06構造(文章題編)

05-1.荷重・外力(地震力以外)

過去問題では,1「積載荷重」,2「風荷重」,3「積雪荷重」,4「土圧・水圧」,5「固有周期」,6「衝撃力」,7「設計用地震力」,8「地下・屋上突出部の地震力」,9「必要保有水平耐力」,10「限界耐力計算」の10項目からなっていることがわかると思います.
 
ここでは,1「積載荷重」~3「積雪荷重」について,次の「荷重・外力(地震力関係)」では,7「設計用地震力」~10「限界耐力計算」を取り上げます.


1.積載荷重は,人間,家具など,移動可能なものの重さによる荷重で,分布に偏りが生じる可能性があります.

そこで,分布の偏りの考慮して,次の3つの計算において,それぞれ異なる値が定められています.それぞれの大きさは「床計算用>大梁,柱,基礎の計算用>地震力計算用」となります.
小梁の積載荷重は,床計算用と大梁計算用の中間値になります.小梁の形状が小さければ床計算用に,大きければ大梁計算用に近くなります.
積載荷重の具体的な値に関しては,原則は実況応じて計算した値を使うことになっていますが,基準法施行令第85条の表にある用途については,この表の値を用いても良いことになっています.


ポイント1.柱が支える床による積載荷重の低減
よく質問が来る内容に「柱が支える床による積載荷重の低減」に関するものがみられます.

劇場や映画館等以外の場合は,支える床の数が多くなると,その分,積載荷重が平均化され,偏りが小さくなるので,積載荷重を低減することができます.
劇場や映画館等では,「柱が支える床による積載荷重の低減」はありません.劇場や映画館等では,全階満員となり,平均化しても積載荷重の値が小さくならない場合があるからです.
この低減は,通常の構造設計の場合では(安全性の観点から)用いることはほぼないと言えます.


ポイント2.間違えやすい数値
積載荷重の中で間違えやすいのが,上表の(g)(h)の「廊下,玄関又は階段」と「屋上広場又はバルコニー」の取り扱いです.
(g)教室,売場,客席に連結する「廊下,玄関又は階段」については,劇場等の「固定席でない客席」の値とします.
これは,授業が終わった後や,バーゲンの売場,公演終了後には,これらに連絡する廊下や階段には一時的に人が集中します.よって,劇場等の固定席でない客席の大きな積載荷重を用いる必要があります.
(h)学校,百貨店の「屋上広場又はバルコニー」については,百貨店等の「売場」の値とします.
火災等の際に,各階の教室等にいる人が一斉に屋上広場やバルコニーで避難する場合を考えると,住宅の屋上やバルコニーの積載荷重よりも大きな値が必要となるのがイメージできるかと思います.
倉庫業を営む倉庫における床の積載荷重は,3900N/m2以上であることも覚えておきましょう.


2.風荷重に関するポイントとしては,基準法施行令第87条を理解することです.
風荷重は,風圧力×(風圧力に関する)見付面積として計算します.
風圧力Wは速度圧qに風力係数Cfを乗じます.
速度圧qはq=0.6×E×Vo^2となります.
ここで,E:速度圧の高さ方向の分布を示す係数,Vo:その地方における基準風速を示します.
また,風圧力には,骨組算定用と外装材(局部)検討用の2種類があります.大きさは骨組算定用<外装材(局部)検討用の関係があります.
基本的は知識としてはここまでの内容で十分なのですが,最近はそこから更に突っ込んだことを聞いてきています.

旧基準法の速度圧q=60√hにおける60という数値は,観測史上稀にみる風台風であった室戸台風の室戸岬における地盤面からの高さ15mでの最大瞬間風速63m/sに対応するように定められた式でした.
高さが30m以上になると,実際の風圧力に比べ過大な風圧力を算定する傾向があったため,名古屋テレビ塔における地盤面からの高さ135mまでの風速観測による結果などに基づいてq=120を得て,昭和55年に改定されました.

つまり,全国一律の速度圧を用いて設計していたわけです.

しかし,気象現象を観測装置が全国いたることろに設置され,膨大な量の気象データが蓄積されてきて,その解析も進んできました.風洞実験によるデータも蓄積されてきて,地表面の形状の違いや風速の高さ方向の分布などがより詳細に推測できるようになってきたため,H12年の基準法改正により,速度圧の算定式が変更になりました.

現状の速度圧qはq=0.6×E×Vo^2で求めていきます.
ここで,Eは「当該建築物の屋根の高さ及び周辺の地域に存する建築物その他の工作物,樹木その他の風速に影響を与えるものの情況に応じて大臣が定める方法により算出した数値」,Voは「その地方における過去の台風の記録に基づく風害の程度その他風の性状に応じて30~46m/sの範囲において大臣が定める数値」と呼ばれるものです.
この説明だけでは分かりづらいと思いますので,それぞれについて説明してきます.

まずは説明が簡単なVoから.
Voは基準風速のことで,稀に発生する暴風時の地上10mにおける10分間平均風速に相当する値でもあります.以前はこの基準風速は全国一律でしたが,法改正により,全国各市町村単位で基準になる風速を定めて,その数値を用いることになりました.これによって,建築物に作用する風荷重を地表の実情に応じてより実態に近く規定することが可能になり,各地域における平均風速の強さを表す指標である基準風速は大臣が定めるようになりました.

