03.届出
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約2分30秒)
まずは,過去問題の解説部分を流し読みして下さい.
この項目では,『○○の届出は,△△が,□□に,▽▽までに届け出なければならない』というところに意識を置いて勉強しましょう.
建築基準法関係について
建築工事届(問題コード01043ほか)
:建築主が,都道府県知事に,着工前までに
建築物除去届(問題コード02044ほか)
:施工者が,都道府県知事に,着工前までに
中間検査届・完了検査届(問題コード27043ほか)
:建築主が,建築主事に,完了後4日以内に
安全上の措置等に関わる計画書(問題コード02041ほか)
:建築主が,特定行政庁に,事前に
労働安全衛生法関係について
この法律に基づいている届出書類の届出先は,ほとんどが労働基準監督署長宛てとなっています.共同企業体代表者届などの例外には注意しましょう.
共同企業体代表者届(問題コード01042ほか)
:事業者が,都道府県労働局長に,仕事開始日の14日前までに
寄宿舎設置届(問題コード18045)
:使用者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の14日前までに
建設工事計画届(問題コード02043ほか)
:事業者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の14日前までに
型枠支保工設置届(問題コード25044ほか)
:事業者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の30日前までに
足場の組立・解体計画届(問題コード22043ほか)
:事業者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の30日前までに
エレベーター設置届(問題コード22042)
:事業者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の30日前までに
建設用リフト設置届
:事業者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の30日前までに
クレーン設置届(問題コード30041ほか)
:事業者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の30日前までに
ボイラー設置届(問題コード288044ほか)
:事業者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の30日前までに
ゴンドラ設置届
:事業者が,労働基準監督署長に,仕事開始日の30日前までに
統括安全衛生管理者選任報告書
:事業者が,労働基準監督署長に,選任後14日以内に
建築工事に伴う手続き関係について
道路占用許可申請書(問題コード28043ほか)
:施工者が,道路管理者に,その都度
特殊車両通行許可書(問題コード25041ほか)
:施工者が,道路管理者に,その都度
道路使用許可申請書(問題コード23041ほか)
:施工者が,所轄警察署長に,その都度
騒音規制法に基づく特定建設作業実施届出書(問題コード30043ほか)
:施工者が,市町村長に,作業開始日の7日前までに
振動規制法に基づく特定建設作業実施届出書
:施工者が,市町村長に,作業開始日の7日前までに
工事監理報告書(問題コード01044ほか)
:建築士が,建築主に,工事監理終了後直ちに
浄化槽設置届(問題コード18043)
:設置者が,保健所を置く市は市長,それ以外は都道府県知事に,着工の21日前までに
産業廃棄物管理票交付等状況報告書(問題コード29042ほか)
:処理業者が,都道府県知事に,着手前に
自家用電気工作物設置工事計画届出書
:政令で定める関係者が,経済産業大臣または経済産業局長に,事前認可または工事開始30日まえまでに
高層建築物等予定工事届(問題コード02042ほか)
:建築主が,総務大臣に,着手前に
消防用設備等着工届
:消防設備士が,消防長または消防署長に,着工の10日前までに
消防用設備等設置届(問題コード30044)
:政令で定める関係者が,消防長または消防署長に,工事が完了した日から4日以内に
危険物貯蔵所設置許可申請書(問題コード27044ほか)
:設置者が,消防署を置く市町村は市町村長,それ以外は都道府県知事に,事前に
航空障害灯設置届(問題コード17023ほか)
:設置者が,国土交通大臣または地方航空局長に,事前に
■学習のポイント
近年の環境破壊防止に関する問題として,問題コード30042の「建設リサイクル届」に関する出題や問題コード01041の「特定粉じん排出」に関する出題があります.
チェックしておきましょう!
04.鉄筋工事
この項目を勉強することで,鉄筋工事に関する知識を増やすんだ!という気持ちで,一級建築士として知っておいてもらいたい事柄についてドンドン知識を増やしていきましょう.
この項目に関しては,よく質問が来る点などについて,実際の問題文の補足説明(問題文が何を意味しているのであるかとか,問題文や解説文のどの部分が重要事項であるのかなど)に関して説明してきます.
かぶりについて
ひび割れ誘発目地などを設ける場合,鉄筋のかぶり厚さは最小となる部分で測ることを覚えましょう(問題コード20085).
図
かぶり厚さには,捨てコンクリートの厚さは算入しないことを覚えましょう.
各部分の鉄筋のかぶり厚さを整理しておきましょう.
設計かぶり厚さは,最小かぶり厚さ+10mmと覚えましょう(問題コード17091).
鉄筋コンクリートのかぶり厚さが大きすぎると,ひび割れ防止効果が低下することを知っておきましょう.
なお,JASS5の改定により,旧来の「屋内」「屋外」という表記が「一般劣化環境(非腐食環境)」と「一般劣化環境(腐食環境)」という表記で出題されても,慌てずに言葉を次のように読み替えてください.
「一般劣化環境(非腐食環境)」:(直接の水濡れなどのない)屋内
「一般劣化環境(腐食環境)」:外気に接する部位や,土または水に直接接する部位などの屋外,及び台所や浴室などの水濡れなどの可能性のある屋内
鉄筋材料,保管方法について
JIS規格の異形鉄筋は「圧延マークによる表示」又は「色別塗料による表示」で確認できると覚えましょう(問題コード02032ほか).
鉄筋の保管に当たっては,汚れや錆の発生を防ぐために,地上に直接置かず,角材により地面から10cm以上離しておくようにしましょう.
加工,組立について
主筋,あばら筋,帯筋,スパイラル筋の加工寸法許容差とその測り方を覚えましょう(問題コード24083).
鉄筋の折り曲げは,冷間で加工することを覚えましょう.同時に折り曲げの形状と寸法を鉄筋の種類と径により,また適用される部分ごとに整理して覚えましょう(問題コード29084).
鉄筋の端末部にフックが必要な箇所を覚えましょう.
薄い錆は取り除く必要はなく,浮き錆・油類・ごみ・土などの付着を妨げるものは取り除くということを覚えましょう(問題コード30032).
鉄筋は,なまし鉄線を使って組み立てると覚えましょう.
柱の主筋と帯筋の組立て方法を覚えましょう(問題コード24081ほか).
JASS5の改定により,交差する鉄筋相互の結束は
・帯筋の四隅,あばら筋の上端端部,基礎梁の隅部,幅止め筋:全数
・あばら筋の下端端部:交点の半数以上(梁主筋径がD25未満の場合は全数)
・帯筋・あばら筋の四隅以外,スラブの下端筋:800mm以下
・壁筋,スラブの上端筋,基礎梁の四隅以外:交点の半数以上または400mm以下
に変更されています.
鉄筋相互のあきについての基準を覚えましょう(問題コード26082ほか).
バーサポート,スペーサーの材質と配置基準が部分ごとに異なるので整理して覚えましょう(問題コード30081).
JASS5の改定によりスラブのバーサポートの配置等が一部変更されています.
モルタル製のサイコロ形サポートの使用も良くなりました.
梁貫通孔の補強筋は,梁の主筋の内側に配置することを覚えましょう.
スラブの配筋は,中央から所定の間隔で割付け,端部は定められた間隔以下とすることを覚えましょう.
屋根スラブの出隅及び入隅の部分にひび割れ防止のために入れる補強筋は,屋根スラブの主筋の上端筋の下側に配置することを覚えましょう(問題コード21082).
定着,継手について
鉄筋の重ね継手の長さや定着長さは,鉄筋の種類,コンクリートの設計基準強度やフックの有無によって変わるので,整理して覚えましょう.
これは,数値が多いため,コンクリートの設計基準強度24~27N/mm2の重ね継手長さ(L1)や定着長さ(L2)を覚え,+5dや-5dという風に覚える方法をオススメします.
大梁の主筋を柱内に定着する場合,主筋は柱の3/4を超えてから縦に降ろすようにしましょう(問題コード03083).
あき重ね継手の基準を覚えましょう.
スパイラル筋の定着寸法を覚えましょう(問題コード04081ほか).
圧接について
ガス圧接における鉄筋の突合せ面の隙間は3mm以下とすることを覚えましょう.
鉄筋のガス圧接の規定と,規定外となった場合の処理方法を覚えましょう(問題コード30084).
外観検査の結果,不合格となった圧接部の処理方法をまとめてみると,以下のようになります.
1.著しい曲がりを生じた場合:再加熱して修正.
2.ふくらみの直径または長さ不足の場合:再加熱し,圧力を加えて所定のふくらみとする.
3.鉄筋中心軸の偏心量が規定値を超えた場合:圧接部を切り取って再圧接.
4.圧接面のずれが規定値を超えた場合:圧接部を切り取って再圧接.
5.形状が著しく不良なもの:圧接部を切り取って再圧接.
6.圧接作業の途中でガス炎が消えた場合:圧接面が密着していない場合には,大気中の酸素が圧接面間に侵入し,比較的厚い酸化物の層を生成し,圧接終了後も残存するので,圧接部を切り取って再圧接.
7.不合格ロッドが発生した場合は,圧接箇所を切り取って再圧接するか,添筋により補強.
手動ガス圧接技量資格種別ごとに圧接できる鉄筋の種類と径を整理して覚えましょう(問題コード23082ほか).
ガス圧接用の切断は,冷間直角切断機で切断することを覚えましょう.
ガス圧接を行う鉄筋は,縮みしろとして,圧接箇所ごとに鉄筋径程度を余計見込んで切断することを覚えましょう.
圧接の抜き取り検査片の抽出基準を覚えましょう(問題コード03084ほか).
■近年の出題ポイントとして
過去問題の解説部分と「解説集」をチラ見しながら,全体を流し読みしてください.
基本的には,合格ロケットに収録されている過去問20年分の「知識」の理解で十分対応可能な項目であると思われます.
05.コンクリート工事
まずは,過去問題の解説部分と「解説集」をチラ見しながら,全体を流し読みしてください.
約200問とボリュームが多い項目です.やってもやっても次から次へと問題が襲い掛かってきますが,負けないで頑張りましょう.
この項目に関しても,よく質問が来る点などについて,実際の問題文の補足説明(問題文が何を意味しているのであるかとか,問題文や解説文のどの部分が重要事項であるのかなど)に関して説明してきます.
コンクリートの性質について
「強度」について,最近の技術革新により,一般仕様として取り扱う普通コンクリートの設計基準強度の範囲が(今までの36N/mm2から)48N/mm2以下に拡大されました.
普通コンクリートのスランプとして,調合管理強度が33N/mm2以上の場合は21cm以下,33N/mm2未満の場合は18cm以下と覚えましょう.
コンクリートの単位水量を大きくすると,蒸発する水分が多くなるので,乾燥収縮が大きくなり,ひび割れが生じやすくなることを覚えましょう.
コンクリートの単位水量を小さくするには,一般に,骨材間の隙間が少なくなるよう調合(実績率を大きく)し,水やセメントの入る隙間を少なくすることを覚えましょう.
粒形判定実績率の大きい粗骨材(コンクリート用砕石及び砕砂)を使用すると,単位水量を低減することができ,乾燥収縮を少なくすることができることを覚えましょう.
2022年のJASS5の改定により,コンクリート工事に関する言葉の変更がありました.今回のJASS5の改定の背景には,「地球に優しく!」があります.
コンクリートは,水,結合材(一般にはセメント)および骨材(細骨材・粗骨材)によって構成されています.
コンクリートの主たる結合材であるポルトランドセメントは,原料焼成工程において二酸化炭素が大量に発生する地球にあまり優しくない材料なのです.
セメント製造に伴う二酸化炭素排出量は,電力,鉄鋼,化学に次ぐ第4位となっているので,二酸化炭素があまり排出されない結合材を使ったコンクリートの使用が推奨されるようになりました.
結合材としてほぼ100%セメントを用いる普通ポルトランドセメントに比べ、40%程度高炉スラグが入っている高炉セメントB種は普通ポルトランドセメントに比べて約40%の二酸化炭素排出量の削減、60%程度高炉スラグが入っている高炉セメントC種は約60%の二酸化炭素排出量の削減効果があると言われています.
簡単に言うと、100%セメントでなくても,高炉スラグが入っている高炉セメントであっても,圧縮強度という観点からはそこまで悪くないという結果から、地球に優しいコンクリートとして高炉セメント等の複合セメントの利用の推進という流れとなってきています.
さらに,コンクリートに求められる重要な性質に「材料分離しないで,良好なワーカビリティーを確保する」ということがあります.
これを確保するためには,コンクリート中の水の量に対し,ある一定の粉体の量が存在することが重量です.結合材(セメント+高炉スラグなど)に石灰石微粉末や砕石粉などを混ぜると,強度上昇にはほとんど効果はありませんが,フレッシュコンクリートに粘性を与えることで材料分離抵抗性の向上には期待できます.
以上のことより,「水セメント比」とか「単位セメント量」など従来用いられてきた「セメント」という言葉を「ポルトランドセメント」に限定し,混和材のうち,高炉スラグ微粉末やフライアッシュ等で「セメントと混合する活性無機質微粉末」と「セメント」が混ざり合った粉を「結合材」,「結合材」に砕石粉等で「結合材と混合する非活性無機質微粉末」を混ぜた粉を「粉体」と呼ぶようになりました.
それにより,従来から用いられてきた「水セメント比」や「単位セメント量」の他に,「水結合材比」や「水粉体比」,「単位結合材量」や「単位粉体量」という言葉が誕生しました.
「環境性」について
カーボンニュートラルや地球温暖化対策に取り組む社会の動きに対応して,構造体及び部位・部材に求められる性能に「環境性」が加えられました.
「環境性」は「資源環境性」「低炭素性」「環境安全性」に分類されます.
「環境循環性」とは,天然資源使用量や廃棄物排出量の低減を,
「低炭素性」とは,地球温暖化物質排出量の削減を,
「環境安全性」とは,建築物のライフサイクルにわたって有害物質を排出しないことを目的とし,「資源循環等級」及び「低炭素等級」が制定されました.
