04法規

26. 都市計画法

まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分30秒)

「都市計画法」について,ザックリと次の図でイメージを作っておきましょう.
 
 
日本の国土があり,そのうちの一部が,「都市計画区域」として指定されます.さらに,「都市計画区域」は,「線引区域」と「非線引区域(未線引区域ともいう)」とに分かれます.「線引区域」は,さらに,「市街化区域(=市街化させたい区域)」と「市街化調整区域(=市街化させたくない区域)」とに分かれます.以上のイメージを理解した上で学習を進めていきましょう.
 
さて,そもそも「都市計画」って何なの?という問いから.今,皆さんが学ぼうとされているこの「都市計画法」は,昭和43年に制定されました.昭和43年頃といえば,「高度成長期真っ盛り」の時期です.全国的に乱開発が進み,優良な農地として活用されていた山奥の土地がいきなり宅地化されてしまったり,閑静な住宅地の脇にいきなり大規模な工場が建設され始めたりといった具合に,秩序の無い都市化が加速度的に進行していきます.また,秩序のない都市化は,同時に様々な障害を引き起こしていきました.救急車がたどり着けないような地域が宅地化されてしまったり,十分に電気や上下水道が整備されていないのに,工場地帯化し,使用済みの水を垂れ流してしまったりといった具合です.日本の国土は,限られていますから,合理的かつ有効に有限の国土を活用していきましょう,という観点から「都市計画法」が出来ました.
 
都市計画区域外というのは,これまでは,ある意味でどんな開発が行われてもよい地域でした.だから,都市計画(=計画的に都市化を進めていくための計画やルール)を定めなくてよいものとされてきたのです(わかり易く言うと,田舎です).以前は,「開発許可の申請」なども必要なかったのですが,この「都市計画区域外」においても,一部の地域では,都市化が進行し始めたために,平成12年の法改正により,「準都市計画区域」として,土地利用の制限をかけるようになったのです.それと同時に「準都市計画区域外」という区分も生まれました.つまり,我が国の国土において,都市計画区域外の区域は,「準都市計画区域」と「準都市計画区域外の区域」とに分けられているものとお考え下さい.

それでは ,都市計画法上の用語を学習しましょう.都計法4条をご覧ください.必ず法令集を開き,条文で全体構成を把握するように心掛けてください.

図解による補足として,国土交通省のホームページを参照するとイメージしやすいです【こちら】
 
 都市施設(都計法4条5項)
道路や公園,下水道といったインフラや,学校や保育所などの都市に必要な施設のことです(ちなみに,この都市計画法上の学習において出てくる「都市」という言葉は,「大都会」といったイメージではなく,「街づくり」程度のニュアンスで読み取って下さいね.つまり,都市計画というのは,「街づくりのルール」といったニュアンスとなります).
 都市計画施設(都計法4条6項)
その地域の都市計画に定められている「都市施設」をいいます.
 市街地開発事業(都計法4条7項)
土地区画整理法による土地区画整理事業や,都市再開発法による市街地再開発事業などをいいます.
 特定工作物(都計法4条11項)
「第1種特定工作物」 と「第2種特定工作物」との2種類があり,「第1種特定工作物」とは,コンクリートプラントやアスファルトプラント等の周辺環境の悪化をもたらすおそれのある工作物をいい,「第2種特定工作物」とは,ゴルフコース,野球場等の運動・レジャー施設等の工作物で,その規模が1ha(=10,000㎡)以上のものをいいます.
 開発行為(都計法4条12項)
建築物の建築や,特定工作物の建設のために行われる土地の区画形質変更(=敷地造成)をいいます. 後で詳しく解説しますが,ここの理解が肝となります.
 都市計画事業(都計法4条15項)
都市計画事業としての認可や承認を受けて行われる都市計画施設の整備に関する事業や,市街地開発事業をいいます.
 
上記の用語の意味が分からなくなったら,条文に立ち返る事.次に,都市計画法の流れについて簡単に見ていきましょう.
 
