08.座屈
「座屈」項目の重要ポイントは3つあります.
この重要ポイントを理解すれば,得点源になります.頑張りましょう.
まず最初に「座屈」項目に関して,「現象を数式化し,関係式を導き出す」ことを行ってみましょう.
上図左のように,部材に外力Pが加わる場合について考えてみると,外力Pの値を徐々に大きくしていくと,部材は圧縮されるため上図右のように変形していきます.
更に,外力Pの値を増やし続けると,ある値を境に部材は上図のように急激に変形してしまいます.この現象を「座屈」といい,座屈に至る時の外力Pの値を「座屈荷重」と呼びます.
次に,「座屈長さLk」について考えて見ましょう.
上図のような部材の支持条件を「両端ピン」といい,座屈に至る時の変形は右図のようになります.この時,弓なり型を形成する部分の元の長さを「座屈長さ」と言います.
上図より,「両端ピン」の場合の座屈長さLkは,Lk=Lとなります.
上図のような部材の支持条件を「一端ピン他端固定(水平拘束)」といい,座屈に至る時の変形は右図のようになります.
上図より,「一端ピン他端固定(水平拘束)」の場合の座屈長さLkは,Lk=0.7Lとなります.
なお,何故Lk=0.6LでなくLk=0.7Lなんだろう?とは考えず,ここでは,「一端ピン他端固定」の場合の座屈長さLkは,Lk=0.7Lと覚えてしまいましょう.
上図のような部材の支持条件を「両端固定(水平拘束)」といい,座屈に至る時の変形は右図のようになります.弓なり型を形成する部分は,元の長さの半分になるため,「両端固定(水平拘束)」の座屈長さLkは,Lk=0.5Lとなります.
また,上図のように「両端固定」でも水平拘束でない場合の座屈長さLkは,Lk=Lとなります.右図の変形の形を見れば納得できると思います.
以上のことをまとめると
ポイント1.「座屈長さLkは,Lk=0.5L,0.7L,L,2Lの4種類あります」
それぞれの弓なり型が,自分で導けるようにしておいて下さい.
ポイント2.「座屈荷重Pkは,Pk=π^2×EI/Lk^2である」
ここで,Eはヤング係数,Iは弱軸に関する断面2次モーメント,Lkは座屈長さのことです.
また,弱軸とは,断面2次モーメントが最小になる軸のことです.断面2次モーメントに関しては「断面」のインプットのコツのポイント2.を参照して下さい.
何故,強軸ではなく,弱軸なのでしょうか?
強軸とは変形し難い方向の基準軸,弱軸とは変形し易い方向の基準軸のことを指します.今回のインプットのコツの最初の部分に書きましたが,上から二番目の図で,急激に変形する場合は,変形し難い方向に変形するか,変形し易い方向に変形するかを考えれば,「座屈荷重」を計算する時に用いる断面2次モーメントは「弱軸に関する断面2次モーメント」であることが理解できるかと思います.
座屈荷重Pkは,細長比λを用いて,Pk=π^2×EA/λ^2と表すこともできます(式の変形に関しては,アプリ内解説集の07「座屈の解説のP3を参照して下さい).
つまり,Pk=π^2×EI/Lk^2=π^2×EA/λ^2と書くことができます.
一見すると,座屈荷重Pkは,部材の断面積Aに比例するように見えますが,分母にある細長比λの中に断面積Aは影響しているため,結果的には
ポイント3.「座屈荷重Pkは,部材の断面積Aに比例しない」
ということが言えます.ここまで理解できれば,「座屈」項目に関しては,ほぼ網羅したことになります.
過去問を一読してみましょう.
その時に,「合格ロケット」の解説で,上記重要ポイントを具体的にどのように使っているか!に着眼点を置くことを忘れないでくださいね.
最後に問題コード19061,02061に関して補足説明させていただたきます.
この問題は,18061,29061とは異なり,『梁は剛梁』ではありません(問題文に,「梁は剛体・・・」などと書いていないため).
よって,梁には「曲げ変形」が生じてしまいます.
もし,梁が剛梁で,梁に「曲げ変形」が生じない場合は
のような全体変形となりますが,梁に「曲げ変形」が生じる場合は
のように,梁端部と柱頭部は「剛接合(直角)」であるため,柱の座屈長さ(=弓なり長さ)は,梁が剛梁の場合より長くなります.
そのことに注意してください.
■ 学習のポイント
この「座屈」については,本試験においては,過去問題の類似問題が出題される傾向にありますので,今年度の本試験問題においても合格ロケットに収録されている過去問20年分で問われた知識をきちんとマスターしてさえいれば確実に得点できるものと考えます.
09.層間変位
「層間変位」項目の重要ポイントは2つあります.
この重要ポイントを理解すれば,得点源になります.頑張りましょう.
まず最初に「層間変位」項目に関して,「現象を数式化し,関係式を導き出す」ことを行ってみましょう.
上図の左図のように,1層,2層,3層の各層の剛性がK1,K2,K3である三層構造物に外力が作用する場合,右図のように変形します.
「層せん断力」とは,任意の層に発生するせん断力の合計(柱が2本である場合では,2本の柱の各せん断力の和)のことを指します.
また,「層間変位」とは,各層の変位(上図の右図のδA,δB,δC)のことを指します.
ポイント1.「任意の層の層間変位=任意の層に作用する層せん断力/任意の層の剛性である」
ポイント2.「任意の層に作用する層せん断力は,その層より上部に作用する外力の和である」
上図のように外力が作用する場合,Q1はPではなく3P(=2P+P)となります.
ここまで理解できれば,「層間変位」項目に関しては,ほぼ網羅したことになります.
過去問を一読してみましょう.
その時に,「合格ロケット」の解説で,上記重要ポイントを具体的にどのように使っているか!に着眼点を置くことを忘れないでくださいね.
■ 出題のポイント
この「層間変位」については,本試験においては,過去問題の類似問題が出題される傾向にありますので,今年度の本試験問題においても合格ロケットに収録されている過去問20年分で問われた知識をきちんとマスターしてさえいれば確実に得点できるものと考えます.