「資源環境等級」は0~3の4水準とし,コンクリートとしての総合的な資源循環性を表現したもので,等級の数値の大きい方が資源環境性に優れているコンクリートであることを意味しています.
使用している水や結合材等で評価します.
「低炭素等級」も0~3の4水準とし,コンクリートの二酸化炭素削減率の範囲により,部位・部材ごとに規定されています.
等級の数値の大きい方が二酸化炭素削減率の大きい地球にやさしいコンクリートであることを意味しています.
「環境安全性」については,等級による規定ではなく,建築物の供用期間において,有害化学物質が有害量溶出しないように規定されたものです.
学科試験対策としては,これらの言葉を読み替えることで,出題される問題に対応することは可能です.あまり,難しく考えすぎないことが重要です.
以下のような数値は比較しながら覚えてるようにしましょう.
普通コンクリートの単位セメント量(単位結合材量)の最小値は270kg/m3と覚えましょう.同時に単位水量なども覚えるようにしましょう.
高性能AE剤を使用する普通コンクリートの単位セメント量(単位結合材量)は290kg/m3と覚えましょう.同時に軽量コンクリートに使用する場合は320kg/m3以上と覚えましょう(問題コード17115).
AE剤,AE減水剤,高性能AE減水剤を使用する普通コンクリートに含まれる空気量の標準は4.5%と覚えましょう(問題コード27103).
四週圧縮強度は,基準法施行令では下限値が定められている(上限値は定められていない)ことを覚えましょう.
ワーカビリティーとは,作業の容易さと品質の確保に関する総合的な性質のことであり,材料の分離を生じることなく,打ち込み,締め固め,仕上げ等の作業が容易にできる程度を示すフレッシュコンクリートの性質のことを指します.
コンシステンシーとは,主として水量によって左右されるフレッシュコンクリートの変形または流動に対する抵抗性のことを指します.
これらの違いをはっきり区別して覚えましょう(問題コード17215).
アルカリシリカ反応について
アルカシリカ反応の抑制には,コンクリートに含まれるアルカリ量を少なくすることが効果的であることを覚えましょう.
アルカリ骨材反応によるコンクリートの被害は,一般に,「反応性骨材」「高いアルカリ量」「十分な湿度」という三つの条件が揃った場合に生じやすいことを覚えましょう(問題コード26104).
施工上の注意点ほか
コンクリートをポンプ工法で送る場合は,セメント分が多く含まれた富調合のモルタルを送り,輸送管内面の潤滑性を良くし,更にコンクリートの品質変化を防止します.先に送ったモルタルの品質変化した部分についても,原則は廃棄処分とします.ただし,適切な対策を行い,工事監理者の承認を受けた場合は,型枠内に打ち込んでも良いことを覚えておきましょう(問題コード29111).
レディーミクストコンクリートの調合は,生産者(プラント)と購入者(施工者)が協議して,設計図書に適合するように決めると覚えましょう.
梁及びスラブの鉛直打継ぎ部は,欠陥が生じやすいので,できるだけ設けない方が良いですが,やむを得ず鉛直打継ぎ部を設ける場合は,部材のスパンの中央付近に設けることを覚えましょう(問題コード01102).
コンクリートの打設の際,型枠内で横流しをすると材料分離が起こりやすいので,できるだけ目的の位置に近づけて打設することを覚えましょう(問題コード24114).
コンクリートの打重ね時間の許容値は気温によって異なるので,それぞれの場合について覚えましょう.これに対応して,練り混ぜから打ち込みまでの時間も再確認しましょう(問題コード01104).
「計画供用期間の級」が標準で,普通ポルトランドセメントを使用した場合の湿潤養生期間を覚えましょう.
受入れ検査の圧縮強度試験で行う一回の試験結果は,自由に選ばれた1運搬車から採取した試料で作った3個の供試体の試験値の平均値で表すことを覚えましょう(問題コード02101).
施工者が受入れ検査を行う場所と確認する事項を覚えましょう.
従来から行ってきた構造体コンクリートの圧縮強度供試体の採取方法をB法といい,受入れ検査の圧縮強度試験と兼ねる方法をA法といいます.
B法の構造体コンクリートの圧縮強度試験の試験回数と試験用の供試体の採取方法を覚えましょう(問題コード30104).
寒中コンクリートや暑中コンクリートなどの特殊コンクリートの養生方法とか荷卸時の温度などについて整理して覚えましょう(問題コード26112ほか).
マスコンクリートや流動化コンクリートなどに関しても,過去問として出題されていることに関しては,覚えておきましょう.
■学習のポイント
過去問題の解説部分と「解説集」をチラ見しながら,全体を流し読みしてください.
この項目は毎年数問出題されており,覚える数値も非常に多い項目です.
基本的には,合格ロケットに収録されている過去問20年分の「知識」の理解で十分対応可能な項目であると思われます.
頑張って理解しましょう.
06.プレキャスト鉄筋工事
この項目に関しても,よく質問が来る点などについて,実際の問題文の補足説明(問題文が何を意味しているのであるかとか,問題文や解説文のどの部分が重要事項であるのかなど)に関して説明してきます.
プレキャスト部材の調合関係について
コンクリートの水結合材比(水セメント比)は55%以下,スランプは特記のない場合は12cm以下,空気量は特記のない場合は3%以下,単位結合材量(単位セメント量)は300kg/m3以上とすることを覚えておきましょう.
練混ぜ水に回収水を使う場合は,施工監理者の承認を受けます.計画供用期間の級が超長期及び高強度の場合は,スラッジ水を使用してはいけないことを覚えておきましょう.
製造時の養生方法について
コンクリート打設後,コンクリートの硬化を促進するための加熱養生として,一般的には,常圧蒸気養生(水蒸気を直接コンクリートに与えて加熱する養生方法)を用いることを覚えておきましょう.
加熱養生工程と部材の温度との関係を図示すると
のようになります.
普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートの加熱養生において,養生温度が80℃を超えると長期強度が低下することを覚えておきましょう.
部材の加熱養生において,前養生時間を3時間程度,養生温度の上昇勾配を10~20℃/h程度とすることが多いことを覚えておきましょう.
加熱終了後の温度降下は,部材の表面部に生じるひび割れを少なくするために,温度上昇勾配より緩やかな温度勾配によって部材温度を下げることを覚えましょう.
脱型した後には,急激な乾燥を防ぐために,十分の散水養生や水密シートによる養生を行い,水分補給することを覚えておきましょう(問題コード01124ほか).
型枠脱型時に必要なコンクリート強度について
プレキャストコンクリート板の脱型時にベットを70°程度まで立て起こしてから吊り上げる際には,コンクリート強度が約8~10N/mm2以上必要であることを覚えておきましょう(問題コード29122ほか).
プレキャストコンクリート板の脱型時にベットを傾斜させないで脱型する際には,コンクリート強度は約12N/mm2以上必要であることを覚えておきましょう.
型枠脱型時の圧縮強度の確認する際の供試体は,プレキャストコンクリート部材の製作時に同一のコンクリートを使用して,部材と同一の養生条件で養生したものを用いることを覚えておきましょう(問題コード02121ほか).
施工時における注意事項
部材の組立において,上階の部材の組立作業は,直下階でのドライジョイントの接合,及び鉛直接合部分のコンクリートの充填作業が済み,充填コンクリートの圧縮強度が9N/mm2以上に達していることを確認した後で行うことを覚えておきましょう.
風速10m/s以上,及び突風の場合は,部材の組立作業を中止することを覚えておきましょう.
接合方法について
充填コンクリートの水結合材比(水セメント比)は55%以下,スランプは21cm以下,単位水量は185kg/m3以下,単位結合材量(単位セメント量)は330kg/m3以上とすることを覚えておきましょう.
接合部におけるコンクリートの設計かぶり厚さは,特記のない場合は,最小かぶり厚さ+5mm以上とすることを覚えておきましょう.
製品検査について
構造耐力上重要な壁,梁用の部材については,全体に0.3mm以上のひび割れが入っているものは廃棄処分とすることを覚えておきましょう.
保管方法について
プレキャストコンクリート部材を平積みにして保管する場合には,まくら木の設置を部材の大きさに関わらず2箇所とし,積み上げ高さは6段程度までとすることを覚えておきましょう.
■学習のポイント
構造,施工の各科目で,関連事項が多く出題されていますので,施工項目に限定せず,他の科目の出題と合わせて覚えることをオススメします.
この項目も,基本的には,合格ロケットに収録されている過去問20年分の「知識」の理解で,十分対応可能な項目であると思われます.
頑張って理解しましょう.
09.鉄骨工事
まずは,「過去問題」の解説部分を流し読みして下さい.
この項目も約140問とボリュームが多い項目です.
やってもやっても次から次へと問題が襲い掛かってきますが,負けないで頑張りましょう.
この項目に関しても,よく質問が来る点などについて,実際の問題文の補足説明(問題文が何を意味しているのであるかとか,問題文や解説文のどの部分が重要事項であるのかなど)に関して説明してきます.
切断,切断面の粗さ,ノッチ深さについて
鋼材の切断は,機械式切断法,ガス切断法,プラズマ切断法などにより,鋼材の形状や寸法に合わせて適切な方法で行います.
鋼材のガス切断には,原則として,自動ガス切断機を使用します.
せん断切断の場合の鋼材の板厚は,原則として,13mm以下とします.
プラズマ切断とは,プラズマアークを高速噴射させて切断をする方法で
のような感じです.
メタルタッチ部が指定された部分は,部材がお互いに十分密着するように施工精度が必要です.
自動ガス切断機を使用して開先加工を行う場合の開先加工の基準を覚えましょう.
ノッチ深さとは
のことです.
孔あけ加工について
高力ボルト用の孔あけを除き,板厚13mm以下の場合は,せん断孔あけできると覚えましょう.
高力ボルト用のドリルあけも現場ではなく工場での孔あけとなります.
ここで,ドリルあけやせん断あけとは,以下のような孔あけ加工を示します.
高力ボルト接合について
高力ボルトの施工方法について覚えましょう.
トルシア型高力ボルトの締付け方法や締付け後の検査基準を覚えましょう.
すべり係数が0.45以上確保できる摩擦面の処理方法は,自然発錆,又はブラスト処理のいずれかとします.
摩擦面を自然発錆による赤錆状態に確保した場合,及びブラスト処理による表面の粗さを50μmRy以上確保した場合は,すべり係数試験の確認は必要ないことを覚えましょう.
亜鉛めっきの場合のすべり係数は0.4とします
部材接合面にはだすきができたときの処理の方法を覚えましょう.
ボルト孔のくい違いの修正基準を覚えましょう.
リーマー掛けとは,キリを用いて孔の修正を行うことです.
仮ボルトの締付けや本締めの順序は,ボルト郡ごとに,継手の中央部から板端部に向かって締付けることを覚えましょう.
鉄筋のガス圧接や打ち込み杭の施工順序と同じ理由なんですが,逆の順序で行うと,中央部の施工が難しいからです.
溶接作業と検査方法などについて
溶接接合には,いろいろな種類があります.よく質問が来ますので,それぞれの溶接方法についてまとめてみましょう.
アーク手溶接について
心線(溶接金属)のまわりを被覆材(フラックス)で包んだ溶接棒と母材の間に電圧を加え,その間に生じるアーク熱によって母材と心線を溶融させて溶接する方法です.溶接棒の供給,移動は全て手で操作します.
ここで,フラックスとは,アークの熱によって溶けて,ガスを発することにより溶接部分を覆い,溶接金属の酸化を防ぎ,スラグとなって溶着金属の急冷を防ぐ役割をします.
半自動アーク溶接について
溶接用ワイヤは自動的に送給されますが,溶接トーチの操作は手で行うので,半自動と呼ばれます.手溶接に比べ,細いワイヤに大電流を流すのでアークの力が強く,またアーク熱が集中するのでワイヤの溶ける速さが早く,母材への溶け込みも深くなります.半自動溶接には,「セルフシールド半自動溶接」と「ガスシールドアーク半自動溶接」とがあります.
セルフシールド半自動溶接(ノンガスアーク溶接)とは,溶接ワイヤのフラックスに脱酸剤及び溶融金属保護用の成分を混入することで,外部からガスを供給しないで行うアーク溶接のことを指します.
ガスシールドアーク溶接とは,自動的に連続してトーチノズルから供給された裸心ワイヤと母材との間にアークを発生させ,そのアークと溶融金属をシールドガスにより空気中の酸素,窒素の害から保護しながら手で溶接する方法のことを指します.
自動アーク溶接(サブマージアーク溶接)とは,自動溶接の代表的なもので,開先上に盛り上げた粒上のフラックスの中に裸の電極ワイヤを突っ込んでアーク溶接を行う方法です.ワイヤの送給,アークの調節や移動を自動で行い,フラックスでシールドされているので高能率な溶接が可能となります.
消耗ノズル式エレクトロスラグ溶接(CES溶接)とは,銅又は鋼製あて金に囲まれた溶接部に消耗ノズルを立て,これを通じて溶接ワイヤを連続供給し,スラグ中を流れる電流によって発生する電気抵抗発熱によりワイヤ及びノズルを融解すると同時に,母材開先面を融解して溶接が進行していく方法のことを指します.
非消耗ノズル式エレクトロスラグ溶接とは,開先内で揺動,停止する冷却式の非消耗ノズルに細径のソリッドワイヤ(径1.6mm)を供給し,溶接の進行に伴って非消耗ノズルを常にワイヤの突き出し長さを一定に保つように自動制御しながら上昇させていく溶接方法を指します.
溶接の作業方法としては,溶接変形が最小となるように,「完全溶け込み溶接」から「隅肉溶接」の順序で行います.
ウェブを高力ボルト接合,フランジを現場溶接接合とするなどの混用継手は,原則として,「高力ボルトの締付け」から「溶接」の順序で行います.
高力ボルトと溶接の併用継手(ウェブを高力ボルト接合と溶接接合の両方も用いて結合する継手など)は,原則として,高力ボルトを先に締め付け,次に溶接を行うようにします.
