれかと対応しているので,その関係を求めます.
具体的には,T=√(m/k)より,TB<TA<TCと求められるので,串団子Bにかかる加速度は1.0g,串団子Aにかかる加速度は0.8g,串団子Cにかかる加速度は0.6gとなることがわかります.
よって,Q=m×aより,QA,QB,QCの値が具体的に計算でき,QA<QB<QCとなることがわかります.
問題コード16071,25071に関しても,同様に考えることで答えを求めることができます.
問題コード16071,25071の解説を参照して下さい.
01.環境
どの教科・項目にも共通して言えることですが,始めから100%の理解することを目指した学習方法では,予定どおりに進まなかったりすることでモチベーションの低下を生み,結果,途中で挫折しがちです.「学ぶ」で解説部分だけでも読み進めていきましょう.その時のコツは,まずは黙って,そのまま知識を飲み込むこと.ここで,いたずらに「なんでだろう?」,「こういう場合はどうなるんだろう?」と疑問を抱い,それを解決できないでいると,それだけでストレスとなります.進捗のペースも落ち,結局モチベーションを低下させてしまいます.それが本当に理解しなければならない事柄なのか,丸暗記で対応可能な事柄なのか判断も付かないうちから,「絶対,理解してやろう!」と挑んでも,この莫大な学習量を考えると時間がいくらあっても足りません.「解く」で失点したものは、「進捗」で確認した後、再び「学ぶ」で確認です.1回目よりも2回目,回数を重ねるごとに知識を深めていく意識を.そして,その項目が,自分にとってどのレベルの難易度なのか,どの程度のボリュームがあるのかを知る事が大切です.全体のイメージや体系を掴んでからの方が、理解できたり暗記しやすくなるものです.詳細の理解より「全体把握」を.
この「環境」の項目も,深入りは禁物です.深入りしてしまうと,ただいたずらに時間が過ぎてしまいます.この項目のポイントは,「人間の暑い,寒いといった温熱感覚を数値化できなければ,快適な生活環境を客観的に計画することなどできない!」ということです.この環境という項目において,皆さんに学んで欲しいことは,人間の「感覚」というものを数値化するための戦いの歴史そのものだとお考えください.
まず,人間の温熱感覚を決定づける要素として,①.「室内環境の要素」と,②.「人間側の要素」とがあります.この2つの違いを最初に説明しておきましょう.「室内環境の要素」の場合は,例えば,この部屋の温度は23℃,湿度は40%といった具合に,100人の在籍者がいれば,100人全員に共通している要素です.それに対し,「人間側の要素」とは,たとえば,同じ室内環境においても,素っ裸な人と,マフラーを巻いて,セーターにコートまで着込んでいる人とは,その体感温度は異なりますし,ただ座っているだけの人と,スクワットを200回連続で行っている最中の人とでも異なります.当たり前の話ですね.このように,在籍者一人一人の状態や状況によって体感温度が異なってくるものが「人間側の要素」というものになります.
次に,「室内環境の要素」に注目してみましょう.「室内環境の要素」には,気温,湿度,気流,輻射という4つの要素があります.輻射というのは,後ほど,もくじ番号03「伝熱」の項目において学習しますが,いわゆる「赤外線による熱移動」のことです.日中,縁側で日なたぼっこをしていて暖かく感じるのは,太陽光線に含まれる赤外線が物体に照射されることで,光エネルギーが物体内部の分子の振動エネルギーに変換される(=熱を感じる)ためです.光線の種類には,様々な種類がありますが(後ほど,学習します),中でも,この赤外線という光線は,物体に照射することで光エネルギーを,物体内部で熱エネルギーに変換させる特性を持つわけです.ちなみに,人体も常に赤外線を放射しています.
まず最初に,人体の温熱指標(=温熱感覚を数値化したもの)として開発されたものが,「有効温度」です.有効温度は,温度,湿度,風速(気流)の3要素により求まります.それに,輻射の影響を加味したものが,修正有効温度となります.上記で説明した通り,輻射という概念は,赤外線が影響するものであり,温度,湿度,気流などといった概念よりも,後に発見されたものであると考えて下さい.だから,最初に有効温度が開発され,輻射という概念が発見された後に,その影響を加味して修正有効温度が開発されたというイメージです.
次に,人体の温熱指標には,温度,湿度,気流,輻射という4要素(室内環境の要素)だけで考えるのではなく,さらに「人間側の要素」である,作業量(メット値),着衣量(クロ値)の2要素も影響するのではないか?という考え方のもと,「新有効温度」が開発されます.