10.固有周期
上図のように,針金の先に物体が固定される状態をイメージしてください.これを「1質点系モデル」といいます.
この「1質点系モデル」に右図のように水平力が作用した時の水平変位をδとすると
上図のように先端に集中荷重が作用する片持ちばりの変形と置き換えて考えると,δ=PL^3/3EI・・・①と表せます(ここは,「たわみ」のインプットのコツ参照).
「層間変位」のインプットのコツの重要ポイント1.より,水平変位=せん断力(水平力)/剛性=P/K・・・②が言えます.
①,②より,
ポイント1.「剛性Kは,K=3EI/L^3となる」
建物が振動する際,堅い建物であれば素早く揺れ(ガタガタ揺れる感じ),柔らかい建物であればゆっくりと揺れます(ユッサユッサ揺れる感じ).この時,「単位振動数」あたりに要する時間(右に揺れて,左に揺れて,また右に揺れて,左に揺れて・・・の繰り返しにおいて,「右に揺れて,左に揺れて」の1セットに要する時間)を「周期」と言います.逆に,「単位時間(例えば,1秒間)」あたりに振動する回数を「振動数」と言います.
建物はその構造等により,建物固有の周期の値を持ちます.その周期を「固有周期」と言います.
ここで,一番上の図を考えた時,物体の質量をm,針金の剛性をKとすると,その固有周期TはT=2π√(m/K)となります.これは覚えてしまいましょう.
これとポイント1.より
ポイント2.
となります.
ここで,問題コード19071を見てみましょう.
問題コード19071の発展系として,柱が2本である場合が問題コード23071及び26071です.柱が2本であるため,その剛性Kは2倍になっている点に注意してください.また,問題コード23071及び26071のように,両端固定の門型ラーメンの柱1本あたりの剛性Kは,K=3EI/h^3ではなく,K=12EI/h^3になる点にも注意して下さい(問題コード23071及び26071の解説参照).
問題コード04071の架構Bについては,柱が3本であるため,その剛性Kは3倍となります.
問題コード25071,28061について.
応答スペクトルという概念については,別途,「応答スペクトル」のインプットのコツで説明を行います.
そちらを参照してください.
■ 近年の出題ポイント
この「固有周期」については,本試験においては,過去問題の類似問題が出題される傾向にありますので,今年度の本試験問題においても合格 ロケットに収録されている過去問20年分で問われた知識をきちんとマスターしてさえいれば確実に得点できるものと考えます.
10-1.応答スペクトル
「固有周期」のインプットのコツのポイント2.で説明した固有周期で「固有周期の式のmとkのうち,どっちが分子で,どっちが分母かがわからなくなるのですが・・・」という質問をよく受けます.
同じ剛性kで質量mの1質点系(質量mの重い串団子と軽い串団子)では,どちらの方が周期が長くなるかを考えれば分かり易くなるかと思います.
考え方を逆にすると,同じ質量mで,串の長さが長い串団子と短い串団子では,どちらの方が周期が長くなるでしょうか.
長い串と短い串では,長い串の方が剛性(k)が小さく(軟らかく)なることはイメージできるかと思います.
そうすると,(串の先端にある重りが同じ質量ならば)串の長さの長い方が周期は長くなりますね.
つまり,固有周期の式において,質量mが大きい方が,剛性kが小さい方が,固有周期は長くなることはイメージできるかと思います.
続いて,本題の「応答スペクトル」に関して,説明させていただきます.
「応答スペクトル」には,「加速度応答スペクトル」,「速度応答スペクトル」,「変位応答スペクトル」の3種類があります.
もう,この辺で,拒絶反応を示す人が多いのですが,構造科目で25点以上を狙う人は,我慢してついて来てください.
新・地震動のスペクトル解析入門(鹿島出版会)から抜粋(一部修正)
上記図(a)の1質点系の串団子があるとします.この例では,周期T1とT2の2種類を示しています.この周期は何秒でも構いません(ここでは,T1<T2としています).また,串団子の先端質量の大きさが何kgであるかに関しても関係ありません.串団子の先端質量mと剛性kによって定まる固有周期Tが重要なんです.
例えば,先端質量m,剛性kの串団子と,先端質量2m,剛性2kの串団子の固有周期は同じ値になることは理解できますよね.
よって,串団子の先端質量mや剛性kの具体的な数値は,関係ありません.
次に,上記図(a)のように,この串団子を揺らします.
その時の,串団子の先端質量の加速度が上記図(b)になったとします.(a)にある2種類の串団子の周期が異なるため,(b)にあるように,先端質量の加速度波形は異なった形になります.その時の最大の加速度を(Sa)1と(Sa)2とすると,周期T1の串団子の最大加速度(Sa)1,周期T2の串団子の最大加速度(Sa)2,・・・・・・というように,図(横軸:周期T,縦軸:加速度(Sa))にプロットしていくと,上記図(c)のようになります.
上記図では,2種類の串団子の例ですが,これをいろいろな固有周期Tの串団子を揺らして,その固有周期Tと最大加速度Saを図にプロットしたものが,「加速度応答スペクトル」と言います.
同様に,いろいろな固有周期Tの串団子を揺らして,その固有周期Tと最大速度Svを図にプロットしたものが「速度応答スペクトル」,その固有周期Tと最大変位Sdを図にプロットしたものが「変位応答スペクトル」と言います.
この「応答スペクトル」に関しては,一般的な傾向として,
新・地震動のスペクトル解析入門(鹿島出版会)から抜粋(一部修正)
の関係があると言えます.
つまり,
加速度応答スペクトルは,固有周期Tが長くなると,減少する
速度応答スペクトルは,固有周期Tが長くなると,ほぼ一定になる
変位応答スペクトルは,固有周期Tが長くなると,増加する
傾向があると言えます.
これは,構造(文章題編)でも問われている事柄でもありますので,ぜひ覚えてください.
覚え方としては,変位応答スペクトルを考えてみて下さい.