組立て溶接の最小ビード長さは,板厚によって異なるので,整理して覚えましょう.
完全溶け込み溶接とは,接合しようとする母材の端部を,溶接しやすいように切欠きみぞ(開先加工)を作り,その中に溶着金属を完全に満たした溶接継手を指します.
エンドタブや裏当て金の目的と施工方法,施工後の扱いについてを覚えましょう.
隅肉溶接の溶接長さは,有効溶接長さに隅肉サイズの2倍を加えたものであることを覚えましょう.
また,隅肉溶接の端部は,滑らかにまわし溶接を行うことを覚えましょう.
溶接不良例や溶接の補修方法を覚えましょう.
最後にスタッド溶接についてみてみましょう.
スタッド溶接とは,鋼棒を母材に植えつける方法で,アーク溶接の一種であり,スタッドを母材に接触させて電流を流し,次にスタッドを少し母材から離してアークを発生させ,溶融したところで押し付けて溶着させる方法です.
スタッドボルトとは,鉄骨梁とコンクリート床の合成梁の効果を期待して,梁フランジに垂直に溶接されたボルトを指します.
デッキプレートの溶接の中に,焼抜き栓溶接があります.
のような溶接です.
■学習のポイント
過去問題の解説部分と「解説集」をチラ見しながら,全体を流し読みしてください.
この項目は毎年数問出題されており,覚える数値も非常に多い項目です.
基本的には,合格ロケットに収録されている過去問20年分の「知識」の理解で十分対応可能な項目であると思われます.
構造(文章題編)の「03.鋼材,金属」「06.鉄骨構造」と併せて,頑張って理解しましょう.
11.地盤調査
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分30秒)
まずは,過去問題の解説部分と「解説集」をチラ見しながら,流し読みして下さい.
地盤調査,土工事・山留工事,地業工事の3項目は,厳密に分類することが難しく,それぞれに関連している項目が見受けられます.構造文章題の地盤,基礎の設計と絡めて覚えていきましょう.
この項目に関しても,よく質問が来る点などについて,実際の問題文の補足説明(問題文が何を意味しているのであるかとか,問題文や解説文のどの部分が重要事項であるのかなど)に関して説明してきます.
地盤調査とは,基礎の設計や施工に必要な資料(敷地の地層,土質,地下水位,地盤の支持力と沈下量)を調べることを指します.
地質と地盤について
地盤は様々な土質が長い年月を経て形成されたもので,その生成の年代によって,第三期層,洪積層,沖積層などと呼ばれます.
沖積層とは,約1.5万年~現在までの沖積世に堆積した新しい層を指します.硬く締まるだけの時間が経過していないので,地盤としては軟弱です.
洪積層とは,約1.5万年以前の洪積世に生成された地盤を指します.古い地層ほど地盤としては密実であり,支持地盤として期待できます.
調査間隔,調査地点及び調査深さは,事前(予備)調査から想定される地盤状態と建物の規模・種類に応じて求めます.
直接基礎と杭基礎とでは,調査深さが異なるので,それぞれ覚えましょう(問題コード01051).
地盤調査の種類について
地盤調査の種類としては,大きく分けて,ボーリング,原位置試験,土質試験,透水試験という4種類に分けることができます.
ボーリングとは,地中に孔をあけ,土のサンプルを採取して地層の構成を調査すること,及び原位置試験を行うための孔を作る作業のことを指します.
原位置試験とは,現場で行われる調査方法のことで,標準貫入試験(静的サウンディング),サウンディング(静的サウンディング),平板載荷試験,孔内水平載荷試験,杭の鉛直載荷試験,常時微動測定,弾性波速度試験(PS険層)などが挙げられます.
土質試験(現場で採取したサンプルを用いて行われる室内試験)は,物理試験と力学試験に分類されます.
粘性土に関する試験項目
地盤構成を調査する試験方法には,粒度試験,含水比試験,液性限界,塑性限界試験などがあります.
地盤の支持力算定のために行う土のせん断強さを調査する試験方法には,1軸圧縮試験,3軸圧縮試験,ベーン試験,ダッチコーン,平板載荷,杭の載荷試験などが挙げられます.
地盤の沈下量算出のために土の圧縮性を調査する試験方法には,圧密試験,液性限界試験,含水比試験などが挙げられます.
地下水の状況の調査には,圧密試験,透水試験,間隙水圧測定などの調査が行われます.
続いて,上記で分類分けをしたそれぞれの項目について説明してきます.
ボーリングについてボーリングには,ロータリー式,ウォッシュ式,オーガー式,パーカッション式などの種類があります.
ボーリング孔からの乱さない試料の採取位置は,平面的に分散させず,1地点に集中して深さ方向に密に(1m間隔程度)採取します.調査地点は建物中央部にすることが多いことを覚えておきましょう.
ロータリー式ボーリングとは,ボーリングロッドを機械で高速回転させて掘削し,試料を採取します.
ウォッシュ式ボーリングとは,ビットから水を噴出させ,孔の先端の上をチョッピングビットで突き崩して掘り進めます.
オーガー式ボーリングとパーカッション式ボーリングは,以下の図を参照して下さい.
原位置試験について
原位置試験とは,サンプリング(試料採取)をしないで,現地で直接地盤の状態を調査する試験の総称を指します.
原位置試験のうち,標準貫入試験のみ乱した試料が得られます.
また,サウンディングは,動的サウンディングと静的サウンディングに分けられ,一般には,静的サウンディングのことをサウンディングと言います.
標準貫入試験(動的サウンディング)とは,ボーリング孔を利用して,原位置における土の硬軟,締まり具合の相対値を知るためのN値を求める試験で,最も広く使われている試験です(問題コード01054ほか).
N値の判定として
1.砂質地盤では,N値から土の締まり具合を測定することができます.粘性土地盤でも利用できますが,砂質地盤ほどよい結果は得られません.
2.N値が同じでも,地耐力は砂質土より粘性土の方が大きいです.
3.簡易粒度試験を行い,砂質土・粘性土の判別を行います.
N値に関する注意点として
1.径10mm以上の礫の存在により,N値が実際の地耐力より大きく出ることがあります.
2.不透水層以下の被圧水がボーリング孔より噴出して,砂層が緩み,N値が小さく出ることがあります.
3.相対密度の「密な」,「非常に密な」砂は,ロッドが長くなるほど,曲がりや揺れのためにN値が大きく出る傾向があります.
4.相対密度が「緩い」砂は,ロッドが長くなると,ロッドの質量の影響が大きくなるので,N値が小さく出る傾向があります.
サウンディング(静的サウンディング)とは,ロッドの先端に取り付けた抵抗体を地盤中に挿入し,貫入・回転・引抜などに対する抵抗より,地盤の硬軟・締まり具合・土層の構成などの地盤の性状を調査する方法を指します.
代表的なものにスクリューウェイト貫入試験(旧スウェーデン式貫入試験),オランダ式二重管コーン貫入試験,ベーン試験などがあります.
地盤の許容応力度は,平板載荷試験による降伏荷重の1/2の数値,又は極限応力度(極限支持力)の1/3の数値のうちいずれか小さい方の値となります.
孔内水平載荷試験(LLT)とは,地震時の杭の水平抵抗,及び基礎の即時沈下を検討する場合に必要な地盤の変形係数を求める試験です(問題コード25053ほか).水平地盤反力係数は,標準貫入試験によるN値から推定することが多いですが,N値が0(モンケン自沈)や1のような非常に柔らかい地盤の場合は,孔内水平載荷試験により求めます.よって,孔内水平載荷試験は,支持杭の支持層などの固い地盤ではなく,柔らかい地盤で行う試験であることに注意しましょう!
杭の鉛直載荷試験は,杭の鉛直支持力を決定するために,又は設計支持力の安全性を確認するために行われる試験です(問題コード13054).
常時微動とは,地盤中に伝播された人工的,又は自然現象による様々な振動のうち,特定の振動源からの直接的影響を受けていない状態での微動振動のことを言います.常時微動測定とは,これを測定して,地盤の振動特性を調べるために行われる試験です(問題コード16055).
弾性波速度検層(PS検層)とは,ボーリング孔を利用して,地盤のP波(プライマリー波,縦波)とS波(セカンダリー波,横波)の速度分布を測定し,その速度値から,地盤の硬軟の判定,及び剛性率,ヤング率などを求めるために行われる試験です(問題コード01052).
土質試験について
土質試験とは,現場で採取したサンプルを用いて行われる室内試験で,物理試験と力学試験に分類されます.
物理試験とは,土粒子の密度・含水比などの基本的な特性を調べ,砂質土・粘性土などの土質判別を行うための試験です.
具体的には,土粒子の密度試験,含水比試験,粒度試験,液性・塑性限界試験,湿潤密度試験などがあります.
力学試験とは,土の強さ,圧縮性,動的性質,及び透水性を調べる試験をいい,通常,「乱さない試料」を対象とします.
具体的には,1軸及び3軸圧縮試験,圧密試験,1面せん断試験などがあります.
ひび割れの入った供試体は,1軸圧縮試験ではなく,3軸圧縮試験を行います(問題コード19053).
■学習のポイント
地盤項目については,構造,施工の両科目で,関連事項が多く出題されていますので,施工項目に限定せず,他の科目の出題と合わせて覚えることをお薦めします.
この項目も,基本的には,合格ロケットに収録されている過去問20年分の「知識」の理解で十分対応可能な項目であると思われます.
頑張って理解しましょう.
12.土工事・山留工事
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分)
地盤調査,土工事・山留工事,地業工事の3項目は,厳密に分類することが難しく,それぞれに関連している項目が見受けられます.構造文章題の地盤,基礎の設計と絡めて覚えていきましょう.
この項目に関しても,よく質問が来る点などについて,実際の問題文の補足説明(問題文が何を意味しているのであるかとか,問題文や解説文のどの部分が重要事項であるのかなど)に関して説明してきます.
根切りについて
手堀りによる掘削に関して次の表を覚えましょう.
山留め壁の背面に作用する側圧(土圧と水圧との合力)は,一般に,根切りの進行に伴い,土圧は「静止土圧」から「主働土圧」となり,徐々に減少していきます.山留め壁に作用する土圧は,次の3種類あります.いずれも「土を主体」として考えた名称となっています.
各方向の土圧が釣り合っている場合,壁は移動せずに静止の状態にあります.
山留め壁に土圧が働くと,壁が土圧の方へ移動して,構造体が離れる側に移動する状態です.
内部摩擦角が大きい(砂質土)ほど,土が崩れにくいので,主働土圧係数は小さくなります.
主働土圧 = 主働土圧係数 × 土の単位体積重量 × 地表面からの距離
土圧が働いて壁が動こうとするとき,根入れ部分の土が抵抗して,これを押しとどめようとする土の抵抗土圧のことを指します.
受働土圧と鉛直方向の圧力との比を受働土圧係数といいます.
受働土圧係数 > 静止土圧係数(0.5) > 主働土圧係数 となることを覚えましょう.
排水・止水について
被圧水がある地盤における掘削工事では,地下水によって掘削底面が押し上げられたり,地下水が山留め支柱の根入れ部から噴水してボイリングの起こるおそれがあります.そのため,被圧水の水圧をあらかじめ減圧しておく必要がありますね.
それらの排水を行う方法としては,かま場排水工法,ディープウェル工法,ウェルポイント工法などがあります.
以下,順にそれぞれの工法について説明してきます.
かま場と呼ばれる集水ピットに水中ポンプを設置して揚水する工法です(問題コード13225).
地下水の少ない地盤での根切り工事に適しています.
地下水位を低下させる工法ではなく,掘削溝内に湧き出てきた地下水を排水する工法です.
湧水のある安定性の低い地盤では,ボイリングを発生させ地盤を緩めることがあるため適しません.
径25~40cmのストレーナー(開口)の付いた管を土中に挿入し,ポンプで揚水する工法です(問題コード27064).
集水効果をあげるために,管の周囲に砂礫層を設けます.
地下水位低下は30mを超えます.
先端にウェルポイント(集水管)を取り付けたライザーパイプ(6~7m)を地下水面下に多数打ち込み(1~2m間隔),真空ポンプで地下水を強制的に揚水する工法です(問題コード25061ほか).
粘性土地盤より,砂礫層からシルト質細砂層地盤に適しています.
また,1段のウェルポイントによる地下水位低下の限界は,空気漏れにより真空度が低下するので,ヘッダーパイプから4~6m程度と言われています.
地下水の低下によって周辺の井戸枯れや地盤沈下,あるいは地下水塩水化などが問題により排水工法が適用できない場合には,以下に示す止水工法が採用されます.
止水工法とは,根切り周辺部に止水性の高い壁体などを構築し,根切り部への地下水の流入を遮断する工法です.
山留工事について
根切りによって掘削面には側圧が働き,根切り底には周囲からの土や水が回り込もうとします.このような作用に対して安全に工事を進めるために山留めを設けます.
山留め工法について,まとめてみましょう.
1.山留め壁のないもの
のり付けオープンカット工法とは,掘削区域の周辺に斜面をとって,山留め壁や支保工なしで掘削する工法です.
のり面(掘削・盛土などの斜面のこと)を長期間存置する場合は,水の浸食や乾燥によって破壊しないように養生し,のり面の表面を雨水や地上の雑排水が流れ,表面を崩していくおそれのある場合には,ラスモルタル塗,ショットクリート(モルタル,又はコンクリートを圧縮空気により管路で輸送し,先端のノズルから高速で吹き付ける工法),アスファルト吹き付けなどの方法で表面を保護します.
のり面を短期間存置する場合は,シートなどで養生します.
支保工などの障害物がないため,施工能率が良い工法です.
2.山留め壁の分類について
1)親杭横矢板工法(問題コード27061)
親杭横矢板は,H形鋼,I形鋼,レールなどの親杭を計画された山留め壁線上に所定の間隔(通常1~2m)で建て込み,根切りの進行に伴って横矢板を親杭間にはめ込んでいき,山留め壁を形成する工法です.
