01環境・設備(環境編)

01.環境

どの教科・項目にも共通して言えることですが,始めから100%の理解することを目指した学習方法では,予定どおりに進まなかったりすることでモチベーションの低下を生み,結果,途中で挫折しがちです.「学ぶ」で解説部分だけでも読み進めていきましょう.その時のコツは,まずは黙って,そのまま知識を飲み込むこと.ここで,いたずらに「なんでだろう?」,「こういう場合はどうなるんだろう?」と疑問を抱い,それを解決できないでいると,それだけでストレスとなります.進捗のペースも落ち,結局モチベーションを低下させてしまいます.それが本当に理解しなければならない事柄なのか,丸暗記で対応可能な事柄なのか判断も付かないうちから,「絶対,理解してやろう!」と挑んでも,この莫大な学習量を考えると時間がいくらあっても足りません.「解く」で失点したものは、「進捗」で確認した後、再び「学ぶ」で確認です.1回目よりも2回目,回数を重ねるごとに知識を深めていく意識を.そして,その項目が,自分にとってどのレベルの難易度なのか,どの程度のボリュームがあるのかを知る事が大切です.全体のイメージや体系を掴んでからの方が、理解できたり暗記しやすくなるものです.詳細の理解より「全体把握」を


この「環境」の項目も,深入りは禁物です.深入りしてしまうと,ただいたずらに時間が過ぎてしまいます.この項目のポイントは,「人間の暑い,寒いといった温熱感覚を数値化できなければ,快適な生活環境を客観的に計画することなどできない!」ということです.この環境という項目において,皆さんに学んで欲しいことは,人間の「感覚」というものを数値化するための戦いの歴史そのものだとお考えください.

まず,人間の温熱感覚を決定づける要素として,①.「室内環境の要素」と,②.「人間側の要素」とがあります.この2つの違いを最初に説明しておきましょう.「室内環境の要素」の場合は,例えば,この部屋の温度は23℃,湿度は40%といった具合に,100人の在籍者がいれば,100人全員に共通している要素です.それに対し,「人間側の要素」とは,たとえば,同じ室内環境においても,素っ裸な人と,マフラーを巻いて,セーターにコートまで着込んでいる人とは,その体感温度は異なりますし,ただ座っているだけの人と,スクワットを200回連続で行っている最中の人とでも異なります.当たり前の話ですね.このように,在籍者一人一人の状態や状況によって体感温度が異なってくるものが「人間側の要素」というものになります.

次に,「室内環境の要素」に注目してみましょう.「室内環境の要素」には,気温,湿度,気流,輻射という4つの要素があります.輻射というのは,後ほど,もくじ番号03「伝熱」の項目において学習しますが,いわゆる「赤外線による熱移動」のことです.日中,縁側で日なたぼっこをしていて暖かく感じるのは,太陽光線に含まれる赤外線が物体に照射されることで,光エネルギーが物体内部の分子の振動エネルギーに変換される(=熱を感じる)ためです.光線の種類には,様々な種類がありますが(後ほど,学習します),中でも,この赤外線という光線は,物体に照射することで光エネルギーを,物体内部で熱エネルギーに変換させる特性を持つわけです.ちなみに,人体も常に赤外線を放射しています.

まず最初に,人体の温熱指標(=温熱感覚を数値化したもの)として開発されたものが,「有効温度」です.有効温度は,温度,湿度,風速(気流)の3要素により求まります.それに,輻射の影響を加味したものが,修正有効温度となります.上記で説明した通り,輻射という概念は,赤外線が影響するものであり,温度,湿度,気流などといった概念よりも,後に発見されたものであると考えて下さい.だから,最初に有効温度が開発され,輻射という概念が発見された後に,その影響を加味して修正有効温度が開発されたというイメージです.

次に,人体の温熱指標には,温度,湿度,気流,輻射という4要素(室内環境の要素)だけで考えるのではなく,さらに「人間側の要素」である,作業量(メット値),着衣量(クロ値)の2要素も影響するのではないか?という考え方のもと,「新有効温度」が開発されます.

ウルトラマンが新ウルトラマンに進化するようなものです.どんどん進化していきます.また,この辺りで新有効温度の親戚のような指標が登場します.それがPMVです.新有効温度は,例えば,20℃や,30℃といったように表示しますが,PMVの場合は,-3~+3までの数値で表現します.そして,新有効温度をさらに進化させた温熱指標が登場します.それが,標準新有効温度です.このような流れで覚えておいて頂ければ記憶に定着しやすいと考えられます.


■学習のポイント
この項目からは,「基本に対して,応用の考え方ができるか」,「区分・対比を理解しているか」という点について問われます.「えー、これどっちだったかなー」と迷うのは,まだマシ.本試験では,思い込みやウッカリの対象になり,迷う間もなく失点するケースがあり,見た目よりも,難易度が高めになる場合があります.

例えば(コード18012)に「SET*(標準新有効温度)」の区分について「○問」で出題されています.当時は、過去に類の無い「新問」として扱われましたが,これ以後は「受験生はこうした知識を備えている」ということを前提として出題者は,問題を作成していきます.(コード23021)に同様の形式で「×問」で出題されています.「区分」や「対比」が存在する問題は,受験生が曖昧にしがちなことを,出題者はよく知っています.そういう場合は「○か×か」で即答するのではなく,それを含めた「区分」や「対比」ごとイメージで立ち上げて(又は実際に描き出して)から判断するようにしましょう.合格ロケットの問題コードの並びは,同系の知識や出題をグルーピングしてありますので,コード毎(年度毎)の出題の仕方(仕掛け方)に着目するようにしてください.○問でも×問でもです(特に2巡目以降).「過去問で勉強する意味」は,知識を増やす事だけではなく,出題者の視点を学ぶ事だという意識を持って進めていってください.

 

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