ウルトラマンが新ウルトラマンに進化するようなものです.どんどん進化していきます.また,この辺りで新有効温度の親戚のような指標が登場します.それがPMVです.新有効温度は,例えば,20℃や,30℃といったように表示しますが,PMVの場合は,-3~+3までの数値で表現します.そして,新有効温度をさらに進化させた温熱指標が登場します.それが,標準新有効温度です.このような流れで覚えておいて頂ければ記憶に定着しやすいと考えられます.
■学習のポイント
この項目からは,「基本に対して,応用の考え方ができるか」,「区分・対比を理解しているか」という点について問われます.「えー、これどっちだったかなー」と迷うのは,まだマシ.本試験では,思い込みやウッカリの対象になり,迷う間もなく失点するケースがあり,見た目よりも,難易度が高めになる場合があります.
例えば(コード18012)に「SET*(標準新有効温度)」の区分について「○問」で出題されています.当時は、過去に類の無い「新問」として扱われましたが,これ以後は「受験生はこうした知識を備えている」ということを前提として出題者は,問題を作成していきます.(コード23021)に同様の形式で「×問」で出題されています.「区分」や「対比」が存在する問題は,受験生が曖昧にしがちなことを,出題者はよく知っています.そういう場合は「○か×か」で即答するのではなく,それを含めた「区分」や「対比」ごとイメージで立ち上げて(又は実際に描き出して)から判断するようにしましょう.合格ロケットの問題コードの並びは,同系の知識や出題をグルーピングしてありますので,コード毎(年度毎)の出題の仕方(仕掛け方)に着目するようにしてください.○問でも×問でもです(特に2巡目以降).「過去問で勉強する意味」は,知識を増やす事だけではなく,出題者の視点を学ぶ事だという意識を持って進めていってください.
02.換気
まずは「自然換気」について.自然換気には,風の力による「風力換気」と,温度差による「温度差換気」の2種類があります.公式の構成メンバー全部を丸暗記する必要はありません.中には一定(固定値)のものも含まれています.問題コード27041のように,「○○に比例」とあれば「√」の外,「○○の平方根に比例」とあれば「√」の中です.
次に,問題コード20024の解説について補足します.まず,暖房器具には,開放型燃焼器具(開放型暖房器具)と密閉型燃焼器具(密閉型暖房器具),さらに,半密閉式燃焼器具(半密閉式暖房器具)の3種類があります.開放型燃焼器具とは,いわゆる家庭用の灯油ファンヒーターのようなものです.燃焼用の新鮮空気を室内から取り入れ,燃焼後の排ガスを再び室内へと排出するため室内の空気汚染が起こり易くなります.その点,密閉型暖房器具の場合には,燃焼用の新鮮空気を室内からではなく,屋外から直接取り入れ,燃焼後の排ガスも屋外へと直接排出するものです.そのため,室内の空気汚染が起こりにくくなります.また,半密閉式暖房器具は,プチ密閉型暖房器具のようなもので,燃焼後の排ガスは,直接外部へと排出するものの,燃焼用の新鮮空気は,室内から取り入れます. (社)日本ガス石油危機工業会のホームページに「半密閉式石油暖房機の安全な使い方」が掲載されています.「半密閉式」の注意点を知識の軸としてインプットしておきましょう(日本ガス石油機器工業会のHP).【こちら】
「定常濃度」についてオンライン講義での解説をご覧ください(Youtube動画 約2分)
問題コード28031のような必要換気量の図問題は,ある程度基本形として覚えてしまいましょう.問題文の条件設定において「定常状態」とあります.汚染物質発生後,室内汚染物質濃度は,急速に上昇しますが,時間が経つにつれて,発生量と換気量は平衡し,やがて一定となります.この状態を「定常状態」といいます.濃度が上昇する速度は室容積(換気回数)によります.室容積が小さいほど早く定常状態となり,大きいほど時間がかかりますが,いずれにしても,やがては定常状態(定常濃度)となります.換気量の計算問題は,この定常状態を前提として考えるため,換気量が同じあれば室容積の大小は関係ありません(次図参照).意味を考えながら,何度か描いてみましょう.