止水性はないので,地下水の多い敷地には不適当です.
親杭横矢板工法が適用しやすい地盤としては,
・中ぐらい以上の硬さをもつ粘性土層
・よく締まった砂層,又は礫層
・地下水のない砂層,又はウェルポイントで排水可能な状況にある砂層
親杭横矢板工法が適用しにくい地盤としては,
・非常に軟弱な粘土層,又はシルト層
・排水が完全にできない砂層
2)シートパイル(鋼矢板)工法,鋼管矢板工法
シートパイル,及び鋼管矢板工法は,シートパイルの1枚1枚を連続して打ち込むことにより,止水性のある山留め壁をつくるものであり,施工性にも優れており,従来から軟弱地盤や地下水の多い地盤,水中の仕切りなどに用いられています.
材料自体が不透水性であり,ジョイント部の噛み合わせが正確であれば,水密性があるため止水壁として利用できます.ただし,トレンチシートパイルは水密性に難点があること,及び礫層などの硬質地盤を打ち抜くことができないことに注意しましょう.
3)ソイルセメント柱列山留め壁工法
地盤オーガーで掘孔しつつセメント系注入液を孔中に注入し,原位置土と混合・攪拌し,オーバーラップした掘削孔に応力材(H形鋼など)を適切な間隔で挿入することで柱列状の山留め壁を造るものであり,SMW工法(Soil Mixing Wall)が有名です.
4)場所打ち鉄筋コンクリート山留め工法
この工法は,形状により柱列工法,壁工法の2つに分けられます.いずれの工法も現場において地中に孔(壁工法は細長い壁状の孔)を設け,その中に鉄筋かご,あるいは鋼材を建て込み,続いてコンクリートを打ち込んで,そのまま山留め壁とするものです.この山留め壁を建物の一部として使用する場合もあります.
使用条件と山留め壁の選択基準の目安についてまとめてみましょう.
3.支保工のないもの
1)自立山留め工法
山留め壁を根切り外周に自立させ,切梁などの支保工を使用せずに施工するので,障害物がなく施工能率が良い工法です.
山留めかべを根入れ部分で支持された片持ち梁として扱うため,親杭,鋼矢板の根切り底以下の硬質地盤への根入れ深さの検討が重要です.
一般的に,浅い掘削に限定されます.
2)段逃げ山留め工法
自立山留め工法を複数の段階に設けたもので,上段の根入れ部の耐力の取り方が問題になりますが,障害物がないので施工性能は良い工法です.
4.支保工のあるもの
1)水平切梁工法
側圧を水平に配置した圧縮材(切梁)で受ける最も自然な一般的工法です.
切梁を格子状に組み,水平面内の座屈を防止するとともに,支柱を切梁の交点近くに設置して,上下方向の座屈を防ぎます.
切梁の間隔を大きくとるので,腹起こしの補強や切梁の座屈止めを兼ねて火打ちをとります.
2)アイランド工法
山留め壁に接してのり面を残し,これによって土圧を支え,中央部をまず掘削して構造物を築造します.この構造物から斜め切梁で山留め壁を支えながら周辺部を掘削し,その部分の構造物を築造する工法です.
浅く広い掘削に適しています.
水平切梁工法に比べ,切梁の長さが短いので,切梁の変形が少なく,切梁材と手間を軽減できます.
軟弱地盤では,中央部での掘削が危険であるため適しません.
3)トレンチカット工法
軟弱地盤で大規模掘削を行う場合で,同時に全体の根切りができないとき,山留め壁を根切り場周辺に2重に設けて,その間を先行掘削し(トレンチ),外周地下構造体を土留めとして利用しながら,中央部分を施工する工法です.
アイランド工法と同様に,根切り面積が大きく,かつ浅い場合に適用され,軟弱地盤が厚く堆積し,広い面積の根切りによるすべりやヒービングの対策として有効です.
4)逆打ち(さかうち)工法
山留め壁を設けた後,本体構造の1階床を築造して,これで山留め壁を支え,1階床を逆打ち支柱で支えながら下方へ掘り進み,地下各階床,梁を支保工にして順次掘り下がりながら,同時に地上部の躯体工事も進めていく工法です.
工期の短縮ができます.
構造体を地下工事の仮設に使用できます.
5)地盤アンカー工法
重機により削孔を行ってから,その先端にアンカー体を設けて,引張材を介して山留め壁に作用する側圧をアンカーの引き抜き抵抗によって支える工法です.
切梁がないため大型機械が利用でき,作業能率が良くなります.
のり付きオープンカット工法,自立山留め工法が不可能な場合や,敷地が傾斜していたり,大きな偏土圧(片側土圧)が作用する場合に利用します.
アンカーへの緊張力の導入は,注入材の所定の強度発現を確認した後で,山留め壁の変形などを考慮して,相隣するアンカー数本を段階的に行います.
腹起こし,切梁,支柱の設置に関する注意事項を列記しますので,しっかり覚えましょう.
・山留め壁に使用する鋼材,及びリース形鋼材の許容応力度は,長期許容応力度と短期許容応力度の平均値以下の値とします(問題コード14071).
・腹起しブラケットは,腹起しをバランスよく設置できるように,腹起し1本に対して2本以上取り付けます.
・腹起しの継手は,曲げ応力の小さい位置に設けます.
・切梁の継手は,はずれや座屈を生じないように確実に緊結します.また,継手やジャッキ挿入部は構造的な弱点になりやすいので,原則として,切梁支柱(切梁交差部)の近くに設けます.
・土圧の計測は,一般的に,山留め切梁にかかる軸力を盤圧計によって行います.
・支柱の配置は,切梁の交差部ごとに設置することを原則とします.
・切梁の軸力の測定は,土圧が降雨,積載物,気温などにより変化するので,1日に3回は定時測定します.
異常現象として,ヒービング,ボイリング,パイピング,クイックサンド,盤ぶくれなどがあげられます.
1)ヒービングとは,N値がほとんどゼロを示すような沖積粘土が厚く堆積しているような軟弱地盤における掘削工事では,掘削場内外の地盤の重量差により,山留め壁背面地盤が陥没沈下し,掘削場内へ回り込む現象を指します.
ヒービングの対策としては,次の方法があります.
剛性の高い山留め壁をヒービングのおそれのない良質地盤まで根入れをして,山留め壁の沈下,移動を抑えます.
掘削位置に近接してヒービングに影響する構造物がある場合,構造物の荷重を良質地盤に直接伝達させ,ヒービングの破壊モーメントに影響させないようにアンダーピニングを行います(問題コード15074).
2)ボイリングとは,高い圧力を有する上向きの浸透流によって,砂の粒子が沸き立つように激しく持ち上げられることにより,砂がせん断強さを失う現象です.
根切り底付近に地下水を含んだ砂質地盤がある場合,湧水の排水工法をかま場工法とすることは,掘削場内外の大きな地下水位(水頭)差による,砂質地盤の掘削底面付近の上向きの浸透流を呼び起こす原因となるため,極めて危険です.
ボイリングの対策としては,次の方法があります.
3)盤ぶくれとは,掘削底が不透水層で,その下部に被圧水(水頭がその帯水層の上面より高い地下水)を含む透水層がある場合,上部の不透水層の重量が被圧水圧より小さいため押し上げられる現象です.
盤ふくれの対策としては,次の方法があります.
4)パイピングとは,水位差のある砂質地盤中にパイプ状の水みちができて,砂混じりの水が噴出する現象です.
5)クイックサンドとは,掘削底面付近の砂質地盤に上向きの浸透流が生じ,この水の浸透力が砂の水中での有効重量より大きくなり,上向きの水流によって砂粒子が水中で浮遊する現象です.
■学習のポイント
問題コード03063のリチャージ工法に関して補足説明します.
リチャージ工法(復水工法)とは,ディープウェルなどと同様の構造のリチャージウェル(復水井)を設置して,そこに排水(揚水)した水を入れ,同一の,あるいは別の帯水層にリチャージ(水を返還)する工法です.
周囲の井戸枯れや地盤沈下などを生じるおそれのある場合の対策として有効です.
構造,施工の各科目で,関連事項が多く出題されていますので,施工項目に限定せず,他の科目の出題と合わせて覚えることをお薦めします.
この項目も,基本的には,合格ロケットに収録されている過去問20年分の「知識」の理解で,十分対応可能な項目であると思われます.
頑張って理解しましょう.
13.地業工事
地盤調査,土工事・山留工事,地業工事の3項目は,厳密に分類することが難しく,それぞれに関連している項目が見受けられます.構造文章題の地盤,基礎の設計と絡めて覚えていきましょう.
この項目に関しても,よく質問が来る点などについて,実際の問題文の補足説明(問題文が何を意味しているのであるかとか,問題文や解説文のどの部分が重要事項であるのかなど)に関して説明してきます.
まずは,用語の説明からしていきます.
地業とは,構造物の基礎を支える土もしくは地盤を上部に固めるための作業のことの総称です.
よって,地業工事とは,基礎構造のうち,それを支えるために直接地盤に行う部分のことを指します.
地業工事の施工に関して,監理者の立会いが必要な時を以下に示します.
1)施工試験,載荷試験の時
2)工事現場に搬入された杭,セメント,ベントナイトなどの材料検査の時
3)既製杭の打ち込み工法で,打ち止め位置を決定する時
4)場所打ちコンクリート杭および既製杭埋め込み工法において,掘削が所定の深さに達した時
5)床付け面の確認を行う時
6)設計図書に記載のない障害物などが発見された時
7)監理者が必要と認められた場合,又は立会いを求められた時
続いて,基礎の種類について説明します.
基礎とは,建築物の荷重を支持地盤に伝える最下部構造をいい,基礎スラブと杭とを総称したものを指します.
基礎スラブとは,上部構造からの荷重を直接,又は杭を介して支持地盤に伝える構造部分を指します.フーチング基礎ではフーチング部分,べた基礎ではスラブ部分を示します.
基礎構造は,直接基礎形式と杭基礎形式とに分類されます.
直接基礎形式は,更にフーチング基礎とべた基礎とに分類されます.
杭の支持方法としては,支持杭と摩擦杭に分類できます.
支持杭とは,軟弱な地層を貫いて硬い支持層に到達し,主として杭の先端支持力で支持する形式です.
摩擦杭とは,主として杭の周辺摩擦力で支持する形式です.
杭の分類と杭基礎の先端の地盤の許容応力度の比較表を見てみましょう.
杭の支持力は許容応力度が大きいほど大きくなりますので,
打ち込み杭 > 埋め込み杭 > 場所打ち杭 となります.
既製コンクリート杭の種類は
のようになります.
くいの先端部の形状として
のような種類があります.
一般に,打ち込み施工には平坦,又は凹形の閉そく形が多く用いられ,高強度プレストレストコンクリート杭の場合,硬い地盤に打ち込んだときに杭先端部の破損が少ないと言われる平坦形を原則とします.
セメントミルク工法では,孔壁の崩落防止のために閉そく形のペンシル形を用い,種々の中堀り工法では開放形が用いられます.
既製コンクリート杭の施工方法の種類は
のように分類できます.
打ち込み工法の杭の中心間距離は
のようになります.
打撃工法(杭頭をハンマーで打撃し,支持層に杭先端を貫入させ,支持力を発現させる工法です)の施工の流れは
のようになります.
プレボーリング打撃併用工法(中小径の杭で硬い中間層を抜く場合や,騒音振動を軽減し,杭の貫入を容易にする場合などに使用されます)の施工の流れは
のようになります.
埋め込み工法の杭の中心間距離は
のようになります.
プレボーリングによる埋め込み工法(セメントミルク工法)の施工の流れは
のようになります.
セメントミルク工法の特徴,注意点として,以下のものが挙げられます.
1)アースオーガーによってあらかじめ杭径より大きく(杭径+100mmが標準)掘削します.掘削中は孔壁の崩壊を防止するために安定液(ベントナイト)をオーガー先端から噴出します.
2)孔が所定の深度に達したあと,根固め液に切り替え,所定量を注入し,オーガーを正回転でゆっくり引き上げながら必要に応じて杭周辺固定液を充填します.
3)杭を掘削孔内に建て込み,圧入または軽打し支持層に定着させ,根固め液と杭周辺固定液の硬化によって,杭と支持層との一体化を図り,支持力を発現させます.
4)杭は建て込み後,杭心に合わせて保持し,7日程度養生を行います.
5)支持層の掘削深さを1.5m程度とし,杭を支持層中に1.0m以上根入れします.また,高止まりは0.5m以下とします.
6)先端閉そく杭を使用するので建て込み中,杭に浮力が作用し,杭の自重のみでは沈設が困難となる場合には,杭の中空部に水を入れて重量を増すことで杭を安定させることが必要です.
ベントナイトとは,微細粘土で水を吸収して著しく膨張したもので,孔壁の保護に使用されます.
セメントミルクとは,ベントナイトと水を十分に混合した後にセメントを加えて練ませたものです.
杭周固定液とは,杭の周面摩擦力や水平抵抗を確保するために,杭長が長く,周辺地盤が軟弱な場合に用いられる液体です.
根固め液とは,杭を支持層に固定し,先端支持力を確保するために,必ず杭の先端位置から安定液を押し上げるように注入します.
ベントナイト液は使用できません.
鋼杭に関する特徴や注意事項を説明します.
1)強い打ち込みに耐えられ,締まった中間層の貫通も可能です.
2)曲げに強く,水平力を受ける杭に適します.
3)単管の溶接によって,長さの調節が容易で長尺杭として使用できます.
4)曲げに強いので(コンクリート杭より)運搬,取り扱いが簡単です.
5)腐食に対する検討が必要です.
6)杭の先端形状には,開口杭と閉口杭とがあります.
鋼杭の施工方法に関してまとめてみましょう.
鋼杭の中心間隔は
現場打ちコンクリート杭の施工方法に関してまとめてみましょう.
ここで,ケーシングとは,掘削孔壁の崩壊を防止する鋼製のチューブのことです.
