04法規
09. 構造
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分)
この項目については,全体を意識しながら条文の位置づけを確認していきましょう.そのためにも「章・節・款(かん)」といった「法令の基本構成」を意識するようにしてください.とても大事な話です.法令集は小難しい文章で書かれていますが,ちゃんとグルーピングされています.後は読む側の問題です.
最初は「施行令第三章・第1節・令36条」から始まるいわゆる「構造仕様規定」です.例えば「第2節・令38条」では「基礎については,このような仕様にしなさい.」とか,「第6節・令77条」では「鉄筋コンクリート造の柱はこのような仕様にしなさい.」といったように建物の部位や,構造別に,仕様に関する話が細かく規定されています.このように,「○○造の場合の△△の部分は,このような仕様にしなさい.」という仕様規定が並びます.その範囲は「第7節の2」まで.
次に,「第8節」の「構造計算」です.「第1款・令81条」にある「構造計算方法の種類」について見てみましょう.
1項:超高層用の構造計算(=計算が非常に複雑で難しい.計算難易度が非常に高い.)
2項
第一号イ:保有水平耐力計算(=計算が比較的複雑で難しい.計算難易度が高い.)
第一号ロ:限界耐力計算(=計算が複雑で難しい.計算難易度が高い.)
第二号:許容応力度等計算(=比較的簡単に計算できる.計算難易度が低い.)
3項: 令82条各号+令82条の4(=簡単に計算できる.計算難易度が低い.)
計算の難易度についてですが,例えば,「許容応力度等計算」については,比較的,計算難易度が低いため,計算の精度は低めです.逆に,「限界耐力計算」については,計算難易度が高いため,計算による精度が高いものと考えます.「保有水平耐力計算」は基本的に「許容応力度等計算」の延長上にある高度な計算と考えてください.「超高層用の構造計算」については,超高層建築物(ここでは60mを超える建築物を言います)で,この計算方法を採用します.そのため計算難易度は非常に高く,計算も複雑です.その代わり,計算精度は非常に高くなります.
「令36条1項」では「耐久性等関係規定」という用語が定義されています.この「耐久性等関係規定」とは,「構造仕様規定」のうち,極めて重要な規定と解釈してください.「構造仕様規定」のうちの一部が,「耐久性等関係規定」です(包含関係).そして,難易度の高い(=精度の高い)構造計算により,計算した場合には,構造仕様規定を全て満たさずとも「耐久性等関係規定」だけを満たせばよい(=構造計算で安全性を担保している)ことになります(耐久性等関係規定「以外」の構造仕様規定は,適用除外).
■学習のポイント
全体の構成は,次の通りです.法令集の3箇所のページを指で挟んで,行ったり来たり見てください.
法20条第一号 - 令36条1項 - 令81条1項(超高層)
法20条第二号 - 令36条2項 - 令81条2項(比較的大規模)
法20条第三号 - 令36条3項 - 令81条3項(中規模)
法20条第四号 - 令36条3項 ※構造計算なし(小規模)
法20条第一号は,高さが60mを超える建物が対象です.「政令で定める技術的基準」とは令36条1項の構造方法,「政令で定める基準」とは令81条1項の構造計算を指します.令81条1項の超高層の構造計算を行った場合でも,令36条1項の「耐久性等関係規定」には適合する必要があります.ここは大丈夫ですね.
法20条第二号は,60m以下の建物で大規模のものが対象です.「法6条1項第二号に該当する木造のうち,高さ13m超えか軒高9m超え」以外は,次の第三号の対象となり,「法6条1項三号に該当するもののうち①階数が4以上のS造,②高さ20mを超えるRC造 or 高さ20m超えるSRC造,③その他これらの建築物に準ずるもの(=令36条の2)」以外は,次の第三号の対象となります. 法20条第二号で対象となった大規模の建物は,令36条2項の基準と令81条2項の構造計算の組み合わせが必要です.(+「令36条の2」もこのグループです)
法20条第三号は,上記の第二号に該当しない「構造計算が必要な建築物」です.条文中のカッコ書き「前号に掲げる建築物を除く」がポイントです.法6条1項第二号に該当する木造の場合,前号に該当しない「3以上の階を有する」「延べ面積が500㎡を超える」ものが対象になります.
法20条第四号は,原則として「構造計算の義務のない建築物」となります.第四号ロに「前三号に定める基準のいずれかに適合すること」とありますが,これは第一号から第三号まで高度な構造計算で安全を確認する方法を選択してもよいということです.第二号ロ,第三号ロも同様の表記ですね.
次に「令82条」以降を解説します.令82条の条文名が「保有水平耐力計算」となっていますが,このことで多くの受験生の皆さんが混乱することとなります.令82条前段に「・・・保有水平耐力計算とは,次の各号及び次条から第八十二条の四までに定めるところによりする構造計算をいう」とあります.
「次の各号(=令82条各号)」を「許容応力度計算」といいます.つまり,
令82条各号「許容応力度計算」
令82条の2「層間変形角」
令82条の3「保有水平耐力」
令82条の4「屋根ふき材等の計算」
この一連の計算(第1款の2)が「保有水平耐力計算」であることを示しています.
また,もう1点わかりにくいと思われる点が,
「許容応力度計算」(令82条各号)と
「許容応力度 等 計算」(令82条の6)
は違うという点です.令82条の6をご覧ください.
令82条各号「許容応力度計算」
令82条の2「層間変形角」
令82条の4「屋根ふき材等の計算」
+剛性率 +偏心率
この一連の計算(第1款の4)が「許容応力度 等 計算」であることを示しています.
中規模で構造計算が必要な建築物の場合,
令法20条第三号 - 令36条3項 - 令81条3項
このケースに必要な構造計算は
令82条各号「許容応力度計算」
令82条の4「屋根ふき材等の計算」
となります .(いわゆるルート1)
この「許容応力度計算」がどんな事をやっているか「令82条各号」を見ると
第一号:「第2款」に規定する荷重及び外力より部分に生じる力を計算
第二号:部分の断面に生じる「長期・短期」の応力度を計算
第三号:第一号の部分ごとに、第二号で計算した各応力度が「第3款」の各「許容応力度」を超えない事を確かめる
(第2款と第3款も、ザっとみてみましょう)
細かいケースの判断は試験で問われることは難しいと考えられますので,まずは大枠を把握するイメージを作ってください.
そして,問題文が「どの状況・どのタイミングの話なのか」を条文と照らし合わせてイメージを作っていくようにしてください.