07.鉄筋コンクリート構造
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約6分)
施工科目の「鉄筋工事」や「コンクリート工事」は,鉄筋加工における注意点や型枠の存置期間など施工工事から見た出題ですが,この項目では鉄筋コンクリート部材を設計手法から見た事柄に関して出題されています.
鉄筋コンクリートというのは,引張に弱いコンクリートを鉄筋で補強している理にかなったものです.コンクリートがアルカリ性であるため,錆に弱い鉄筋を保護している意味合いもあります.また,コンクリートと鉄の熱膨張率(線膨張係数)がほぼ等しいため,温度の変化における悪さもありません.
鉄筋コンクリート構造の場合は,柱や梁がせん断破壊を起こさないで曲げ破壊をさせる,耐震壁がせん断破壊をおこさないで曲げ破壊や基礎の浮き上がりが生じるようにさせることがポイントです.
そのために,柱や梁などについていろいろな規定があります.
そのことを踏まえて,過去問題とその解説を一読してみてください.
柱や梁をせん断破壊させないことが前提としてありますので,せん断補強筋(帯筋やあばら筋)によってせん断力に抵抗します.そのために,せん断補強筋比の規定があります.
また,鉄筋コンクリート部材では,せん断力に対して,コンクリートのせん断強度とせん断補強筋の効果を組み合わせて設計します.しかし,柱の長期許容せん断力に関しては,せん断ひび割れを許さないとして,コンクリートの許容せん断応力度のみを有効としています.これは鉄骨鉄筋コンクリート柱の場合と同様です(問題コード14131・・・鉄骨鉄筋コンクリート).
コンクリートのヤング係数はコンクリート強度が高くなるほど大きくなります(「コンクリート」のインプットのコツ参照)が,鉄のヤング係数は強度によらずほぼ一定である(「鋼材・金属」のインプットのコツ参照)ため,コンクリートに対する鉄筋のヤング係数比(鉄筋のヤング係数/コンクリートのヤング係数)は,コンクリート強度が高くなるほど小さくなりますが,構造計算では,通常のコンクリート強度ではヤング係数比を15と仮定します.
一般に,鉄筋コンクリートの曲げ材は,コンクリートの圧縮側が破壊するより先に引張側の鉄筋(主筋)が降伏するように設計します.このことを「引張鉄筋比が釣り合い鉄筋比以下の場合」と言いますが,この時の許容曲げモーメントはM=at×ft×j=7/8×at×ft×d(ここで,at:引張鉄筋の断面積,ft:鉄筋の許容引張応力度,j:曲げ材の応力中心距離(=7/8d),d:曲げ材の圧縮縁から引張鉄筋重心までの距離(有効せい)を指します)で,終局曲げモーメントはM=0.9×at×σy×dで計算できます(問題コード問題コード23111ほか).
かぶり厚さとは,鉄筋表面とこれを覆うコンクリート表面までの距離を指し,鉄筋の耐火被覆やコンクリートの中性化速度などを考慮して定められています(問題コード27123).
ここで,よく質問が来る鉄筋コンクリートの接合部での力の伝達方法(問題コード01142)について説明します.
鉄筋コンクリート構造ラーメン構造の柱梁接合部の設計法としては
・水平荷重(特に地震荷重)に対する短期設計を対象としています.
・長期荷重時のせん断力は小さく,接合部のひび割れが問題となった事例もほとんどないため,長期荷重に対しては通常は考えません.
・水平荷重を受けるラーメン内の柱梁接合部は,下のような応力状態となります.
・梁主筋は,一般に,釣り合い鉄筋比以下で配筋されていますので
→引張側の鉄筋降伏で梁の曲げ耐力が決まります.
→引張鉄筋量を増やしても,釣り合い鉄筋比であれば,引張側の鉄筋降伏で梁の曲げ耐力が決まります.
→引張鉄筋量が増えると,上図におけるTが大きくなります.
→(梁の)Tが大きくなると,(梁の)Cs+Ccも大きくなります.
→その結果,柱梁接合部に生じるせん断力Qjも大きくなります.
また,鉄骨造柱と同様,鉄筋コンクリート柱も大きな軸力を受ける柱ほど地震時の粘り強さが減少することに注意して下さい.
梁部材における鉄筋とコンクリートとの許容付着応力度は,上端筋よりも下端筋の場合の方が大きいことに注意しましょう.
梁などのクリープ現象を制御するためには,圧縮鉄筋が有効となります.圧縮力を受ける柱では,コンクリートがクリープによって縮もうとする分,鉄筋の圧縮力の分担が増えるため,鉄筋の圧縮応力は徐々に増加します(問題コード01124ほか).
ひび割れに関しては,図問題として出題されています(問題コード25141,29111).鉄筋コンクリート構造(部材)に入る基本的なひび割れについて整理しておきましょう.
鉄筋コンクリート造の部材設計に関しては,計算外規定(注意点)があります.
簡単にまとめてみますと
・柱
・主筋比は,0.8%以上とします.
・帯筋比は,0.2%以上とします.
・梁
・長期荷重時に正負最大曲げモーメントを受ける部分の引張鉄筋比は0.4%以上,
または存在応力によって必要とされる量の4/3以上とします.
・主要な梁は,全スパンにわたり複筋ばりとします.
・あばら筋比は,0.2%以上とします.
・あばら筋の間隔は,3/4D(D:梁せい)以下とします.
・柱梁接合部
・柱梁接合部内の帯筋も帯筋比を0.2%以上とします.
・帯筋間隔は150mm以下,かつ隣接する柱の帯筋間隔の1.5倍以下とします.
・床スラブ
・最大曲げモーメントを受ける部分における引張鉄筋間隔は,短辺方向には20cm以下,
長辺方向には30cm以下,かつ床スラブの厚さの3倍以下とします.
・全断面の鉄筋比は0.2%以上とします.
・耐震壁
・耐力壁の厚さは12cm以上とします.
・壁筋は径9mm以上で,配筋間隔は縦横に30cm以下とします.
・耐震壁周囲の付帯ラーメン
・梁の全断面に対する主筋の鉄筋比は0.8%以上とします.
■学習のポイント
鉄筋コンクリート構造は,毎年4問程度出題されている頻出項目です.収録されている問題数も非常に多いですが,繰り返し出題されている問題から優先的に勉強しましょう♪