上図(a)のように,固有周期Tがことなる2種類の串団子をイメージします.変位応答スペクトルとは,串団子を揺らした時の先端質量の最大変位をプロットしたものでした.そうすると,上図(a)の固有周期T1とT2のうち(T1<T2とする),どちらの串団子の先端変位が大きいかを考えると,固有周期が長い方(上記図(a)で言えば,T2の方)が変位が大きいことがイメージできると思います.
よって,串団子の棒の長さが長い方=固有周期Tが長い方が応答変位スペクトルは大きくなることが理解できるかと思います.
固有周期Tが長くなれば,速度応答スペクトルは一定,加速度応答スペクトルは小さくなる(変位応答スペクトルと逆)ことを思い出すことができると思います.
建築士の学科試験に関しては,以上のことを知っていれば,十分であると考えます.
「固有周期」項目の問題コード25071について,補足説明させていただきます.
この問題のポイントは,高校の物理で習ったせん断力Q=m×a(m:物体の質量,a:加速度)を思い出せるかです.
質量mに関しては問題で与えられているので,串団子A,B,Cのそれぞれにかかる加速度が,それぞれいくつになるのかを問題の応答加速度スペクトルの図から求めなければなりません.
問題の応答加速度スペクトルの図より,固有周期T1<T2<T3において,固有周期T1の串団子の加速度は0.5g,固有周期T2の串団子の加速度は0.4g,固有周期T3の串団子の加速度は0.3gと読み取れます.
よって,串団子A,串団子B,串団子Cの固有周期がT1,T2,T3のどれかと対応しているので,その関係を求めます.
具体的には,T=√(m/k)より,TB<TA<TCと求められるので,串団子Bにかかる加速度は0.5g,串団子Aにかかる加速度は0.4g,串団子Cにかかる加速度は0.3gとなることがわかります.
よって,Q=m×a(串団子Cの質量のみ2m)より,QA,QB,QCの値が具体的に計算でき,QA<QB<QCとなることがわかります.
問題コード28261に関しても,同様に考えることで答えを求めることができます.
問題コード28261の解説を参照して下さい.
01.環境
どの教科・項目にも共通して言えることですが,始めから100%の理解することを目指した学習方法では,予定どおりに進まなかったりすることでモチベーションの低下を生み,結果,途中で挫折しがちです.「学ぶ」で解説部分だけでも読み進めていきましょう.その時のコツは,まずは黙って,そのまま知識を飲み込むこと.ここで,いたずらに「なんでだろう?」,「こういう場合はどうなるんだろう?」と疑問を抱い,それを解決できないでいると,それだけでストレスとなります.進捗のペースも落ち,結局モチベーションを低下させてしまいます.それが本当に理解しなければならない事柄なのか,丸暗記で対応可能な事柄なのか判断も付かないうちから,「絶対,理解してやろう!」と挑んでも,この莫大な学習量を考えると時間がいくらあっても足りません.「解く」で失点したものは、「進捗」で確認した後、再び「学ぶ」で確認です.1回目よりも2回目,回数を重ねるごとに知識を深めていく意識を.そして,その項目が,自分にとってどのレベルの難易度なのか,どの程度のボリュームがあるのかを知る事が大切です.全体のイメージや体系を掴んでからの方が、理解できたり暗記しやすくなるものです.詳細の理解より「全体把握」を.
この「環境」の項目も,深入りは禁物です.深入りしてしまうと,ただいたずらに時間が過ぎてしまいます.この項目のポイントは,「人間の暑い,寒いといった温熱感覚を数値化できなければ,快適な生活環境を客観的に計画することなどできない!」ということです.この環境という項目において,皆さんに学んで欲しいことは,人間の「感覚」というものを数値化するための戦いの歴史そのものだとお考えください.
まず,人間の温熱感覚を決定づける要素として,①.「室内環境の要素」と,②.「人間側の要素」とがあります.この2つの違いを最初に説明しておきましょう.「室内環境の要素」の場合は,例えば,この部屋の温度は23℃,湿度は40%といった具合に,100人の在籍者がいれば,100人全員に共通している要素です.それに対し,「人間側の要素」とは,たとえば,同じ室内環境においても,素っ裸な人と,マフラーを巻いて,セーターにコートまで着込んでいる人とは,その体感温度は異なりますし,ただ座っているだけの人と,スクワットを200回連続で行っている最中の人とでも異なります.当たり前の話ですね.このように,在籍者一人一人の状態や状況によって体感温度が異なってくるものが「人間側の要素」というものになります.
次に,「室内環境の要素」に注目してみましょう.「室内環境の要素」には,気温,湿度,気流,輻射という4つの要素があります.輻射というのは,後ほど,もくじ番号03「伝熱」の項目において学習しますが,いわゆる「赤外線による熱移動」のことです.日中,縁側で日なたぼっこをしていて暖かく感じるのは,太陽光線に含まれる赤外線が物体に照射されることで,光エネルギーが物体内部の分子の振動エネルギーに変換される(=熱を感じる)ためです.光線の種類には,様々な種類がありますが(後ほど,学習します),中でも,この赤外線という光線は,物体に照射することで光エネルギーを,物体内部で熱エネルギーに変換させる特性を持つわけです.ちなみに,人体も常に赤外線を放射しています.
まず最初に,人体の温熱指標(=温熱感覚を数値化したもの)として開発されたものが,「有効温度」です.有効温度は,温度,湿度,風速(気流)の3要素により求まります.それに,輻射の影響を加味したものが,修正有効温度となります.上記で説明した通り,輻射という概念は,赤外線が影響するものであり,温度,湿度,気流などといった概念よりも,後に発見されたものであると考えて下さい.だから,最初に有効温度が開発され,輻射という概念が発見された後に,その影響を加味して修正有効温度が開発されたというイメージです.
次に,人体の温熱指標には,温度,湿度,気流,輻射という4要素(室内環境の要素)だけで考えるのではなく,さらに「人間側の要素」である,作業量(メット値),着衣量(クロ値)の2要素も影響するのではないか?という考え方のもと,「新有効温度」が開発されます.
