06構造(文章題編)

03.鋼材・金属

まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約4分)

今回のインプットのコツでは,鋼材・金属に関して,概要説明をします.

過去問題では,1「鋼材表記」,2「ヤング係数」,3「引張強度」,4「降伏点」,5「降伏比」,6「鋼材性質」,7「高力ボルト」,8「各種鋼材」の8項目からなっていることがわかると思います.

まずは,鋼材の記号とその意味,鋼材の温度と強度の関係,炭素の含有率と強度・伸びの関係を理解しましょう.

SS材(一般構造用圧延鋼材)
SN材が制定されるまでは大部分の建築構造物に使用されていた鋼材で,溶接性は考慮されていません.
SS490材とSS540材は,炭素量を増やして鋼材強度を高めているので溶接性が悪いです.

SM材(溶接構造用圧延鋼材)
溶接性を考慮し,鋼材中の炭素量を減らしマンガン,ケイ素などの含有量を調整したものです.
A種,B種,C種の3種類に分けられ,C種が最も衝撃特性が高い(溶接性が良い)と言えます.

SMA材(溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材):
SM材にクロム,ニッケルなどを添加し,溶接性を考慮しつつ,耐候性を向上させた鋼材のことです.  

SN材(建築構造用圧延鋼材)
従来のSS材に代わって建築構造用鋼材として使用されるものです.
A種は,原則として溶接を行わない部材を主用途としています.490N/mm2については現状の需要状況に照らし制定していません.
B種は,柱や梁に広く一般に使用されることを想定した鋼種で,塑性変形能力と溶接性の確保を意図したものです.
C種は,B種の性能の上に板厚方向の特性を規定した鋼種で,ボックス柱のダイヤフラム板厚方向の性能が重要となる部材を主用途としています.
まとめると,B種,C種は溶接用鋼材として使用できます.
SN400Aは,降伏点の下限のみが規定された鋼材で,通常,小梁や間柱などの二次部材に使用します.A種はシャルピー吸収エネルギーの規定値はありません.
SN400B・SN490Bは,降伏点の上下限,降伏比の上限,炭素当量の上限などが規定されており,降伏後の変形能力や溶接性が保証されている鋼材を指します.シャルピー吸収エネルギーは27J以上とします.なお,シャルピー吸収エネルギーが大きいほど,脆性破壊を起こしにくい材料であるといえます.
SN400C・SN490Cは,溶接加工時を含め板厚方向に大きな引張応力を受ける部材に使用する鋼材のことです.

STKN材(建築構造用炭素鋼管),SNR材(建築構造用延棒鋼),BCR・BCP材(建築構造用冷間成形角形鋼管)に関しては,名称くらいは知識として覚えておいて下さい.

代表的な建築構造用鋼材の鋼材規格仕様一覧はこちら(←別ファイルが開きます).建築構造用鋼材および金属系素材に関する技術資料(日本建築学会)からの抜粋です.


金属材料の応力度-ひずみ度曲線の形状は様々なものがありますが,大きく分類すると,普通鋼のように下図左に示す降伏棚(塑性流れ)のあるタイプと,高張力鋼,ステンレス鋼および極低降伏点鋼のように下図右に示す降伏棚のないタイプに分けられます.
降伏棚のあるタイプでは,上降伏点を降伏点(降伏強さ)としています.降伏棚のないタイプでは,ある規定された永久ひずみεを生じるときの荷重を最初の断面積で割った応力度を耐力(σε)としています.一般の鋼材では,ε=0.2%とし,0.2%耐力を降伏強さとしています.
0.2%オフセット耐力と呼んだりもします.なお,建築構造用ステンレス鋼(SUS304A)では,ε=0.1%としています.

上記説明を具体的に示すと下図のようになります.

これらの図は,建築構造用鋼材および金属系素材に関する技術資料(日本建築学会)からの抜粋です.


鋼材の数値は降伏点ではなく,引張強度の下限値を示します.
SS400→引張強度の下限値が400N/mm2
SM490→引張強度の下限値が490N/mm2
F10TF(S10T)→引張強度の下限値が1,000N/mm2(≒10t/cm2)
棒鋼(鉄筋)の数値降伏点の下限値を示します.
SD295→降伏点の下限値が295N/mm2(JIS改定により,SD295AとSD295BはSD295に統一されました)


鋼材は,炭素含有量が0.8%前後で強度が最大になりますが,溶接性は低下します.
ヤング係数は鋼材強度の大小に関わらず同じ値となります.
降伏比は,降伏点強度/引張強さのことで,常に1.0より小さくなります.問題コード30293では引張強さ/降伏点強度(分子と分母が逆)として出題されています.注意しましょう.
鋼材の性質として,シャルピー衝撃値ビッカーズ硬さに関しては覚えておきましょう.

各種鋼材としては,アルミニウム,ステンレス鋼,耐火鋼(FR鋼)に関してまとめておきましょう.
アルミニウムのヤング係数や比重は鉄の約1/3であり,融点は鉄の約1/2,熱伝導率は鉄の約3倍です.


■学習のポイント

合格ロケットに収録されている過去問題では約60問(直近10年で約30問,昔の10年で約30問)ありますが,鋼材に関するほとんど全ての性質が網羅されています.
合格ロケットに収録されている過去問題は,きちんとマスターしておいて下さい.

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