04法規

17. 建築制限

まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分)

用途地域は,それぞれの地域において建てられる建築物の用途や規模を制限することで,互いの生活や企業活動を損なわないよう,またその地域にふさわしい街並を形成するために,都市計画で定められます.用途地域には,8つの住居系,2つの商業系,3つの工業系を合わせた計13種類の地域があります(その他に指定の無い区域).1級建築士として少なくとも,この13種類の用途地域は,暗記しておいて下さい.さて,皆さんが,この項目で学習される内容は,ある地域に,所定の建築物を建築することが可能かどうか,の判定についてです.「法別表2」を見てみましょう.
 
まずは,「1種低層」から見ていきましょう.基本は,例えば,(い)項には,「1種低層住専に建築できる建物条件」が記載されています.もし,問題で,「延べ面積が○○㎡の△△の用途である建築物は,1種低層住専に建築できるかどうか?」と問われた場合には,この別表2(い)項をチェックして確認します.ここに掲載されている条件に該当する場合には,1種低層住専に建築することは出来ます.
(ろ)項には,「2種低層住専建築できる建物条件」が記載されています.さて,この2種低層住専は,1種低層住専に比べて,建築制限が緩い地域だと考えて下さい.そのため,1種低層住専に建築できる建物は,当然ながら制限の緩い2種低層住専でも建築することができます.さらに,その左隣の1種中高層住専((は)項)になると,さらに制限が緩くなります.そのため,1種・2種低層住専に建築できる建築物は,当然ながら,1種中高層住専においても建築することが出来ます.尚,住居系については,次のように条件(建築制限)が緩くなっていきます.
 
1種低層(い)項 住居系の中で最も制限が厳しい.
  ↓
2種低層(ろ)項
  ↓
1種中高層(は)項
  ↓
2種中高層(に)項
  ↓
1種住居(ほ)項
  ↓
2種住居(へ)項
  ↓
準住居(と)項 住居系の中で最も制限が緩い.
 
※田園住居(ち)項 これは例外で「2種低層(ろ)項+α」と理解しておきましょう.
 
(は)項の1種中高層までは,「建築できる建物条件」が記載されています.ただし,次の(に)項からは,「建築できない建物条件」として条件設定されています.ここでは理解しやすいように,1種低層,2種低層,1種中高層までは,制限が非常に厳しく,建築できる建物の方が,建築できない(建築してはならない)建物に比べて圧倒的に少なく,逆に,それ以外の地域では,建築できる建物の方が,建築できない建物に比べて圧倒的に多くなるため条件設定も「建築できない建物条件」として限定している,と考えることにしましょう.
 
例えば,「2種中高層(に)項」の見方ですが,「第一号」に「(ほ)項第二号及び第三号、(へ)項第三号から第五号まで、(と)項第四号並びに(り)項第二号及び第三号に掲げるもの」とあり,このうち「(と)項第四号」を見てみると「(る)項第一号(一)から……」とあります.ここに書かれている工場系の用途は,「工業地域や工業専用地域」でしか建てられないグルーピングです.このように,「2種中高層(に)項」で制限される対象は,それ以降に書かれているものまで対象に含まれているという点を理解してください.
1種住居(ほ)項は,2種中高層と比べて,「建築してはならない条件」が少なくなります.さらに,二種住居(へ)項,準住居(と)項,近商(り)項,商業(ぬ)項,準工業(る)項という順に,建築してはならない条件が緩く(少なく)なっていくのが分かりますね.このように法別表2を見ていきます.最後に,工業系の地域を見ていきましょう.準工業の建築制限は,(る)項をチェック,工業の場合も(を)項をチェックで済みます.最後の工業専用の場合は,工業で建築できない建物条件(を)項+(わ)項のチェックとなります.
 
3系統(住居系・商業系・工業系)の用途地域を2方向から制限している」という構成になっています.

■学習のポイント
 
まずはこちらの資料をご覧ください.【こちら】
「用途地域による建築物の用途制限の概要」(東京都のHP)より
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kanko/area_ree/youto_seigen.pdf
 
その地域において,どんな用途・規模の建築物が建てられるのか」という観点と
この用途・規模の建築物は,どんな地域に建てる事が出来るか」という観点があります.
 
「法別表2」は前者「上記資料」は後者です(同様の表は,書籍「法規のウラ指導」にも掲載しています).後者の方が「3系統の用途地域を2方向から制限」という意味が,よりわかりやすいと思います.また,実務(計画段階)では,後者で考える事が多いと思われますが,視点は違っても,意味は同じです.
 
双方を擦り合わせて見ていくと,フラットに書かれた条文や別表が,立体的に,関係性を持って捉える事が出来てきます.全ての条文で行う必要はありません.過去問の範囲で,ちょっとでも気になったら,「法別表2」と「資料」と「問題解説」を照らし合わせて見て行ってください.
 
「条文(法令)に立ち返って確認する」という人は少ないですが,受験生の皆さんは,解説書や参考資料の情報を調べたならば,その場で条文でどう書かれているか(どうコントロールされているか)を調べる事をお勧めします.
 
過去問については,その問題文を読んだ時に「出題者は,どの辺りの事を聞いているのか」をまず考えてみてください.全くイメージ出来なければ一旦保留.ボンヤリとでもイメージできるなら,条文で確認すれば良いです.そして,明らかに「○か×か」が分かるような問題を増やしていきましょう.例えば「保育所」や「診療所」は,どの用途地域でも建築する事ができますが,それと「学校」や「病院」との対比で両方を覚えていく,というように進めていってください.法令集を引かずに解答できる幅を少しずつ広げていく感覚を身に着けていきましょう.無理に「引かないようにしよう」と考える努力する必要はありません.それでは解答の精度が下がります.自ずとそうなっていくという方向で捉えてください.
 
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