ウルトラマンが新ウルトラマンに進化するようなものです.どんどん進化していきます.また,この辺りで新有効温度の親戚のような指標が登場します.それがPMVです.新有効温度は,例えば,20℃や,30℃といったように表示しますが,PMVの場合は,-3~+3までの数値で表現します.そして,新有効温度をさらに進化させた温熱指標が登場します.それが,標準新有効温度です.このような流れで覚えておいて頂ければ記憶に定着しやすいと考えられます.
■学習のポイント
この項目からは,「基本に対して,応用の考え方ができるか」,「区分・対比を理解しているか」という点について問われます.「えー、これどっちだったかなー」と迷うのは,まだマシ.本試験では,思い込みやウッカリの対象になり,迷う間もなく失点するケースがあり,見た目よりも,難易度が高めになる場合があります.
例えば(コード18012)に「SET*(標準新有効温度)」の区分について「○問」で出題されています.当時は、過去に類の無い「新問」として扱われましたが,これ以後は「受験生はこうした知識を備えている」ということを前提として出題者は,問題を作成していきます.(コード23021)に同様の形式で「×問」で出題されています.「区分」や「対比」が存在する問題は,受験生が曖昧にしがちなことを,出題者はよく知っています.そういう場合は「○か×か」で即答するのではなく,それを含めた「区分」や「対比」ごとイメージで立ち上げて(又は実際に描き出して)から判断するようにしましょう.合格ロケットの問題コードの並びは,同系の知識や出題をグルーピングしてありますので,コード毎(年度毎)の出題の仕方(仕掛け方)に着目するようにしてください.○問でも×問でもです(特に2巡目以降).「過去問で勉強する意味」は,知識を増やす事だけではなく,出題者の視点を学ぶ事だという意識を持って進めていってください.
02.換気
まずは「自然換気」について.自然換気には,風の力による「風力換気」と,温度差による「温度差換気」の2種類があります.公式の構成メンバー全部を丸暗記する必要はありません.中には一定(固定値)のものも含まれています.問題コード27041のように,「○○に比例」とあれば「√」の外,「○○の平方根に比例」とあれば「√」の中です.
次に,問題コード20024の解説について補足します.まず,暖房器具には,開放型燃焼器具(開放型暖房器具)と密閉型燃焼器具(密閉型暖房器具),さらに,半密閉式燃焼器具(半密閉式暖房器具)の3種類があります.開放型燃焼器具とは,いわゆる家庭用の灯油ファンヒーターのようなものです.燃焼用の新鮮空気を室内から取り入れ,燃焼後の排ガスを再び室内へと排出するため室内の空気汚染が起こり易くなります.その点,密閉型暖房器具の場合には,燃焼用の新鮮空気を室内からではなく,屋外から直接取り入れ,燃焼後の排ガスも屋外へと直接排出するものです.そのため,室内の空気汚染が起こりにくくなります.また,半密閉式暖房器具は,プチ密閉型暖房器具のようなもので,燃焼後の排ガスは,直接外部へと排出するものの,燃焼用の新鮮空気は,室内から取り入れます. (社)日本ガス石油危機工業会のホームページに「半密閉式石油暖房機の安全な使い方」が掲載されています.「半密閉式」の注意点を知識の軸としてインプットしておきましょう(日本ガス石油機器工業会のHP).【こちら】
「定常濃度」についてオンライン講義での解説をご覧ください(Youtube動画 約2分)
問題コード28031のような必要換気量の図問題は,ある程度基本形として覚えてしまいましょう.問題文の条件設定において「定常状態」とあります.汚染物質発生後,室内汚染物質濃度は,急速に上昇しますが,時間が経つにつれて,発生量と換気量は平衡し,やがて一定となります.この状態を「定常状態」といいます.濃度が上昇する速度は室容積(換気回数)によります.室容積が小さいほど早く定常状態となり,大きいほど時間がかかりますが,いずれにしても,やがては定常状態(定常濃度)となります.換気量の計算問題は,この定常状態を前提として考えるため,換気量が同じあれば室容積の大小は関係ありません(次図参照).意味を考えながら,何度か描いてみましょう.
■学習のポイント
「環境・設備(環境)」からは,特にこの「換気」や「音響」についてのウエイトが大きく,より重点的に知識(特に応用力)が要求されています.ただし逆を返せば,ここがマスターできれば,大きな得点源になる,ということです.そのためには,「問題文の正誤に関わる着目すべきポイント(フォーカスポイント)」を見極めなければなりません.それでは,具体的にみていきましょう.
平成19年度に初めて出題された問題コード19195の「ガラリ計算」については,その後,21122,23134,240101,26123,27131,29114と頻出問題となりました(Webアプリ「学ぶ」「検索」で「ガラリ」をキーワード検索してみてください).基本式をキチンと押さえておけば,どんな問われ方をされても,自由に扱えるはずです.一方,外気取入れガラリと排気ガラリの開口面積の大小が問われると,混同しがちです(ケアレスミス多発).給気側と排気側の風速の違いにより面積に違いが出るわけですから略図を描いて目視で確認してから解答するよう習慣付けましょう.
必要換気量の文章問題、問題コード20022,29031の注意点は,問題文中の「換気回数」の違いです.換気回数は,換気量を室容積で除したものですから,「換気量が一定」という前提条件と,問題コード20022の「換気回数が一定」という前提条件は,まるで違う状況を表わします.これは決して「引っ掛け問題」ではありません.出題者は明らかに,その違いが理解できているかを聞きたいはずです.本試験でのこの読み間違い(読めているのに、違うイメージを立ち上げてしまう)は,致命的となります.2巡目以降の学習では,問題文の条件や言い回し(設定)について,注意深く読み取って整理していってください.出題者にとっては,類似する用語は格好の題材となることを覚えておきましょう.
