02環境・設備(設備編)

03.空調設備

まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分)

この項目を学習する前に,合格ロケットの解説集として収録されている「冷凍機の解説」をお読み下さい.圧縮冷凍機,吸収式冷凍機のしくみが分かるようになります.ここでのポイントは,「熱を運搬する冷媒の役割」と「冷却水・冷水の役割」です.これらの基本をきちんとマスターする事が,応用問題へと繋がっていきます.

問題コード26134に,「三方弁制御」は「定流量方式」,「二方弁制御」は「変流量方式」とあります.ここで,冷凍機系のシステムについてご説明しておきましょう.冷凍機系のシステムは,冷凍機によって冷やされた冷水が,冷却コイルに流れ込み,冷却コイルへと送りこまれる導入外気を冷やすことで,冷風を作り,その冷風を送風機によって室内へと送り出すことで空調を行います(夏に空調機から冷風が吹き出されるイメージです).

尚,冷却コイルによって冷風を作る際に,導入外気から奪った熱によって冷却コイル内の冷水は暖められます.暖められた冷水は冷凍機へと循環され,再び,冷水として冷却コイルへと送りこまれます.その際,冷凍機から冷却コイルへと送り出される水の量は,常に一定(定流量)です.しかしながら,冷風を作る量が少なくてすむ場合には,冷却コイルへと送る冷水量は少なくした方が省エネ化が図れます.

そこで,「三方弁」の場合,冷却コイルへと送り出される冷水と,そのまま三方弁を経由して冷凍機へと送り返される冷水とに分けることが可能です.このように冷凍機から送られてくる冷水のうち,必要な分だけを冷却コイルへと,残りを冷却コイルへと送り出さずに冷凍機へと送り返す役割を果たすものが「三方弁」となります.そのため,「定流量方式」と呼ばれています.

一方,「二方弁」は,配管を流れる冷水量を変化させることが可能です.冷却コイルへ冷水を送る需要が小さい場合は水量を少なく,需要が大きい場合は,水量を多くすることができます.それゆえ,「変流量方式」と呼ばれます.これは,搬送エネルギーを小さくする事(つまり省エネ)に繋がります.問題コード26134,30191,25123と続きますが,それぞれ問われ方が異なります.特に,この空調設備の項目は,同じ題材を,違う言い回しで問われる事が多いので,それを意識して勉強してください.


次に,問題コード01112について説明しておきましょう.これは,製図試験にも絡む話です.製図試験において,課題文中に「空調は単一ダクト方式とする」と記載されていた場合,機械室の上部に,「DS(=ダクトスペース)」と呼ばれるスペースを設けます.これは,機械室で作られた冷風や,温風を建物内の各室へと送り出すためのダクトを設置するためのスペースです.送風機から送られているダクトは,事務室にしか接続されていませんが,本来は,各階の各所室へとダクトが接続され,冷風・温風を送り出すことで空調しています(次図参照).

DSは,「2×2=4㎡」,「2×3=6㎡」程度とし,各階同じ位置(場合によっては若干ずらすことが可能)に設け,下階に位置する機会室に通じるよう計画します .

上図のように,機械室から伸びる縦ダクトが,各階ごとに天井裏で横引きされ各所室の空調を行います.これが,単一ダクト方式の原理です.また,製図試験の課題文中に,「空調は,個別空調方式とする」と記載されることもあります.その場合は,いわゆる「エアコン」をイメージして下さい.各室ごとにエアコンが設置されていて,各室ごとに空調を行うもので,DSは必要としません.こうした製図試験にも絡む話は,「教育的ウラ指導」のブログをご活用ください.【こちら】

さて,話が長くなってしまいましたが,「VAV空調方式」は,「変風量単一ダクト方式」のことで,一定に保たれた送風温度を吹出し,空気の風量を変えることによって温度調整し,室温を制御する方式でです.「部屋ごと又はゾーンごとの温度制御も可能」という事は,その装置は,吹き出し口の近くにある事をイメージする事ができるでしょう.

次に,問題コード21131の「FCU(ファンコイルユニット)」について.「ファンコイル」とは,個別空調の一種だと考えて下さい.これは,室内に設置したファンコイルユニットに冷温水を供給することで空調を行う方式(水方式)なのですが,その際,ファン(送風機)に送りこむ導入外気を確保できない場合には,室内空気を循環させることで空調を行います.空気汚染を引き起こす原因にもなり得るため,その場合,換気計画に配慮する必要があります(通常の換気量に加えて,ファンコイルによって空調する際に必要となる換気量(導入外気量)分を確保する).尚,空調設備に関する用語を調べる場合は,「日本冷凍空調学会」の「用語集」を紹介します(深入りしない程度に).【こちら】 


■学習のポイント

平成20年度の図問題では,空調機の仕組みを「湿り空気線図」を用いて説明する問題が出題されました.出題された定風量単一ダクト方式による空調設備の模式図をみてみましょう. 

冷房時には,空調機の冷却コイルで,室内からの①と外気からの②との混合空気③を冷水コイルで冷却除湿し④,送風機の顕熱取得分だけ温度上昇した空気⑦を室内に吹き出します.暖房時には,室内からの①と外気からの②との混合空気③を温水コイルで⑤まで加熱し,蒸気加湿器によって⑥まで加湿した後,送風機の顕熱取得分の温度上昇⑦を考慮し,室内に吹き出します.これを湿り空気曲線図で表すと以下の図のようになります.

この問題では,比較的容易な正答となっていましたが「システムの中のどこの話なのか,どのタイミングの話なのか」を考える事が非常に重要です.是非,意識して学んでください.


ここで,学習のヒントを1つお伝えします. 「学ぶ」-「検索」のキーワード欄に「潜熱」と入力し,検索を実行すると様々な項目にヒットすることが確認できます(科目・項目を絞ってお試しください).ピックアップされた項目名から,「潜熱」に関して,それぞれどのような問題が出題されているか推測してみて下さい.その後で,各項目ごとの出題内容を確認して下さい.このように,あるキーワードについて,多角的に眺め,関連付けることで,そのキーワードについての理解を含め,対応力を高めることが出来ます.この「キーワード検索」は,試験直前の模試の復習の際に役立ちますので,覚えておいてください.
一つ前のページへ戻る