安定液とは,孔壁保護を主に目的とする溶液で,通常,ベントナイト溶液が使用されます.
オールケーシング工法(ベノト工法)とは,杭の全長にわたりケーシングを振動(または回転),圧入しながら,ハンマーグラブをケーシング内に落下させて,内部の土砂を掘削,排土完了後,一次スライム処理を行い,鉄筋かごを掘削孔内に建て込みます.
次に二次スライム処理を行い,トレミー管によりコンクリートを打ち込みながらケーシングを引き抜き,杭を築造します.
アースドリル工法に比べて,一般にスライムが少ない工法です.
コンクリート打設時のケーシングの引き抜きは,その下端をコンクリート内に2m以上入った状態を保持しながら行い,トレミー管もコンクリート内に2m以上入った状態を保持します.
リバースサーキュレーション工法とは,ドリルパイプの先端に取り付けた特殊な回転ビットを地上に設置したロータリーテーブルでゆっくり回転させて地盤を掘削し,掘削した土砂は孔内水とともにサクションポンプなどで地上に吸い上げ排出します.
孔壁の保護は,表層部をスタンドパイプで,以深は水を用い,静水圧を0.02N/mm2以上に保つことで孔壁の崩壊を防ぐ工法です.地下水との水頭差を2.0m以上保つようにします.
掘削完了後,一次スライム処理を行ってから,掘削孔内に鉄筋カゴを建て込みます.
次に二次スライム処理を行って,トレミー管を用いてコンクリートを打ち込み,杭を築造します.
アースドリル工法とは,アースドリル機のケリーバーに取り付けたドリリングバケットを回転させながら地盤を掘削し,掘削土砂をバケット内に収納し,バケットとともに地上に引き上げて排出します.
掘削壁は,ケーシングを表層にのみ使用し,以深はベントナイトなどの安定液で保護します.
掘削完了後はリバースサーキュレーション工法と同様です.
現場打ちコンクリート杭の各工法の特徴はこちら(13_kuihikaku.pdf)を参照してください.
コンクリートの打ち込みは,トレミー管内のコンクリートの逆流や泥水の侵入を防止するため,コンクリート底部から押し上げるように打設します.
トレミー管へ最初にコンクリートを投入する際は,プランジャー方式と底ぶた方式があります.
現場打ちコンクリート杭の杭の中心間隔は
ここで,各杭の杭の中心間隔や施工精度に関してまとめてみましょう.
地盤改良地業とは,地盤の支持力を増大させたり,地盤の沈下を抑制するために,土の性質を改善することを目的として,土の締め固め,固化,強制圧密,置換などを行う基礎地業のことを指します.
地盤改良工法の分類についてまとめてみましょう.
締め固め工法とは,軟弱な砂質土地盤に適用される工法で,支持力が大きく,液状化の起こりにくい安定した地盤に改良する工法です.
締め固め工法は,バイブロフロテーション工法とサンドコンパクションパイル工法(砂圧入工法)とに分類できます.
バイブロフロテーション工法とは,棒状振動体を地中に振動貫通させて,ゆるい砂質土地盤を締め固めるとともに砕石など粗骨材を充填し,透水性の良い粗骨材の柱(直径600mm程度)を地中に造成します.
サンドコンパクションパイル工法(砂圧入工法)とは,砂質土地盤(粘性土地盤に用いることもあります)に対して衝撃や振動により砂を圧入し,直径700mmほどの締まった砂の柱を造成します.
土のせん断強度と密度を増大させ締め固める工法です.
砂の代わりに砕石を用いるグラベルコンパクションパイル工法もあります.
強制圧密工法とは,粘性土地盤の圧密を短期間で終了させる工法で,地盤中に含まれている間隙水を強制的に排水して地盤の沈下を起させ,土のせん断強さを増大させて,支持力の大きい安定した地盤に改良する工法です.
強制圧密工法では,サンドドレーン工法を覚えておきましょう.
サンドドレーン工法とは,軟弱な粘土層に砂や砂利を使用したドレーンを築造する工法です.軟弱な粘土層に砂杭を多数つくり,粘土層中の間隙水を短時間に砂杭を通して脱水させ,圧密を強制的に行います.その際,砂杭上の地盤に砂を敷き,その上から盛土による荷重をかけることで,砂杭にに集まった間隙水は上昇し,地盤面上の砂層を通じて流出させます.
打ち込み式(深度30m程度)とウォータージェット式(深度20m程度)があります.
最後に固化方法について説明します.
浅層混合処理工法と深層混合処理工法とに分類できます.
浅層混合処理工法とは,固化材(土粒子間に化学的結合を与える目的で混合するもの)の添加方式には,粉体方式とスラリー(原料の粘土と石灰石の粉末を水で一緒に練混ぜた泥状態のもの)方式があり,混合作業を行う位置によって,原位置混合方式と別途混合方式に分かれます.
深層混合処理工法とは,地中に供給した固化材を攪拌によって強制的に混合する機械式攪拌方式と,スラリー状の固化材を高圧噴射して混合する噴射攪拌方式があります.
注入した固化材の全てが改良対象地盤と混合されて改良体となるわけではなく,10~30%が未固結のままスライムとして地表に戻るので,産業廃棄物として処理します.
施工上の注意点を説明します.
1)固化材は,吸湿により変質しやすいので,最大3日分のストックとします.
2)7日程度の養生期間を設けた方がいいです.
3)浅層混合処理工法では,固化材を混合させてからローラーによる転圧を行いますが,過剰転圧とならないように注意します.
4)浅層混合処理工法の改良効果の確認は,一般に,一軸圧縮強度,平板載荷試験によります.
5)深層混合処理工法の改良効果の確認は,一般に,一軸圧縮強度によります.
■学習のポイント
平成19年の問8は,4選択肢が新問題でした.その中に正答肢がありましたので,非常に難しい問題として出題されました.
構造,施工の各科目で,関連事項が多く出題されていますので,施工項目に限定せず,他の科目の出題と合わせて覚えることをお薦めします.
過去問20年分の「知識」で対応できる問題については,頑張って理解しましょう.
17.内装工事
まずは,「過去問題」の解説部分を流し読みして下さい.
この項目に関しても,よく質問が来る点などについて,実際の問題文の補足説明(問題文が何を意味しているのであるかとか,問題文や解説文のどの部分が重要事項であるのかなど)に関して説明してきます.
この項目は,接着剤の選択基準,床工事の下地の条件などに重点をおいて勉強しましょう.
この項目も,過去問題で解答が×である部分に関しては,問題文のどの部分が,どのようになっていれば解答が○になるのかに着眼点をおいて勉強しましょう.
接着剤は,大きく分けて,エポキシ樹脂系と酢酸ビニル樹脂系(エマルション形,溶剤形)に分けられます.
エポキシ樹脂系は,耐水性,耐久性,耐薬品性に優れており,湿気の多い床にビニル床シートを接着する際,モルタル下地にフローリングを接着する際に用いられます.コンクリート系,木材系,金属系及びプラスチック系の全ての下地に適応します.
酢酸ビニル樹脂系は,耐水性,耐熱性,耐アルカリ性に劣っているため,湿気の多い部分への接着剤としては不適です.
接着剤を使用する際の注意点として,室温5℃以下の場合,採暖して10℃以上に保って接着します.
接着剤は一般に液状で,固体である主成分を水に溶かしたものを「エマルション形」,溶剤(アルコールやトルエンなど)に溶かしたものを「溶剤形」と呼びます.エマルション形接着剤は,引火の危険がなく,安全性や作業性に優れます.また,水の蒸発により接着力が発現するため,低温での使用には適しません.
床工事のコンクリート下地の場合は,28日以上乾燥養生し,下地水分をチェックして,仕上げの施工に入ります.
モルタル塗り下地の場合は,14日以上乾燥養生し,下地水分をチェックして,仕上げの施工に入ります.
床工事の種類としては,ビニル床タイル・床シート張り付け,カーペット敷き,フローリングの張り付け,合成樹脂塗床などがあります.
カーペットの取付け用付属品であるグリッパーとは
のようなものです.
鋼製下地(軽量鉄骨天井下地)に関する質問がよく来ますので,補足説明をします.
天井下地の各部材及び付属金物の名称は下図を参照して下さい.
天井下地の組み方や野縁の間隔に関しては,下図を参照して下さい.
屋内の天井の振れ止め補強に関しては,要注意が必要です.過去問題で問われている内容で構いませんので,各自チェックしておいてください.
以下に振れ止め補強例をあげます.
■近年の出題ポイントとして
問題コード25192について補足説明をします.
この解説に関しては,かなりの数の質問がありました.
における5mm程度の隙間のことについて聞いている問題です.
合格ロケットに収録されている過去問20年分の「知識」だけで十分,出題問題に対応ができるようになりますよ!
18.防水工事
この項目の学習を効率よく進めるために,「防水工事」に関する基本事項を学ぶことから始めましょう.
解説集として収録されている「防水工事の解説」をまず最初にお読み下さい.
次に,「過去問題」の解説部分を流し読みします.
ここでの注意事項ですが,「防水工事の解説」の内容を全て覚えようとはしないで下さい.この解説集には,建築士試験で出題されている内容は全て網羅してありますが,実務としても使えるように作成しています.
ですから,「防水工事の解説」をさらりと一読し,「過去問題」の解説部分を流し読みし,解説集に過去問として出題されている部分を線引き(マーカーによる色付けなど)します.
その線引き部分を理解する(覚える)ように心がけてください.
以上のことを実行していただければ気づかれると思いますが,この項目のポイントは,
1)アスファルト工事の工法(密着工法,絶縁工法など)について
2)材料(アスファルトの溶融温度,アスファルトプライマーの性質など)について
3)各種類の防水工事の施工法や特徴(ルーフィングの張付けの重ね長さ,出隅・入り隅の角度など)について
4)シーリング工事(バックアップ材,ワーキングジョイント2面接着,ノンワーキングジョイント3面接着など)について
です.
これらに関して,過去問では繰り返し出題されていることがわかると思います.
そのような重要事項に関して覚えるような勉強方法が効率よく,この項目をクリアーする方法だと思います.
効率的な覚え方としては,まずは原則的な内容をおさえた上で,例外を覚えるようにしましょう.
例えば,防水下地の形状については『出隅については,全ての防水仕様において45度の面取り.入隅については,アスファルト防水については45度の面取り.それ以外(改質アスファルト防水,塗膜防水,シート防水等は通りよく直角.』のように覚えることで,覚えやすくなると思います.
ルーフィング類の重ね幅についても,基本は長手・幅方向ともに100mm以上.
100mmではないものは,以下の3つだけ,例外として覚えましょう.
・シート防水の加硫ゴム系シートの立上り部の重ね幅は150mm以上
・シート防水の塩化ビニル樹脂系シートの重ね幅は40mm以上(熱融着のため)
なお,加硫ゴム系シートの場合は,原則通り100mm以上
・ウレタンゴム系塗膜防水の補強布の重ね幅は50mm以上
なお,防水材の塗継ぎの重ね幅は100mm程度
■近年の出題ポイントとして
この項目も,比較的,過去問題の類似問題としての出題割合が高くなっています.
その反面,生粋の新問題については,太刀打ちできるものではありません.
そのため,最低限,合格ロケットに収録されている過去問20年分の「知識」だけは,きちんとマスターしておいて下さい.
また,合格ロケットに収録されている解説集を有効利用してください.
20.外装・塗装工事
まずは,「過去問題」の解説部分を流し読みして下さい.
この項目は,カーテンウォールやALCパネル,塗装工事や吹き付け工事に重点をおいて勉強しましょう.
この項目も,過去問題で解答が×である部分に関しては,問題文のどの部分が,どのようになっていれば解答が○になるのかに着眼点をおいて勉強しましょう.
カーテンウォールとは,非耐力壁の総称で,一般には,工場生産された外装壁材を指します.
「構成方式による分類」と「取付けにおける注意点」がポイントです.
構成方式には,マリオン方式,パネル方式,柱・梁カバー方式,スパンドレル方式などがあります.
それぞれの方式の特徴や注意点に関しては,こちらの資料を参考にして下さい.【こちら】
非常に分かりやすく,まとまっています.
ALCパネルとは,高温高圧で蒸気養生した軽量コンクリート(Autoclaved Light-weight Concrete)の頭文字をとった呼び名で,防錆処理をなされた鉄筋により補強されたものです.
ALCパネルの取り付けについてまとめておきましょう.
・床パネル,屋根パネルの取り付け
1)長辺目地,短辺目地ともに目地幅は20mm程度とします
・外壁パネルの取り付け
1)縦壁は「ロッキング構法」,「スライド構法」,「挿入筋構法」などがあります.
2)横壁は「カバープレート構法」,「ボルト止め構法」などがあります.
鉄筋コンクリート造への取付け例としては下記のようなものがあります.
図は全てJASS21(建築学会)からの抜粋です.
塗装工事について
素地調整と各種塗装についてみてみましょう.
金属系素地調整として,亜鉛メッキ面の調整にはエッチングプライマーを塗ることを覚えておいて下さい.
セメント系素地調整での素地の状態は,十分に乾燥していることが重要です.コンクリートの場合で21~28日,セメントモルタルの場合で14~28日以上は経過させて,素地を十分乾燥させましょう.
合成樹脂調合ペメント(SOP)は,耐アルカリ性に劣るので,鉄・亜鉛メッキ面・木質素地用で,コンクリート面には適さないことを覚えましょう.
合成樹脂エマルションペイント(EP)は,耐アルカリ性にも適していますのでコンクリート面にも適します.しかし,金属素材には適さないことを覚えましょう.
1種は建築物外部や水がかりの部分に,2種は内部用に用います.
吹き付け工事について
吹き付け工事とは,既調合の仕上げ塗料を吹き付けまたはローラー塗りする工事を指します.これも種類が非常に多い部分ですので,過去問題で出題されている範囲をチェックしておく程度でいいと思います.