 1. 地域・地区(都計法8条)
用途地域や高度地区,風致地区などの地域・地区などは,都市計画(街づくりのルール)の中に必要なものを定めておきます.実際に,皆さんが建築の設計業務を請け負い,設計を開始する場合には,その敷地が所属する市役所などに足を運び,都市計画図を入手します.都市計画図には,都市計画に定められている各種地域の情報が記載されておりますので,自分が設計する敷地が,どういった用途地域で,法定建ぺい率は何パーセントなのか,法定容積率は何パーセントなのか,高度地区に所属するのか(高度地区に該当する場合は,高度斜線が適用されます.ちなみに,首都圏においては,北側斜線の代わりに,この高度斜線が適用されるケースがほとんどです.さらに,日影規制がかかってくるのか,その他の地区計画や建築協定などのルールが存在するのかどうか,などといった設計を進める上でのルールをチェックすることができます.例えば,横浜市の場合は,WEBサイト上の「i(アイ)・マッピー」というシステムを利用して,無料で都市計画図をチェックすることができます. i-マッピーは,【こちら】
 
さらに,この「地域・地区」の学習においては,都市計画に定められる「地域・地区」には,どういった種類があり,さらに,一部の「地域・地区」については,必要な規定を都市計画に定めることができるといったようなことを学びます.(例:用途地域には,容積率を都市計画に定める等)
 
 2. 地区計画(都計法12条の5)
この「地区計画」というものは,市全体といった広い区域を対象とする「都市計画」に対し,比較的小規模な地区を単位として,そこに暮らす住民と市町村とが協力しながら,地区の特性に応じたきめの細かい街づくりを目指すための制度です.つまり,「地区計画」も「都市計画」も分かりやすく言えば「街づくりのルール」であって,「街づくりのルール」には,横浜市や,東京都というような単位の「都市計画」と,その中の地区ごとの小規模な単位の「地区計画」とがあるといった具合にイメージして頂ければと思います.ここでは,そういった「地区計画」の話を学びます.
 
 3.都市計画基準(都計法13条)
ここでは,都市計画を定めるの場合の基準といいますか,注意事項を学びます.
 
 4.都市計画決定(都計法15条~)
基本的に都市計画は,都道府県か市町村のどちらかが定めます(決定します).原則として,広域的な見地からの判断が必要となる場合(他に及ぼす影響が多い場合)には,都道府県が都市計画を決定し,それ以外の場合には,市町村が決定します(出来れば,その地域をよく知っている市町村が決定した方が,よりきめの細かい判断ができますからね).次に,「大臣が決定する場合」について学びます.この大臣がしゃしゃり出てくる場合というのは,2以上の都府県にまたがる都市計画区域を指定する場合です.ここがポイント!「都市計画区域を指定する」ということと,「都市計画を定める」というのは,全くの別モノです.「都市計画区域を指定する」というのは,最初に図で説明したアレです.国土において,どの部分を都市計画区域というエリアに設定しようか?という話です.都市計画区域を指定した後に,さらに線引を行い,「市街化区域」と「市街化調整区域」とに区域を設定(指定)します(通称:区域・区分).そのときに,都市計画区域の中で,「市街化区域」でも「市街化調整区域」でもどちらでものない部分が残ってしまうケースがあります.この部分(区域)を「非線引区域」と呼びます.このように,区域を設定することを「都市計画区域を指定する」などと言います.「指定された都市計画区域の中に,都市計画として用途地域などの様々な地域を定めたりすること」を「都市計画を定める」と言います.整理出来ましたでしょうか?ちなみに,「2以上の都府県」とあるのは, 北海道と都市計画区域がまたがるような都府県は存在しません(四方が海ですから).そのため,北海道を除いた「都府県」という話になります.
 