03.伝熱
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分)
この項目の学習を効率よく進めるために,「熱」に関する基本事項を学ぶことから始めましょう.解説集として収録されている「熱の解説」をまず最初にご覧ください.次に,問題解説をザッと読み進めます.この時,文章を映像化して読むことを意識しましょう.例えば,冬期をイメージして下さい.冬期には,室内側が外気側に比べて高温となるため,熱は,室内側から外気側へと流れることになります(熱は,高い方から低い方へと移動する).その際,建物の外壁を通過するわけです.このときの熱の流れを考えてみましょう.まず,室内側の空気から外壁の室内側表面へと熱が伝わります.このように,空気から壁体へと熱が伝わることを「伝達」といいます.次に熱は,壁体内部を外気側へと伝わっていきます.このように,壁体中を通過する熱移動を「伝導」といいます.最後に,外壁の外気側表面より,外気へと熱は伝わります.このとき,壁体から空気へと熱が伝わるので「伝達」となります.このような「伝達」→「伝導」→「伝達」という熱の流れを総称して熱貫流と呼びます.
熱とは,物体を構成する分子の振動だと考えて下さい.中学校や高校時代に習った分子のモデル図をイメージしてみましょう.あの物体を構成している(例えば,アナタ自身も分子で構成されています)分子の振動こそ「熱」エネルギーの正体です.物体同士が隣り合うときに,その境界線が出来ますが,境界線に高温側の分子がドンドンとぶつかることによって,熱(=分子の振動エネルギー)を低温側の物体の分子へと伝えていくわけです.そのため分子の数が多ければ多いほど,物体間の境界線にぶつかる分子の数も増えますので,熱は伝わり易くなります.
また,伝熱計算に関する問題は,「伝熱」という仕組みを理解するために非常に重要な項目ですので,是非この機会にマスターしておきましょう.発展的な思考の源となります.まずは,下記解説をお読みください.
一見,難しい内容に見えますが,図Aの横軸は「壁の厚み」,図Bの横軸は「熱抵抗」です.図Bのように熱抵抗を横軸,壁体内部の温度差を縦軸として考えた場合,このように比例関係が成立します(熱抵抗の割合を表現).ちなみに,比例関係となる場合,一定の割合での増加・減少を意味し,グラフにした場合,直線で示すことができます.図Bの部材がコンクリートと断熱材なら,部材(B)の熱抵抗が大きいことから,こちらが断熱材に相当する部分と考えられます.
壁の熱貫流抵抗(㎡・K/W)を求める式 Rt=ri+Σrk+ro があります.
ri=内表面熱伝達抵抗
rk=熱伝導抵抗
ro=外表面熱伝達抵抗
ここで重要なのは「熱抵抗値」で単位が統一されている点です.
これらの熱伝導に関する熱抵抗値を「熱伝導比抵抗」といい,これに壁体を構成する各部材の厚み(d)を掛けたものの総和が「熱伝導抵抗(=壁体全体の熱抵抗値)」となり,それに壁の外・内で接する空気の伝達による熱抵抗値を加えることで,全体の熱抵抗値である「熱貫流抵抗」が求まります.この「熱貫流抵抗」の逆数が「熱貫流率」となります.
■学習のポイント
コード28042,23042,02022,21102,18023,02023ように,「熱貫流の仕組み」について,キチンと理解するのは当然として,「仕掛け方」にも注意していきましょう.出題も毎回同じ言い回しとは限りません.解説が多少長い問題コードは,それだけ丁寧な理解が必要となります.平成27年に図問題として出題された問題コード27031は,まさに総合的な理解が問われました.この項目の最重要問題と位置づけて,キチンと理解しておきましょう.
熱貫流抵抗[㎡・K/W] ←逆数→ 熱貫流率[W/㎡・K]
↑
(全体の熱抵抗値の総和)
↑
外側熱伝達抵抗[㎡・K/W] ←逆数→ 外側熱伝達率[W/㎡・K]
内側熱伝達抵抗[㎡・K/W] ←逆数→ 内側熱伝達率[W/㎡・K]
熱伝導抵抗[㎡・K/W] ←逆数→ 熱伝導係数[W/㎡・K]
↑
(各構成部材の熱伝導比抵抗に厚み[m]を掛けた総和)
↑
熱伝導 比 抵抗[m・K/W] ←逆数→ 熱伝導率[W/m・K]
これらは丸暗記するよりも,単位とその意味に着目しながら,仕組みを理解しておくことが大切です.
04.色彩
この項目を効率よく学習するために,「光と色」に関する基本事項を学ぶことから始めましょう.アプリの「解説集」に収録されている「光と色の解説」をまず最初にお読みください.この解説集では,「光と色の意味とその関係性」について説明しており,この資料によって身につけて頂く光と色に関する知識は,新問題対策としても強力な武器となります.最初は,小難しい説明が記載されていますが,要するに「光(電磁波)とは,横波であり,音(音波)は,縦波である」というイメージを理解して頂ければ十分です(そのまま暗記して頂いても結構です).
話を戻します.光(電磁波)とは,横波の振動であると説明しましたが,その波長の長さ(波長域)によって,紫外線(波長が短く目で認識できない波長域),可視光線(目で認識できる波長域),赤外線(波長が長く目で認識できない波長域)等に区分できます(光と色の解説集参照).解説集の中でも説明されているとおり,波長の長い光線である赤外線は,熱線とも呼ばれ,物体に照射されると物体内の分子を振動させることで熱エネルギーに変換されます.太陽光や,ハロゲンヒーターなどを浴びると暖かく感じるのは,赤外線(熱線)による光エネルギーが熱エネルギーへと変換されるためです.また,この熱線による熱の移動を「輻射」といいます.
次に「色って何?」という説明に移りましょう.そもそも人間は,光を目で感じ取ることによって色を認識します.今,ある物体Aに,照明などの「光源」から「赤色(波長が長い光線)」,「黄色(中間ぐらいの波長の光線)」,「青色(波長が短い光線)」という3種類の光(光線)が照射されているとします.その様子を人間が見た際,例えば,物体Aが黄色に見えたとしましょう.それは,「光源」から「物体A」に照射される3色の光線のうち,「物体A」が「赤色」と「青色」の光線を吸収し,「黄色」の光線だけを反射しているからです.人間が「物体A」を見た際,「物体A」から反射されてきた「黄色」の光線だけが目で認識されるため,頭の中で「物体Aの色は,黄色い」と判断するわけです.これが,人体が色を認識する際のメカニズムです.