■学習のポイント
「環境・設備(環境)」からは,特にこの「換気」や「音響」についてのウエイトが大きく,より重点的に知識(特に応用力)が要求されています.ただし逆を返せば,ここがマスターできれば,大きな得点源になる,ということです.そのためには,「問題文の正誤に関わる着目すべきポイント(フォーカスポイント)」を見極めなければなりません.それでは,具体的にみていきましょう.
平成19年度に初めて出題された問題コード19195の「ガラリ計算」については,その後,21122,23134,240101,26123,27131,29114と頻出問題となりました(Webアプリ「学ぶ」「検索」で「ガラリ」をキーワード検索してみてください).基本式をキチンと押さえておけば,どんな問われ方をされても,自由に扱えるはずです.一方,外気取入れガラリと排気ガラリの開口面積の大小が問われると,混同しがちです(ケアレスミス多発).給気側と排気側の風速の違いにより面積に違いが出るわけですから略図を描いて目視で確認してから解答するよう習慣付けましょう.
必要換気量の文章問題、問題コード20022,29031の注意点は,問題文中の「換気回数」の違いです.換気回数は,換気量を室容積で除したものですから,「換気量が一定」という前提条件と,問題コード20022の「換気回数が一定」という前提条件は,まるで違う状況を表わします.これは決して「引っ掛け問題」ではありません.出題者は明らかに,その違いが理解できているかを聞きたいはずです.本試験でのこの読み間違い(読めているのに、違うイメージを立ち上げてしまう)は,致命的となります.2巡目以降の学習では,問題文の条件や言い回し(設定)について,注意深く読み取って整理していってください.出題者にとっては,類似する用語は格好の題材となることを覚えておきましょう.
03.伝熱
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分)
この項目の学習を効率よく進めるために,「熱」に関する基本事項を学ぶことから始めましょう.解説集として収録されている「熱の解説」をまず最初にご覧ください.次に,問題解説をザッと読み進めます.この時,文章を映像化して読むことを意識しましょう.例えば,冬期をイメージして下さい.冬期には,室内側が外気側に比べて高温となるため,熱は,室内側から外気側へと流れることになります(熱は,高い方から低い方へと移動する).その際,建物の外壁を通過するわけです.このときの熱の流れを考えてみましょう.まず,室内側の空気から外壁の室内側表面へと熱が伝わります.このように,空気から壁体へと熱が伝わることを「伝達」といいます.次に熱は,壁体内部を外気側へと伝わっていきます.このように,壁体中を通過する熱移動を「伝導」といいます.最後に,外壁の外気側表面より,外気へと熱は伝わります.このとき,壁体から空気へと熱が伝わるので「伝達」となります.このような「伝達」→「伝導」→「伝達」という熱の流れを総称して熱貫流と呼びます.

熱とは,物体を構成する分子の振動だと考えて下さい.中学校や高校時代に習った分子のモデル図をイメージしてみましょう.あの物体を構成している(例えば,アナタ自身も分子で構成されています)分子の振動こそ「熱」エネルギーの正体です.物体同士が隣り合うときに,その境界線が出来ますが,境界線に高温側の分子がドンドンとぶつかることによって,熱(=分子の振動エネルギー)を低温側の物体の分子へと伝えていくわけです.そのため分子の数が多ければ多いほど,物体間の境界線にぶつかる分子の数も増えますので,熱は伝わり易くなります.
また,伝熱計算に関する問題は,「伝熱」という仕組みを理解するために非常に重要な項目ですので,是非この機会にマスターしておきましょう.発展的な思考の源となります.まずは,下記解説をお読みください.

一見,難しい内容に見えますが,図Aの横軸は「壁の厚み」,図Bの横軸は「熱抵抗」です.図Bのように熱抵抗を横軸,壁体内部の温度差を縦軸として考えた場合,このように比例関係が成立します(熱抵抗の割合を表現).ちなみに,比例関係となる場合,一定の割合での増加・減少を意味し,グラフにした場合,直線で示すことができます.図Bの部材がコンクリートと断熱材なら,部材(B)の熱抵抗が大きいことから,こちらが断熱材に相当する部分と考えられます.
壁の熱貫流抵抗(㎡・K/W)を求める式 Rt=ri+Σrk+ro があります.
ri=内表面熱伝達抵抗
rk=熱伝導抵抗
ro=外表面熱伝達抵抗
ここで重要なのは「熱抵抗値」で単位が統一されている点です.