続いて,Eに関する説明です.これは非常に難しいですので,さらっと読み流してください.
Eは「速度圧の高さ方向の分布を示す係数」と言われているモノで,建築物の屋根の高さ及び周辺の建築物等が風速に影響を与えるものの情況に応じて国土交通大臣が定める方法に算出した数値で,E=Er^2×Gfで表現されます.これは逆算の結果です.
風は常に一様に吹いているわけではなく,強弱の変動を繰り返しています.この風速の強弱の変動による建築物への影響の度合いを示したものが,ガスト影響係数Gfと呼ばれているものです.

ただ難しいのは,地域の開発が進み周辺の建築物などにより地表の状況が複雑になるとともに風の強弱の変動は大きくことがあります.風の強弱の変動が大きくなるとガスト影響係数も大きくなるのですが,一方で,建築物が高くなると建築物にしなりが生じて,風が変動し強風が吹いたときの風圧力を受け流すことによって,建築物に発生する力が低減されることになります.
つまり,ガスト影響係数は,建築物周辺の地表の状況と建築物の高さによって決定される突風などの風の変動の影響の程度を表した係数と言えます.
風は地表面に近づくと,地表面との摩擦により風速は小さくなります.つまり,地表面から離れるほど,すなわち建築物が高くなるほど風速は大きくなります.この低減の割合は,周辺の建築物などにより地表面の状況が複雑になるとともに大きくなります.つまり,密集した市街地ほど風速は遅くなります.

このように,地表面の状況に応じて各高さにおける風速は異なりますが,この各高さにおける風速のその地方における基準風速Voに対する比率を現したものが,風速の鉛直分布係数と呼ばれるErと呼ばれます.

建築物に作用する風速は,当該建築物の周辺の地表面の状況と建築物の高さにより決定されるErをその地方における基準風速Voに乗じてEr×Voとなります.
風の運動エネルギーを考えると,運動エネルギーの法則より,1/2mv^2と表現でき,この質量mを単位質量当りの質量=密度ρを用いて表すと,1/2ρv^2と表現できます.
建築物に作用する風速であるEr×Voをこの理論式に代入すると,当該建築物に作用する平均風速による速度圧qAVG=1/2×ρ×(Er×Vo)^2となります.
暴風時に建築物に最大の力を生じさせる速度圧qは,建設地点における平均風速による速度圧qAVGを用いて,q=Gf×qAVGと表現できます.
その結果,建築物に最大の力を生じさせる速度圧qはq=Gf×1/2×ρ×(Er×Vo)^2となります.

この式に空気密度ρを代入し,SI単位に変換すると,q=0.6×Gf×Er^2×Vo^2となります.
Gf×Er^2=Eとすると,q=0.6×E×Vo^2となります.

現状の速度圧q=0.6×E×Vo^2は,以上のような経緯で算定されているのですが,この変形を覚える必要はありません.

Gf(ガスト影響係数):突風などの風を影響の程度を示すものとして,建築物の屋根の高さ及び周辺の市街地の状況に応じて定められる数値.

Er(平均風速の鉛直分布係数):平均風速の高さ方向の分布を示すものとして,建築物の屋根の高さ及び周辺の市街地の状況に応じて定められる数値.

Vo(その地域における基準風速):その地方における過去の台風の記録に基づく風害の程度その他風の性状に応じて30~46m/sの範囲において大臣が定める数値.稀に発生する暴風時の地上10mにおける10分間平均風速から算定.

これらのことに関しては,下記の図で覚えてください.

係数Er及びEは,速度圧qの大小関係と同じ関係がありますので,風は上空の方が地上より強く吹く傾向をイメージできれば,Er及びEはグラフで上に行くほど値は大きくなる,つまり,右上がりのグラフになることがイメージできれば覚えやすいと思います.
また,極めて平坦で障害物がない地表面粗度区分Ⅰの方が都市化が極めて著しい地表面粗度区分よりも障害物が少ないため風が強くなるイメージを持ってグラフを見て下さい.

風力係数Cfについては,Cf=Cpe-Cpi(Cpe:外圧係数,Cpi:内圧係数)ということを覚えておけば十分です.

外装材(局部)検討用の風圧力Wは,平均速度圧[q]×ピーク風力係数[Cf]で計算します.
[q]=0.6×Er^2×Vo^2
で計算することになります.
骨組検討用の速度圧qを計算する時に用いるE(=Er^2×Gf)ではないことに注意しましょう.
上の式から分かるように,外装材(局部)検討用の計算に用いる平均速度圧[q]にはガスト影響係数Gfが入っていないことに注意しましょう.
これは,ピーク風力係数[Cf]の算出にガスト影響係数Gfが反映されていることによります.


3.積雪荷重に関するポイントとしては,基準法施行令第86条を理解することです.
積雪荷重は,積雪の単位荷重×屋根の水平投影面積×垂直積雪量から求めることができます.
積雪の単位重量(一般地域:積雪1cm当たり20N/m2以上)の数値も覚えておきましょう.
また,屋根の積雪荷重は屋根勾配によって低減することができます.その辺についても令第86条を確認しておきましょう.
多雪区域以外の区域にある一定規模(棟から軒までの長さが10m以上)の重量が軽い緩勾配(15度以下)の屋根については,降雪後の降雨を考慮して積雪荷重を重く計算します.平成19年告示第594号第2第三号ホを参照してください.


■学習のポイント
上記の内容を踏まえて,過去問題を見てみましょう!
かなりの問題が解けることがわかると思います.

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