04法規
10. 耐火構造等
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分)
この項目では「耐火構造に要求される耐火性能」や,「準耐火構造に要求される準耐火性能」などについて学習していきます.
「令107条」の「耐火性能」は,
1.非損傷性(通常の火災により,構造耐力上支障のある損傷にならないこと=火災により壊れないこと)
2.遮熱性(通常の火災により,その熱が建物内の他の部分へと伝わらないようにすること)
3.遮炎性(屋内において発生する通常の火災により,建物の外へ炎を出さないこと)
の3つの視点から性能が定められています.
ここで,これらの性能について考えてみましょう.1.非損傷性についは,文字通りですね.火災が起きた際に簡単に建物が崩壊してしまったら,避難が完了する前に人命が奪われてしまいます.2.遮熱性は,外部の火災の影響で外壁の内側の可燃物が「高温の熱」により燃えてしまわないようにします.屋内の火災により,建物内部で延焼しない場合も同様です.3.遮炎性というのは,屋内で火災が起きた際に,建物の外に炎が出て他の建物に燃え移らないようにしなさいというものです.
「令107条の2」の「準耐火性能」は,先の「耐火性能」と同様に,3つの性能が要求されています.「令108条」の「防火性能」は,1.非損傷性,2.遮熱性の2つの性能が求められています.
まず,これらの「耐火性能」「準耐火性能」「防火性能」の構成(位置づけ)はしっかり頭に入れてください.
改めて,それぞれの条文の言い回しをチェックしてみましょう.
「耐火性能基準」と「準耐火性能基準」においては,1.非損傷性,2.遮熱性については,どちらも「通常の火災による加熱」についての話です(屋外・屋内の両方の火災が対象).3.遮炎性については,どちらも「屋内において発生する通常の火災による火熱」についての話となります.「防火性能基準」の場合は,1.非損傷性,2.遮熱性の2つの性能しか求められませんが,そのどちらも「周囲において発生する通常の火災」とあります.これは,「防火構造(法2条第八号)」という概念そのものが,「周辺の建物に火災が起きた際に,自分の建物に燃え移らない(=延焼しない)ということ」を目的としているからです.そのため,防火性能には,屋内での火災を前提とする「3.遮炎性」の考え方はありません.対象となる建築物の部分も「外壁と軒裏」だけです.
次に,「耐火建築物」とは何か?について.
「法2条第九号の二」に,「耐火建築物=主要構造部を耐火構造(または,政令基準に適合する主要構造部)+「外壁の開口部で延焼のおそれのある部分にあるものを防火設備」とあります.
「耐火構造」については「法2条第七号」に「主要構造部が耐火性能(建築物の倒壊及び延焼を防止する性能)の基準を満たすもの」
ここでの着目点は「倒壊」です.耐火構造には,所定の時間,火災で燃えても構造体(フレーム)として残る(=倒壊しない)という性能が要求されています.ちなみに「準耐火構造(法2条第七号の二)」では,この表記はありません.このため以前は,「木造」で耐火建築物を建てるという事が非常に難しかったのですが,近年では,その性能において安全性が確かめられれば,仕様規定とは異なっても大丈夫(木造で建てられる)というルールがあります.
この「政令基準に適合する主要構造部」という部分について補足説明しておきます.これを通称「みなし耐火構造」といいます.耐火構造と同様の性能を有するものとして,耐火構造ではないものの,耐火構造とみなして規定を適用します.
「令108条の3」では,「主要構造部が所定の基準を満たすものとして,1.耐火性能検証法により確かめたもの,2.大臣認定を受けたもののいずれかの場合であれば,その主要構造部をみなし耐火構造として扱っていいですよ.」といったような話となります.
主要構造部をみなし耐火構造として扱ってもらえれば,あとは,「外壁の開口部で延焼のおそれのある部分にあるものを防火設備」にすれば,法2条九号の二の規定を満たすことになり,基準法上,「耐火建築物」として扱うことができるのです.必要とされる基準を明確化し,その基準をきちんとクリアーできる性能さえ確保できれば,設計の自由度が高い建築物が出来るという考え方ですね.
■学習のポイント
問題コード「01011」を見てみましょう.「建築物の周囲において発生する通常の火災による延焼の抑制に一定の効果を発揮するために外壁に必要とされる性能を,「準防火性能」という.」とあります.この類の問題文を読む時のコツは「1.どんな火災」「2.どの部分」「3.どんな性能」を意識する事.例えば「準防火性能」の条文や位置づけがピンと来なくても「防火性能に準ずるはずだから,外壁が建物の周囲の火災を受けた時に,「非損傷性・遮熱性」が2つが要求されるのでは・・・」と,ある程度学習が進むと,その組合せの食い違いで法令集を引かずとも条文の構成イメージで,「○か×か」は判定する事が出来るようになってきます.
「耐火性能・耐火構造・耐火建築物」など,似たような用語が多く,紛らわしく感じられるかもしれませんが,まずその3点を意識して,キチンと整理して,体系的に学習していってください.
「耐火性能・耐火構造・耐火建築物」など,似たような用語が多く,紛らわしく感じられるかもしれませんが,まずその3点を意識して,キチンと整理して,体系的に学習していってください.