13.地業工事
地盤調査,土工事・山留工事,地業工事の3項目は,厳密に分類することが難しく,それぞれに関連している項目が見受けられます.構造文章題の地盤,基礎の設計と絡めて覚えていきましょう.
この項目に関しても,よく質問が来る点などについて,実際の問題文の補足説明(問題文が何を意味しているのであるかとか,問題文や解説文のどの部分が重要事項であるのかなど)に関して説明してきます.
まずは,用語の説明からしていきます.
地業とは,構造物の基礎を支える土もしくは地盤を上部に固めるための作業のことの総称です.
よって,地業工事とは,基礎構造のうち,それを支えるために直接地盤に行う部分のことを指します.
地業工事の施工に関して,監理者の立会いが必要な時を以下に示します.
1)施工試験,載荷試験の時
2)工事現場に搬入された杭,セメント,ベントナイトなどの材料検査の時
3)既製杭の打ち込み工法で,打ち止め位置を決定する時
4)場所打ちコンクリート杭および既製杭埋め込み工法において,掘削が所定の深さに達した時
5)床付け面の確認を行う時
6)設計図書に記載のない障害物などが発見された時
7)監理者が必要と認められた場合,又は立会いを求められた時
続いて,基礎の種類について説明します.
基礎とは,建築物の荷重を支持地盤に伝える最下部構造をいい,基礎スラブと杭とを総称したものを指します.
基礎スラブとは,上部構造からの荷重を直接,又は杭を介して支持地盤に伝える構造部分を指します.フーチング基礎ではフーチング部分,べた基礎ではスラブ部分を示します.
基礎構造は,直接基礎形式と杭基礎形式とに分類されます.
直接基礎形式は,更にフーチング基礎とべた基礎とに分類されます.
杭の支持方法としては,支持杭と摩擦杭に分類できます.
支持杭とは,軟弱な地層を貫いて硬い支持層に到達し,主として杭の先端支持力で支持する形式です.
摩擦杭とは,主として杭の周辺摩擦力で支持する形式です.
杭の分類と杭基礎の先端の地盤の許容応力度の比較表を見てみましょう.
杭の支持力は許容応力度が大きいほど大きくなりますので,
打ち込み杭 > 埋め込み杭 > 場所打ち杭 となります.
既製コンクリート杭の種類は
のようになります.
くいの先端部の形状として
のような種類があります.
一般に,打ち込み施工には平坦,又は凹形の閉そく形が多く用いられ,高強度プレストレストコンクリート杭の場合,硬い地盤に打ち込んだときに杭先端部の破損が少ないと言われる平坦形を原則とします.
セメントミルク工法では,孔壁の崩落防止のために閉そく形のペンシル形を用い,種々の中堀り工法では開放形が用いられます.
既製コンクリート杭の施工方法の種類は
のように分類できます.
打ち込み工法の杭の中心間距離は
のようになります.
打撃工法(杭頭をハンマーで打撃し,支持層に杭先端を貫入させ,支持力を発現させる工法です)の施工の流れは
のようになります.
プレボーリング打撃併用工法(中小径の杭で硬い中間層を抜く場合や,騒音振動を軽減し,杭の貫入を容易にする場合などに使用されます)の施工の流れは
のようになります.
埋め込み工法の杭の中心間距離は
のようになります.
プレボーリングによる埋め込み工法(セメントミルク工法)の施工の流れは
のようになります.
セメントミルク工法の特徴,注意点として,以下のものが挙げられます.
1)アースオーガーによってあらかじめ杭径より大きく(杭径+100mmが標準)掘削します.掘削中は孔壁の崩壊を防止するために安定液(ベントナイト)をオーガー先端から噴出します.
2)孔が所定の深度に達したあと,根固め液に切り替え,所定量を注入し,オーガーを正回転でゆっくり引き上げながら必要に応じて杭周辺固定液を充填します.
3)杭を掘削孔内に建て込み,圧入または軽打し支持層に定着させ,根固め液と杭周辺固定液の硬化によって,杭と支持層との一体化を図り,支持力を発現させます.