これらの熱伝導に関する熱抵抗値を「熱伝導比抵抗」といい,これに壁体を構成する各部材の厚み(d)を掛けたものの総和が「熱伝導抵抗(=壁体全体の熱抵抗値)」となり,それに壁の外・内で接する空気の伝達による熱抵抗値を加えることで,全体の熱抵抗値である「熱貫流抵抗」が求まります.この「熱貫流抵抗」の逆数が「熱貫流率」となります.
■学習のポイント
コード28042,23042,02022,21102,18023,02023ように,「熱貫流の仕組み」について,キチンと理解するのは当然として,「仕掛け方」にも注意していきましょう.出題も毎回同じ言い回しとは限りません.解説が多少長い問題コードは,それだけ丁寧な理解が必要となります.平成27年に図問題として出題された問題コード27031は,まさに総合的な理解が問われました.この項目の最重要問題と位置づけて,キチンと理解しておきましょう.
熱貫流抵抗[㎡・K/W] ←逆数→ 熱貫流率[W/㎡・K]
↑
(全体の熱抵抗値の総和)
↑
外側熱伝達抵抗[㎡・K/W] ←逆数→ 外側熱伝達率[W/㎡・K]
内側熱伝達抵抗[㎡・K/W] ←逆数→ 内側熱伝達率[W/㎡・K]
熱伝導抵抗[㎡・K/W] ←逆数→ 熱伝導係数[W/㎡・K]
↑
(各構成部材の熱伝導比抵抗に厚み[m]を掛けた総和)
↑
熱伝導 比 抵抗[m・K/W] ←逆数→ 熱伝導率[W/m・K]
これらは丸暗記するよりも,単位とその意味に着目しながら,仕組みを理解しておくことが大切です.
04.色彩
この項目を効率よく学習するために,「光と色」に関する基本事項を学ぶことから始めましょう.アプリの「解説集」に収録されている「光と色の解説」をまず最初にお読みください.この解説集では,「光と色の意味とその関係性」について説明しており,この資料によって身につけて頂く光と色に関する知識は,新問題対策としても強力な武器となります.最初は,小難しい説明が記載されていますが,要するに「光(電磁波)とは,横波であり,音(音波)は,縦波である」というイメージを理解して頂ければ十分です(そのまま暗記して頂いても結構です).
話を戻します.光(電磁波)とは,横波の振動であると説明しましたが,その波長の長さ(波長域)によって,紫外線(波長が短く目で認識できない波長域),可視光線(目で認識できる波長域),赤外線(波長が長く目で認識できない波長域)等に区分できます(光と色の解説集参照).解説集の中でも説明されているとおり,波長の長い光線である赤外線は,熱線とも呼ばれ,物体に照射されると物体内の分子を振動させることで熱エネルギーに変換されます.太陽光や,ハロゲンヒーターなどを浴びると暖かく感じるのは,赤外線(熱線)による光エネルギーが熱エネルギーへと変換されるためです.また,この熱線による熱の移動を「輻射」といいます.
次に「色って何?」という説明に移りましょう.そもそも人間は,光を目で感じ取ることによって色を認識します.今,ある物体Aに,照明などの「光源」から「赤色(波長が長い光線)」,「黄色(中間ぐらいの波長の光線)」,「青色(波長が短い光線)」という3種類の光(光線)が照射されているとします.その様子を人間が見た際,例えば,物体Aが黄色に見えたとしましょう.それは,「光源」から「物体A」に照射される3色の光線のうち,「物体A」が「赤色」と「青色」の光線を吸収し,「黄色」の光線だけを反射しているからです.人間が「物体A」を見た際,「物体A」から反射されてきた「黄色」の光線だけが目で認識されるため,頭の中で「物体Aの色は,黄色い」と判断するわけです.これが,人体が色を認識する際のメカニズムです.
さて,「光と色の解説」の2ページ目からは,より具体的な説明が記載されていますね.そこに人間が色を感じる3要素には,「1.光源」,「2.物体の特性」,「3.視覚(人間の特性)」の3種類があると記載されています.先ほどの説明では,光源から赤,黄,青の3色の「光線」が照射されていましたが,たとえば,「光源」から照射される「光線」が,赤系の色に偏っていた場合の「物体A」の見え方と,同様に青系に偏っていた場合の見え方では,同じ「物体A」であっても異なる色に見えてきます.これは,部屋の照明を白熱灯(赤味がかる)にした場合と,蛍光灯(青味がかる)にした場合とで,異なって見えるのと同じ原理です.つまり,同じ物体であっても,「光源」の種類(照射する光線の種類)が異なれば同じ物体であっても,その色の見え方は,違うものに見えるわけです(ただし,物体そのもの光線を反射する特性は一定です).