■近年の出題ポイントとして
この外装・塗装工事という項目は,新問題対策が極めて難しい項目でもあるため,新問題をあまり意識せずに,合格ロケットに収録されている過去問20年分の「知識」だけを理解することに集中して下さい.
22.耐震改修工事
改修工事には,防水改修工事,外壁改修工事,建具改修工事,内装改修工事,塗装改修工事,耐震改修工事,環境配慮(グリーン)改修工事などがあります.
このページでは,これら改修工事のうち,耐震改修工事について記載しますが,この項目は,実際の改修工事などに立ち会ったことのない人にとっては,イメージがわきにくい項目です.
耐震改修工事とは,構造耐力に問題がある建築物において,構造骨組またはその構成部材の補強もしくは取替えを行い,耐震性を向上される工事をさします.
現場打ち鉄筋コンクリート耐力壁の増設工事,鉄骨ブレースの設置工事のように構造体の耐力を向上される方法の他に,柱補強工事や耐震スリット新設工事のように靭性能を向上させる方法があります.
平成13年国告第1024号により,今までは,あと施工アンカーは鉄筋コンクリート増設壁や鉄骨ブレースの設置工事のような耐震改修工事における既存の鉄筋コンクリート造部材と補強する部材にのみ使用できましたが,令和4年4月以降からは,告示改正により,新築工事における構造耐力上主要な部分にも使用することができるようになりました.
あと施工アンカーの許容応力度等については不明である,実際の運用としては,新築物件の柱や梁などの主要構造部に,あと施工アンカーが用いられる場合はありませんが,これらの許容応力度等が決まれば使用することができるようになりました.
■近年の出題ポイントとして
普段から改修工事に関する実務に触れていない限り,手も足も出ないような難易度の問題の出題が最近は増えてきました.
この耐震改修工事という項目は,新問題対策が極めて難しい項目でもあるため,新問題をあまり意識せずに,過去問20年分の「知識」で対応できる問題を理解することに集中して下さい.
また,非常に問い合わせが多い問題として,問題コード18253について補足説明させていただきます.
通常,せん断力が働く部分に金属系アンカーを用いると,ガタが生じるため,接着系アンカーを用いる場合が多いのが現状です.
しかし,耐震改修設計指針によると,シアコネクタ用のダボ筋として用いるあと施工アンカーとして金属系アンカーを使用しても良いことが読み取れますので,問題コード18253は完全な×とは言えない,非常にグレーな選択肢であることがわかります.
問題コード18251は,明らかに誤っていることがわかりますので,H18年の施工科目25問目の解答としては,「1が最も誤っている選択肢」であることが判断できます.
問題コード19255のアスベスト飛散防止処理についても,解説集に図入り解説がありますので,大枠をイメージできるようになって起きましょう.
02. 給排水・衛生設備
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分30秒)
●公共下水道における排水方式の場合
次に,「23153」「01153」について,まず,給湯設備には,循環式(二管式)と単管式の2種類があります.循環式の場合,給湯管内に,常に湯を循環させているため必要なときにすぐに湯(給湯)を得ることができますが,単管式の場合は,加熱装置からの給湯管が直接,水栓に接続されているだけなので,使用開始後(加熱開始後)は,しばらくは水が出てきます.最下階にあるボイラーなどの加熱装置によって暖められた湯は,給湯管により各水栓器具へと導かれますが,時間の経過と共に熱が失われ,湯の温度が下がってしまいます.そのため返湯管を設け,温度が下がった湯を再び最下階にあるボイラーなどの加熱装置へと導き,再加熱した後,再び,給湯管へと送り出します.これが循環式のシステムとなります.
■学習のポイント
03.空調設備
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分)
この項目を学習する前に,合格ロケットの解説集として収録されている「冷凍機の解説」をお読み下さい.圧縮冷凍機,吸収式冷凍機のしくみが分かるようになります.ここでのポイントは,「熱を運搬する冷媒の役割」と「冷却水・冷水の役割」です.これらの基本をきちんとマスターする事が,応用問題へと繋がっていきます.
問題コード26134に,「三方弁制御」は「定流量方式」,「二方弁制御」は「変流量方式」とあります.ここで,冷凍機系のシステムについてご説明しておきましょう.冷凍機系のシステムは,冷凍機によって冷やされた冷水が,冷却コイルに流れ込み,冷却コイルへと送りこまれる導入外気を冷やすことで,冷風を作り,その冷風を送風機によって室内へと送り出すことで空調を行います(夏に空調機から冷風が吹き出されるイメージです).
尚,冷却コイルによって冷風を作る際に,導入外気から奪った熱によって冷却コイル内の冷水は暖められます.暖められた冷水は冷凍機へと循環され,再び,冷水として冷却コイルへと送りこまれます.その際,冷凍機から冷却コイルへと送り出される水の量は,常に一定(定流量)です.しかしながら,冷風を作る量が少なくてすむ場合には,冷却コイルへと送る冷水量は少なくした方が省エネ化が図れます.
そこで,「三方弁」の場合,冷却コイルへと送り出される冷水と,そのまま三方弁を経由して冷凍機へと送り返される冷水とに分けることが可能です.このように冷凍機から送られてくる冷水のうち,必要な分だけを冷却コイルへと,残りを冷却コイルへと送り出さずに冷凍機へと送り返す役割を果たすものが「三方弁」となります.そのため,「定流量方式」と呼ばれています.
一方,「二方弁」は,配管を流れる冷水量を変化させることが可能です.冷却コイルへ冷水を送る需要が小さい場合は水量を少なく,需要が大きい場合は,水量を多くすることができます.それゆえ,「変流量方式」と呼ばれます.これは,搬送エネルギーを小さくする事(つまり省エネ)に繋がります.問題コード26134,30191,25123と続きますが,それぞれ問われ方が異なります.特に,この空調設備の項目は,同じ題材を,違う言い回しで問われる事が多いので,それを意識して勉強してください.
次に,問題コード01112について説明しておきましょう.これは,製図試験にも絡む話です.製図試験において,課題文中に「空調は単一ダクト方式とする」と記載されていた場合,機械室の上部に,「DS(=ダクトスペース)」と呼ばれるスペースを設けます.これは,機械室で作られた冷風や,温風を建物内の各室へと送り出すためのダクトを設置するためのスペースです.送風機から送られているダクトは,事務室にしか接続されていませんが,本来は,各階の各所室へとダクトが接続され,冷風・温風を送り出すことで空調しています(次図参照).
DSは,「2×2=4㎡」,「2×3=6㎡」程度とし,各階同じ位置(場合によっては若干ずらすことが可能)に設け,下階に位置する機会室に通じるよう計画します .
上図のように,機械室から伸びる縦ダクトが,各階ごとに天井裏で横引きされ各所室の空調を行います.これが,単一ダクト方式の原理です.また,製図試験の課題文中に,「空調は,個別空調方式とする」と記載されることもあります.その場合は,いわゆる「エアコン」をイメージして下さい.各室ごとにエアコンが設置されていて,各室ごとに空調を行うもので,DSは必要としません.こうした製図試験にも絡む話は,「教育的ウラ指導」のブログをご活用ください.【こちら】 .
さて,話が長くなってしまいましたが,「VAV空調方式」は,「変風量単一ダクト方式」のことで,一定に保たれた送風温度を吹出し,空気の風量を変えることによって温度調整し,室温を制御する方式でです.「部屋ごと又はゾーンごとの温度制御も可能」という事は,その装置は,吹き出し口の近くにある事をイメージする事ができるでしょう.
次に,問題コード21131の「FCU(ファンコイルユニット)」について.「ファンコイル」とは,個別空調の一種だと考えて下さい.これは,室内に設置したファンコイルユニットに冷温水を供給することで空調を行う方式(水方式)なのですが,その際,ファン(送風機)に送りこむ導入外気を確保できない場合には,室内空気を循環させることで空調を行います.空気汚染を引き起こす原因にもなり得るため,その場合,換気計画に配慮する必要があります(通常の換気量に加えて,ファンコイルによって空調する際に必要となる換気量(導入外気量)分を確保する).尚,空調設備に関する用語を調べる場合は,「日本冷凍空調学会」の「用語集」を紹介します(深入りしない程度に).【こちら】
■学習のポイント
冷房時には,空調機の冷却コイルで,室内からの①と外気からの②との混合空気③を冷水コイルで冷却除湿し④,送風機の顕熱取得分だけ温度上昇した空気⑦を室内に吹き出します.暖房時には,室内からの①と外気からの②との混合空気③を温水コイルで⑤まで加熱し,蒸気加湿器によって⑥まで加湿した後,送風機の顕熱取得分の温度上昇⑦を考慮し,室内に吹き出します.これを湿り空気曲線図で表すと以下の図のようになります.
この問題では,比較的容易な正答となっていましたが「システムの中のどこの話なのか,どのタイミングの話なのか」を考える事が非常に重要です.是非,意識して学んでください.
04.電気設備
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分)
次に,問題コード27171を見て下さい.その解説の中で単相3線式について説明しています.先の説明で「低圧」という言葉が出てきましたが,解説にある図のように電灯や冷蔵庫などの一般電化製品は,100Vで,IHクッキングヒーターなどは,200Vで使用します(オール電化住宅では必須アイテムですね).このように,実際の家電は,100V,200Vといったレベルの電圧で使用するように作られているため,その際の電圧を「低圧」といいます.単相3線式については,解説にある図のようなイメージで考えて下さい.3本の線があり,一番上の線と一番下の線を繋げば,200Vの電気を取り出すことができ,一番上の線と,真ん中の線とを繋げば100Vの電気を取り出せすことができるといったイメージです.三相3線式の場合も先ほど同様に,3本の線がありますが,電位差はそれぞれ200Vであるため,100Vの冷蔵庫を使用する場合には,小型トランス(変圧器)により,100Vに減圧させて使用せねばなりません.尚,「単相」と「三相」の違いについては,「単相」は,住宅・事務所などで使用される一般用,「三相」は,モーターなどの動力がある建物(工場など)において,動力用として使用されるものと覚えておいて下さい.
■ 学習のポイント
05.省エネ
ここでは「熱負荷」や,「空調負荷」などといった「負荷」という用語が出てきます.この「負荷」という言葉の意味を分かりやすく説明すると「やりとりする量」となります.例えば,「熱負荷」といった場合は,「熱をやりとりする量」となります.例えば,室内を考えた際に,窓などの建物外周部(いわゆる外壁部分)は,常に外気に接しているため熱負荷が大きくなります.冬季の場合で考えれば,室内で暖められた空気が外壁部分に接すると熱を奪われてしまいます.(ちなみに,そのとき熱が奪われてしまうことを防ぐために,断熱材を設置します.)
例えば,建物外周部で,熱が奪われてしまうと室内温度が下がってしまうため,その分,再び,空調などによって暖かい空気を作り出さねばなりません.そこに「熱のやりとり」が発生するのです.つまり,「熱のやりとり」とは,ある部分で熱が奪われてしまうため,その分,室内に熱を送り込まなければならないという意味です.当然のことながら,その分,熱を新たに作るためのエネルギーも消費します.
冷房時,夏の日射は「冷房負荷」を大きくする要因になります.一方,暖房時,冬の日射は「暖房負荷」を小さくする要因になります.「内部発熱」も同様ですね.
「エネルギー負荷の低減」は,設備においては大命題です.
これらの話を元に,省エネの項目にある「空調」に関する問題を見て行ってください.また「氷蓄熱」や「水蓄熱」について,わかりやすく解説しているサイト「ヒートポンプ・蓄熱センター」の「蓄熱WEB講座」をご覧ください.【こちら】
また「自然エネルギーの活用」や「エネルギーの有効利用」という観点から、多くの用語が出題されています.
■学習のポイント
一問一答形式で,ただ「○」か「×」か、だけで終わるのではなく、上記の「エネルギー負荷の話だな」という「大枠」や「分類」を意識してみてください.
省エネルギーに関する用語,例えば「CASBEE」「BELS」「ZEH」など,まずは一通り,過去問の問題と解説をなぞっていきましょう.そのうちに,特に気になったものはネットで調べてみてください.「用語と解説の1対1対応」よりも,捉えやすくなるものもあります.ただし,この時も,細かい内容を全部覚える必要はありません.過去問を先に触れてから(特に2巡目以降)見てみると,試験に「必要な情報・不要な情報」が振り分けられるはずです.
02.コンクリート
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約6分)
コンクリートに関しては,1「強度」,2「ヤング係数」,3「線膨張」,4「コンクリートの性質」,5「混和剤」,6「特殊コンクリート」,7「品質管理」の7項目からなっていることがわかると思います.
以下に重要ポイントを羅列します.
まずは,コンクリートを構成しているセメントや骨材についての種類や性質を理解しましょう.続いて,コンクリート自体の性質を理解しましょう.
セメントに水と空気とが混ざったものがセメントペースト,セメントペーストに細骨材(砂)が混ざったものがモルタル,モルタルに粗骨材(砂利)が混ざったものがコンクリートですね.
合格ロケットアプリの施工科目のコンクリート工事の解説集も参考になります.
各種セメントの特性や主な用途に関しては,まとめておくようにしてください.
セメントは,大きく分けて,ポルトランドセメントと混合セメントに分類できます.ポルトランドセメントとして普通ポルトランドセメント,早強ポルトランドセメント,中庸熱ポルトランドセメントが,混合セメントとして高炉セメント,フライアッシュセメント,シリカセメントとがあるというような分類で構いません.それぞれのセメントの主な用途に関してまとめておきましょう.
混合セメントとは,普通ポルトランドセメントに各種混合材を混ぜたものを言います.
また,セメントの性質として,セメント粒子が細かい程,強度が早く出て,乾燥収縮が大きくなり,風化が早くなることに注意しましょう.
骨材は,表乾状態で使用するようにします.
通常,コンクリートの圧縮強さとは材齢28日(4週間)の強度を指します.水セメント比と強度の関係に関しても整理しておきましょう.
単位水量を少なくするほど,単位セメント量を少なくするほど,セメントの粉末度が低い(粒子が粗い)ほど,乾燥収縮は減少します.