4)杭は建て込み後,杭心に合わせて保持し,7日程度養生を行います.
5)支持層の掘削深さを1.5m程度とし,杭を支持層中に1.0m以上根入れします.また,高止まりは0.5m以下とします.
6)先端閉そく杭を使用するので建て込み中,杭に浮力が作用し,杭の自重のみでは沈設が困難となる場合には,杭の中空部に水を入れて重量を増すことで杭を安定させることが必要です.
ベントナイトとは,微細粘土で水を吸収して著しく膨張したもので,孔壁の保護に使用されます.
セメントミルクとは,ベントナイトと水を十分に混合した後にセメントを加えて練ませたものです.
杭周固定液とは,杭の周面摩擦力や水平抵抗を確保するために,杭長が長く,周辺地盤が軟弱な場合に用いられる液体です.
根固め液とは,杭を支持層に固定し,先端支持力を確保するために,必ず杭の先端位置から安定液を押し上げるように注入します.
ベントナイト液は使用できません.
鋼杭に関する特徴や注意事項を説明します.
1)強い打ち込みに耐えられ,締まった中間層の貫通も可能です.
2)曲げに強く,水平力を受ける杭に適します.
3)単管の溶接によって,長さの調節が容易で長尺杭として使用できます.
4)曲げに強いので(コンクリート杭より)運搬,取り扱いが簡単です.
5)腐食に対する検討が必要です.
6)杭の先端形状には,開口杭と閉口杭とがあります.
鋼杭の施工方法に関してまとめてみましょう.
鋼杭の中心間隔は
現場打ちコンクリート杭の施工方法に関してまとめてみましょう.
ここで,ケーシングとは,掘削孔壁の崩壊を防止する鋼製のチューブのことです.
安定液とは,孔壁保護を主に目的とする溶液で,通常,ベントナイト溶液が使用されます.
オールケーシング工法(ベノト工法)とは,杭の全長にわたりケーシングを振動(または回転),圧入しながら,ハンマーグラブをケーシング内に落下させて,内部の土砂を掘削,排土完了後,一次スライム処理を行い,鉄筋かごを掘削孔内に建て込みます.
次に二次スライム処理を行い,トレミー管によりコンクリートを打ち込みながらケーシングを引き抜き,杭を築造します.
アースドリル工法に比べて,一般にスライムが少ない工法です.
コンクリート打設時のケーシングの引き抜きは,その下端をコンクリート内に2m以上入った状態を保持しながら行い,トレミー管もコンクリート内に2m以上入った状態を保持します.
リバースサーキュレーション工法とは,ドリルパイプの先端に取り付けた特殊な回転ビットを地上に設置したロータリーテーブルでゆっくり回転させて地盤を掘削し,掘削した土砂は孔内水とともにサクションポンプなどで地上に吸い上げ排出します.
孔壁の保護は,表層部をスタンドパイプで,以深は水を用い,静水圧を0.02N/mm2以上に保つことで孔壁の崩壊を防ぐ工法です.地下水との水頭差を2.0m以上保つようにします.
掘削完了後,一次スライム処理を行ってから,掘削孔内に鉄筋カゴを建て込みます.
次に二次スライム処理を行って,トレミー管を用いてコンクリートを打ち込み,杭を築造します.
アースドリル工法とは,アースドリル機のケリーバーに取り付けたドリリングバケットを回転させながら地盤を掘削し,掘削土砂をバケット内に収納し,バケットとともに地上に引き上げて排出します.
掘削壁は,ケーシングを表層にのみ使用し,以深はベントナイトなどの安定液で保護します.
掘削完了後はリバースサーキュレーション工法と同様です.
現場打ちコンクリート杭の各工法の特徴はこちら(13_kuihikaku.pdf)を参照してください.
コンクリートの打ち込みは,トレミー管内のコンクリートの逆流や泥水の侵入を防止するため,コンクリート底部から押し上げるように打設します.
