11.地盤・土質
まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約5分30秒)
この地盤・土質項目を苦手にしている人も多いと思います.
すごく大きく見てみると,建築物は地盤に支えられていますよね.地盤が悪いところでは杭で建築物を支持する杭基礎形式で,地盤が比較的良いところでは直接基礎形式です.こられ基礎に求められている性能(要求性能)は,建築物が沈んだり傾いたりしないことですよね.
つまり,地盤・土質項目での重要ポイントは,「地盤の支持力」と「地盤の沈下量」と言えます.
地盤の性質として,覚えておくこととして,土の構成があります.土は,土粒子と水と空気からなっています.土粒子の大小関係は,粘土<シルト<砂となります(問題コード23231ほか).
地質の地盤区分として,洪積層(良質地盤,年代が古い)と沖積層(軟弱地盤,年代が新しい)とがあり,地盤の堅さとしては,沖積層<洪積層となります(問題コード24213).
圧密沈下とは,主に粘性土地盤で生じ,土に圧力が長時間継続的に加わる場合,土中の間隙水が徐々に搾り出され,間隙が減少し,地盤が沈下することを示します.
粘性土は透水性が小さいため,水の移動に時間がかかり,圧密沈下は一般的には時間がかかります.また,現在の有効上載圧力(現在加わっている圧力)より過去に受けた上載圧力が大きい地盤は過圧密の状態にあると言います.
現在の有効上載圧力より更に荷重を加えても,圧密先行荷重(過去に受けた最大の上載圧力)に達するまでは圧密沈下は生じません.圧密が進んでいる状態の地盤は,圧密未了状態にあると言います.
即時沈下とは,主に砂質地盤で生じ,早期に沈下を起こし,安定します.沈下量は小さいです(問題コード01211ほか).
砂質地盤の液状化について簡単に説明します.
液状化とは,振動によって土中の間隙水圧が高くなり,土粒子間に働く有効応力がゼロになる現象を指します.この表現は,実際に過去に出題された問題そのものです.間隙水圧?有効応力?難しい言葉がでてきますね.
有効応力(土粒子間に生じる応力)などに関して深く学ぶ必要はありません.液状化に関しては,以下に示す液状化現象が起こりやすい4要素を覚えておきましょう.
1.飽和地盤で細粒土含有率が低い(細粒土含有率が低いとは,土粒子の小さい粘土成分が少ないこと,つまり土粒子の大きい砂成分が多いことを指します).
2.飽和地盤のN値が小さい.
3.地下水位面が地表面に近い.
4.地震入力が大きい.
下図の横軸は地盤のせん断ひずみ(地盤の変形量)で,左側のせん断ひずみは小さく(小さい地震動時の地盤の変形),右側に行くほどせん断ひずみは大きく(大きい地震動時の地盤の変形)なります.縦軸のG/G0とは,地盤のせん断剛性低下率で,ある時点での地盤のせん断剛性が,地盤が元々持っているせん断剛性からどれくらい低下したのかを示します.つまり,地盤の剛性(堅さ)の低下率を指します.図からわかるように,剛性低下率(G/G0)は右下がりの曲線ですので,地盤内に発生するせん断ひずみが増加するほど(大きな地震で地盤が揺れるほど),地盤のせん断剛性は低下することがわかります.
一方,地盤の減衰定数は,右上がりの曲線ですので,盤内に発生するせん断ひずみが増加するほど(大きな地震で地盤が揺れるほど),地盤の減衰定数は増加することがわかります.
この地盤の減衰特性は,上部建物と性状が異なりますので,上部建物とは完全に切り分けて理解して下さい.
これら2つの事象については,上記のグラフをイメージできるようになりましょう!
続いて,地盤調査に関して説明します.
地盤調査とは,原位置試験と土質試験に分けられます.