 5.開発許可(都計法29条~)
都市計画法の理解において,最重要項目と言えます.「開発許可とは,なんぞや?」というと,建物を建てたり,特定工作物を建てたりするための敷地の造成だと考えて下さい.都市計画法というのは,限られた国土の有効利用というのが主な目的の法律です.つまり,土地活用を合理的,かつ,有効的に行いたいわけです.例え自分の土地であったとしても,好き勝手にいじくり回して欲しくないわけです.そのため,建物を建てるという目的で,所定の規模の土地をいじろうとする場合には,知事の許可が必要となってくるのです.これが,「開発許可」というものです.知事は許可申請に対して,どんな目的で,どういった形で,土地を活用しようとしているのかをチェックします.

開発許可の条文の構成をみてみましょう.ポイントは「主体は誰か」です.これはそのまま「手続きの流れ」を表しています.各条文の1項だけでよいですから,通して確認してみてください.

 
開発行為をしようとする者
  29条 開発行為の許可
許可を受けようとする者
  30条 許可申請の手続き
  31条 設計者の資格
許可を申請しようとする者
  32条 公共施設の管理者の同意等
知事
  33条 開発許可の基準
  34条 市街化調整区域の開発行為についての許可
  35条 許可又は不許可の通知
許可を受けた者
  35条の2 変更の許可
  36条 工事完了の検査
 
ここでの要点は,開発行為には許可が必要なケースと,不要なケースがあるということです.それは都市計画法29条1項で判定します(条文では,原則として許可が必要,ただし書き(各号)で除く,という表現です).
 
29条1項ただし書き
 一号 ①市街化区域等で開発許可が不要なケース
 二号 ②市街化調整区域等で開発許可が不要なケース
 三~十二号 ③区域の別に限らず開発許可が不要なケース
 
この「開発許可」をマスターする上で,判定のパターンとしては上のように3種類あると考えて下さい.まず,「①市街化区域等で開発許可が不要なケース」というのは,「市街化区域では,1,000㎡未満(令19条)の開発行為を行う場合,開発許可が不要となる.」です.たった,これだけの知識で判断できますので簡単ですね?(そのため,本試験においてはあまり出題されていません.)次の「②市街化調整区域等で開発許可が不要なケース」というのが厄介なのです.そもそも「市街化調整区域」というのは,分かりやすく説明すれば,建物を建ててほしくない区域なのですが,実際には,「土地利用の用途や,そこで暮らす人を選ぶ区域」となります.「都計法29条二号」に,農業や漁業を営む上で必要となる建物や,それらの業を営む人達が居住する建物を建築する目的の開発行為は,その規模に関わらずに許可が不要」とあります.話が脱線してしまいますが,この規定のために,わざと農家の人と養子縁組したりして,庭でメロンなどを栽培することで農家をアピールし,住宅を建ててしまったりするケースもTVドラマなどのネタとなっています.最後に,「③区域の別に限らず開発許可が不要なケース」というものについては,例えば,「都計法29条三号」にある「鉄道の施設や図書館,公民館といった公益上必要な建築物を建てる目的の開発行為は,その規模に関わらず許可不要.」となります.また,「都計法29条四号」には,「都市計画事業の施行として行う開発行為については,市街化区域だろうが,市街化調整区域であろうが許可不要.」とあり,さらに,「都計法29条五号」には,「土地区画整理事業の施行として行う開発行為も,市街化区域だろうが,市街化調整区域であろうが,その規模に関わらず許可不要.」とあります.
 
次に,「開発許可が必要」となった場合です.例えば,「知事が開発許可を認める場合のルールや注意事項(都計法33条,通称:許可基準)」を見ておいてください.尚,「市街化調整区域」については,許可基準が厳しく,別枠で規定されております(都計法34条).ここで,市街化調整区域における開発行為の場合は,「都計法29条で規定されている許可不要なもの」又は「都計法34条に規定される許可を受けて開発行為を行うもの」のどちらかに該当しない限り,開発行為を行うことができない,ということを知っておいてください.
 