次に,「2.物体の特性」についてご説明しましょう.これは,いわゆる物体そのものの「光の反射特性」であり,青系の光線を反射しやすい物体は,青っぽく見えますし,赤系の光線を反射しやすい物体は,赤っぽく見えるような物体固有の特性を表します.
最後の「3.視覚」については,「光源について,特定の波長域の光線(例えば黄色の光線)を照射する強さ」×「物体において,光源から照射される特定の波長域の光線(例えば黄色の光線)を反射する割合(反射率)」=「人間の目に飛び込んでくる物体から反射された特定の波長域の光線(例えば黄色の光線)の強さ」となります.これは,いわゆる物理量です.しかし,人体が厄介なのは,同じ物理量の光であっても波長域の違い(光線の種類の違い=色の違い)によって,色の感じ取り方が異なることです.
以上が,「光と色」のイメージについて説明となります.
次に,RGB表色系と,XYZ表色系について説明しておきましょう.「光と色の解説」6ページ,7ページを見てください.解説の中にも記載されているように,人体のメカニズムとして,色を知覚するため人間が「目」で光を認識した際には,3種類の細胞が送り出す信号の組み合わせにより頭の中で色を認識します.その原理をもとに,「特定の3種類の色を組み合わせることで,あらゆる色を表現することができるのではないだろうか?」という先人達の戦いが始まるわけです.「へー,何が楽しくてそんなことするわけ?」と思われる方もいるかもしれませんが,例えばカラーテレビは,その理論を応用することによって開発されました.カラーテレビでは,赤,緑,青という3色を組み合わせることによって,カラー映像の世界を実現させているのです.これがRGB表色系の原理です.ただし,このRGB表色系にも問題点があります.それは,理論的には,成立しているものの,実際には,作り出せない色が存在してしまうことです.この問題を改善するために,XYZ表色系があります.
■学習のポイント
問題コード20023については,「誘目性」という言葉が登場します.大抵の受験生は,人間が最も強く認識し易い色は,黄緑の波長域の色だと覚えています.中には,そのまま鵜呑みにしている方も少なくありません(「明所視=黄緑色」といった具合に).それは,人の目の感度と波長の関係性の話です.この「誘目性」は,心理的な話です. 色光の誘目性は,視対象が目を引きやすいかどうかという特性であって,「赤」がもっとも高く,次に「青」,そして「緑」です.これは,違いを明確に,覚えておきましょう.
次に,問題コード01082に.「同化」という言葉があります.ここで,「同化」と「対比」の違いについてみておきましょう,「同化」の場合,ある色が他の色に囲まれたり,挟まれているとき,囲まれたり挟まされている色が周囲の色に似て見える現象をいいます.
同化の場合,上図のように灰色の背景に白い線で縞模様を描くと背景色の灰色は実際よりも明るく見え,黒い線で縞模様を描くと背景色の灰色は黒ずんで見えます.このとき,白色や黒色の幅を大きくすると下図のように同化効果ではなく,対比効果(明度対比)が起きます(問題コード19075).
明度対比の場合,上図のように,黒色に挟まれた(囲まれた)灰色の方が,白色に挟まれた(囲まれた)灰色の方が明るく見えます(明度が高く見える).
色彩の項目については,「色彩検定」や「カラーコーディネーター」といった他の資格試験がありますので,ネットを検索すると,その関連のカラフルな資料が山ほど出てきますが,ここでも深入りは禁物です.専門知識で武装するよりも,ビジュアル的にイメージを補完するような範囲で活用する事をお勧めします.
