06構造(文章題編)

08.鉄骨鉄筋コンクリート構造

まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約6分30秒)

鉄骨鉄筋コンクリート構造を苦手にしている人はかなり多いと思います.鉄筋コンクリート構造などに比べて,部材設計などが難しいからです. 

特徴的なものとして,累加強度の考え方があります.単純累加強度とは,鉄骨の強度と鉄筋コンクリートの強度をそれぞれ求め,それらを加える方法です.それぞれの強度を単純に加える(累加する)ので,単純累加強度,略して累加強度と言います.鉄骨鉄筋コンクリートの曲げに対する設計に用います. 
 
似たような言葉に一般化累加強度というものがあります.これは,のような曲げと軸力を受ける部材の耐力を求める際に,鉄骨と鉄筋コンクリートそれぞれの曲げと軸力を組み合わせた耐力を最大になるように加える(累加する)方法です.保有耐力の算定などに用います.
この考えが,鉄骨造や鉄筋コンクリート造とは異なる部分ですので,難しいと思われると思います(問題コード22194). 


そのことを踏まえて,過去問題とその解説を一読してみてください.
梁のせん断に対して許容応力度設計を行う際には,鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれのせん断力を求めて,鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれの許容せん断力以下となるようにします. 
ここで,それぞれのせん断力とは,鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分の設計用曲げモーメントより求めます(問題コード23192). 
上記説明における累加強度ではないことに注意しましょう.
 
また,鉄筋コンクリート部分の許容せん断力は,せん断補強筋比の上限は0.6%とします.  
梁のせん断に対して保有耐力計算を行う際には,鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれの終局せん断耐力の累加とします(問題コード24192).上記説明における累加強度を用いるわけです.  
  
柱の長期許容応力度設計では,ひび割れを生じさせないように(この考え方は鉄筋コンクリート造の場合と同様です),鉄骨の補強効果を考慮した鉄筋コンクリートのひび割れ強度以下になるようにします(問題コード14131).  
  
柱のせん断に対して許容応力度設計を行う際には,鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれのせん断力を求めて,鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれの許容せん断力以下となるようします(問題コード27231).累加強度ではないことに注意しましょう.  
  
柱のせん断に対して保有耐力計算を行う際には,鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれの終局せん断耐力の累加とします(問題コード01234).上記説明における累加強度を用いるわけです.  
  
柱の設計において,鉄骨量が多いとコンクリートの充填性が悪くなるため,鉄骨量に応じてコンクリート強度を低減して考えます(問題コード22193).  
  
柱梁接合部のせん断に対して許容応力度設計を行う際には,鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれの許容せん断力の累加とします. 
上記説明における累加強度を用いるわけです.  
せん断補強筋量としては,内蔵鉄骨がH型鋼のような開断面充腹形鉄骨の場合は,内蔵鉄骨のウェブが部材(柱や梁)のせん断力に効果的に効くため,通常の鉄筋コンクリートのせん断補強筋比の半分程度ということで,あばら筋比,帯筋比はともに0.1%以上とします.内蔵鉄骨がラチス形や格子形のようにウェブが鋼板で満たされていない(空間がある)ような非充腹形鉄骨の場合は,内蔵鉄骨のウェブが部材(柱や梁)のせん断力に効果的に効くとは思えないため,鉄筋コンクリート同様にあばら筋比,帯筋比はともに0.2%以上とします.下図のような被覆形及び充填被覆形鋼管コンクリート構造の場合のあばら筋比や帯筋比は0.2%以上となっていますが,これはあばら筋比や帯筋比の求め方が開断面充腹形や非充腹形の場合と異なるためです. 
  
開断面充腹形の0.1%と被覆形の0.2%の実際のせん断補強筋量は同じくらいと考えてもいいと思います(問題コード20145ほか).
また,鉄筋コンクリート部分の許容せん断力の算定では,せん断補強筋比の上限は0.6%とします.

柱における鉄骨と鉄筋の断面積の和は,コンクリート断面積の0.8%以上必要であることに注意しましょう(問題コード20155ほか).  
  
鉄骨のかぶり厚さ最小5cm,通常は10cm以上とします.  
  
施工時の検討(建て方検討)に関しても注意が必要です. 
通常,鉄骨鉄筋コンクリート造は,鉄骨の建て方を行い,鉄筋の配筋を行い,コンクリートの打設を行う順序で施工されていきます.コンクリートの強度が出現した後に関しては累加強度が成り立ちますが,コンクリート強度が出現する前では,鉄骨造の場合と同様と考えられます.通常の鉄骨造の鉄骨と鉄骨鉄筋コンクリート造の内蔵鉄骨では,鉄骨鉄筋コンクリート造の内蔵鉄骨の方が部材が小さいことが一般的であるため,コンクリート強度が出現する前での風や地震に対する安全性の検討が必要になります(問題コード13153ほか).


■学習のポイント
コンクリート充填管(CFT)部材に関する出題が増えています(問題コード30264ほか).これらの問題・解説について理解しておきましょう.
また,部材の終局せん断耐力算定に関しては,問題コード01234では,「累加する鉄骨と鉄筋コンクリートのそれぞれの終局せん断耐力は,曲げで決まる場合とせん断で決まる場合の小さい方とする」というように更に突っ込んだ問題となっています.このことに関しても覚えておきましょう. 
 
鉄骨鉄筋コンクリートに関しては,過去に繰り返し(複数回)出題している問題を理解しておけば,十分対応できると考えられます.

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