都計法37条以降は「建築制限」として,開発許可を受けた土地等の扱いについて書かれています.ここでの要点は,開発許可を受けた土地の場合,その土地の開発行為に関する工事が完了した旨の「公告」があるまでは,建物を建てることができません.尚,この「公告」とは,「国または公共団体が,広告・掲示などの手段によって広く一般公衆に告知すること」をいいます.「公告」までの流れとしては,開発許可を受けたものが,開発行為を完了した時点で,知事に完了の届出を行い,知事は,それについて検査して,許可した内容に適合していると認めることができれば,検査済証を交付します(なんだか確認申請の流れに似ていますね).さらに,検査済証を交付した際には,遅滞なく,その開発行為についての工事が完了した旨の公告を行うわけです.この公告の後でなければ,開発行為が完了している土地であっても,建物を建てることができないわけです.
 
 6.都市計画事業(都計法59条~)
最後に,都市計画事業の認可に伴う建築制限について補足説明して今回の講義をしめくくりましょう.そもそもこの「都市計画事業」というものは,最初に用語として説明しましたが,「都市計画施設の整備に関する事業」のことです.「都市計画施設」とは,「例えば,道路や下水道,学校などの都市施設で都市計画に定められているもの(ここには,必ず道路を作りましょうだとか,学校を建築しましょうといった内容)」をいいます.それらを実際に整備し始める事業(プロジェクト)が,「都市計画事業」となります.「都市計画事業」については,「都計法4条15項」にその定義が,「都計法59条」に,都市計画事業を施行するための認可に関する規定が,さらに,「都計法62条」に,「認可された都市計画事業の告示」に関して記載されております.ここで,肝心なのが,「都市計画事業の認可」の「告示前」と「告示後」では,建築制限の内容が変わってくるということです.まず,ある都市施設が,ある地域において都市計画に定められたとします.すると,その都市施設は,「都市計画施設」となります.本試験で頻出される「都計法53条(都市計画施設等の区域内における建築等の規制)」にある「2階建以下で,地階を有しない木造建築物の改築,移転の場合(新築はダメ)」などは,建築制限がかかりません(=知事の建築許可を受けずに建築することができる).これは,まだ,都市計画施設の段階の話であり,「認可された都市計画事業の告示前」の話であります.この都市計画施設の整備事業が認可され,さらに公告されてしまうと,「都計法53条」ではなく,「都計法65条」の建築制限が適用され,「2階建以下で,地階を有しない木造建築物の改築,移転」であっても,知事の許可を受けなければなりません(建築制限がかかってくる).その他にも,様々な建築制限がかかるケースがありますが,メインとなる話は以上です.
 

■学習のポイント
本試験では,その多くが過去問の類似問題(ほぼ,そのまま)です.ただし,稀に突飛押しもなく悩ましい出題もあります.例えば問題コード28251を見てみましょう.開発行為については都計法29条ですが,何号に該当するのか,特定工作物の定義は?条文を次から次へ辿っていく必要があります.こういう問題は出来れば後から解いた方が良さそうだ,その判断がどのタイミングで出来るのかは重要です.全てが難問とか,全てが簡単な問題な訳がありません.出題者は巧みに問題文を構成して大きな起伏をつけています.全くフラットではありません.4択中心で勉強をした場合,正答以外の選択枝を流す事になり,またその習慣がついてしまう.基本は,一問一答形式で取り組む事が重要である事は間違いありませんが,4択での難易度の設定によって異なる「解き方」というものあります.
そういった本試験における出題の意図を汲み取った上で作成される模試が,一級建築士受験支援サイト 教育的ウラ指導で例年行っている「一発逆転模試」です.この模試では,過去問題から今年狙われそうな問題をピックアップし,法改正や時事に関連する新問題などを交えて構成されています.そして最大の特徴は,「解き方」のスキルアップを目的としたトレーニングコースである唯一の模試という点です.合格ロケットでは最後の総仕上げとして推奨しています.※例年,5月下旬に開催しています.

 

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