04法規

15. 避難施設

まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分)

最初に,解説集として収録されている「避難施設」の解説を見てみましょう.そこに,「避難階」,「直通階段」,「歩行距離」,「重複距離」という用語の意味を分かり易く解説してあります.これらの考え方は次のステップである製図試験においても求められる知識ですので,この機会にきちんと身につけておいてください.では, 「避難」というものを考えてみましょう.「ある階における避難」とは,居室からスタートして廊下を経て,直通階段に到達し(ここまでが歩行距離:所定の距離以下としなければならない),さらに,直通階段を経て避難階(通常は地上1階)へと到着,さらに,建物の外部への出入口を通って(この1階での直通階段の入口から,建物の外部への出入口までの距離が避難階における歩行距離となる),さらに,建物の外部出入口から敷地内通路(原則,幅1.5m以上必要)を経て,道路又は広場に到達し,ようやく避難が完了します.ここまでのイメージを頭の中に浮かべるようにして下さい.例えば,敷地境界線と建物との離れの部分は,全て敷地内通路に該当すると考えてしまう受験生も少なくないのですが,あくまで,上述の避難経路となっていなければ,敷地内通路とはなりません.

さて,この項目において,廊下の幅に関する規定から学ぶことになります.廊下も避難経路となる部分ですので,基準法上その幅について定められています.次に,「歩行距離」について学びます.歩行距離には,1.避難階以外の階の場合(15階で扱いが変わる),2.避難階における場合,3.地下街における場合の3種類があると考えて下さい.
 
問題コード21201について補足説明しておきます.解説集として収録されている「避難施設」の解説においても説明してありますが,本来は,各階から直通階段の1つに至る避難経路を確保しなければなりませんが,メゾネットタイプの場合は,階ごとに玄関を設けたりしませんので,所定の条件(歩行距離を40m以下)を満たせば「その階に住戸の出入り口が無くても良い」という緩和の話です.決して「距離」の緩和ではありません.

次に,「2直階段」を学びます.「2直階段」とは,所定の条件に該当する場合は,2以上の直通階段を設置しなさいというものです.その条件も慣れてくると暗記できてしまいます.基本的には,特建の用途ごとに定められている条件をチェックし,次に,建物の規模により定められている条件をチェックします.そのいずれの条件もクリアすることができれば,「2直階段の設置義務」は発生しません,といった話です.ここでのポイントは「令121条」は「一号~五号」と「六号」を分けて考える事(ダブルチェックが必要)です.「避難階段」や,「特別避難階段」については,どのような条件の直通階段を「避難階段」や「特別避難階段」にしなければならないのかということと,「避難階段」や「特別避難階段」にした場合には,どのような仕様にするのかといった点に注意しましょう基本的な事項がよく問われます).

最後に, 「避難」に関連するその他の規定を学習します.例えば,「排煙設備」,「非常用照明」,「非常用進入口」の話となりますが,これらに共通するのは,まずは,「設置基準(設置義務が発生する条件)」を抑えること,その隣の条文には,設置する場合にどういった仕様(構造)で設置すればよいのかという条件が説明されているという流れとなっています.

 
排煙設備  :令126条の2(設置・建物条件)→令126条の3(構造) 
非常用照明 :令126条の4(設置・居室条件)→令126条の5(構造)
非常用進入口:令126条の6(設置・階条件) →令126条の7(構造)
 
また,この3つの規定の条件は,どんな建築物(建築物の部分)が対象になるのかを比較してみてください.条文を繋がりで理解する習慣を身につけることで,しばらく法規科目から離れていて内容が曖昧になっていたとしても,早い時間で感覚を取り戻すことができます.

■学習のポイント

近年の性能規定化の流れに伴って導入された「避難安全検証法」について考えてみましょう.基本的な考え方としては,「火災発生」→「煙が天井にドンドン溜まる」→「煙が人の高さまで降下する」この時間よりも,「人が安全な場所まで逃げきる」時間の方が短ければ安全となります.通称「避難時間判定法(ルートB1)」と言います.
この時,煙降下に影響する要因(可燃物量,内装の仕上げや排煙設備の有無等)と,人の避難に影響する要因(在館者密度,歩行速度,歩行距離,扉の数等)が,たとえ規定の数字を超えていても,検証により安全性が確認されれば,その規定は適用除外となります.
「適用除外だから歩行距離は無視してよい」のではありません.「基準より長い歩行距離で計算しても安全性を確認できた(性能が満たされているので,その仕様は適用除外)」という事です.イメージの順番を間違えないようにしましょう.
 
次に「避難安全検証法」には,3種類があります.
区画避難安全検証法(令128条の6)
 →建物のある部分(区画部分)において検証した場合,その部分において一部の規定が適用除外となる
階避難安全検証法(令129条)
 →建物のある階において検証した場合,その階(検証法により検証した階)において一部の規定が適用除外となる.
全館避難安全検証法(令129条の2)
 →階ごとでなく,建物全体において検証した場合,建物全体において一部の規定が適用除外となる.
 
「区画避難安全検証法」については,令和2年4月に追加されました.最も範囲が小さく,適用除外の対象となる規定も限られます(ハードルが低い分,実用的とも言えそうです).
また,「煙高さ判定法(ルートB2)」という概念が加わりました.「避難完了時の煙の高さが,避難上支障のある高さ(床から1.8m)まで降りてこなければOK」という考え方です(上記の各条文「3項二号」「3項二号」「4項二号」が該当します).尚,詳細は告示で定められてますので、深追いは禁物.あくまで,施行令の範囲で「構成」をみておいてください.
「階避難安全検証法」と「全館避難安全検証法」については,解説集として収録されている「避難安全検証法」の解説をご覧ください.そこに,一覧表でまとめられています.話の流れとしては,例えば,「階避難安全検証法により安全性を確かめた」という記述が問題文にあれば,令129条をチェックして,対象となる規定が適用除外となるのか確認します.ここでの注意点は,避難安全検証法を適用できる条件があるということ.例えば,主要構造部が準耐火構造以上か,不燃材料で造られた建築物でなければ適用できません.あと,検証法により検証しなくとも,大臣認定を受けた場合も同様に,避難安全性能を有するものとして認められますので,一部の規定が適用除外となります.歩行距離の規定(令120条)や,排煙設備の規定(令126条の2,令126条の3)等は,階避難安全検証法でも,全館避難安全検証法でも適用除外となりますが,防火区画(令112条)は扱いが異なります.これらは,1度,比較しながら見ておいてください.そして,問題文の設定が,一覧表のどこに位置するのかチェックしてみましょう.出題者がどの辺りの規定について聞いているかが見えてきます
 
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