05.照明
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約8分)
それでは基本から進めましょう.点光源は,光源に対し放射状に発生します.つまり,点光源を中心とする球面上に広がっていくわけです. そのうち,「光束(ルーメン)」というものは,茹でる前の棒状の「ソーメン」のようなイメージです(ソーメンは夏の風物詩であり,私も大好物です).ソーメン1本1本が「光束」であり,この本数は「エネルギー量」を表し,光束の量(=ソーメンの本数)が大きければ大きいほど光エネルギーは大きくなる(=明るくなる)ものとお考え下さい.ちなみに,光束の単位「ルーメン」と「ソーメン」をかけています(サラッと流してください).次に,「光度」ですが,単位立体角内に発散する光束をいいます.ここで,単位立体角について補足説明しておきましょう.まず,光源を中心とした半径1mの球体を思い浮かべて下さい.その球体の球面上に,1㎡の面積を持つような角を「単位立体角」といい, その「単位立体角」内の光束量を「光度(cd = lm/sr)」というわけです.これは,点光源の明るさを表します.(次図参照)

光度が「点光源」の場合における明るさを表すことに対し,光源が「面光源」である場合の明るさを表す尺度が,「輝度」となります.単位は「cd/㎡」.問題コード15044に「光源,反射面,透過面から特定の方向に出射する単位面積当たり,単位立体角当たりの光束」という言い回しがあります.一見,「これって誤記なんじゃないの?」と思われるかもしれませんが,「A当たり,B当たりのC」とは「C/(A・B)」を表したものです.「cd = lm/sr」ですから,輝度の単位「cd/㎡」に代入すると「lm/(sr・㎡)」となりますので,これは輝度の説明であることがわかります.日本語って難しいですね.詳細検索でキーワード「輝度」を検索してみると,出題が多様であり,いろんな側面を持っていることが分かります.「これだけ覚えておけば大丈夫」というモノではありません.まずは単位の解説と,「人が認識する面の明るさ、空間の明るさ感」を表すのに利用されるという事くらいの理解で.根本から理解しようとネットを彷徨うと,ドンドン深みにはまって余計わからなくなりますので,そういう時は割り切りも必要です.
人間の光に対する感度は,光の波長によって異なります.この感覚を視感度といいます.光のエネルギー量(物理量)を単純に測定しても,人間の目には直接見えない赤外線なども含まれているため,人間の目の感度に合わせて補正しなければ,それが明るいのか暗いのかを判断することができません.そこで,視感度の世界標準として,最大視感度(波長555nm)での視感度(683lm/W)に対する各波長の視感度の比率(= 標準比視感度)というものが国際的に定められました.光を測定する上で基本単位となる光束(lm)は,単位時間に流れる光のエネルギー量を測定する際,標準比視感度で補正した値で表しています.つまり他の基本単位(光度=lm/sr,輝度=cd/㎡,照度=lm/㎡)も,「lm」が含まれているので標準比視感度で補正されているということが言えるのです.
■学習のポイント
過去問で出題された用語の理解は必須ですが、よく「照度分布」と「配光曲線」をすり替えたり「照度」と「輝度」をすり替えたりと、近しい話を混同いしていないか、執拗に問われます。「対比」で覚えた片方が問われたら,両方引っ張り出して,今回はどちらが問われているのかを確認(出来れば描き出して目視)してから解答する習慣をつけましょう。また似たような用語どうしも,扱いを慎重に。例えば「演色」は光源の違いによって物体の色の見え方が変わる「現象」です。一方「演色性」は、「光源の特性・指標(優秀か否かではない)」です。太陽光(標準光源)で照らされた色に近い見え方をする照明を「演色性の高い照明」とします。これらも「対比」として捉えて構いません。「問われているものに対して、適切に返答するための準備」に徹していきましょう。
06.日照・日射
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約6分)
昼光は,直接日光(直接光)と,天空光の大きく2つに分けられます.これを分かりやすく説明すると,「直接光」というものは,太陽を直視した際の明るさをいい,「天空光」とは,太陽を直視しないように空を見上げた際の明るさだと考えてください.「天空光」は,太陽光が拡散・乱反射されて地上に達する光のことをいいます.また,「全天空照度」とは,周囲に障害物のない屋外における水平面照度をいいます.全天空照度の場合,直射日光の影響を無視し,天空光のみによる照度で考えます.快晴の日は,直接光が多く,天空光は少なくなり,薄曇りの日は,直接光が少なく,天空光は多くなる,と考えます.
