06構造(文章題編)

05.構造計画(構造計算方法)

まずは,オンライン講義の様子をご覧ください(Youtube動画 約6分)

今回のインプットのコツでは,構造計画の中の構造計算方法に関して,概要説明をします.

建築基準法においては,法規科目の「09.構造」にあるように,令81条にて構造計算方法が規定されています.
これらのうち,本来は1項に規定されている超高層用の構造計算(いわゆる,時刻歴応答解析)を行わなければ,柱や梁,壁などに生じる応力が分からないのですが,この構造計算が非常に複雑であるため,高さが60m以下の建築物については「簡易法」で構造計算をしましょう!ということになっています.
その「簡易法」については,令81条の2項及び3項で規定されている保有水平耐力計算以下となります.
「簡易法」とは言え,令81条の2項第一号イで規定されている保有水平耐力計算や,第一号ロで規定されている限界耐力計算については,実はかなり難しい内容となっております.
ですが,一級建築士の学科試験で得点する!ということに着眼点を置くのであれば,構造(文章題編の「05-2.荷重・外力(地震力関係)」に記載されている計算方法の内容と,建築基準法には記載がされておりませんが,構造科目としては出題されている下記の「構造耐震計算ルート」について,重要ポイントをおさえておきましょう!

構造耐震計算では,地震力の強さを2段階で考えています.建築物が耐用年限内に数回遭遇する程度の中地震と,耐用年限内に1度遭遇するかもしれない大地震によるものの2段階です.

中地震については,強度型か靭性型かによって求める層間変形角の具体的な数値は異なりますが,靭性型の建築物であっても,基本的には弾性内の変形である層間変形角が1/200程度以下となるようにして,亀裂などが生じても,軽微な補修で対応が可能であり,仕上げや設備に損傷を与えずに使用上支障がないことを目指します.
一方,大地震については,中地震の2倍程度の塑性変形,靭性型の建築物であっても,層間変形角を1/100~1/150程度以下となるようにして,建築物の倒壊などを防ぎ,人命の保護を図ることを目指します.

過去問題でも出題されているこれらの構造耐震計算フローにおける「ルート1」とか「ルート2」という言葉は建築基準法では規定されておりませんが,内容については,平成19年国交省告示第593号及び昭和55年建設省告示第1791号により規定されている内容です.


鉄筋コンクリート造や鉄骨造などの構造種別によらず,「一次設計」とは,長期荷重(地球の重力によって生じる荷重)及び短期荷重(中地震などを想定)において,荷重や外力によって各部材に生じる応力度材料の許容応力度以下になるようにして,損傷防止の確認を行うことです.
具体的には,令82条で規定されている許容応力度の計算を行い,使用上の支障防止の確認,及び屋根ふき材などの構造計算によって確認します.
一方,「二次設計」とは,大地震などによっても建築物が倒壊などをしないことの確認を行うことです.具体的は検討内容については,建築物の形状や規模によってルート2及びルート3のように異なります.

ルート1は,比較的小規模な建築物に対象を限定するとともに,鉄筋コンクリート及び鉄骨鉄筋コンクリート造については,一定以上の壁量や柱量を確保することにより,鉄骨造については,地震力の割り増しや筋かい及び接合部の破断防止を確認することにより耐震性を持たせようとするものです.
なお,ルート1については,一定以上の壁量などがあること(RC造及びSRC造),あるいは地震力の割り増し(S造)を行うことにより,大地震時の検討である二次設計は行わなくても良いということになっています.


鉄筋コンクリート造の二次設計について,少し詳しく見てみましょう.
数式の具体的な数値などを覚える必要はありません.
ルート1の式を満足する建築物は,多くの耐力壁及び柱により十分な耐力を持つため,大きな靭性は必要としない,強度型の建築物となります.このルート1の式を満足する建築物は大地震などの検討の二次設計は不要となります.
なお,AwやAcが何を意味しているのかについては過去問題で出題されていますので,確認しておく必要があります.
ルート1の式を満足する耐力壁や柱がない建築物については,層間変形角,剛性率・偏心率,塔状比のそれぞれの規定に満足する場合は,ルート2-1あるいはルート2-2のこれらの式を満足する場合はルート2-1あるいはルート2-2により二次設計の確認を行うことになります.
ルート2-1は,剛性や重量のかたよりが少なく,耐力が大きく,かつ,やや靭性のある建築物が対象となります.耐力壁が水平力の多くを負担する建築物となります.
ルート2-2は,剛性や重量のかたよりが少なく,耐力が大きく,かつ靭性のある建築物が対象となります.耐力壁とはみなされない壁やそで壁の付いた柱が水平力の多くを負担する建築物となります.
それぞれの式や規定を満足しない建物,及び規模の大きい建物はルート3である保有水平耐力の計算を行うことになります.
なお,平成27年1月の告示改正により,ルート2-3は廃止されました.

鉄骨鉄筋コンクリート造の二次設計については,基本的には,鉄筋コンクリート造と同様です.
ルート1やルート2のそれぞれの数式の数値が異なりますが,RC造とSRC造は同じような検討方法であるということを知っておけば対応可能です.

次に,鉄骨造の二次設計について,少し詳しく見てみましょう.
鉄骨造のルート1は,比較的小規模な建築物に対象を限定するとともに,地震力の割り増し(一般的な地震力の算定では,中地震についてはCoを0.2以上としているのに対し,地震力を1.5倍のCoを0.3以上とします)や,筋かい端部及び接合部の破断防止などを確認することにより耐震性を確保する耐震計算ルートです.RC造及びSRC造と同様,ルート1を満足するS造の建築物については大地震などの検討の二次設計は不要となります.
建築物の規模(階数、面積及び柱スパン)によって,ルート1-1と1-2の2種類があります.
ルート1-2の場合は,ルート1-1の検討に加えて,偏心率が15/100以下であることを確認する必要があります.

ルート2については,RC造やSRC造と同様,層間変形角、剛性率・偏心率,塔状比のそれぞれの規定を満足させる必要があります.
一次設計用の地震力については,靭性型か強度型かによってCoを0.2から0.3の間で割増します.
筋かいの水平率分担率βによって割増しを行います.

ルート1及びルート2の規模や規定が満足しない建築物についてはルート3である保有水平耐力の計算を行うことになります.


■学習のポイント

これらの最低限,覚えなければならない事項はありますが,まずは耐震計算フローを見ながら,過去問題を見ることで,どの辺が繰り返し出題されているのかを肌で感じて下さい.

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