さて,「光と色の解説」の2ページ目からは,より具体的な説明が記載されていますね.そこに人間が色を感じる3要素には,「1.光源」,「2.物体の特性」,「3.視覚(人間の特性)」の3種類があると記載されています.先ほどの説明では,光源から赤,黄,青の3色の「光線」が照射されていましたが,たとえば,「光源」から照射される「光線」が,赤系の色に偏っていた場合の「物体A」の見え方と,同様に青系に偏っていた場合の見え方では,同じ「物体A」であっても異なる色に見えてきます.これは,部屋の照明を白熱灯(赤味がかる)にした場合と,蛍光灯(青味がかる)にした場合とで,異なって見えるのと同じ原理です.つまり,同じ物体であっても,「光源」の種類(照射する光線の種類)が異なれば同じ物体であっても,その色の見え方は,違うものに見えるわけです(ただし,物体そのもの光線を反射する特性は一定です).
次に,「2.物体の特性」についてご説明しましょう.これは,いわゆる物体そのものの「光の反射特性」であり,青系の光線を反射しやすい物体は,青っぽく見えますし,赤系の光線を反射しやすい物体は,赤っぽく見えるような物体固有の特性を表します.
最後の「3.視覚」については,「光源について,特定の波長域の光線(例えば黄色の光線)を照射する強さ」×「物体において,光源から照射される特定の波長域の光線(例えば黄色の光線)を反射する割合(反射率)」=「人間の目に飛び込んでくる物体から反射された特定の波長域の光線(例えば黄色の光線)の強さ」となります.これは,いわゆる物理量です.しかし,人体が厄介なのは,同じ物理量の光であっても波長域の違い(光線の種類の違い=色の違い)によって,色の感じ取り方が異なることです.
以上が,「光と色」のイメージについて説明となります.
次に,RGB表色系と,XYZ表色系について説明しておきましょう.「光と色の解説」6ページ,7ページを見てください.解説の中にも記載されているように,人体のメカニズムとして,色を知覚するため人間が「目」で光を認識した際には,3種類の細胞が送り出す信号の組み合わせにより頭の中で色を認識します.その原理をもとに,「特定の3種類の色を組み合わせることで,あらゆる色を表現することができるのではないだろうか?」という先人達の戦いが始まるわけです.「へー,何が楽しくてそんなことするわけ?」と思われる方もいるかもしれませんが,例えばカラーテレビは,その理論を応用することによって開発されました.カラーテレビでは,赤,緑,青という3色を組み合わせることによって,カラー映像の世界を実現させているのです.これがRGB表色系の原理です.ただし,このRGB表色系にも問題点があります.それは,理論的には,成立しているものの,実際には,作り出せない色が存在してしまうことです.この問題を改善するために,XYZ表色系があります.
■学習のポイント
問題コード20023については,「誘目性」という言葉が登場します.大抵の受験生は,人間が最も強く認識し易い色は,黄緑の波長域の色だと覚えています.中には,そのまま鵜呑みにしている方も少なくありません(「明所視=黄緑色」といった具合に).それは,人の目の感度と波長の関係性の話です.この「誘目性」は,心理的な話です. 色光の誘目性は,視対象が目を引きやすいかどうかという特性であって,「赤」がもっとも高く,次に「青」,そして「緑」です.これは,違いを明確に,覚えておきましょう.
次に,問題コード01082に.「同化」という言葉があります.ここで,「同化」と「対比」の違いについてみておきましょう,「同化」の場合,ある色が他の色に囲まれたり,挟まれているとき,囲まれたり挟まされている色が周囲の色に似て見える現象をいいます.
同化の場合,上図のように灰色の背景に白い線で縞模様を描くと背景色の灰色は実際よりも明るく見え,黒い線で縞模様を描くと背景色の灰色は黒ずんで見えます.このとき,白色や黒色の幅を大きくすると下図のように同化効果ではなく,対比効果(明度対比)が起きます(問題コード19075).
明度対比の場合,上図のように,黒色に挟まれた(囲まれた)灰色の方が,白色に挟まれた(囲まれた)灰色の方が明るく見えます(明度が高く見える).
色彩の項目については,「色彩検定」や「カラーコーディネーター」といった他の資格試験がありますので,ネットを検索すると,その関連のカラフルな資料が山ほど出てきますが,ここでも深入りは禁物です.専門知識で武装するよりも,ビジュアル的にイメージを補完するような範囲で活用する事をお勧めします.
05.照明
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約8分)
それでは基本から進めましょう.点光源は,光源に対し放射状に発生します.つまり,点光源を中心とする球面上に広がっていくわけです. そのうち,「光束(ルーメン)」というものは,茹でる前の棒状の「ソーメン」のようなイメージです(ソーメンは夏の風物詩であり,私も大好物です).ソーメン1本1本が「光束」であり,この本数は「エネルギー量」を表し,光束の量(=ソーメンの本数)が大きければ大きいほど光エネルギーは大きくなる(=明るくなる)ものとお考え下さい.ちなみに,光束の単位「ルーメン」と「ソーメン」をかけています(サラッと流してください).次に,「光度」ですが,単位立体角内に発散する光束をいいます.ここで,単位立体角について補足説明しておきましょう.まず,光源を中心とした半径1mの球体を思い浮かべて下さい.その球体の球面上に,1㎡の面積を持つような角を「単位立体角」といい, その「単位立体角」内の光束量を「光度(cd = lm/sr)」というわけです.これは,点光源の明るさを表します.(次図参照)
光度が「点光源」の場合における明るさを表すことに対し,光源が「面光源」である場合の明るさを表す尺度が,「輝度」となります.単位は「cd/㎡」.問題コード15044に「光源,反射面,透過面から特定の方向に出射する単位面積当たり,単位立体角当たりの光束」という言い回しがあります.一見,「これって誤記なんじゃないの?」と思われるかもしれませんが,「A当たり,B当たりのC」とは「C/(A・B)」を表したものです.「cd = lm/sr」ですから,輝度の単位「cd/㎡」に代入すると「lm/(sr・㎡)」となりますので,これは輝度の説明であることがわかります.日本語って難しいですね.詳細検索でキーワード「輝度」を検索してみると,出題が多様であり,いろんな側面を持っていることが分かります.「これだけ覚えておけば大丈夫」というモノではありません.まずは単位の解説と,「人が認識する面の明るさ、空間の明るさ感」を表すのに利用されるという事くらいの理解で.根本から理解しようとネットを彷徨うと,ドンドン深みにはまって余計わからなくなりますので,そういう時は割り切りも必要です.