ある時刻における「全天空照度」が「10」の時,室内におけるある点の照度を「1」と仮定しましょう.その場合,昼光率=(1/10)×100%=10%となります.これは,全天空照度の10%が室内のある点の照度となっていることを表します.そのため,時刻が変化して,「全天空照度」が「5」になった場合には,5×10%=0.5が室内のある点における照度となります.この場合,時刻によって全天空照度が変化したとしても昼光率は一定です.次に,窓がフロートガラスから,すりガラス(くもりガラス)に変わったときの場合を考えましょう.同じ全天空照度であったとしても,フロートガラスであった場合と,すりガラスであった場合とでは,「同じ時刻の全天空照度であっても,室内のある点における照度」は,すりガラスの場合の方が採光量が少なくなる(変化する)ため,昼光率は一定とはなりません.例えば,フロートガラスの場合の昼光率が10%だったとしましょう.すりガラスの場合は,天空光が室内に入り込む割合がフロートガラスの場合に比べて,減少するわけですから当然,昼光率も10%を下回るわけです.すなわち,「昼光率は,一定にはならない」と考えます.窓の前に樹木がたった場合も,室内に入り込む天空光の量は減少します.そのため,同じ全天空照度であっても,室内のある点における照度は減少します.この場合も,昼光率は変化すると考えるわけです.「昼光率は一定なの?一定じゃないの?」それは前提の違いなので,明確にしておきましょう.
そして,要注意なのは,こうした「現象」のイメージで終わるのではなく,昼光率が「設計」で活用されるという事.CASBEEの評価項目にも使われますが,つまりは,「建物を建てる前に検討するためのもの」と言う事を知っておいてください.
■学習のポイント
問題コード23063 に「南向き鉛直壁面の1日の可照時間」に関する季節ごとの大小比較が出題されました. 日照・日射を理解する上で非常に重要な内容です.例年,講義でも,季節ごとの太陽の位置や影の移動の仕方について立体的にイメージできるよう詳しく解説しています.

解説中に,季節を通じた太陽の軌道を示す図があります.この図は,きちんと頭に叩き込んでおきましょう.南中時の太陽高度は,それぞれ「30°,54°,78°」となりますが,これは丸暗記です(ここは深堀りするところじゃない!).こういう時は,語呂合わせにして覚えることをおススメします.ここで,オリジナルの語呂の作り方についてレクチャーしておきます.例えば,「三十路(30歳)に,腰(54)で悩(78)む」という語呂とするよりも,「コッシー(54),悩(78)んで,散(30)歩する.」という語呂の方が記憶に定着し易くなります(ちなみに,コッシーとは,越田(コシダ)さんという私の友達です).記憶に残りやすくなる理由は,固有名詞が入っているからです.「南中時の太陽高度の角度ってどうだったけかな?」と考えた際に,コッシーさんの顔を浮かべる事が出来れば,「コッシーナヤンデサンポスル.」という語呂を思い出すことができます.その際に,コッシーさんが,悩んでいる表情で,歩いているような光景が頭の中に浮かべば効果倍増です.語呂というものは,一枚の「絵(光景)」として,記憶するようにしましょう.語呂を「文章」で記憶しようとしても,語呂自体を忘れてしまうものです.これが,語呂作りのコツです.
08.音響
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約3分)
「音」というものは,空気の振動です.「音波」は,縦波であり,「疎」の部分(=圧力が低い部分)と,「密」の部分(=圧力が高い部分)とが交互に繰り返されながら伝わっていきます.そのときの圧力変化が10Pa(パスカル)だったとしましょう.その場合,疎の部分では,-10Pa,密の部分では,+10Paとなります.疎の部分というのは,横波でいうところの最も「谷」となる部分,密の部分というのは,最も「山」となる部分のことです.
「音に関する計算を行う場合には,レベル表示した上で計算する」ということを覚えて下さい.レベル表示した際の単位は,「デシベル」となります.また,レベル表示することを「デシベル変換する」とも言います.ここで用語を整理しておきましょう.まず,スピーカー等の音源の音の大きさを「音響パワー(W)」といい,音源から単位時間に発生する音のエネルギー量を表します.いわゆる「音響出力」と呼ばれるものですね.「音響パワー」をレベル表示(=パワーレベル表示)したものが,「音響パワーレベル(単にパワーレベルともいう)」となります.次に,「音の強さ」です.「音の強さ」とは,音源から離れたある地点において,単位面積を単位時間に通過する音のエネルギー量(W/㎡)ですね.これをレベル表示したものが,「音の強さのレベル」となります.最後に,「音圧」を見てみましょう.「音圧」とは,先ほど大気圧に対する圧力変化であると説明しました.それをレベル表示したものが「音圧レベル」です.ただし,「音圧」と「音の強さ」との関係を考えると,「音圧の2乗」が,「音の強さ」に比例するという関係があります.そのため,音圧を音圧レベルとしてレベル表示する場合は,2乗して考えます.