トレミー管へ最初にコンクリートを投入する際は,プランジャー方式と底ぶた方式があります.
現場打ちコンクリート杭の杭の中心間隔は
ここで,各杭の杭の中心間隔や施工精度に関してまとめてみましょう.
地盤改良地業とは,地盤の支持力を増大させたり,地盤の沈下を抑制するために,土の性質を改善することを目的として,土の締め固め,固化,強制圧密,置換などを行う基礎地業のことを指します.
地盤改良工法の分類についてまとめてみましょう.
締め固め工法とは,軟弱な砂質土地盤に適用される工法で,支持力が大きく,液状化の起こりにくい安定した地盤に改良する工法です.
締め固め工法は,バイブロフロテーション工法とサンドコンパクションパイル工法(砂圧入工法)とに分類できます.
バイブロフロテーション工法とは,棒状振動体を地中に振動貫通させて,ゆるい砂質土地盤を締め固めるとともに砕石など粗骨材を充填し,透水性の良い粗骨材の柱(直径600mm程度)を地中に造成します.
サンドコンパクションパイル工法(砂圧入工法)とは,砂質土地盤(粘性土地盤に用いることもあります)に対して衝撃や振動により砂を圧入し,直径700mmほどの締まった砂の柱を造成します.
土のせん断強度と密度を増大させ締め固める工法です.
砂の代わりに砕石を用いるグラベルコンパクションパイル工法もあります.
強制圧密工法とは,粘性土地盤の圧密を短期間で終了させる工法で,地盤中に含まれている間隙水を強制的に排水して地盤の沈下を起させ,土のせん断強さを増大させて,支持力の大きい安定した地盤に改良する工法です.
強制圧密工法では,サンドドレーン工法を覚えておきましょう.
サンドドレーン工法とは,軟弱な粘土層に砂や砂利を使用したドレーンを築造する工法です.軟弱な粘土層に砂杭を多数つくり,粘土層中の間隙水を短時間に砂杭を通して脱水させ,圧密を強制的に行います.その際,砂杭上の地盤に砂を敷き,その上から盛土による荷重をかけることで,砂杭にに集まった間隙水は上昇し,地盤面上の砂層を通じて流出させます.
打ち込み式(深度30m程度)とウォータージェット式(深度20m程度)があります.
最後に固化方法について説明します.
浅層混合処理工法と深層混合処理工法とに分類できます.
浅層混合処理工法とは,固化材(土粒子間に化学的結合を与える目的で混合するもの)の添加方式には,粉体方式とスラリー(原料の粘土と石灰石の粉末を水で一緒に練混ぜた泥状態のもの)方式があり,混合作業を行う位置によって,原位置混合方式と別途混合方式に分かれます.
深層混合処理工法とは,地中に供給した固化材を攪拌によって強制的に混合する機械式攪拌方式と,スラリー状の固化材を高圧噴射して混合する噴射攪拌方式があります.
注入した固化材の全てが改良対象地盤と混合されて改良体となるわけではなく,10~30%が未固結のままスライムとして地表に戻るので,産業廃棄物として処理します.
施工上の注意点を説明します.
1)固化材は,吸湿により変質しやすいので,最大3日分のストックとします.
2)7日程度の養生期間を設けた方がいいです.
3)浅層混合処理工法では,固化材を混合させてからローラーによる転圧を行いますが,過剰転圧とならないように注意します.
4)浅層混合処理工法の改良効果の確認は,一般に,一軸圧縮強度,平板載荷試験によります.
5)深層混合処理工法の改良効果の確認は,一般に,一軸圧縮強度によります.
■学習のポイント
平成19年の問8は,4選択肢が新問題でした.その中に正答肢がありましたので,非常に難しい問題として出題されました.
構造,施工の各科目で,関連事項が多く出題されていますので,施工項目に限定せず,他の科目の出題と合わせて覚えることをお薦めします.
過去問20年分の「知識」で対応できる問題については,頑張って理解しましょう.