線膨張係数は,100℃程度まではコンクリートと鉄筋の線膨張係数とがほぼ同じであるため,鉄筋コンクリートとしては,大変有利です.
熱伝導率は1.3~1.4W/m・kで木材などに比べて大きいです.
コンクリートの強度試験で用いる供試体は,細長い形状ほど強度は小さくなります(寸法効果の問題と言います).また,圧縮強度は,ゆっくりと荷重をかけていくより速い速度で荷重をかけた方が高い強度が出ることが分かっています(載荷速度の問題と言います).
コンクリートのヤング係数に関しては,問題コード01283他の解説に掲載してあるように,単位容積重量γと設計基準強度Fcは共に分子にあるため,軽量コンクリートより普通コンクリートの方がヤング係数は大きいことがわかります.また,最大圧縮時と原点を結んだ線ではないことに注意しましょう.
水セメント比の小さいコンクリート,AE剤などの混和剤を用いたコンクリートや早強ポルトランドセメントの中性化の速度は遅いのに対し,高炉スラグやフライアッシュ等の混和材を用いたコンクリートの中性化の速度は速いと言えます.また,屋外よりも屋内の方が中性化率は大きいと言えます.整理して覚えましょう.
軽量コンクリート(骨材の違い)には2種類あり,1種の方が重いことは覚えておきましょう.
アルカリ骨材反応についてもまとめておきましょう.
普通コンクリートのスランプの数値(21cm以下),水セメント比の最大値(65%)や単位水量の最大値(185kg/m3)などの数値は,施工科目でも出題されていますので,整理して覚えてしまいましょう.
問題コード30282のAE減水剤に関する注意事項はかなり専門的です.解説内容をさらっと読む程度にしましょう.
混和剤(AE減水剤など)により,ワーカビリティー(施工のしやすさ)が良くなり,単位水量を減少させることができ,コンクリートの凍結融解に対する抵抗性を増大し耐久性が向上し,中性化に対する抵抗性を増大させることができます.一方で,空気量の増加により若干強度が低下します.
コンクリートの耐久性を向上させるため,単位水量を小さくすると施工性が悪くなります.そのため,流動化剤を加え流動化コンクリートとすることで施工性を向上させる場合があります.高流動コンクリートとは異なるので注意しましょう.
断面寸法の大きな部材に打ち込まれたコンクリートは,セメントの水和熱が蓄積されコンクリート内部の温度が上昇します.このため,コンクリート部材の表面と内部に温度差が生じ,ひび割れが発生することがあります.この問題をどのように制御するのかがマスコンクリートの施工管理の重要ポイントとなります.一般には,コンクリートの打設方法を工夫したり,高炉セメントB種などの混合セメントB種や中庸熱ポルトランドセメントなどを使用したりする方法があります.
最近増えてきた超高層建物などに使用される高強度コンクリートは,火災時において急激な加熱に伴う水分の膨張により爆裂を生じる場合があります.覚えておきましょう.
■学習のポイント
まずは上記,学習ポイントの7項目について知識をまとめて整理して覚えましょう.
そうすることで,合格ロケットに収録されている過去問20年分の「知識」だけで十分,出題問題に対応ができるようになりますよ!
03.鋼材・金属
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分)
今回のインプットのコツでは,鋼材・金属に関して,概要説明をします.
過去問題では,1「鋼材表記」,2「ヤング係数」,3「引張強度」,4「降伏点」,5「降伏比」,6「鋼材性質」,7「高力ボルト」,8「各種鋼材」の8項目からなっていることがわかると思います.
まずは,鋼材の記号とその意味,鋼材の温度と強度の関係,炭素の含有率と強度・伸びの関係を理解しましょう.
SS材(一般構造用圧延鋼材):
SN材が制定されるまでは大部分の建築構造物に使用されていた鋼材で,溶接性は考慮されていません.
SS490材とSS540材は,炭素量を増やして鋼材強度を高めているので溶接性が悪いです.
SM材(溶接構造用圧延鋼材):
溶接性を考慮し,鋼材中の炭素量を減らしマンガン,ケイ素などの含有量を調整したものです.
A種,B種,C種の3種類に分けられ,C種が最も衝撃特性が高い(溶接性が良い)と言えます.
SMA材(溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材):
SM材にクロム,ニッケルなどを添加し,溶接性を考慮しつつ,耐候性を向上させた鋼材のことです.
SN材(建築構造用圧延鋼材):
従来のSS材に代わって建築構造用鋼材として使用されるものです.
A種は,原則として溶接を行わない部材を主用途としています.490N/mm2については現状の需要状況に照らし制定していません.
B種は,柱や梁に広く一般に使用されることを想定した鋼種で,塑性変形能力と溶接性の確保を意図したものです.
C種は,B種の性能の上に板厚方向の特性を規定した鋼種で,ボックス柱のダイヤフラム等板厚方向の性能が重要となる部材を主用途としています.
まとめると,B種,C種は溶接用鋼材として使用できます.
SN400Aは,降伏点の下限のみが規定された鋼材で,通常,小梁や間柱などの二次部材に使用します.A種はシャルピー吸収エネルギーの規定値はありません.
SN400B・SN490Bは,降伏点の上下限,降伏比の上限,炭素当量の上限などが規定されており,降伏後の変形能力や溶接性が保証されている鋼材を指します.シャルピー吸収エネルギーは27J以上とします.なお,シャルピー吸収エネルギーが大きいほど,脆性破壊を起こしにくい材料であるといえます.
SN400C・SN490Cは,溶接加工時を含め板厚方向に大きな引張応力を受ける部材に使用する鋼材のことです.
STKN材(建築構造用炭素鋼管),SNR材(建築構造用延棒鋼),BCR・BCP材(建築構造用冷間成形角形鋼管)に関しては,名称くらいは知識として覚えておいて下さい.
代表的な建築構造用鋼材の鋼材規格仕様一覧はこちら(←別ファイルが開きます).建築構造用鋼材および金属系素材に関する技術資料(日本建築学会)からの抜粋です.
金属材料の応力度-ひずみ度曲線の形状は様々なものがありますが,大きく分類すると,普通鋼のように下図左に示す降伏棚(塑性流れ)のあるタイプと,高張力鋼,ステンレス鋼および極低降伏点鋼のように下図右に示す降伏棚のないタイプに分けられます.
降伏棚のあるタイプでは,上降伏点を降伏点(降伏強さ)としています.降伏棚のないタイプでは,ある規定された永久ひずみεを生じるときの荷重を最初の断面積で割った応力度を耐力(σε)としています.一般の鋼材では,ε=0.2%とし,0.2%耐力を降伏強さとしています.
0.2%オフセット耐力と呼んだりもします.なお,建築構造用ステンレス鋼(SUS304A)では,ε=0.1%としています.
上記説明を具体的に示すと下図のようになります.
これらの図は,建築構造用鋼材および金属系素材に関する技術資料(日本建築学会)からの抜粋です.
鋼材の数値は降伏点ではなく,引張強度の下限値を示します.
SS400→引張強度の下限値が400N/mm2
SM490→引張強度の下限値が490N/mm2
F10TF(S10T)→引張強度の下限値が1,000N/mm2(≒10t/cm2)
棒鋼(鉄筋)の数値は降伏点の下限値を示します.
SD295→降伏点の下限値が295N/mm2(JIS改定により,SD295AとSD295BはSD295に統一されました)
鋼材は,炭素含有量が0.8%前後で強度が最大になりますが,溶接性は低下します.
ヤング係数は鋼材強度の大小に関わらず同じ値となります.
降伏比は,降伏点強度/引張強さのことで,常に1.0より小さくなります.問題コード30293では引張強さ/降伏点強度(分子と分母が逆)として出題されています.注意しましょう.
鋼材の性質として,シャルピー衝撃値とビッカーズ硬さに関しては覚えておきましょう.
各種鋼材としては,アルミニウム,ステンレス鋼,耐火鋼(FR鋼)に関してまとめておきましょう.
アルミニウムのヤング係数や比重は鉄の約1/3であり,融点は鉄の約1/2,熱伝導率は鉄の約3倍です.
■学習のポイント
合格ロケットに収録されている過去問題では約60問(直近10年で約30問,昔の10年で約30問)ありますが,鋼材に関するほとんど全ての性質が網羅されています.
合格ロケットに収録されている過去問題は,きちんとマスターしておいて下さい.
04-1.荷重・外力(地震力以外)
まずは、オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分30秒)
過去問題では,1「積載荷重」,2「風荷重」,3「積雪荷重」,4「土圧・水圧」,5「固有周期」,6「衝撃力」,7「設計用地震力」,8「地下・屋上突出部の地震力」,9「必要保有水平耐力」,10「限界耐力計算」の10項目からなっていることがわかると思います.
ここでは,1「積載荷重」~3「積雪荷重」について,次の「荷重・外力(地震力関係)」では,7「設計用地震力」~10「限界耐力計算」を取り上げます.
1.積載荷重は,人間,家具など,移動可能なものの重さによる荷重で,分布に偏りが生じる可能性があります.
そこで,分布の偏りの考慮して,次の3つの計算において,それぞれ異なる値が定められています.それぞれの大きさは「床計算用>大梁,柱,基礎の計算用>地震力計算用」となります.
小梁の積載荷重は,床計算用と大梁計算用の中間値になります.小梁の形状が小さければ床計算用に,大きければ大梁計算用に近くなります.
積載荷重の具体的な値に関しては,原則は実況応じて計算した値を使うことになっていますが,基準法施行令第85条の表にある用途については,この表の値を用いても良いことになっています.
ポイント1.柱が支える床による積載荷重の低減
よく質問が来る内容に「柱が支える床による積載荷重の低減」に関するものがみられます.
劇場や映画館等以外の場合は,支える床の数が多くなると,その分,積載荷重が平均化され,偏りが小さくなるので,積載荷重を低減することができます.
劇場や映画館等では,「柱が支える床による積載荷重の低減」はありません.劇場や映画館等では,全階満員となり,平均化しても積載荷重の値が小さくならない場合があるからです.
この低減は,通常の構造設計の場合では(安全性の観点から)用いることはほぼないと言えます.
ポイント2.間違えやすい数値
積載荷重の中で間違えやすいのが,上表の(g)(h)の「廊下,玄関又は階段」と「屋上広場又はバルコニー」の取り扱いです.
(g)教室,売場,客席に連結する「廊下,玄関又は階段」については,劇場等の「固定席でない客席」の値とします.
これは,授業が終わった後や,バーゲンの売場,公演終了後には,これらに連絡する廊下や階段には一時的に人が集中します.よって,劇場等の固定席でない客席の大きな積載荷重を用いる必要があります.
(h)学校,百貨店の「屋上広場又はバルコニー」については,百貨店等の「売場」の値とします.
火災等の際に,各階の教室等にいる人が一斉に屋上広場やバルコニーで避難する場合を考えると,住宅の屋上やバルコニーの積載荷重よりも大きな値が必要となるのがイメージできるかと思います.
倉庫業を営む倉庫における床の積載荷重は,3900N/m2以上であることも覚えておきましょう.
2.風荷重に関するポイントとしては,基準法施行令第87条を理解することです.
風荷重は,風圧力×(風圧力に関する)見付面積として計算します.
風圧力Wは速度圧qに風力係数Cfを乗じます.
速度圧qはq=0.6×E×Vo^2となります.
ここで,E:速度圧の高さ方向の分布を示す係数,Vo:その地方における基準風速を示します.
また,風圧力には,骨組算定用と外装材(局部)検討用の2種類があります.大きさは骨組算定用<外装材(局部)検討用の関係があります.
基本的は知識としてはここまでの内容で十分なのですが,最近はそこから更に突っ込んだことを聞いてきています.
旧基準法の速度圧q=60√hにおける60という数値は,観測史上稀にみる風台風であった室戸台風の室戸岬における地盤面からの高さ15mでの最大瞬間風速63m/sに対応するように定められた式でした.
高さが30m以上になると,実際の風圧力に比べ過大な風圧力を算定する傾向があったため,名古屋テレビ塔における地盤面からの高さ135mまでの風速観測による結果などに基づいてq=120を得て,昭和55年に改定されました.
つまり,全国一律の速度圧を用いて設計していたわけです.
しかし,気象現象を観測装置が全国いたることろに設置され,膨大な量の気象データが蓄積されてきて,その解析も進んできました.風洞実験によるデータも蓄積されてきて,地表面の形状の違いや風速の高さ方向の分布などがより詳細に推測できるようになってきたため,H12年の基準法改正により,速度圧の算定式が変更になりました.
現状の速度圧qはq=0.6×E×Vo^2で求めていきます.
ここで,Eは「当該建築物の屋根の高さ及び周辺の地域に存する建築物その他の工作物,樹木その他の風速に影響を与えるものの情況に応じて大臣が定める方法により算出した数値」,Voは「その地方における過去の台風の記録に基づく風害の程度その他風の性状に応じて30~46m/sの範囲において大臣が定める数値」と呼ばれるものです.
この説明だけでは分かりづらいと思いますので,それぞれについて説明してきます.
まずは説明が簡単なVoから.
Voは基準風速のことで,稀に発生する暴風時の地上10mにおける10分間平均風速に相当する値でもあります.以前はこの基準風速は全国一律でしたが,法改正により,全国各市町村単位で基準になる風速を定めて,その数値を用いることになりました.これによって,建築物に作用する風荷重を地表の実情に応じてより実態に近く規定することが可能になり,各地域における平均風速の強さを表す指標である基準風速は大臣が定めるようになりました.
続いて,Eに関する説明です.これは非常に難しいですので,さらっと読み流してください.
Eは「速度圧の高さ方向の分布を示す係数」と言われているモノで,建築物の屋根の高さ及び周辺の建築物等が風速に影響を与えるものの情況に応じて国土交通大臣が定める方法に算出した数値で,E=Er^2×Gfで表現されます.これは逆算の結果です.
風は常に一様に吹いているわけではなく,強弱の変動を繰り返しています.この風速の強弱の変動による建築物への影響の度合いを示したものが,ガスト影響係数Gfと呼ばれているものです.