人間の光に対する感度は,光の波長によって異なります.この感覚を視感度といいます.光のエネルギー量(物理量)を単純に測定しても,人間の目には直接見えない赤外線なども含まれているため,人間の目の感度に合わせて補正しなければ,それが明るいのか暗いのかを判断することができません.そこで,視感度の世界標準として,最大視感度(波長555nm)での視感度(683lm/W)に対する各波長の視感度の比率(= 標準比視感度)というものが国際的に定められました.光を測定する上で基本単位となる光束(lm)は,単位時間に流れる光のエネルギー量を測定する際,標準比視感度で補正した値で表しています.つまり他の基本単位(光度=lm/sr,輝度=cd/㎡,照度=lm/㎡)も,「lm」が含まれているので標準比視感度で補正されているということが言えるのです.
■学習のポイント
過去問で出題された用語の理解は必須ですが、よく「照度分布」と「配光曲線」をすり替えたり「照度」と「輝度」をすり替えたりと、近しい話を混同いしていないか、執拗に問われます。「対比」で覚えた片方が問われたら,両方引っ張り出して,今回はどちらが問われているのかを確認(出来れば描き出して目視)してから解答する習慣をつけましょう。また似たような用語どうしも,扱いを慎重に。例えば「演色」は光源の違いによって物体の色の見え方が変わる「現象」です。一方「演色性」は、「光源の特性・指標(優秀か否かではない)」です。太陽光(標準光源)で照らされた色に近い見え方をする照明を「演色性の高い照明」とします。これらも「対比」として捉えて構いません。「問われているものに対して、適切に返答するための準備」に徹していきましょう。
06.日照・日射
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約6分)
昼光は,直接日光(直接光)と,天空光の大きく2つに分けられます.これを分かりやすく説明すると,「直接光」というものは,太陽を直視した際の明るさをいい,「天空光」とは,太陽を直視しないように空を見上げた際の明るさだと考えてください.「天空光」は,太陽光が拡散・乱反射されて地上に達する光のことをいいます.また,「全天空照度」とは,周囲に障害物のない屋外における水平面照度をいいます.全天空照度の場合,直射日光の影響を無視し,天空光のみによる照度で考えます.快晴の日は,直接光が多く,天空光は少なくなり,薄曇りの日は,直接光が少なく,天空光は多くなる,と考えます.
ある時刻における「全天空照度」が「10」の時,室内におけるある点の照度を「1」と仮定しましょう.その場合,昼光率=(1/10)×100%=10%となります.これは,全天空照度の10%が室内のある点の照度となっていることを表します.そのため,時刻が変化して,「全天空照度」が「5」になった場合には,5×10%=0.5が室内のある点における照度となります.この場合,時刻によって全天空照度が変化したとしても昼光率は一定です.次に,窓がフロートガラスから,すりガラス(くもりガラス)に変わったときの場合を考えましょう.同じ全天空照度であったとしても,フロートガラスであった場合と,すりガラスであった場合とでは,「同じ時刻の全天空照度であっても,室内のある点における照度」は,すりガラスの場合の方が採光量が少なくなる(変化する)ため,昼光率は一定とはなりません.例えば,フロートガラスの場合の昼光率が10%だったとしましょう.すりガラスの場合は,天空光が室内に入り込む割合がフロートガラスの場合に比べて,減少するわけですから当然,昼光率も10%を下回るわけです.すなわち,「昼光率は,一定にはならない」と考えます.窓の前に樹木がたった場合も,室内に入り込む天空光の量は減少します.そのため,同じ全天空照度であっても,室内のある点における照度は減少します.この場合も,昼光率は変化すると考えるわけです.「昼光率は一定なの?一定じゃないの?」それは前提の違いなので,明確にしておきましょう.
そして,要注意なのは,こうした「現象」のイメージで終わるのではなく,昼光率が「設計」で活用されるという事.CASBEEの評価項目にも使われますが,つまりは,「建物を建てる前に検討するためのもの」と言う事を知っておいてください.
■学習のポイント
問題コード23063 に「南向き鉛直壁面の1日の可照時間」に関する季節ごとの大小比較が出題されました. 日照・日射を理解する上で非常に重要な内容です.例年,講義でも,季節ごとの太陽の位置や影の移動の仕方について立体的にイメージできるよう詳しく解説しています.
解説中に,季節を通じた太陽の軌道を示す図があります.この図は,きちんと頭に叩き込んでおきましょう.南中時の太陽高度は,それぞれ「30°,54°,78°」となりますが,これは丸暗記です(ここは深堀りするところじゃない!).こういう時は,語呂合わせにして覚えることをおススメします.ここで,オリジナルの語呂の作り方についてレクチャーしておきます.例えば,「三十路(30歳)に,腰(54)で悩(78)む」という語呂とするよりも,「コッシー(54),悩(78)んで,散(30)歩する.」という語呂の方が記憶に定着し易くなります(ちなみに,コッシーとは,越田(コシダ)さんという私の友達です).記憶に残りやすくなる理由は,固有名詞が入っているからです.「南中時の太陽高度の角度ってどうだったけかな?」と考えた際に,コッシーさんの顔を浮かべる事が出来れば,「コッシーナヤンデサンポスル.」という語呂を思い出すことができます.その際に,コッシーさんが,悩んでいる表情で,歩いているような光景が頭の中に浮かべば効果倍増です.語呂というものは,一枚の「絵(光景)」として,記憶するようにしましょう.語呂を「文章」で記憶しようとしても,語呂自体を忘れてしまうものです.これが,語呂作りのコツです.