原位置試験とは,地盤内の土の性質を直接調べる試験のことで,
標準貫入試験(問題コード20194)
平板載荷試験(問題コード29192)
スウェーデン式サウンディング試験(問題コード24223)
ボーリング孔内水平載荷試験(問題コード01204)
ベーン試験,常時微動測定(問題コード29193)
せん断波速度測定(PS検層)(問題コード28214)
などがあります.
土質試験とは,ボーリングなどによってサンプリングされた試料を用いて行う物理的,化学的,力学的性質を調べる試験のことで,
粒度試験(問題コード27192) や密度試験などのような物理的試験(砂質土,粘性土などの土質判別を行う試験)と,1軸圧縮試験,3軸圧縮試験(問題コード25231ほか),圧密試験(問題コード26224)や透水試験などの力学的試験(土の強さ,圧縮性,動的性質などを調べる試験)があります.
最後に地盤改良と液状化対策,圧密沈下対策に関して説明します.
地盤改良について
1.締固め工法(バイブロフロテーション工法,サンドコンパクションパイル工法など):砂質土に振動や衝撃力を加えて安定した地盤を造る工法
2.間隙水圧消散工法(グラベルドレーン工法など):砂質土地盤中に透水性のよい粗骨材の柱を作り,地震により発生した間隙水圧を短時間で消し去る工法
3.強制圧密脱水工法(サンドドレーン工法など):軟弱な粘性土を強制的に圧密し,事前に沈下させ強度を増加させる工法
4.脱水工法(生石灰杭工法など):軟弱な粘性土地盤中の間隙水を,脱水材や発熱する材を用いて脱水し,強度の増加を図る工法
5.固結工法(深層混合処理工法など):セメントなどを注入し,地盤の不透水化や強度の増加を図る工法
6.置換工法:軟弱地盤を良質の地盤に置き換える工法
液状化対策としては,締固め工法(バイブロフロテーション工法,サンドコンパクションパイル工法など)が,圧密沈下対策としては,間隙水圧消散工法(グラベルドレーン工法など)が有効とされています.
なお,各工法の詳細に関しては,上記○○工法などで検索してみてください.
■出題のポイント
問題コード01191ほかの問題文と上で述べた液状化現象が起こりやすい4要素に関する質問が多いので,補足説明します.
まず,細粒分含有率と細粒土含有率は同じものと思ってください.細粒分含有率(細粒土含有率)が大ということは,砂より粘土が多いことになります.
続いて含水比に関して
まず「ある領域内」にある土を考えます(「だるま落とし3段重ね」をその領域と考えて下さい).土というのは,だるまの一番下の段にあたる「土粒子」と,真ん中の段にあたる「水」と,一番上の段にあたる「空気」から成り立っています.土の含水比とはそのうちの「土粒子の重量Ws」で「水の重量Ww」を割った,Ww/Wsを百分率で表したものです.ここで,含水比は重量比であり体積比ではないことに注意して下さい.
そして,ある領域内における土の大きさ(つまりだるまの1段目の大きさ)が同じならば,水の重量(2段目の大きさ)が大きい程含水比も大きいと言うことになります.
さらに,細粒分含有率(細粒土含有率)が高くなるとなぜ含水比が大きくなるかという説明に行きます.土粒子というのは,水分中にあると周辺の水分子と電気的に吸着する性質があります.粒径が細かいと表面積が広くなるため,その分多くの水を引きつけます.そのため,同じ体積の砂と粘土では引きつけられる水の量が違ってくるのです.粘土の方が粒径が細かい為,より多くの水を引きつけるので,含水比も大きくなります.
これらのことと,上で述べた液状化現象が起こりやすい4要素より,土の含水比は細粒分含有率が大きくなるほど大きくなるのに対し,液状化は細粒土含有率が少ないとおきやすいということがわかると思います.過去問20年分の「知識」で,地盤・土質に関するほとんど全ての性質が網羅されています.
施工科目に収録されている地盤の解説集も参考にしてください.