ただ難しいのは,地域の開発が進み周辺の建築物などにより地表の状況が複雑になるとともに風の強弱の変動は大きくことがあります.風の強弱の変動が大きくなるとガスト影響係数も大きくなるのですが,一方で,建築物が高くなると建築物にしなりが生じて,風が変動し強風が吹いたときの風圧力を受け流すことによって,建築物に発生する力が低減されることになります.
つまり,ガスト影響係数は,建築物周辺の地表の状況と建築物の高さによって決定される突風などの風の変動の影響の程度を表した係数と言えます.
風は地表面に近づくと,地表面との摩擦により風速は小さくなります.つまり,地表面から離れるほど,すなわち建築物が高くなるほど風速は大きくなります.この低減の割合は,周辺の建築物などにより地表面の状況が複雑になるとともに大きくなります.つまり,密集した市街地ほど風速は遅くなります.
このように,地表面の状況に応じて各高さにおける風速は異なりますが,この各高さにおける風速のその地方における基準風速Voに対する比率を現したものが,風速の鉛直分布係数と呼ばれるErと呼ばれます.
建築物に作用する風速は,当該建築物の周辺の地表面の状況と建築物の高さにより決定されるErをその地方における基準風速Voに乗じてEr×Voとなります.
風の運動エネルギーを考えると,運動エネルギーの法則より,1/2mv^2と表現でき,この質量mを単位質量当りの質量=密度ρを用いて表すと,1/2ρv^2と表現できます.
建築物に作用する風速であるEr×Voをこの理論式に代入すると,当該建築物に作用する平均風速による速度圧qAVG=1/2×ρ×(Er×Vo)^2となります.
暴風時に建築物に最大の力を生じさせる速度圧qは,建設地点における平均風速による速度圧qAVGを用いて,q=Gf×qAVGと表現できます.
その結果,建築物に最大の力を生じさせる速度圧qはq=Gf×1/2×ρ×(Er×Vo)^2となります.
この式に空気密度ρを代入し,SI単位に変換すると,q=0.6×Gf×Er^2×Vo^2となります.
Gf×Er^2=Eとすると,q=0.6×E×Vo^2となります.
現状の速度圧q=0.6×E×Vo^2は,以上のような経緯で算定されているのですが,この変形を覚える必要はありません.
Gf(ガスト影響係数):突風などの風を影響の程度を示すものとして,建築物の屋根の高さ及び周辺の市街地の状況に応じて定められる数値.
Er(平均風速の鉛直分布係数):平均風速の高さ方向の分布を示すものとして,建築物の屋根の高さ及び周辺の市街地の状況に応じて定められる数値.
Vo(その地域における基準風速):その地方における過去の台風の記録に基づく風害の程度その他風の性状に応じて30~46m/sの範囲において大臣が定める数値.稀に発生する暴風時の地上10mにおける10分間平均風速から算定.
これらのことに関しては,下記の図で覚えてください.
係数Er及びEは,速度圧qの大小関係と同じ関係がありますので,風は上空の方が地上より強く吹く傾向をイメージできれば,Er及びEはグラフで上に行くほど値は大きくなる,つまり,右上がりのグラフになることがイメージできれば覚えやすいと思います.
また,極めて平坦で障害物がない地表面粗度区分Ⅰの方が都市化が極めて著しい地表面粗度区分よりも障害物が少ないため風が強くなるイメージを持ってグラフを見て下さい.
風力係数Cfについては,Cf=Cpe-Cpi(Cpe:外圧係数,Cpi:内圧係数)ということを覚えておけば十分です.
外装材(局部)検討用の風圧力Wは,平均速度圧[q]×ピーク風力係数[Cf]で計算します.
[q]=0.6×Er^2×Vo^2
で計算することになります.
骨組検討用の速度圧qを計算する時に用いるE(=Er^2×Gf)ではないことに注意しましょう.
上の式から分かるように,外装材(局部)検討用の計算に用いる平均速度圧[q]にはガスト影響係数Gfが入っていないことに注意しましょう.
これは,ピーク風力係数[Cf]の算出にガスト影響係数Gfが反映されていることによります.
3.積雪荷重に関するポイントとしては,基準法施行令第86条を理解することです.
積雪荷重は,積雪の単位荷重×屋根の水平投影面積×垂直積雪量から求めることができます.
積雪の単位重量(一般地域:積雪1cm当たり20N/m2以上)の数値も覚えておきましょう.
また,屋根の積雪荷重は屋根勾配によって低減することができます.その辺についても令第86条を確認しておきましょう.
多雪区域以外の区域にある一定規模(棟から軒までの長さが10m以上)の重量が軽い緩勾配(15度以下)の屋根については,降雪後の降雨を考慮して積雪荷重を重く計算します.平成19年告示第594号第2第三号ホを参照してください.
■学習のポイント
上記の内容を踏まえて,過去問題を見てみましょう!
かなりの問題が解けることがわかると思います.
04-2.荷重・外力(地震力関係)
まずは、オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約6分30秒)
最初に,「過去問題」の問題・解説部分を流し読みして下さい.
同じ内容に関して何回も繰り返し出題されている問題に気づくと思いますが,最低限,こられの問題に関しては,何が重要で繰り返し出題されているのかに注目して,言い回しを多少変えられても間違わないようにしましょう.保有水平耐力の計算に関してよく質問がきます.
よって今回のインプットのコツでは,構造計画というか構造計算に関して,概要説明をします.
構造計算方法は,大きく分けて,許容応力度等計算・保有水平耐力計算,限界耐力計算,その他の計算(限界耐力計算と同等以上に安全さを確かめられる計算方法で,大臣が定める基準に添った構造計算),超高層建築物の計算の4つに分類できます.
このうち,その他の計算というのは,具体的には覚えておく必要はありません.エネルギー法などがありますが,これらの計算に携わった方はほとんどいないと思われます.
許容応力度等計算・保有水平耐力計算のうち,1次設計と呼ばれているのは,荷重・外力による各部の応力度に関する確認のことを指します.
具体的に言うと,1.各部に生ずる応力の計算,2.部材断面の応力度の計算,3.許容応力度による確認を固定荷重や積載荷重,積雪荷重,風荷重,地震荷重などに関して行うことです.
2次設計と呼ばれているのは,層間変形角(≦1/200)の確認や剛性率(≧0.6)・偏心率(≦0.15)の確認,及び保有水平耐力の確認をし,保有水平耐力が必要保有水平耐力以上であることの確認のことを指します.
保有水平耐力計算の説明ですが,基本は,地上部分の各階の保有水平耐力(Qu)≧必要保有水平耐力(Qun)であることを確かめることを指します.
ここで,保有水平耐力(Qu)って何???って感じですが,保有水平耐力とは建築物が水平力を受けたとき,建築物が保有している最大の水平抵抗力のことです.これは基準法や告示に記載されている材料強度によって求められます.
保有水平耐力は,建築物の一部または全体が地震力によって崩壊メカニズムを形成するときの各階の水平方向の耐力のことですね.
このことは,「構造計画」単元以外のどこかの単元で出てきたと思いませんか?
計算問題のところで「崩壊荷重」って単元がありましたよね?
仮想仕事法を用いて,「外力のする仕事」=「内力のする仕事」ってやつです.あの崩壊荷重も保有水平耐力です.
仮想仕事法以外にも保有水平耐力を求める方法はありますが.
それに対して,必要保有水平耐力は,大地震に対して安全を確保するために必要とする各階の最小限の水平方向の耐力のことを指します.
これは,強度型の場合には耐力の急激な低下が起きないように安全をみる→Ds:構造特性係数
偏心したり(偏心率が大きい),剛性率が小さい場合には安全をみる→Fes:形状係数
これに,大地震を想定した場合の地震層せん断力Qiを乗じたものになります.
よって,Qun=Ds・Fes・Qudとなります.
ここで,Dsは,木造や鉄骨造では0.25~0.5,鉄筋コンクリート造では0.3~0.55です.当然,靭性のある塑性変形能力が高い建築物のDsは小さい値となります.鉄骨鉄筋コンクリート造は鉄筋コンクリート造よりも0.05小さい値を用いることができます.
偏心率が大きいほど,及び剛性率が小さいほどFesは大きくなります.安全のために割増するイメージですね.
Qudは,Qud=Z・Rt・Ai・Co・∑wと表現できます.これもどこかで見たことがありませんか?
地震層せん断力の式ですね.考え方は一緒ですよね.
必要保有水平耐力(Qun)についてまとめると,
一次固有周期の長い建築物は,軟弱地盤の方が硬質地盤と比べて各階に生ずる水平力Qudは大きくなる→Qunは大きくなる.
偏心率が大きいほど,及び剛性率が小さいほど,Fesは大きくなる→Qunは大きくなる.
鉄筋コンクリート建築物で短柱が多くなると,靭性が小さい→Dsは大きくなる→Qunも大きくなる.
学科試験に関しては,具体的に保有水平耐力計算を行うわけではないので,この辺の考え方を理解していればいいと思います.
続いて,地下・屋上突出部の地震力に関して説明します.
建物屋上にある水槽や地表に設置された広告塔などの構造計算については,それぞれの重さに水平深度を掛けて計算します.
水平震度とは,ある階(ある部分)の地震力が,その層の重量の何倍かを表す数値のことです.
地表面の揺れ方と,建物屋上の揺れ方が異なるため,水平震度の値としては異なる値を用います.
・屋上から突出する塔屋や高架水槽等の水平震度:1.0Z以上
・外壁から突出する片持ち階段やエレベーター等の鉛直震度:1.0Z以上
・地表に設置された広告塔等の工作物の水平震度:0.5Z以上
続いて,限界耐力計算に関して説明します.
まずは,計算の流れから.
1.建築物の存在期間中に1回以上遭遇する可能性の高い(稀に発生する)積雪,暴風などについて,建築物が損傷しないことを確認する.
2.極めて稀に発生する大規模な積雪,暴風に対して,建築物が倒壊,崩壊などしないことを確認する.
3.建築物の存在期間中に1回以上遭遇する可能性の高い(稀に発生する)地震動について,地上部分が損傷しないことを確認する.
→損傷限界の検証
→各階に作用する稀に発生する地震力が,当該階の損傷限界耐力を超えないこと,及び地震力による層間変形角が1/200(損傷のない場合は1/120)を超えないことを確認する.
4.建築物の存在期間中に1回以上遭遇する可能性の高い(稀に発生する)地震動について,地下部分が損傷しないことを確認する.
5.極めて稀に発生する地震動について,地上部分が倒壊,崩壊などしないことを確認する.
→安全限界の検証
6.使用上の支障となる変形または振動がないことを確認する.
7.外装材などが構造耐力上安全であることを確認する.
っていう流れです.
「損傷限界」と言うのは,建築物の耐用年限中に少なくとも一度は遭遇する程度(中程度)の荷重.外力が作用した後も,構造物の安全性や使用性,及び耐久性が低下せず,そのため補修を必要としない限度のことを指します.
地震力に関して言えば,震度4~5程度の地震クラスをイメージすればいいと思います.
「損傷限界の検証(中程度の地震力に対する安全の確認で,許容応力度等計算における一次設計に相当する検討みたいなもの)」を具体的に言うと,
1.各材料の短期許容応力度をもとに,損傷限界耐力及び損傷限界変位(損傷限界耐力時の層間変位)を計算する.
2.損傷限界固有周期を計算する.
3.損傷限界固有周期に基づき,建築物の各階に作用する地震力を計算する.
4.各階に作用する地震力が損傷限界耐力を超えないこと,及び各階に生ずる層間変形角が1/200(損傷のない場合は1/120)を超えないことを確認する.
という感じでしょうか.
損傷限界固有周期というのは,損傷限界変位に相当する変位が生じているときの建築物の固有周期のことを指します.
「安全限界の検証(最大級の地震力に対する安全の確認で,許容応力度等計算における二次設計に相当する検討みたいなもの)」を具体的に言うと,
1.各材料の材料強度をもとに,各階の保有水平耐力,及び安全限界変位を計算する.
2.安全限界固有周期を計算する.
3.建築物の各部分の減衰による加速度の低減を計算する.
4.安全限界固有周期に基づき,減衰による加速度の低減を考慮して建築物の各階に作用する地震力を計算する.
5.各階に作用する地震力が各階の保有水平耐力を超えないことを確認する.
という感じでしょうか.
安全限界固有周期というのは,安全限界変位に相当する変位が生じているときの建築物の固有周期のことを指します.
損傷限界の検討と異なる点は,
・建築物の各部分の損傷の程度に応じた加速度の低減を考慮すること.
・地震力算定の基本となる加速度応答スペクトルは損傷限界の時の5倍であること.
ということです.
あと,言葉だけでもいいので覚えてもらいたいことは,
・工学的基盤:地下の深いところ(地表から数mとか数十mとかの深い部分.場所によって異なります.)にあって,せん断波速度VsがVs≧400m/s以上の地盤.
・表層地盤:地表から工学的基盤までの地盤
・表層地盤による増幅:Gs
・建築物の損傷の程度に応じた減衰による加速度の低減:Fh(保有水平耐力の計算におけるDsに相当)
・建築物の加速度の分布:Bdi,Bsi
って言葉です.
■学習のポイント
合格ロケットに収録されている「過去問題」を解いてみて下さい.
ここ数年,免震構造や制振構造に関する出題が増えてきています.
免震構造というのは,免震層によって,免震層より上部部分に入力する地震力を低減するような構造形態であり,免震層自体の変位は比較的大きいことには注意しましょう.
「鉄骨構造の筋かい付きの骨組みの保有水平耐力の算定」に関して,問題文の内容も,解説の内容もよく分からないという質問がよく来ます.
この問題に関して,以前,教育的ウラ指導さんの方で使用していた資料を提供して頂きましたので紹介いたします.
→ 【こちら】
しかし,この問題は非常に難しい問題であり,この資料を一度ご覧になる程度でいいのではないかと思われます.