08.音響
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約3分)
「音」というものは,空気の振動です.「音波」は,縦波であり,「疎」の部分(=圧力が低い部分)と,「密」の部分(=圧力が高い部分)とが交互に繰り返されながら伝わっていきます.そのときの圧力変化が10Pa(パスカル)だったとしましょう.その場合,疎の部分では,-10Pa,密の部分では,+10Paとなります.疎の部分というのは,横波でいうところの最も「谷」となる部分,密の部分というのは,最も「山」となる部分のことです.
「音に関する計算を行う場合には,レベル表示した上で計算する」ということを覚えて下さい.レベル表示した際の単位は,「デシベル」となります.また,レベル表示することを「デシベル変換する」とも言います.ここで用語を整理しておきましょう.まず,スピーカー等の音源の音の大きさを「音響パワー(W)」といい,音源から単位時間に発生する音のエネルギー量を表します.いわゆる「音響出力」と呼ばれるものですね.「音響パワー」をレベル表示(=パワーレベル表示)したものが,「音響パワーレベル(単にパワーレベルともいう)」となります.次に,「音の強さ」です.「音の強さ」とは,音源から離れたある地点において,単位面積を単位時間に通過する音のエネルギー量(W/㎡)ですね.これをレベル表示したものが,「音の強さのレベル」となります.最後に,「音圧」を見てみましょう.「音圧」とは,先ほど大気圧に対する圧力変化であると説明しました.それをレベル表示したものが「音圧レベル」です.ただし,「音圧」と「音の強さ」との関係を考えると,「音圧の2乗」が,「音の強さ」に比例するという関係があります.そのため,音圧を音圧レベルとしてレベル表示する場合は,2乗して考えます.
「何故,ログ計算では,デシベル表示したもので考えていくのか?」というと,「音響パワー(W)」や,「音の強さ(W/㎡)」は,「エネルギー量」であり,「音圧(Pa)」は,「圧力」であるため同時に比較検証できないからです(単位も異なるため).ただし,レベル表示することよって,一般の音場については,等しいもの(等しい量)として扱えるようになるため,同時に計算することが可能となります.
さて,音を計算することが出来るようにはなりましたが,それはあくまで物理量の話です.同じ物理量の音でも,人間の感覚では,「聞き取りやすい音」と「そうでない音」とがあります.それは,音の周波数の違いによります.例えば,同じ100というエネルギー量を持つ音であっても,周波数の低い音は聞き取りにくく,周波数の高い音は聞き取りやすくなります.「ラウドネス曲線」の図がありますが,例えば,同じ50ホン(phon)という「音の大きさ」で考えた場合,周波数の低い音については,より大きな音圧レベルが必要となり,逆に,周波数の高い音の場合は,音圧レベルが低くとも,同じ50ホンという音の大きさで人間は認識することができるのです.
点音源の音響出力がP(W)だった場合,音は,球面上に広がっていきます.
例えば,半径rの地点の音の大きさは,P/4πr^2 となります.ここで,4πは,微小な定数であるため無視し,P/r^2 と考えることができます(r^2は,rの2乗を示す).考え方としては,もともとPという大きさであったものが,球面上に広がっていくため,半径がrとなる地点においては,音の大きさ=P/(半径rの球体の表面積) となるイメージです.これが,「点音源は,距離の2乗に反比例する」という理由です.
次に線音源ですが、線音源とは,点音源が線状に集合したものと考えましょう.
線音源を考える場合は,ある地点の音源における音の拡散状況に着目します.その場合,音は,円の円周上に広がっていきます(上図において,赤い円の部分です).そのため,半径がrとなる地点においては,音の大きさ=P/(半径rの円周) となり,P/2πr となります.このとき,2πは,微小な定数であるため,先ほどの点音源同様に無視して考え,P/rと考えることができます.そのため線音源の場合は,距離(r)に反比例することになります.
上記の話をまとめてみましょう.次のように計算します.
■学習のポイント
上記で「点音源からの距離が2倍になると6dB減衰する」ということを説明しました.点音源からの距離が2倍になると,音の拡散する面積は約4倍になると考えることができます.つまり「音の強さ」は1/4倍になり,「音の強さのレベル」は-6dBとなるということです.
こう言う話の後で何ですが,原理を知っている方が応用に強いとは言え「それが理解できないと為す術がない」というわけではありません.デシベル計算が苦手という方は,捨て問題にする前に,次の事を暗記しておいてください.
・音の強さのレベルと音圧レベルは,ほぼ同等に扱える.
・音の強さが2倍になると,音圧レベルは3dB増加する.
(音の強さが4倍になると,音圧レベルは6dB増加する)
・点音源からの伝搬距離が2倍になると,音の拡散する面積は4倍
になるため,音の強さは1/4になる=音圧レベルは6dB減少する.
その道の専門家にとっては初歩的な話でも,これから学ぶ人にとっては,とてつもなく難しい話が一級建築士試験の知識には沢山あります.バックボーンも各自異なるわけだし,習得の仕方は変わって当たり前.「どのレベルまで理解しているか」よりも「どういう出題に対してどう備えるべきか」を考える方が重要だったりします.
インプットのコツの活用方法
勉強する前に,「その項目で何を学ぶのか」を意識して,合格ロケットに収録されている過去問を学んでください.その際,先に解説を読み,次に,問題と解答を見る順番でインプットしていくと効率的です.中には,先に,その項目の解説部分だけを一通り読み終えた後で,問題としてどのように出題されているのか,問題文中,どこが解答(〇 or ×)に直結するキーワード(=フォーカス ポイント)なのかチェックする要領で,各項目ごとに問題文をながめていきましょう.そのチェックがしやすい順に,収録問題を並べています.
また,各項目の学習を終了した際は「その項目で何を学んだのか」「ポイントはどういった点だったかのか」をノートに書き出しておく(=アウトプットしておく)と後日,復習の際に便利です.ひたすら知識を暗記するのではなく,インプットした事をアウトプットしやすいように,自分なりに再構築する事を意識してください.
そして,復習では,自分で再構築した内容を思い出せるようにしておきましょう.