04-2.荷重・外力(地震力関係)
まずは、オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約6分30秒)
最初に,「過去問題」の問題・解説部分を流し読みして下さい.
同じ内容に関して何回も繰り返し出題されている問題に気づくと思いますが,最低限,こられの問題に関しては,何が重要で繰り返し出題されているのかに注目して,言い回しを多少変えられても間違わないようにしましょう.保有水平耐力の計算に関してよく質問がきます.
よって今回のインプットのコツでは,構造計画というか構造計算に関して,概要説明をします.
構造計算方法は,大きく分けて,許容応力度等計算・保有水平耐力計算,限界耐力計算,その他の計算(限界耐力計算と同等以上に安全さを確かめられる計算方法で,大臣が定める基準に添った構造計算),超高層建築物の計算の4つに分類できます.
このうち,その他の計算というのは,具体的には覚えておく必要はありません.エネルギー法などがありますが,これらの計算に携わった方はほとんどいないと思われます.
許容応力度等計算・保有水平耐力計算のうち,1次設計と呼ばれているのは,荷重・外力による各部の応力度に関する確認のことを指します.
具体的に言うと,1.各部に生ずる応力の計算,2.部材断面の応力度の計算,3.許容応力度による確認を固定荷重や積載荷重,積雪荷重,風荷重,地震荷重などに関して行うことです.
2次設計と呼ばれているのは,層間変形角(≦1/200)の確認や剛性率(≧0.6)・偏心率(≦0.15)の確認,及び保有水平耐力の確認をし,保有水平耐力が必要保有水平耐力以上であることの確認のことを指します.
保有水平耐力計算の説明ですが,基本は,地上部分の各階の保有水平耐力(Qu)≧必要保有水平耐力(Qun)であることを確かめることを指します.
ここで,保有水平耐力(Qu)って何???って感じですが,保有水平耐力とは建築物が水平力を受けたとき,建築物が保有している最大の水平抵抗力のことです.これは基準法や告示に記載されている材料強度によって求められます.
保有水平耐力は,建築物の一部または全体が地震力によって崩壊メカニズムを形成するときの各階の水平方向の耐力のことですね.
このことは,「構造計画」単元以外のどこかの単元で出てきたと思いませんか?
計算問題のところで「崩壊荷重」って単元がありましたよね?
仮想仕事法を用いて,「外力のする仕事」=「内力のする仕事」ってやつです.あの崩壊荷重も保有水平耐力です.
仮想仕事法以外にも保有水平耐力を求める方法はありますが.
それに対して,必要保有水平耐力は,大地震に対して安全を確保するために必要とする各階の最小限の水平方向の耐力のことを指します.
これは,強度型の場合には耐力の急激な低下が起きないように安全をみる→Ds:構造特性係数
偏心したり(偏心率が大きい),剛性率が小さい場合には安全をみる→Fes:形状係数
これに,大地震を想定した場合の地震層せん断力Qiを乗じたものになります.
よって,Qun=Ds・Fes・Qudとなります.
ここで,Dsは,木造や鉄骨造では0.25~0.5,鉄筋コンクリート造では0.3~0.55です.当然,靭性のある塑性変形能力が高い建築物のDsは小さい値となります.鉄骨鉄筋コンクリート造は鉄筋コンクリート造よりも0.05小さい値を用いることができます.
偏心率が大きいほど,及び剛性率が小さいほどFesは大きくなります.安全のために割増するイメージですね.
Qudは,Qud=Z・Rt・Ai・Co・∑wと表現できます.これもどこかで見たことがありませんか?
地震層せん断力の式ですね.考え方は一緒ですよね.
必要保有水平耐力(Qun)についてまとめると,
一次固有周期の長い建築物は,軟弱地盤の方が硬質地盤と比べて各階に生ずる水平力Qudは大きくなる→Qunは大きくなる.
偏心率が大きいほど,及び剛性率が小さいほど,Fesは大きくなる→Qunは大きくなる.
鉄筋コンクリート建築物で短柱が多くなると,靭性が小さい→Dsは大きくなる→Qunも大きくなる.
学科試験に関しては,具体的に保有水平耐力計算を行うわけではないので,この辺の考え方を理解していればいいと思います.
続いて,地下・屋上突出部の地震力に関して説明します.
建物屋上にある水槽や地表に設置された広告塔などの構造計算については,それぞれの重さに水平深度を掛けて計算します.
水平震度とは,ある階(ある部分)の地震力が,その層の重量の何倍かを表す数値のことです.
地表面の揺れ方と,建物屋上の揺れ方が異なるため,水平震度の値としては異なる値を用います.