「何故,ログ計算では,デシベル表示したもので考えていくのか?」というと,「音響パワー(W)」や,「音の強さ(W/㎡)」は,「エネルギー量」であり,「音圧(Pa)」は,「圧力」であるため同時に比較検証できないからです(単位も異なるため).ただし,レベル表示することよって,一般の音場については,等しいもの(等しい量)として扱えるようになるため,同時に計算することが可能となります.
さて,音を計算することが出来るようにはなりましたが,それはあくまで物理量の話です.同じ物理量の音でも,人間の感覚では,「聞き取りやすい音」と「そうでない音」とがあります.それは,音の周波数の違いによります.例えば,同じ100というエネルギー量を持つ音であっても,周波数の低い音は聞き取りにくく,周波数の高い音は聞き取りやすくなります.「ラウドネス曲線」の図がありますが,例えば,同じ50ホン(phon)という「音の大きさ」で考えた場合,周波数の低い音については,より大きな音圧レベルが必要となり,逆に,周波数の高い音の場合は,音圧レベルが低くとも,同じ50ホンという音の大きさで人間は認識することができるのです.
点音源の音響出力がP(W)だった場合,音は,球面上に広がっていきます.

例えば,半径rの地点の音の大きさは,P/4πr^2 となります.ここで,4πは,微小な定数であるため無視し,P/r^2 と考えることができます(r^2は,rの2乗を示す).考え方としては,もともとPという大きさであったものが,球面上に広がっていくため,半径がrとなる地点においては,音の大きさ=P/(半径rの球体の表面積) となるイメージです.これが,「点音源は,距離の2乗に反比例する」という理由です.
次に線音源ですが、線音源とは,点音源が線状に集合したものと考えましょう.

線音源を考える場合は,ある地点の音源における音の拡散状況に着目します.その場合,音は,円の円周上に広がっていきます(上図において,赤い円の部分です).そのため,半径がrとなる地点においては,音の大きさ=P/(半径rの円周) となり,P/2πr となります.このとき,2πは,微小な定数であるため,先ほどの点音源同様に無視して考え,P/rと考えることができます.そのため線音源の場合は,距離(r)に反比例することになります.
上記の話をまとめてみましょう.次のように計算します.


■学習のポイント
上記で「点音源からの距離が2倍になると6dB減衰する」ということを説明しました.点音源からの距離が2倍になると,音の拡散する面積は約4倍になると考えることができます.つまり「音の強さ」は1/4倍になり,「音の強さのレベル」は-6dBとなるということです.
こう言う話の後で何ですが,原理を知っている方が応用に強いとは言え「それが理解できないと為す術がない」というわけではありません.デシベル計算が苦手という方は,捨て問題にする前に,次の事を暗記しておいてください.
・音の強さのレベルと音圧レベルは,ほぼ同等に扱える.
・音の強さが2倍になると,音圧レベルは3dB増加する.
(音の強さが4倍になると,音圧レベルは6dB増加する)
・点音源からの伝搬距離が2倍になると,音の拡散する面積は4倍
になるため,音の強さは1/4になる=音圧レベルは6dB減少する.
その道の専門家にとっては初歩的な話でも,これから学ぶ人にとっては,とてつもなく難しい話が一級建築士試験の知識には沢山あります.バックボーンも各自異なるわけだし,習得の仕方は変わって当たり前.「どのレベルまで理解しているか」よりも「どういう出題に対してどう備えるべきか」を考える方が重要だったりします.
インプットのコツの活用方法

勉強する前に,「その項目で何を学ぶのか」を意識して,合格ロケットに収録されている過去問を学んでください.その際,先に解説を読み,次に,問題と解答を見る順番でインプットしていくと効率的です.中には,先に,その項目の解説部分だけを一通り読み終えた後で,問題としてどのように出題されているのか,問題文中,どこが解答(〇 or ×)に直結するキーワード(=フォーカス ポイント)なのかチェックする要領で,各項目ごとに問題文をながめていきましょう.そのチェックがしやすい順に,収録問題を並べています.
また,各項目の学習を終了した際は「その項目で何を学んだのか」「ポイントはどういった点だったかのか」をノートに書き出しておく(=アウトプットしておく)と後日,復習の際に便利です.ひたすら知識を暗記するのではなく,インプットした事をアウトプットしやすいように,自分なりに再構築する事を意識してください.
そして,復習では,自分で再構築した内容を思い出せるようにしておきましょう.