・屋上から突出する塔屋や高架水槽等の水平震度:1.0Z以上
・外壁から突出する片持ち階段やエレベーター等の鉛直震度:1.0Z以上
・地表に設置された広告塔等の工作物の水平震度:0.5Z以上
続いて,限界耐力計算に関して説明します.
まずは,計算の流れから.
1.建築物の存在期間中に1回以上遭遇する可能性の高い(稀に発生する)積雪,暴風などについて,建築物が損傷しないことを確認する.
2.極めて稀に発生する大規模な積雪,暴風に対して,建築物が倒壊,崩壊などしないことを確認する.
3.建築物の存在期間中に1回以上遭遇する可能性の高い(稀に発生する)地震動について,地上部分が損傷しないことを確認する.
→損傷限界の検証
→各階に作用する稀に発生する地震力が,当該階の損傷限界耐力を超えないこと,及び地震力による層間変形角が1/200(損傷のない場合は1/120)を超えないことを確認する.
4.建築物の存在期間中に1回以上遭遇する可能性の高い(稀に発生する)地震動について,地下部分が損傷しないことを確認する.
5.極めて稀に発生する地震動について,地上部分が倒壊,崩壊などしないことを確認する.
→安全限界の検証
6.使用上の支障となる変形または振動がないことを確認する.
7.外装材などが構造耐力上安全であることを確認する.
っていう流れです.
「損傷限界」と言うのは,建築物の耐用年限中に少なくとも一度は遭遇する程度(中程度)の荷重.外力が作用した後も,構造物の安全性や使用性,及び耐久性が低下せず,そのため補修を必要としない限度のことを指します.
地震力に関して言えば,震度4~5程度の地震クラスをイメージすればいいと思います.
「損傷限界の検証(中程度の地震力に対する安全の確認で,許容応力度等計算における一次設計に相当する検討みたいなもの)」を具体的に言うと,
1.各材料の短期許容応力度をもとに,損傷限界耐力及び損傷限界変位(損傷限界耐力時の層間変位)を計算する.
2.損傷限界固有周期を計算する.
3.損傷限界固有周期に基づき,建築物の各階に作用する地震力を計算する.
4.各階に作用する地震力が損傷限界耐力を超えないこと,及び各階に生ずる層間変形角が1/200(損傷のない場合は1/120)を超えないことを確認する.
という感じでしょうか.
損傷限界固有周期というのは,損傷限界変位に相当する変位が生じているときの建築物の固有周期のことを指します.
「安全限界の検証(最大級の地震力に対する安全の確認で,許容応力度等計算における二次設計に相当する検討みたいなもの)」を具体的に言うと,
1.各材料の材料強度をもとに,各階の保有水平耐力,及び安全限界変位を計算する.
2.安全限界固有周期を計算する.
3.建築物の各部分の減衰による加速度の低減を計算する.
4.安全限界固有周期に基づき,減衰による加速度の低減を考慮して建築物の各階に作用する地震力を計算する.
5.各階に作用する地震力が各階の保有水平耐力を超えないことを確認する.
という感じでしょうか.
安全限界固有周期というのは,安全限界変位に相当する変位が生じているときの建築物の固有周期のことを指します.
損傷限界の検討と異なる点は,
・建築物の各部分の損傷の程度に応じた加速度の低減を考慮すること.
・地震力算定の基本となる加速度応答スペクトルは損傷限界の時の5倍であること.
ということです.
あと,言葉だけでもいいので覚えてもらいたいことは,
・工学的基盤:地下の深いところ(地表から数mとか数十mとかの深い部分.場所によって異なります.)にあって,せん断波速度VsがVs≧400m/s以上の地盤.
・表層地盤:地表から工学的基盤までの地盤
・表層地盤による増幅:Gs
・建築物の損傷の程度に応じた減衰による加速度の低減:Fh(保有水平耐力の計算におけるDsに相当)
・建築物の加速度の分布:Bdi,Bsi
って言葉です.
■学習のポイント
合格ロケットに収録されている「過去問題」を解いてみて下さい.
ここ数年,免震構造や制振構造に関する出題が増えてきています.
免震構造というのは,免震層によって,免震層より上部部分に入力する地震力を低減するような構造形態であり,免震層自体の変位は比較的大きいことには注意しましょう.
「鉄骨構造の筋かい付きの骨組みの保有水平耐力の算定」に関して,問題文の内容も,解説の内容もよく分からないという質問がよく来ます.
この問題に関して,以前,教育的ウラ指導さんの方で使用していた資料を提供して頂きましたので紹介いたします.
→ 【こちら】
しかし,この問題は非常に難しい問題であり,この資料を一度ご覧になる程度でいいのではないかと思われます.